スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


星の雨を撃ち落とす

コーヒーはメイプルと何時もの服に着替えてカリスマモードに入り直したミィ、テンジアと共に町を出た。

パーティーは町を出る前に組んである。

 

コーヒーはフィールドに出て早々に【クラスタービット】を二つ出現させ、一つの小舟状にしてそこにメイプルとミィを乗せる。

 

「……本当に便利だな。このスキルは」

「移動なら【暴虐】があるんだけどなぁ」

「毎回化け物での移動もどうかと思うし、テンジアはAGIが高そうだしこれで大丈夫だろ」

「ま、まああれに乗るよりは……精神的にはマシ……かもしれないな……」

 

どうやら【暴虐】メイプルの背中に乗るのは抵抗があるようである。

それに抵抗が無くなっている辺り……大分メイプルに染まっているとコーヒーは実感する。

 

「それじゃ、ナビゲートよろしく」

 

こうして四人はミィの目的の場所に向かって進んでいく。

暫くして目的の場所に辿り着いたのだが……

 

「……何やってるんだ?」

「羊毛で癒されてました」

「あー……気持ちいいー……」

「心満意足。幸せそうで何よりだ」

 

小舟の上で毛玉モードとなっていたメイプルとその中に潜って気が抜けた表情で気持ち良さげにしているミィにコーヒーはジト目を向け、テンジアは微笑ましげに見やる。

少しして現実に戻ってきたミィは羊毛から抜け出て小舟から降り、カリスマモードに再び入り直した。

 

「燃え上がれ、真紅の炎帝(バーストエンペラー)!爆ぜろ、【炎帝】!!」

 

【名乗り】と二つ名の由来となったスキルを発動するミィ。それを合図とするようにモンスターが次々と現れていく。

 

「蹂躙せよ、終焉城塞(ラストキャメロット)。慈しむ聖光 献身と親愛と共に この身より放つ慈愛の光を捧げん―――【身捧ぐ慈愛】」

 

メイプルも【名乗り】と【身捧ぐ慈愛】を発動してコーヒー達を完全に守っていく。

メイプルがいれば回避と防御に頭を回す必要がない。ただ攻撃すればいいだけだ。

 

「ふっ!」

 

テンジアも二振りの長剣を抜き、後ろから襲撃しようとしてくるモンスターを一太刀で次々と切り捨てていく。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!」

 

コーヒーも【名乗り】でステータスを強化して左右から迫るモンスターを撃ち抜いてHPを削っていく。

コーヒーが多少削り、ミィとテンジアが止めを刺す。メイプルは皆を守る。

それだけで狩りは拍子抜けするほど簡単に進んでいく。

 

「……これは、勝てないわけだ」

「大器晩成という言葉がある。今は勝てずともこの先も勝てないというわけではない」

「……そうだな、兄上。不撓不屈の精神で行くべきだな」

「その意気だ、ミィ」

 

グッと拳を握るミィにテンジアが優しく肩に手をかける。本当に仲が良い二人である。

 

「本当に仲良しさんですね。もしかしてお二人はご兄妹ですか?」

「否。私とミィは従兄妹の関係だ。血は繋がっていないが、大切な妹であることに変わりはないがな」

 

そんな会話をしながらも、彼らはモンスターを狩り続ける。

そうしてあらかた狩り尽くし、到着した湖でミィは脱力した。

 

「今日はありがとう二人とも。それとごめんね、お兄ちゃんもだけどかなり付き合わせちゃって……」

「別に構わないさ」

「そうだよ。でも、流石に眠くなってきちゃったかな……最後にこの柔らかさを堪能して終わろうかな。ミィもどう?」

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

未だに毛玉モードのメイプルの提案に、ミィは素直に頷き再び毛玉の中に潜っていく。

 

「コーヒーくんとテンジアさんもどう?」

「……もう少し恥じらいを自覚すべきじゃないのか?」

 

