スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

55 / 147
てな訳どうぞ


第五回イベントと挑戦

十二月の第一週。

第五回イベントはフィールド探索型として開催され、フィールドは白い雪に覆われ空からは静かに雪が降り始める。

 

「十二月の終わりまではこのままらしいよー」

 

第四層のギルドホーム、その窓から外を眺めるサリーは部屋にいるメイプルとコーヒーに言う。

 

「綺麗でいいよねー……歩きにくくなったりしないし」

「確かに。リアルじゃ場合によっては雪かきする必要が出てくるしな」

「だね」

 

メイプルの感想にコーヒーとサリーは同意して頷く。

 

「それじゃ、そろそろ行きますか。CFも行くんでしょ?」

「もちろん。今回のイベントでレアアイテムを手に入れたいしな」

「そうね。最奥のボスキャラを倒すためにも、レアアイテムは手に入れておきたいところね」

 

そうしてコーヒーとサリーはギルドホームから出ていき、それぞれ別行動でフィールドへと出ていく。

 

「今回の高ポイントモンスターは何としても見つけて倒さないとな。いや、あんまり欲をかくと物欲センサーが働くか?」

 

コーヒーはぶつぶつと呟きながらメタルボードでフィールドを移動していく。

討伐対象のモンスターは四種類。

コーヒーが狙っているレアアイテムをドロップするモンスターは大きな雪だるま型のモンスターである。

 

コーヒーは雪だるま型のモンスターを探しながら、十八番の【スパークスフィア】とクロスボウの射撃、半分の確率で発動する星の追撃でモンスターを倒してポイントを稼ぎつつ、雪だるまを探していく。

 

「雪だるまは炎属性の攻撃なら簡単に倒せるけど、取ってないからなぁ……でも【一撃必殺】があるから大丈夫か」

 

雪だるまはボスモンスターではないので【一撃必殺】が通用するのは有り難い。それがなければ苦戦は必須だからだ。

そんな上空からイベントモンスターを倒して回ること一時間、ようやく目的の雪だるまを見つけた。

 

「一発で落としてくれよ?」

 

コーヒーはそう呟いてクロスボウを構え、頭上から矢を連続で放っていく。

矢を六回ほど頭に受けた雪だるまは【一撃必殺】が決まって光となって消えていく。

 

「ドロップは無しかー……やっぱり一回じゃ出ないよな」

 

コーヒーは肩を落としつつも、次の雪だるまを求めて再びフィールドを飛んでいく。

 

「……本当にどっちも強いよな」

 

コーヒーが呟いて思い浮かべるのはメイプルとサリーの姿。

まさかクラスメイトが同じゲームをやっているとは思わなかったし、こうして関わりを持つことも当時は予想していなかった。

 

片方はとんでもない鉄壁プレイヤー。相性自体は悪くはないが、化け物になったり、兵器を生やしたり、無敵の死神にもなる。

しかも、最近は毒に即死効果が付き、自身と同じく星の追撃がくるようになった。

 

もう片方は素が異常なプレイヤー。回避能力が高く、自分の土俵に持ち込まないとやられかねない。

時折、サリーと一緒だと周りから生暖かい視線を向けられるのが少し辛い。

 

「……ゲームに恋愛はないだろ、うん」

 

ある意味逃げの考えでコーヒーは結論づけて、雪だるま探しに集中するのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方、サリーは少し休憩していた。

 

「ふー……追いつけないなぁ」

 

そう呟くサリーが思い浮かべているのは、自分が誘った友人とクラスメイトの男子。

コーヒーとはゲームという共通の話題が上がるまではたまに会話で同意を求めるくらいにしか話を振らない関係だった。

それが今やゲーム仲間であり、勝ちたいプレイヤーの一人となっている。

 

「メイプルもだけど、CFも強いからなぁ……」

 

イメージの中で何度もメイプルとコーヒーと戦っているが、今のところ全敗。勝ち筋を見出だせていない。

そんな二人に勝ちたいとスキルを探したり、情報を集めてはいるがどうにもこれだ!というものは見つかっていない。

 

