スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


大晦日にお食事

大晦日の昼を過ぎた頃。

コーヒーはギルドホームの机に突っ伏していた。

 

「あー……やばい……モンスターと戦う気力が起こらないー……」

 

完全にやる気が無くなっているコーヒーは非常にだらけきった声で呟く。

戦いに勝利こそしたが、その反動で気力をごっそりと持っていかれたコーヒーは少しの間ゲームから離れてしまい、今日はログインこそしたが、フィールドに出ようという気力が全く沸いてこなかったのだ。

 

「しばらくはエンジョイしよう……幸いお金はあるし……」

 

もう冬休みの間は戦闘せずにのんびり過ごそうかと考えていたコーヒーの耳に、扉が開く音が聞こえてくる。

そちらに顔を向けると……サリーが呆れたような表情で部屋へと入って来ていた。

 

「ずいぶんとやる気がなくなってるわねCF。数日はログインしてなかったし、もしかして返り討ちにあったの?」

「いや、勝ちはしたんだが……しばらく戦闘は本当に遠慮したい」

「……そっか、勝ったんだ」

 

サリーがどこか複雑そうに呟くが、コーヒーはそれに気づくことなく例の鬼との戦いをサリーに話していく。

 

「何、その鬼畜仕様……それに勝ったCFも大概だけど……」

「【樽爆弾ビックバン】と【身代わり人形】がなかったら途中でやられていたんだぞ?正直、あれにもう一回挑むのは本気でしたくない。というかもういい」

「まあ、完全防御に強力な攻撃が二つも追加されてるからね……ちなみに何が手に入ったの?」

「スキル。それも二つ」

 

コーヒーはそう言って画面を操作し、二つのスキルをサリーに見せる。

 

「【雷神陣羽織】と【百鬼夜行I】……これがCFが手に入れたスキル?」

「そ。【百鬼夜行I】は次代の主での勝利報酬。効果は一分間の赤鬼、青鬼の召喚。強さはスキルレベルに依存で使用中は装備のスキル以外は【封印】状態になるスキルなんだよ。後、【雷神陣羽織】が発動した状態で発動すると少し変化するみたいだ」

「一が付いてるってことは、このスキルはレベルが上がるのよね?つまり上げ方は……」

「鬼との戦闘、だろうな。確か……【俺が死ぬその時まで、いつだって戦ってやる】と言っていた気がするし……」

「うわぁ……これは弱体化フラグは無さそうね。あっても戦闘無しで【百鬼夜行I】が取得できるだけね」

 

サリーはどっちにしろ鬼に弱体化フラグが存在しない可能性に行き着き、深い溜め息を吐く。

ちなみにこの時の鬼の台詞は「お前なら俺の後を継ぐに相応しい。幸い証も持っているしな」であり、最初の部屋で酒を飲み交わすことで取得できた。

 

「【雷神陣羽織】は三分間の強化スキル。リキャストは30分。使用回数は一日3回。効果はAGIとINTが30%上昇。風属性による被ダメージは三倍。他の雷系統スキルの効果と威力は二倍で効果時間も1.3倍。雷属性の魔法の消費MPが35%軽減されて、さらに三つのスキルが使えるというものだな」

「何、そのぶっ壊れスキル……いや、雷系統のスキルがないと一部のステータスが強化されるだけね。その三つのスキルは?」

「【雷神結界】【雷神月華】【九頭龍雷閃】。【雷神結界】は風属性の攻撃以外を十秒間完全防御する防御スキル。【雷神月華】は自身の放った雷属性の攻撃分だけ威力が上昇して自身の周囲に爆発させる攻撃スキル。【九頭龍雷閃】は装備によって効果が変わる攻撃スキルだな。俺の場合はバフと発動中のスキルの強制解除だな」

 

本当に頭が働いていないのか、おもいっきりスキルの情報を明かしているコーヒーにサリーは呆れた目を向けるも、例の鬼と戦う際の参考になったので良しとしてスルーする。

 

「この分だと私の場合は星が降ってきそうね……」

「たぶん、【宝玉】の試練に由来しているんだろうな……」

 

何せコーヒーが戦った九頭龍に関係深そうなスキルが内包されているのだ。そう考えるのが普通である。

 

「それじゃ、見返りの奢りよろしく」

「いきなりそっちに持っていったわね……まあ、いいけど」

 

サリーは呆れながらも頷いて立ち上がり、コーヒーも気怠げに立ち上がる。

 

「店は?」

「NPCのお店。お金は結構張るけど美味しいわよ?」

 

そうしてサリーの案内でそのお店へと向かっていくコーヒー。

場所は漆と捌の鳥居の間にある町。

店の外見は高級料亭そのもの。確かに値段も高く、味も期待出来そうである。

 

「それじゃ、早速入りましょ?」

 

サリーの言葉に頷いて、コーヒーは一緒に入り口の暖簾を分けて中へと入る。

店主と従業員は猫の耳と尻尾、板長らしき人物は人型の猫だ。

 

