スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


ジャングル探索

【カフェピグマリオン】の臨時バイトから時間は流れて、イベントが始まる二月となった。

 

『ガオー!それでは、今回のイベントの詳しい説明をするドラ!今回のイベントはすべてのフィールドにいるモンスターからドロップするチケットアイテムを使うことでイベント専用フィールドに行けるドラ!チケットは一枚につき一回ドラから、何枚か持っていたら良いドラよ!』

 

どうやら今回のイベントはそのチケットを手に入れないと本格的なイベント参加は不可能なようだ。そして、移動先のフィールドのどこに着くかはランダムになっているとのこと。

 

『ジャングルには貴重な素材がいっぱいあるドラ!中には極希少なレア素材も隠れているドラから、頑張って探してみるドラ!もちろんここでしか手に入らないスキルや装備も手に入るドラ!だけど、注意するドラよ?専用フィールドではHPの回復が一切出来ないドラから、自分のHPには常に注意を払うドラよ?』

 

これはコーヒーやクロム、メイプルにとっては少々キツい仕様だ。

何せ、HPが回復しないと言うことは、コーヒーは【魔槍シン】と【聖刻の継承者】、メイプルは【身捧ぐ慈愛】は実質使えないからだ。HPを対価に発動するスキルはそれだけで自身の首を絞めてしまうからである。

クロムも生存能力を支える自動回復等の回復スキルが封じられるから、いつも以上に注意しなければならない。

 

『そして死亡するか、自身の画面に表示される帰還ボタンを押すと町の広場に戻るドラ!それじゃ、みんな頑張るドラよ!ガオー!!』

 

取り敢えずは今回のイベント内容を確認したコーヒーは画面を閉じる。

 

「今回のイベントは総合力が試されそうだな」

「ああ。回復無しは簡単に長時間探索出来ないようにする措置だろうが……」

「ジャングルを探索する時はいつも以上に気をつけないとな。うっかり癖で回復するから大丈夫と思いかねないからな」

 

技術は高いが、メイプルほど硬くはないクロムは自身に言い聞かせるように呟く。何せ、ユニークシリーズが手に入ってからは【体力盾】になっていたから、それを支えるスキルの使用不可は結構痛いからだ。

 

「ま、どっちにしろまずは入場券を手に入れないとな」

「だな。チケットを手に入れないとイベントに本格的に参加できないからな」

「そうね。十分にリフレッシュ出来たし、気合いは十分よ」

 

鬼畜仕様の鬼との戦闘からしばらくゆっくりしていたサリーもすっかりやる気を取り戻しており、本人の言う通り気合いは十分である。

そのままいざ出発!というタイミングでメイプルが扉を開けて入ってきた。

 

「お、メイプルも来たのか」

「今日から探索?」

「うん、久しぶりに頑張ってみる!」

 

メイプルもモチベーションを取り戻して気合いは十分のようである。

サリーは今回のイベントをメイプルに説明する為に少し残り、コーヒー、クロム、カスミの三人は一足先にフィールドへと赴く。

 

「【孔雀明王】」

 

コーヒーは新スキルで空を飛んでフィールドを移動していたが。

 

「今日は専用アイテム集めに専念するか。何枚かあれば連続で挑めるしな」

 

コーヒーは孔雀の翼で空を飛びながら、雲型のモンスターを狩っていくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

翌日。

チケットを三枚手に入れたコーヒーはさっそく一枚目のチケットを取り出した。

 

「それじゃ……使用」

 

コーヒーがチケットを使用するとその体を光の渦が包んでいく。

そのまま光は空へと伸びてうっすらと消える。

 

コーヒーを包んだ光が消えると、そこは町の中ではなくイベント専用フィールドのジャングルだった。

高い木が何本も並び、聞こえる音は木の葉が風で揺れる音くらいしかない、とても静かなフィールドであった。

 

「周りには誰もいないか……まあ、当然だよな」

 

何せ、今回の探索はスタート地点が本当にランダムなのだ。

ギルドメンバーと合流して探索……というのもあまり現実的ではない。

 

