スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


イベントに向けて

運営から通知で届いた第一回イベント。

他のプレイヤーを倒した数と死亡回数、与ダメージや被ダメージでポイントを競い合うバトルロワイヤル式のイベントだ。

 

このイベントの上位十名には限定の記念品が贈られるそうで、参加するプレイヤーは数多くいるだろう。

コーヒーも、そんなプレイヤー達の一人であった。

 

「やっぱりイズさんは参加しないんですね」

「ええ。前にも言ったけど、私は動き回って戦うのは得意じゃないからね。このゲームをプレイしているのも、好きなものが作れるからだし……メイプルちゃんは参加するかしら?」

「するんじゃないですか?【毒竜の迷宮】のユニーク装備を手に入れた可能性が高そうですし」

 

イズの疑問に、コーヒーは何とも言えない表情で溜め息を吐き、憶測で答えを返す。

メイプルとフレンド登録した翌日、コーヒーはメイプルを心配して昨日はどうだったのかとメッセを送ったのだ。

それで返ってきた返信は―――

 

『クロムさんに教えてもらったダンジョンを無事に攻略して、コーヒーくんと同じ格好いい装備を手に入れました!!』

 

で、ある。

一人だけでダンジョンを攻略しに行き、一体どうやって初心者装備でボスモンスターを倒したのか、本当に問い質したい心境に陥ったのは言うまでもない。

 

高確率でスキル【大物喰らい(ジャイアントキリング)】を持っているだろうがそれでも二倍。仮に極振りだとしても、それでもボスモンスターの攻撃に耐え切れるとは流石に思えなかった。

 

もちろん、スキルについて聞くのはマナー違反なので問い質すことはしないが。

ちなみにこの事実をコーヒー経由で知ったイズは苦笑い。クロムの方は軽くショックを受けて四つん這いとなる始末であったのも言うまでもない。

 

「クロムもイベントに向けて頑張っているようだし、コーヒーもそうするのかしら?」

「はい。今回はレベルを上げるより、スキルを探したり上げたりして強化しようかと」

 

現在のコーヒーのレベルは43。現在最高レベルは最強プレイヤーと名高いペインの48。

そのペインはスキルはもちろんのこと、自身のプレイヤースキルも相当高いという噂だ。コーヒーは会ったことはないが、これ程噂が流れているから、噂に違わぬのは容易に想像できる。

 

「そう。ここも少し寂しくなるわね」

「そうでもないと思いますよ?他のプレイヤーがイベントに向けてオーダーメイドを頼んだり、無茶をしたクロムが装備のメンテに訪れるんじゃないかと」

「それもそうね」

 

そんな風に他愛ない会話を交わした後コーヒーは店を後にし、イベントに向けての強化に向かうのであった。

 

「とは言ったものの、どうするか……取り敢えず、プレイヤースキルを磨くか」

 

町から北の方向にある森の中で、コーヒーは自身の射撃の腕を上げる目的で手頃な木に矢を放ち続けていく。

ただ当てるだけではなく、同じ箇所に当てるように。

途中でモンスターが近づきもしたが―――

 

「舞うは雷輪 散るは(いかづち)の花弁 蒼き雷華よ害意から我を守れ―――【雷旋華】」

 

【口上強化】で強化しつつ、自身の周囲に雷のドームを形成する攻防一体の魔法―――【雷旋華】でモンスターを撃退しつつ、コーヒーは矢を同じ箇所に当て続けていく。もちろん、周りに人がいないのを確認した状態で。

 

ピロリン♪

『スキル【チェイントリガー】を取得しました』

 

「おっ、新スキルだ」

 

新しいスキルが手に入ったので、コーヒーは画面を操作して新しいスキルの内容を確認していく。

 

 