「……うわ」

「……あー」

 

だが、個人で楽しむカウンター席でお寿司を食べていた人物にサリーは心底嫌そうな声を上げ、コーヒーは何とも言えない表情で間延びした声を洩らす。

 

「……随分と失礼な挨拶ですねサリーさん。後日覚悟しておいて下さい。後、CFさんはお久しぶりです」

 

マグロの握り寿司を食べていた女性―――サクヤはこちらに顔を向けてじっとりとした視線でサリーを見つめた後、コーヒーに挨拶をする。

 

「確かに久しぶりだが……一体何があった?」

「シークレット。女性同士の会話の詮索は不粋ですよ。ちなみにお二人はデートですか?」

「違うに決まってるでしょ!?単に情報の見返りに奢るだけよ!!」

 

涼しげな表情のサクヤの質問に、サリーは何故か必死となって否定する。

 

「スモール。ここで大声はマナー違反です。このお店ではマナーを何度も犯すと追い出されて出禁となり、二度と入れなくなります。なので、あまり騒がないで下さい」

「む、ぐぅ……」

 

サクヤの注意にサリーは不機嫌ながらも押し黙る。流石に出禁は勘弁したいようだ。

 

「もう少しからかいたいですが……あまり騒がしくすると私も出禁となるのでここまでとします。後、コース料理も絶品ですよ。大将、ウニとイクラ、二貫ずつお願いします」

 

サクヤはそう言って話を締めくくり、猫の板長に追加の注文をしていく。

サリーは深い溜め息を吐いた後、個室を指定する。

そのまま従業員に案内され、コーヒーとサリーは座布団の上に座る。

 

「それじゃあ、何を頼む?」

「コース料理も良いけど……海鮮盛りでいいんじゃないか?お酒は……どうする?」

 

メニュー表を確認しながら、コーヒーはサリーに質問する。

 

「せっかくだから注文しましょ。VRだから味だけ再現されていて、実際には酔わないみたいだし」

「そういえばクロムがゲームの酒は味気ないって言っていた気がするが……酔いがないからかもな」

 

せっかくなのでお酒も注文し、料理が来るまで少しの間待つこととなる。

 

「……男女が部屋で二人きり。サクヤの言う通り、デートに見えても不思議じゃないな」

「……そうね」

「「…………」」

 

無言。圧倒的な沈黙。

 

((……気まずい!))

 

互いに無言だから何を話せばいいか、本当に困ってしまう。

 

「そ、そうだ!次の階層はどんなところだろうな!?」

「そうね!本当に次はどんな階層なのかな!?もしかしたら、海がメインの階層かもね!!」

「それだとサリーやミキに役立つスキルが豊富そうだな!!」

「もしそうだったら嬉しいわね!!CFは―――」

 

ダンッ!!

 

「お客様。どうかお静かにお願いします。騒がれると他のお客様に迷惑ですので」

「「す、すいません……」」

 

襖を開けて顔を覗かせた猫又の従業員の注意にコーヒーとサリーは一気に縮こまって謝る。

 

「では、ごゆっくり」

 

ピシャッ

 

「……お互い、緊張しすぎたな」

「そうね……向こうじゃこんなにガチガチじゃないのにね」

「メイプルがいるからだろ」

「確かにそうね」

 

従業員の注意のおかげで、すっかり緊張が取れた二人は何気ないゲームの話題で会話を続けていく。

そして、豪華な海鮮盛りが運ばれ、お猪口と徳利もテーブルの上に並べられる。

 

「それじゃ、今年もお疲れさん」

「そっちもね」

 

コーヒーとサリーはお猪口で乾杯し、中の酒を一口飲む。

 

「「……辛い」」

 

初めてのお酒の味に、二人は揃って同じ感想を洩らした。

 

「お酒って、こんなに辛いのね。あんまり飲みたくないかな」

「あっちのお酒は飲みやすかった……気がするんだけどな」

「そういえばCFは二回目か……でも、あんまり覚えてなさそうだからこれが実質の最初のお酒ね」

「だな。説明欄を見る限り、VRのお酒は微弱の睡眠効果と頬が赤くなるエフェクトが追加される仕様みたいだな」

「俗に言う、二日酔いにはならないのね」

 

サリーが肩を竦めながら赤身の刺身をつまみながら言う。

実際、VRで二日酔いになったらそれはそれで問題だし、なることはないだろう。

 

「まあ、VRの食事は味を感じるだけで実際にお腹は膨れないからな。むしろ、ログアウトした後に無性に何か食べたくなってくるんだよな」

「あー……何となく分かるわ。虚無感から何か一口という感じよねー」

「VRなら太らないから食べ放題……というのは案外危ないかもな」

「そうねー……調子乗ると、反動で食べずにはいられなくなりそうだし」

「何事も程々が一番、か」

 

コーヒーはそう呟きながら白身の刺身を口にする。

食感と味を堪能しながら、うん、確かに旨いと内心で頷く。

 