「取り敢えず進むか。迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)

 

何にせよ、探索しないと何も得られないのでコーヒーはステータスを強化しつつジャングルの中を歩き始める。

探索を始めて数分、コーヒーは比較的大きな赤い花を見つける。

 

「あれはモンスターか?それとも素材アイテムか?一体どっち……あ」

 

遠目からでは判別出来なかったコーヒーは、先日ミキから貰ったアイテム――指定したモンスターの情報を閲覧できるアイテムを取り出した。

 

「これではっきりする……と」

 

コーヒーは虫眼鏡の形をしたそのアイテムを使用すると、赤い花のステータスが表示される。どうやらモンスターのようだ。

 

「取り敢えず、ドロップ目的で倒すか……放つは轟雷 形作るは天の宝玉 仇なす者に雷球を落とさん―――弾けろ、【スパークスフィア】!」

 

【口上強化】した【スパークスフィア】で赤い花のモンスターを吹き飛ばすと、甘い香りがふわりと広がっていく。

それと同時に茂みが揺れる音、木の葉のざわめく音、何か重いものが移動しているような音などが静かだったジャングルに響き始める。

しかも、それらの音はどんどん大きくなってきている。

 

「おいおい、まさか……」

 

それらの音にコーヒーの顔が引き攣っていく中、鳥や狼、蜘蛛や蟷螂、動く植物、さらに苔むした岩で構成された巨人等、様々なモンスターがコーヒーを取り囲むように姿を現した。

 

「……最悪だ」

 

およそ十メートル先にいるモンスターの群れに、コーヒーは本当に嫌な顔となる。

モンスターが集まった原因が、あの赤い花が放ったであろう甘い香りだと容易に想像できたからだ。

 

「こうなったら……【クラスタービット】!!―――舞え、【雷旋華】!!」

 

コーヒーは【クラスタービット】をメタルボードにし、【雷旋華】を発動しての強硬突破を選択する。【孔雀明王】での飛行は翼が邪魔となって細かな飛行が出来ないからだ。

 

【雷旋華】で強引に包囲網を突破するも、甘い香りに誘われて集まったモンスター達は逃がさないと言わんばかりにコーヒーの後を追いかけ始める。

 

「やっぱり追いかけてくるよなぁ!?」

 

コーヒーはそう叫びつつ、クロスボウを連射し、【スパークスフィア】や【サンダージャベリン】を放って追いかけてくるモンスターを吹き飛ばしていく。

数分後、甘い香りに誘われたモンスターを無事に殲滅したコーヒーは息を深く吐いた。

 

「……赤い花は今後一切無視しよう。何度もモンスターに囲まれるのは本当にキツい」

 

HPが回復できない状況で大量のモンスターに何度も囲まれるのはキツい。赤い花からも、その赤い花から放たれた甘い香りに誘われたモンスター達からも大したアイテムをドロップしなかったことから、無駄な消耗戦になりかねない。

 

「……上空からダンジョンらしき場所を探すか?」

 

メタルボードなら小回りが利くし、空からある程度の辺りを付ければ探索も容易になる筈。

そんな考えでコーヒーはメタルボードを操作してジャングルから飛び出す。

 

「あー……ほとんどが木で覆われて隠れてるな。ん?」

 

そう呟いていたコーヒーの視界にジャングルを突き破るように建っている石作りの塔が映る。

高さはたぶん、ビル七階程。屋上にあたる場所には何もなさそうだ。

 

「……取り敢えず調べるか」

 

何かしらのダンジョンの雰囲気を感じ取ったコーヒーは上空からその塔へと近づいていく。

塔屋上には何もなく、中へと続く階段さえもない。

そのまま木々が生い茂っているジャングルへと降りて塔の周りを確認すると、扉のない入り口が一つだけあった。

 

「ん?入り口の近くに何か刻まれているな」

 

コーヒーは入り口のすぐ横に刻まれた文字を確認していく。

 

【塔に足をつけぬ者は元の場所へ返される】

 

「これは……何かの制限か?」

 

