スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


イベント予告と水神

クロムとカスミが探索を切り上げ、町へ戻っている頃。

 

「しっかし、どれも今のところ探索は無理だな」

「ああ。片方は雷雨。もう片方は雨の砲弾。最後に見つけた雲も今日見つけたエリアの雲と同じ雰囲気を発していたからな」

「メイプルとコーヒーがいれば、わりと簡単に行けそうだよな」

「そうだな。最後の雲はミキも加わるがな」

「ま、パーティーで動くなら圧倒的にメイプルだな。コーヒーは基本的には個人移動でしか進めないからな」

「そうだな―――」

 

カスミがクロムの言葉に頷きかけるも、町に向かう何かを見つけて目を細めていく。

 

「?どうしたんだカスミ?」

「いや……空を飛ぶ何かが町に向かっているのを見つけたんだが……」

 

カスミはインベントリから望遠鏡を取り出し、【遠見】も使ってその飛行物を確認する。

 

「……は?」

 

カスミは間抜けな声を出し、一度目を擦ってから再度望遠鏡を覗いて確認する。そして、見間違いでないと悟ると平穏が目の前で崩された時のような表情となった。

 

「……一体何が写ったんだ?」

 

クロムはそんなカスミの様子にどこか嫌な予感を覚えながらも確認する。カスミは死んだような表情のままクロムに向き直った。

 

「……CFが空を飛んでいた」

「コーヒーが?コーヒーなら空を飛んでも」

「孔雀のような羽と尾を背中から生やして。それも【クラスタービット】無しでだ」

「…………」

 

その瞬間、クロムの表情も死んだ。

 

「……今度は鳥になったのか?」

「かもしれない。取り敢えず、町に戻ろう」

 

一時の平穏ががらがらと崩れていく音を感じながら、クロムとカスミは再び町に向かって歩くのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「戻ったぞー」

「お帰りー。どうだった?」

「新しいスキルで別の手段で飛べるようになった」

 

ギルドホームに帰ってきたコーヒーは、寛いでいたメイプルに今回の探索結果を端的に伝える。

 

「へえ、そうなんだ。どんな感じ?」

「こんな感じだ―――【孔雀明王】」

 

コーヒーは一度解除していた【孔雀明王】を再度発動させる。

 

「おおおお!凄く綺麗だよ!!」

 

メイプルが目を輝かせてコーヒーの背中から生えた翼と上尾筒を見回し、触っていく。

 

「触り心地も良いよ!!何処で手に入れたの!?」

「ボスモンスターを倒したら。けど、そのボスモンスターがいるエリアは雷系統のスキル以外を封じてくるから、メイプルには厳しいと思うぞ」

「あー……確かに。攻撃出来ないから倒せないね」

「ちなみに【身捧ぐ慈愛】は発動するか?このスキルの使用中は敵味方問わずであのエリアと同じように封じるからな」

「そうなんだ……【身捧ぐ慈愛】!!」

 

メイプルは試しにスキルを発動しようとするも、発動しない。しっかり使用不可となっていた。

 

「……発動しなかったな」

「うん……そのスキルは諦めることにするよ」

 

どうやら孔雀の翼と上尾筒がお気に召したメイプルは取得を考えたようだが、ほとんどのスキルが封じられる為に諦めたようである。

 

「これは実質、一人の時しか使えないな。パーティーメンバーのスキルまで封じてしまうからな」

「綺麗だけど、凄く不便なんだね……」

 

新しいスキル【孔雀明王】のデメリットの大きさにメイプルも同意しながら頷く。

何せ、雷系統以外のスキルを使用不可能にするのだ。ぶっちゃけ、周りの切り札さえも封じてしまうこのスキルは、ソロ戦闘でしか効果を発揮しそうにない。

 

「……また、おかしなスキルを手に入れたんだな」

「出来れば見間違いであって欲しかった……」

 

そのタイミングで帰ってきたクロムとカスミは、孔雀の翼と上尾筒を背中から生やしたコーヒーを見た瞬間に悟った表情となった。

取り敢えず、互いに今回の探索の情報交換をしていく。

 