流石に中に入るという意味ではないだろうが、女の子二人が潜っている毛玉を触るのには抵抗がある。

テンジアも同意するように若干呆れたような表情で頷いている。

コーヒーとテンジアは湖があるという事で、二人が毛玉で癒されている間は釣りでもしてみようと釣糸を垂らしたのだが……

 

「……釣れないな」

「ああ。釣れないな」

 

十数分経っても何も釣れないことにコーヒーとテンジアは揃って疑問を浮かべていた。

 

「DEXは結構上げてるのになぁ……」

 

そんな事を呟いた直後、コーヒーとテンジアはぐっと身体が引っ張られる感覚に襲われる。

 

「これは……」

「湖に引き寄せられている……のか?」

 

浮遊感に襲われ、なすすべなく宙を浮いて湖へと引き寄せられるコーヒーとテンジア、そして毛玉。

 

「お兄ちゃん!これは一体何なの!?」

「分からないが、何かしらのイベントの可能性が高い」

 

毛玉から顔を出して慌てたように質問するミィに、テンジアは比較的冷静に言葉を返していく。

そのまま四人が湖の真上につくと、今度は空へ向かって上昇していく。

 

「一体何が始まるんだろうな?」

「そうだね。もし落ちても私が守れるから……」

「いや、そうなったらメイプルは沈んで溺れるだろ」

「そうだった!」

 

取り敢えずは安全策で【クラスタービット】を自分達のすぐ下に配置して何があっても対応できるようにしておく。

そして5メートル程上昇した所で湖の水が柱のように伸びて四人を包み込む。

しかし、それも一瞬。光に包まれた瞬間、コーヒー達は別の場所に転移させられていた。

 

「ここは雲の上……なのか?」

「空には沢山の星が輝いている。エリアとしては空中のようだな」

 

ふんわりと柔らかい雲に足をつけ、空で眩しいくらいに輝く星々を視界に収めながらコーヒーとテンジアは呟く。

ミィも毛玉から出て、メイプルもこのままでは身動きできないから毛玉を焼いてもらって同じように雲の上へと降り立つ。

 

「綺麗だね……」

「うん。星が降る夜ってこういう夜と思えるくらい綺麗だよ」

 

メイプルとミィが夜空に夢中となる中、コーヒーは【遠見】を使って周囲を確認していく。

 

「うーん……この辺りにモンスターはいないな」

「そうか……そうなると、一度此処を探索すべきだろう。一望無限のここへもう一度来れるか分からないからな」

 

テンジアの提案にコーヒー達は特に反対することなく頷き、四人は雲の壁を乗り越えながら先へ先へと進んでいく。

メイプルとミィは【クラスタービット】に乗せてではあるが。

そうして進んでいくと真っ直ぐに伸びる雲の道に辿り着いた。道幅は二人がギリギリ横に並べるくらいの狭さだ。

 

「……絶対何かあるよな」

「ああ。この先に何かあるのが古今東西からのお約束だ」

「このまま何事もなく……は都合が良すぎるよね」

「メイプル。悪いが頼む」

「うん!任せて!!」

 

メイプルは素直に頷いて【身捧ぐ慈愛】を発動させる。

メイプルとミィは【クラスタービット】から降り、雲の道に足を踏み入れると……星が雨のように降り注いできた。

 

「ミィの言う通り、星降る夜だった……」

「いや、物理的な意味じゃないだろ」

「うん。物理的に降るなんて思わないよ……」

「狭い通路と星の雨……本来なら無理難題の難易度だな」

 

取り敢えずメイプルが普通に耐えられているので、四人は雲の道を進んでく。

降り注いだ星がコーヒー達に次々と当たっていくが、メイプルのおかげでノーダメージである。

 

「……流石に鬱陶しく感じるな」

「痛くはないが……煩わしさを感じるのは確かだな」

「うん。鬱陶しく感じるよ」

 

だが、星が絶え間なく降り注いでいるからどうしても鬱陶しさを感じずにはいなれない。

そこでコーヒーは物は試しとクロスボウを構えた。

 