「ふと思ったんだが、混乱という状態異常はどう再現されるんだろうな?」

「モザイクがかかるんじゃない?もしくは操作が上手くいかないとか」

「VRで手足を動かす操作が上手くいかないのは技術的に無理なんじゃないのか?それよりは平衡感覚が取れない方が現実的だろ」

 

実際、【ヴェノムカプセル】で転がったメイプルは目を回していたから、この辺りの再現はそんなに難しくないだろう。

 

「あー、確かにそっちの方があり得るわねー。ちなみに情報閲覧スキルがあったらどんな感じと思う?」

「ステータス表示くらいじゃないか?所持スキルとか所属ギルドとかは……流石に個人情報だしな」

「確かにそれが妥当ね。それも基礎ステータスだけなら、そこまで問題にはならないわね」

「そうだな。この話題を出した理由は?」

「ミキが釣り上げたアイテムから。効果はモンスター一体のステータスを表示してくれるというゲームらしいアイテムからよ」

 

またミキが釣り上げたアイテムにコーヒーは苦笑いし、サリーも苦笑する。

 

「でも、そういうアイテムは便利だよな」

「そうね。敵のステータスが分かるだけでも、戦略が立てやすくなるからね」

「同感。新しい階層が実装されるまではどうするんだ?」

「んー……三層を再探索してみようかと思ってる。最後の鳥居の奥のあいつは今のまま挑んでも返り討ちに合うだけだしね。CFは?」

「俺は……適当に四層を探索してみるか。今のところは【クイックチェンジ】を手に入れることくらいだが」

「とあるお店で装備品を五点買うと手に入るスキルね。今のCFじゃ使い道がなさそうだけど」

 

そんな話をしていると、襖が開いて猫又の従業員が入ってくる。

 

「本日はこちらをご利用頂き誠にありがとうございます。仲の良いお二人様での会食につき、此方を進呈致します」

 

従業員はそう言って二つの巻物をテーブルの上に置くと、深々と頭を下げて退室する。

 

「……まさかこんな形で新しいスキルが手に入るなんてな」

「そうね。スキル名は……【連携】?」

「効果は……フレンド欄にいるプレイヤーを事前に登録することで、そのプレイヤーがパーティーにいるとステータスが2%上昇。さらに登録した相手が同じスキルを持っていたら、その相手の行動が予測で分かるようになる……か」

「これはパーティー向けのスキルね。ソロじゃ効果を発揮しないけど、悪くないスキルね」

 

せっかく貰えたので、コーヒーとサリーは巻物を使用して【連携】を取得する。

 

「とりあえず相手は……」

 

コーヒーは少し考えるも、登録変更は可能なのでサリーを登録する。

 

「とりあえず私も……」

 

サリーは少し悩みながらも、画面を操作してコーヒーを登録する。

 

「まあ、同じスキルを持っていた者同士がいいだろ」

「あー、考えることは同じかぁ。まあ、それが無難だしね」

 

二人は食事を楽しんだ後、家族と過ごす為にログアウトしようとする。

 

「それじゃ、また来年」

「ええ。また来年」

 

互いに笑みを浮かべ、同時にログアウトして別れるのであった。

そして、年を越した一月の半ばを過ぎた頃。

第五層が実装された当日、コーヒー達はギルドホームに集まっていた。

 

「おお、全員揃った!」

「ん?いや、メイプルがいないぞ?」

 

サリーの言葉にクロムが疑問を口にするも、メイプルがいない理由を知っているコーヒーは何とも言えない表情となる。

 

「ああ……メイプルは……インフルエンザです」

 

そう。メイプルはインフルエンザにかかってしまったのである。ちなみに去年もやられていた。

サリー曰く、毎年のことだそうだ。

 

「そ、そうなのか。どうする?また別の日にするか?」

 

クロムはメイプルを気遣って提案も上げるも、サリーは悩ましげな表情となる。

 

「そうしたら……メイプルは少し気にやむかもしれないですね」

「あー……自分のせいで皆を足止めさせたと思うかもなー……」

「気にしなくていいと思うけどー、こういうのは意外とくるんだよねー」

 

自分のせいで周りに迷惑をかけたとなったら……幾ら大丈夫と言っても本人は気にしてしまうだろう。

 

「確かに一理あるわね。それに、アロックとの約束もあるし」

「そうだよな……それに、どっちにしろ二つに分けなきゃいけないんだ。なら、今いるメンバーで先に行った方がいいか」

「そうだね。メイプルなら、最悪一人でも倒せるだろうしね」

「流石に二度もピンポイントでメイプル対策のボスモンスターを配備してないだろうし、ね」

 

そして、パーティー分けではクロム、イズ、マイ、ユイ、シアン、カスミの六人パーティーと、コーヒー、サリー、カナデ、ミキ、連絡を受けて来たアロックとの五人パーティーで五層へ続くダンジョンに向かうのであった。

 

 

 




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