「雷雨か……その先には何があるんだろうな?」

「それよりもコーヒーが見つけたエリアと新スキルがまた凶悪だな。どっちもソロだとすんごいキツイぞ」

「ああ。装備のスキルも含めて使用不可能にするからな。ソロだと勝ち目がなくなるな。それ以上に強化した【グロリアスセイバー】の威力が凄まじ過ぎるが」

 

遠い目となっているカスミの言葉に、クロムが同意するように言葉を紡いでいく。

 

「ああ……九割近く残っていたボスモンスターのHPを全損させるとか……プレイヤー相手ならオーバーキル確定だぞ」

「……一応、大幅に強化した【リベリオンチェーン】込みだから、純粋な威力は不明だぞ」

「それ抜きにして、だ。マイとユイ、シアンでも連打しないと削れないんだからな」

「…………」

 

クロムの指摘にコーヒーは無言で顔を背ける。威力のヤバさは本人も自覚しているからだ。

 

「それでどうする?探索は次の機会にするか?」

「次の機会でいいだろ。メイプルもあの鬼との戦いで気力をごっそりと持っていかれたしな」

「「……は?」」

 

コーヒーの言葉に目が点となったクロムとカスミに、コーヒーはメイプルが間違えて鬼と三回も戦って全勝した事を伝える。

 

「メイプルも鬼を召喚出来るようになったのか……」

「あれに三回も勝ったのか……それも連続で」

 

本当に予想の斜め上を行くメイプルにクロムとカスミはまた遠い目となる。特にカスミは鬼に勝てず戦意をへし折られていたので、地味にダメージが多かった。

そんな彼らの下に運営からメッセージが届く。

 

『ガオー!来月の二月に第六回イベントが開始されるドラ!今度のイベントは専用フィールドのジャングルを探索するドラから、楽しみに待っているドラ!』

 

ヘンテコドラゴン口調の文章と探検帽を被ったヘンテコドラゴンの絵付きのメッセージにコーヒーは思わず苦笑してしまう。

前回のイベントではヘンテコドラゴンはサンタ帽を被っていたから、今回もアタッチメントを追加したようである。

 

「二月にまたイベントか。それも第二回と同じ探索型か」

「ジャングルかぁ……歩きやすいといいな」

「まだ詳細は分からないが……ジャングルなら植物や遺跡があるかもな」

「そうなると……モンスターもジャングルに合わせた種類となるかもしれないな」

「確かに」

 

ジャングルと言えば、植物、ゴリラ、虫、遺跡があるなら骸骨……

今回も中々濃そうである。

 

「じゃあイベントまでゆっくりするのもいいかな。しばらく戦闘は遠慮したいし」

「そうだな。イベントの為に英気を養っておくのもいいかもな」

 

そんなメイプルとコーヒーの言葉に、クロムとカスミはしばらくは平穏になりそうだと内心で安堵の息を吐くのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

イベント通知から四日後。

 

「……サリー、大丈夫か?」

「三日もログインしてこなかったから……本当に大丈夫?」

 

イベント通知の次の日にサリーは第四層へと戻り、それから今日まで一度もログインしなかった、ギルドホームの机に突っ伏しているサリーにメイプルとコーヒーは大丈夫かと声を掛ける。

 

「……うん、大丈夫。向こうでも言ったけど、単に燃え尽き症候群みたいな状態になっただけだから……今なら二人の気持ちが分かる気がするよ……」

「もしかして……勝ったのか?」

 

コーヒーの言葉にサリーは顔を上げて頷く。サリーが四層に行ったのは、例のクエストの最後の試練に挑戦しに行ったからである。

 

「うん。あれは本当に地獄だった。凄く速いし、【大海】や【古代ノ海】に似たスキルも使ってきた上に、予想通り水の壁の完全防御もあった」

 

サリーは遠くを見つめる瞳で呟く。

何せ、二刀の小太刀からは水の刃が飛んで迫り、此方の攻撃も巧みな剣捌きで悉く弾くのだ。

 

サリーは【氷柱】を小太刀の剣筋を遮るように出現させ、それにぶつかって動きが鈍った瞬間に【超加速】で接近し【七式・爆水】を右足に叩き込んでバランスを崩させ、そのまま追撃を放とうとした。

 

だが、水色の陣羽織を羽織った鬼は【雷神結界】の水バージョン―――【水神結界】でサリーの追撃を防ぎ、あっという間に体勢を立て直して再び攻撃に転じたのだ。

 