取り敢えずコーヒーはメタルボードから降り、塔の中へと入る。

中は塔の外見と同じく石作りで何もない。ただただ広い部屋で向かい側には上へと続く階段がある。

 

「取り敢えずこのまま―――」

 

コーヒーはそう言って一歩踏み出した瞬間、地面が爆発した。

 

「うおわっ!?」

 

もろに爆発を受けたコーヒーはHPを削られ、地面を転がっていく。

すると今度は天井から氷柱がいきなり降ってくる。

 

「嘘だろおい!?」

 

コーヒーは咄嗟に【クラスタービット】を自身の頭上に屋根となるように操作して氷柱の雨を防ぐ。

 

「ここはトラップ地獄かよ……」

 

このダンジョンのコンセプトを理解したコーヒーはむくりと身体を起こす。こんなトラップがあるのなら、少なくともこの塔には何もないということはないだろう。

 

「……試しに宙を飛んで行くか。例の文字の意味を確認するためにもな」

 

コーヒーは【クラスタービット】をメタルボードしてその上に乗る。

 

「それじゃあ、ここまま―――」

 

コーヒーの独り言を遮るように、部屋いっぱいに魔法陣が展開され、コーヒーはその光に呑まれる。

光が消えると……町の広場に戻されていた。

 

「……ルールを破ったら強制送還されるのか」

 

コーヒーは次からは飛行移動はしないと決め、HPを回復してから二枚目のチケットを使うのであった。

そして、例の塔に再び挑戦し……釣天井によって死に戻りする羽目になるのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方その頃。

 

「なーにかないかなっと」

 

コーヒーと同じくジャングルに来ていたサリーは身軽な様子で走り回っていた。

倒木を飛び越えてひょいひょいと進んでいく中、視界の端に何か見慣れないものがあったような気がして立ち止まる。

 

「んー?あれは……」

 

サリーは目を細めて遠くを見つめる。

鮮やかな緑の先に僅かに白い何かが見える。だが、流石に距離があり過ぎてそれが何なのかは分からない。

 

「こういう時【遠見】があったら簡単に分かったのになー……取り敢えず、行ってみようか」

 

サリーはダガーを抜くと茂みをガサガサと揺らして道なき道を進んでいく。

そうして近づくと見えたものの正体がはっきりした。

 

「うげ……蜘蛛の巣。糸を使うタイプの蜘蛛と戦うのは苦手なのよねぇ」

 

サリーは顔を顰めて歩みを止める。過去に蜘蛛の巣に捕まって、そのまま死に戻りした過去があるからだ。

 

「……一先ず確認だけはしようかな?ヤバそうなら逃げ―――」

 

その瞬間、サリーの背筋に悪寒が走る。

そのゾッとした本能のままにサリーはその場から飛び上がって距離を取ると、直前までサリーがいた場所に大きな蜘蛛がズシンと地面を響かせて降り立った。

しかも、その大きな蜘蛛はただの大きな蜘蛛ではなかった。

 

「アラクネって……本当に最悪なんだけど」

 

その蜘蛛の頭部に当たる部分には不気味な顔の女性の上半身が一体化しているのだ。サリーの言う通り、その姿はまさにアラクネだ。

どう見てもヤバそうな相手である。

 

「その上、逃がしてくれそうにないわね……」

 

サリーは苦虫を噛み潰したような表情で周りを見る。

いつの間にか、お手玉くらいの大きさがある蜘蛛達が周りの木々を繋ぐように白い糸を壁のように、現在進行形で張り巡らせているのだ。

それも絶対に引っ掛かるように。

 

「これだから、糸を使う蜘蛛のモンスターは嫌いなんだよね……」

 

サリーは苦い表情のまま、ダガーを構える。

幸い糸に捕まったわけではなく、逃亡出来なくなっただけ。

 

なら、戦って勝つだけだ。

サリーは意を決して、アラクネとの戦闘に望むのであった。

 

 

 




サリーはアラクネと戦う羽目になりました
何故原作通りの大きな蜘蛛にしなかったのかだって?そんなの決まっているだろう?
原作より強化したサリーでは簡単に倒せてしまうからだ!!
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