===============

【チェイントリガー】

三分間、同じ箇所を攻撃する度に与ダメージが15%増加する。上限は300%

最初に当てた箇所から5センチ以上離れた箇所を攻撃すると、その時点で効果はリセットされる。

使用可能回数は一日5回。使用してから30分後に再使用可能。

取得条件

一定時間同じ箇所に矢を寸分違わずに一定回数当て続けること。

口上

連なるは魔弓の演舞 その繋がりを以て射抜き続けん

===============

 

 

この【チェイントリガー】は条件が厳しい分、ダメージ増加効果の補正が大きいようだ。

一番下の口上は全力で無視!……という訳にもいかないので、どれくらい強化されるのか検証することにした。

 

「【チェイントリガー】」

 

スキル名を口にし、近くにいたゴブリンの肩に矢を当てる。スキルによって麻痺とスタンを喰らったゴブリンはその場で倒れる。

コーヒーは動けなくなったゴブリンに近づいて矢を放ち、三射目でゴブリンは消失した。

30分後……

 

「連なるは魔弓の演舞 その繋がりを以て射抜き続けん―――【チェイントリガー】」

 

今度は口上付きでスキルを発動。同じようにゴブリンを射殺すと、今度は二射目でゴブリンは消失した。

 

「うーん……確かに威力が上がってるな。上がり幅がスキル欄にあれば検証せずに済むのに……」

 

コーヒーは分かりやすく肩を落とす。【口上強化】の質の悪いところは上がり幅が明確に記載されていないこと。

なので、こうして一度は口上を唱えて確認しないと詳細が分からないのである。

 

「本当に呪いのスキルだよ、これは……」

 

そんなことを呟きながら、コーヒーは何となく周囲を睨睥する。

コーヒーはこの時、気配察知のスキルを使っていなかった。

 

なので、後ろの茂みの影で目を輝かせていた黒を基調とした紅い装飾が施された装備に身を包んだプレイヤーに見られていたことに、その瞬間まで気づけていなかった。

 

「…………へ?」

 

そのプレイヤー―――メイプルを見つけたことで、コーヒーの体はピタリと止まり、次いでピクピクと体を震わせていく。

 

「い、何時から見ていた……?」

「えっと……格好良いセリフを口にしていた時からです」

「……ゴフッ」

 

一番見られたくなかった場面をバッチリ見られていたことで、コーヒーは膝を折ってその場に崩れ落ちた。

 

「こ、コーヒーくん!?」

「……見られた……スキルによる痛々しいセリフでの強化場面を見られた……ぶつぶつ……」

「だ、大丈夫ですよ!口上はゲームらしくて格好良いですし!そのスキルってどうやったら手に入るんですか!?」

 

メイプルのその言葉に、コーヒーは信じられないといった表情で顔を上げ、穴が空くんじゃないかとばかりにメイプルを凝視していく。

 

「……本当に欲しいのか?こんな、呪い同然のスキルを?」

「あ、はい。良かったら……ですけど」

「別に構わないよ。取得方法自体は既に広まっているし」

 

コーヒーはそう言って、メイプルに【口上強化】の取得方法を伝授していく。

そして―――

 

「我が堅牢と経験の糧となれ!【シールドアタック】!!」

 

スキルによる大盾の押し潰し攻撃でゴブリンを倒していた。痛々しいセリフ込みで。

 

「あ、本当に取得できました!口上は……おおおおおおっ!すごく格好良い!!」

 

無事に【口上強化】を取得したメイプルは、自身のスキル欄に追加された口上を確認し、嬉しそうにはしゃいでいる。

メイプルは早速、スキルを試すように、紅い装飾が施された黒い短刀を掲げた。

 

「滲む混沌 出でるは猛毒の化身 三首の顎ですべてを穢さん―――【毒竜(ヒドラ)】!!」

 

短剣から伸びるように出てきたのは、如何にも凶悪そうな竜の形状をした猛毒の塊。それも三つ。

その三首の毒竜は近くにいたモンスターを容赦なく呑み込み、瞬く間に絶命させた。

 

「おおう……」

 