「魔法は雷属性で範囲も広い。武器は遠距離。プレイヤーキル向けのスキル持ち。しかもスキルで近接もできる。しかも外だと星が降ってくる……本当に強すぎでしょ」

 

サリーは自身のスキル欄を改めて確認する。

 

「【名乗り】……いつか本当に使う羽目になるかも」

 

【詠唱】を使っていたことで取得した【名乗り】をサリーは現在使っていない。理由は……黒歴史が顔を覗かせているからだ。

使っても大差はない……と考えてはいるが、使わざるを得ない日が来るかもしれない。

 

「まあ、厨二病扱いされるスキルを使うCFに助けられた場面もあった、し……」

 

そこでサリーが思い出したのはお姫様抱っこされた記憶とおぶってもらったまま寝てしまった記憶。

その恥ずかしさを思い出し、サリーの顔がたちまち赤く染まっていく。

 

「~~ッ!!休憩終わり!!二人に勝つためにも、今回のイベントでドロップするアイテムを手にいれないとね!!」

 

サリーは羞恥心を振り払うように、再びフィールドを走り出してモンスター狩りを再開するのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

時は流れてクリスマス。

 

「メリークリスマス!!来年もよろしくお願いします!!」

 

【楓の木】のギルドホームでは、全員が集まってクリスマスパーティーをしていた。

クリスマスパーティーをしている理由は今年全員で集まれる機会が今日だけであり、メイプルの提案に全員が賛成した結果である。

 

「今年は色々ありましたけど、来年も皆で楽しく出来ると良いね!!」

「そうだね。来年も楽しく出来たらいいね」

 

メイプルの言葉にカナデが同意し、コーヒー達も頷いて同意する。

 

「来年はどうなるだろうな?」

「少なくとも退屈はしないだろうな。来年もメイプルがまたおかしな方向に進化しないといいが……」

 

クロムはそう呟くも、自身も含めてメイプルはまたド肝を抜く進化をするだろうと確信していた。

 

「【カフェピグマリオン】のクリスマスケーキ、本当に美味しいねお姉ちゃん!」

「そうだねユイ!デコレーションも綺麗で素敵だし、食べるのがもったいないくらいだね!」

「うん!サンタさんがすごく可愛いよね!」

「「うんうん!!」」

 

マイとユイ、シアンは【カフェピグマリオン】の予約限定のクリスマスケーキに夢中となっている。

 

「アロックには感謝しないとな。真っ先にクリスマスケーキの購入を聞いてきてくれたんだからな」

「そうね。出来ればお礼にパーティーに招待したかったけど、リアルの都合があるから断られちゃったのよね」

「仕方ないだろ。無理に誘うわけにもいかないし、代わりに次の階層へのボス戦に同行することにしたしな」

 

イズが少々残念そうに告げ、クロムは仕方ないと肩を竦める。ちなみに予約したケーキはその日になったらギルドホームに届けられるように手配していたようで問題はない。

ついでに【集う聖剣】と【炎帝ノ国】もクリスマスパーティーの真っ最中である。

 

「このまま和気藹々と話しててもいいが……少し盛り上がりに欠けるな」

「じゃあー、これを使って盛り上げるー?」

 

カスミの呟きに応えるように、ミキがまたしてもおかしなアイテムを取り出す。

 

「……それは何?」

「【キングのオーダーは絶対】というアイテムだよー。参加者には数字がランダムに掲示されてー、アイテムが指示した行動を取らないとー、大変なことになるアイテムだよー」

「また不吉なアイテムを……」

 

完全に王様ゲームが元となったアイテムにコーヒーは頭痛を覚える。

 

「すごく面白そう!せっかくだからやろうよ!!」

 

ギルドマスターのメイプルがノリノリな為、なし崩し的に王様ゲームが開催される。

そして……

 