サリーは【氷柱】を再現した鬼が放ってきた水柱を、新スキル【氷結領域】で凍らせて即席の壁に作り変えつつ、耐えずヒット&アウェイを繰り返していた。

 

「しかもHPが七割以下になると、地点指定の水蒸気爆発を放ってきたのよ。それも範囲が広いタイプで。【八式・静水】を咄嗟に使わなかったら、間違いなく爆発を受けてたわね」

 

さすがに地点指定の広範囲爆発はまずいと悟ったサリーは、挑戦前にイズから譲り受けた【樽爆弾ビックバン】を直ぐ様設置。風魔法を放って爆発させ、宙に浮いて接近していた鬼に大ダメージを与えた。自身は【空蝉】が発動してダメージが無効となって無傷で凌いだが。

 

「終盤なんて空に展開された水球からフィールド全体に雫が降ってきて、全ステータスがダウンしていった時は本当に焦ったわよ」

「「うわぁ……」」

 

本当に鬼畜仕様の鬼に、コーヒーとメイプルは何とも言えない表情で声を洩らす。

 

「まあ、最後の全ステータスダウンは雫に濡れる度に下がっていたから、【零式・水面返し】でデバフを全部鬼に移して、【大海】と【古代ノ海】でさらに動きを鈍らせたところで【終式・睡蓮】を叩き込んで決めたけどね」

「……終盤は鬼は自ら首を締めたんだな」

 

鬼の敗因はデバフ系統スキルをサリーに使ってしまったことだろう。【ドーピングシード】のデバフまで移された鬼は【大海】と【古代ノ海】でさらにAGIが低下し、動きが鈍らされたところで【空蝉】でAGIが上昇していたサリーの必殺スキル【終式・睡蓮】を決められたのだ。

 

それでも鬼の攻撃はとてつもないものであったが。

ちなみに、終盤で確実に決める為にサリーは意を決して【名乗り】を使っていた。

 

そのメンタルダメージもあってログインしなかったのだが……自ら言うことはないだろう。

ちなみにサリーの【名乗り】は『踊れ、流水の舞踏(マリンダンサー)』である。

 

「ええ。おかげで新しいスキルが手に入ったけどね」

「どんなスキル?」

「【百鬼夜行I】と【水神陣羽織】。【百鬼夜行】の方はもう知っているから省くけど、【水神陣羽織】はCFの【雷神陣羽織】の水バージョンね。多少の差違はあるけど」

「どんな差違だ?」

「一つ目は上昇するステータスの種類。こっちはSTRとINTが30%上昇するわ。二つ目は内包スキルの効果。【水神蒸発】は水系統スキルを使えば使う程威力が上がって、半径10メートル以内の場所を任意で爆発させる性能になっているわ。【天ノ恵ミシ雫】は攻撃ではなく補助系統スキル。私の場合は自身のAGIの30%増加と敵の被ダメージ20%増加ね」

「此方も強力だなぁ……ちなみに【水神結界】は?」

「雷属性の攻撃以外の完全防御」

 

どうやら【陣羽織】スキルはそれぞれの属性の上下関係が成り立っているようである。

コーヒーの雷神の場合は水に強くて風に弱い。

サリーの水神の場合はおそらく炎に強く、雷に弱い。

 

「でも、サリーの所持しているスキルと合わせたらぴったりだよな」

「うん。まあ、このクエストはその系統のスキルがないと進められないからね。正直疲れたから、来月のイベントまではゆっくり過ごすつもり」

 

どうやらサリーも次のイベントまでは休むようである。

 

「だよな。あれとの戦闘はすっごい疲れるからな」

「うん……正直、私ももう戦いたくないよ……」

 

コーヒーとメイプルも、鬼との戦いを思い出して一気に疲れた気分になる。

 

「それで、今日はどうする?」

「今日は【カフェピグマリオン】が開店している日だから、そこでケーキを食べましょ。CFの奢りで」

 

勝手に奢らされることを決められたコーヒーは呆れたように肩を竦めるも、特に反対の声を上げない。どうやら奢ってはもらえるようだ。

 

「というか、メイプルの場合はパンケーキをご馳走するって店主が言っていたぞ」

「え?ホントに!?」

 

そうして三人は、【カフェピグマリオン】へと足を運ぶのであった。

 

 

 




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