メイプルの凶悪極まりない毒魔法に、コーヒーは死んだ魚のような眼になる。たぶん、毒竜を一発で倒したことで得られたスキルなんだろう。

コーヒーも大概だという自覚はあるが、メイプルはそれを越えているような気がする。

ちなみにメイプルは……

 

「やっぱり格好良い!!【毒竜(ヒドラ)】も強化されてるし、すごく良いよ!これ!」

 

大変ご満悦であった。この鋼の如きメンタルを少しは見習うべきかもしれない。

 

「こういったスキルはボスモンスターを初回かつ一人で倒した時に手に入るものなのかなぁ……?」

「あれ?もしかしてコーヒーくんも私と似たようなスキルを持っているの?」

「ん?……ああ。まぁ、メイプルのスキルを見てしまったし……俺も見せるか……」

 

コーヒーはこのまま誤魔化すのもフェアじゃないと思い、実際にスキルを使ってメイプルに見せることにする。実際は情報が既に出回っているから、調べようと思えば調べられるのだが。

 

「猛るは雷光 煌めくは蒼雷の一閃 その雷刃を以て敵を切り裂け―――【ボルテックスラッシュ】!」

 

コーヒーが口上込みでスキル名を告げると、クロスボウの先端に長さ1.8メートルの雷の刃が形成される。それをコーヒーは袈裟で振り下ろした。

 

「おおおおおおおっ!!すごく格好良いよコーヒーくん!!」

「これがボスモンスターを倒して手に入れたスキルだよ。メイプルのようなボスモンスターが顕現して攻撃するのはないけど、魔法の数は結構あると―――」

 

ピロリン♪

『スキル【名乗り】を取得しました』

 

「……………………え゛?」

 

メイプルへの説明途中で届いた新しいスキル取得の知らせ。

だが、スキル名とその取得前の行動から猛烈に嫌な予感を覚えたコーヒーは、急いでスキルを確認していく。

 

 

===============

【名乗り】

スキル欄に記載された台詞を周りに聞こえる程度の大きさで告げることで、十分間HP・MP以外のステータスが1.3倍となり、消費MPが30%減少する。

台詞はプレイヤー毎によってランダムで決まる。

※このスキルは【廃棄】できません。スキルスロットへの付与も同様。

取得条件

【口上強化】を一定回数使用すること。

台詞

迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)

===============

 

 

「ゴブフォッ!?」

 

コーヒーのメンタルに多大なるダメージ!!その場で胸を押さえて蹲った!!

 

「こ、コーヒーくん!?急に蹲ってどうしたの!?」

 

突然コーヒーが崩れ落ちたことに、メイプルは心配して声を掛けるも、今のコーヒーにはその余裕がない。

この【名乗り】は、【口上強化】以上に質が悪い。

用意された台詞を言うだけで、ステータスの強化と消費MPの減少。それも回数制限無し。

 

だが、そのハードルが精神的な意味で高すぎる。

スキルの恩恵を得る為に、十分おきに痛い台詞を周りに聞こえる声の大きさで告げなければならないとか……精神が死にかねない。

と言うか、昔にあったゲームの台詞を丸パクリして大丈夫なのか運営。

 

コーヒーは心配するメイプルに大丈夫だと告げ、よろよろとした動作でメイプルと別れるのであった。

ちなみに、メイプルは今度のイベントに参加するとのことだった。

 

一方……

 

「なあ、【名乗り】はAIが勝手に設定する仕様で大丈夫だったかな?もし、別のゲームに出ていた台詞が出てきたら……」

「大丈夫じゃないか?【名乗り】の台詞設定はAI任せなんだし」

「だよな。仮に訴えられても、事情を説明すれば理解して貰えるさ」

「それもそうだな。それよりも……」

「「「「あのメイプルという新規プレイヤーがヤバい!!」」」」

 

 

 




口上があるなら名乗りもあるよねー。厨二のお約束として、ねw
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