「深淵に潜む光 輝きは次代に継がれ 此処に顕現す―――【聖刻の継承者】」

 

コーヒーは【聖刻の継承者】を発動。そのまま限定進化したスキルを発動する。

 

「照すは希望 煌めくは受け継ぎし刻印 天に昇りて絶望を祓う光の柱と化せ―――【聖槍ファギネウス】!!」

 

雲の上から空に向かって放たれる白き槍の弾幕。その槍の弾幕は降り注ぐ星を次々と撃ち落としていく。

 

「「…………」」

「これで少しは止むといいんだけどな。心無しか降る星の数も減った気がするし、今のうちに先に進むか」

 

そんな感じでコーヒーが襲いかかる星を破壊しながら進んでいると、横穴がある雲の壁へと到達する。

四人は横穴に入り慎重に進み、終着点へと辿り着く。

 

そこは煌めく光が注がれていた。

静かに、糸のように伸びる光。

それが天から雲で出来た器へと続いている。

 

「おお……」

「へぇ……」

「これ……」

「綺麗だな……」

 

四人は器に近づいて、溜まった光に触れる。

何かを触った感覚はなかったが、四人はそれぞれ一つのアイテム―――【天の雫】を手に入れた。

 

ピロリン♪

『スキル【彗星の加護】を取得しました』

 

「ん?」

 

新しいスキル獲得の知らせにコーヒーは首を傾げながらもスキルの詳細を確認していく。

 

===============

【彗星の加護】

野外フィールドで攻撃を当てた際、50%の確率で空から星が降って追撃する。

取得条件

一度の挑戦で降り注ぐ星を300回以上破壊した上で【天の雫】を入手すること

===============

 

こんな形で新しいスキルが手に入ったことにコーヒーは思わず苦笑いしてしまう。

 

「ん?どうしたのコーヒーくん?急に苦笑いして」

「いや、さっきの行動で新しいスキルを取得したから、な」

「え!?どんなスキル!?」

「簡単に言えば、外なら星が降って追撃するスキルだな」

「おおおお!」

 

その光景を、ミィとテンジアは何とも言えない表情で見つめる。

 

「……こうやって非常識なスキルを手に入れてるんだね」

「ああ。奇想天外の発想がこうして強くしているのだろうな」

 

こうして思わぬ冒険も終わり、それぞれログアウトするのであった。

―――翌日。

 

「んー……何かのキーアイテムだとは思うけど……CFもまたおかしなスキルを手に入れたわね」

「……ほっとけ」

 

呆れた眼差しを向けてくるサリーに、コーヒーは顔を明後日の方向に向けて答える。メイプルは曖昧な笑顔で見守っている。

 

「ま、どっちにしろ通行証をマックスにしないとね」

「そうだな。このアイテムの使い道を知る為にも進めないとな」

 

【雷神の証】と先日手に入れた【天の雫】の使い道を知るために、今日は通行証のランク上げに精を出すのであった。

その後、予想通り最初に玖の鳥居に到達したカスミからの情報で、最後の鳥居の隣に立て札があったとのこと。

その内容は以下の通りであった。

 

【次代の主は赤鬼の角、龍の逆鱗、天の雫、草薙の酒を持つ者に託す】

【炎神、雷神、水神、風神何れかの資格を持ちし者には今代の主が最後の試練を与える】

 

この情報からコーヒーのやる気が上がり、通行証のランク上げに全力を注いだのは言うまでもない。

ちなみに、メイプルは【炎帝ノ国】の【天の雫】を手に入れる手伝いをミィに頼まれた際、【機械神】で降り注ぐ星を撃ち落としたことで【彗星の加護】の取得に成功したとのこと。

 

これを機に、カミュラが範囲防御スキルの入手を真剣に検討し、新たなスキル取得の事実に【楓の木】の一部をのぞく一同はどこか悟ったような顔となったのは言うまでもない。

 

 

 




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