『三番は十番にしっぺ』

『六番は一番の肩を揉む』

『七番は三番に愛の告白をする』

『八番はこの中で一番世話となった人に土下座をする』

『五番は四番と抱きしめ合う』

『九番は二番と恋人繋ぎをする』

『一番は四番に膝枕される』

 

……このような命令が下されるのであった。誰が実行したかは……ご想像にお任せする。

ちなみに大変なこととは、ゲーム内での半年以内の恥ずかしい出来事がBGM付きで映像として公開されることであった。被害者は痛いBGMで公開処刑シーンを流された回避盾である。

そんなクリスマスパーティーから少し過ぎたある日、コーヒーはギルドホームに顔を出していた。

 

「お、サリーとメイプルも来てたのか」

「そう言うCFもね。プレゼントは手に入った?」

 

そう言うサリーの手には黄色の箱が収まっている。メイプルも赤い箱を両手で持っているので雪だるまから無事にドロップしたようだ。

クリスマスパーティーでドロップの話をしなかったのは、場の空気を悪くしかねないから敢えて話題に出さなかったのである。

 

「何とか。数え切れない程倒してようやくといった感じだな」

 

コーヒーはそう言って自身のインベントリから水色の箱を取り出す。イベント終了直前にようやくドロップしたので、それまでに倒した雪だるまの数はもう覚えていないのだ。少なくとも30を過ぎた辺りで数えるのを止めてしまったから、その倍は倒した感覚がある。

 

「そっか。私も何体倒したか覚えてないんだよね」

「そっちもか。まあ、低確率だから仕方ないか。メイプルはどうだったんだ?」

 

コーヒーは互いの苦労を分かち合おうとメイプルに話を振ったのだが、それは失敗だったとすぐに思い知らされた。

 

「う、うん!私も結構苦労したよ!うん!もう何体倒したか覚えてないよ!!」

「……サリーさんや、メイプルさんのこの反応はどうでしょうか?」

「間違いなく嘘を付いている反応です」

「……物欲センサーって、実在するんだな」

「そうね……無欲が一番得をするのは本当みたいね」

 

あの反応からして、数える程度しか雪だるまを倒していないと気づいたコーヒーとサリーはハイライトが消えた目で呟く。

もし一回でプレゼントを手に入れたと知ったら……二人は揃って部屋の隅でいじけていただろう。

 

「そ、それより早く開けちゃおうよ!!さーて、何が出るのかなーっ!?」

 

メイプルが本当に誤魔化すように箱を開けようと言ってきたので、コーヒーとサリーは特に反対することなく、リボンを解いてプレゼントの蓋を開ける。

中には……巻物が一つだけ入っていた。

 

「全員、スキルの巻物だな」

「そうだね。どんなスキルなのかな?」

「イベントからして氷系統のスキルかもね」

 

そんな事を話し合いながら、コーヒーは自分の巻物のスキルの情報を確認した。

 

 

===============

【羅雪七星】

自身のHPが一割以下となった時に使用できる。

発動から一分の間に対象に武器によるダメージを七回与えることで、対象を氷の中に閉じ込める。氷の中に閉じ込められた対象は行動不能となってVITが0となり、次の被ダメージが五倍となる。

一分以内にダメージを七回与えられなければ失敗となり、使用者は問答無用で死亡する。

使用回数は一日1回。

口上

この命を賭けて吹雪く絶対零度の粉雪 七つの星が刻まれし時 極寒の檻に閉じ込め砕き散らさん

===============

 

 

「おいこら運営。別ゲーの技をパクってんじゃねぇよ」

 

完全にどこぞのゲームキャラのイベント専用技にコーヒーは思わず声に出してツッコミを入れる。

 

「別ゲーの技って……どんなスキルなのよ?」

「【羅雪七星】。簡潔に説明するとHPが一割以下の時に使用できて、一分以内に七回ダメージを与えると対象を行動不能にして次のダメージを五倍にするスキルだ」

「……うん。完全に別ゲーの技のパクりね。一応は差分化されてはいるけどね」

「あっちは冷凍光線で氷漬けにしてからの連続攻撃だからな……ちなみにサリーのスキルは?」

「【氷柱】というスキルね。MPを消費して破壊不能の氷の柱を生み出すスキルね」

「うわぁ……すんごい便利じゃないか」

 

破壊不能の氷の柱を作れるとか……足場にしたり攻撃を完全に防ぐ壁にしたりとかなり使い勝手が良すぎる。

 

「ちなみに回数制限は?」

「ないわね。代わりに本数制限があるけど」

「マジで羨ましい。メイプルは?」

「私は【凍てつく大地】というスキルだね。自分を中心とした半径五メートル以内の地面に接触しているプレイヤーやモンスターを発動から三秒間移動不能にするスキルだよ」

「こっちも凶悪だった」

 

タイミングにもよるが、移動出来ない状況で毒や弾丸を叩き込まれ、追加で星が落ちてきたら……うん、悪夢に違いない。

 

「CFだって十分に凶悪でしょ。【羅雪七星】が決まった状態で【グロリアスセイバー】を放ったら、大概の敵はそれでやられるわよ」

「言われてみれば確かに……けど、一日1回しか使えないし、失敗したら死亡だからなぁ……」

「うわぁ……デメリットも結構大きいわね。けど効果を考えれば釣り合っているんじゃない?」

「とりあえず、私のスキルは強そうなモンスターは凍らせちゃえばいいってことだね!」

「それでいいと思うよ」

 

メイプルの言葉にサリーが同意し、コーヒーも頷いて同意する。

おかしな使い方は効果からして出来ないだろう。……出来ないよな?

そんな不安を抱く中、メイプルは課題の為に今日はここでログアウトすると伝える。

 

「サリーとコーヒーくんは?」

「私はもう終わらせたから遊ぶよ?」

「俺は……まだ課題は残っているかな。計画的にやっているからもう少しで終わるけど」

 

そうしてメイプルがログアウトした後、コーヒーとサリーは二人きりとなる。

 

「今日はどうする?」

「今日は……最後の鳥居の向こういるアイツに挑戦しに行こうかと。強力な新スキルも手に入ったしな」

「そっか、ついに挑むのかー。後で情報よろしく」

「見返りは?」

「ゲーム内での食事の奢り一回」

「了解」

 

ちゃっかり見返りを約束してもらったコーヒーはギルドホームを出て、最後の鳥居の向こうにある建物へと向かっていく。

最後の準備を終えて最上階の襖を開けると、畳が敷かれた部屋の一番奥には真っ白い袴と着物を着た白髭を生やした二本角の鬼が一人座っていた。

 

「おぉ……まさか人間が来るとはな」

 

鬼はそう言うと立ち上がりコーヒーの方へと歩いてくる。

 

「ん?そうか……お前が雷神が念話で言っていた人間か。ならついて来い」

 

鬼はコーヒーに背を向けてもといた場所へと戻っていき、地面に魔法陣を描くとその場から消えていった。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)

 

コーヒーは【名乗り】を使って気を引き締め、魔法陣に乗る。

転移先は荒野。ここは同じようである。

 

「では、お前が雷神の力を受けるに相応しいか、俺が直々に試そう」

 

鬼はそう言うと、左手から白い光が弾け、情報通りの弓が握られる。

そして、右手を掲げると……鬼の体から金の光が飛び出て来た。

金の光は鬼の周囲を飛び回り、金色の陣羽織となると鬼の体に張り付いた。

 

「俺を倒せ。出来れば雷神の力を授けてやろう」

 

鬼はそう言って矢をつがえて戦闘体勢に入る。

コーヒーも戦闘モードとなってクロスボウを構える。

四層の【最強】との戦いの火蓋が、ここに切って落とされる。

 

 

 




正直悩みましたが、【羅雪七星】はオリ主が使うことにしました
元となった技の仕様上、どうしても【氷刃】さんでは使う機会がなさそうなのと、使えるようにすると、使用後死亡というデメリットにしなければならないという一種のこだわりからこうなりました
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。