スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


塔の攻略へ

「サリーか……ちょっと今、ジャングルにある塔の攻略に行き詰まってしまって……な」

 

サリーに気づいたコーヒーは顔を上げて答える。その目は虚ろとなっており、表情が死んでしまっている。

 

「そうなんだ……ちなみにその塔ってどんな感じなの?」

 

サリーのもっともな質問に、コーヒーは散々やられた記憶を思い出しながら答え始める。

 

「塔の中はトラップだらけ。少し歩けば床から毒霧や鎖、爆風が炸裂し、天井からは氷柱や鉄球、釣天井まであったんだ。特に吊り天井は死亡確定のトラップだ」

 

実際、落ちてくる天井を【クラスタービット】で受け止めると【クラスタービット】のHPはじわじわと減って最後には光となって消えたのだ。

その間にコーヒーは強硬突破を試みたが、トラップによって動きが封じられ、そのまま死に戻りする羽目となった。

 

「ふーん、そんなにトラップだらけなら、飛んで無視したらいいんじゃない?ほら、CFには【クラスタービット】があるし」

「それも無理。塔のルールで空を飛べば強制送還される。通り道も同様にアウト。【孔雀明王】でも浮遊状態になったら数秒後に例の魔法陣が起動して町の広場に戻されたんだぞ」

「……あ、そうなんだ」

 

飛行や通り道を確保しても強制的にジャングルから追い出されるダンジョンギミックに、サリーは何とも言えない表情となる。

 

多分、メイプルやコーヒーのようなぶっ飛んだ行動への対策の為に用意したギミックだと想像がついたからだ。

ちなみにサリーも【孔雀明王】の存在は知っている。その時の感想は「今度は鳥かー……」である。

 

「ちなみにブリッツでの移動は?」

「そっちは対象外。けど、魔法トラップはテイムモンスターにも機能するから結果は同じだった」

「【電磁結界】は?」

「トラップの中にはスキルを封じるものまであった。それで次のトラップに引っ掛かって死に戻り」

 

これはコーヒーも知らないことだが、魔法トラップには防御貫通攻撃や固定ダメージを与えるものもある。だから、強硬突破は自身の首を絞めるだけでしかない。

コーヒーはVITが低いので、その事実に気づくことはないだろうが。

 

「しかも、塔の内部は挑む度に変わっているんだ。見た目が同じでもトラップの位置が変わっているから、苦労して作ったマップも全く役に立たない。毎回罠に掛かってダメージを負って、回復も出来ないから最深部に到達する前に罠で何度も死に戻りする羽目になったんだ」

 

即死の釣天井はもちろん、蓄積したダメージで力尽きたり、部屋全体を覆う毒霧にやられたり、火炎地獄にやられたりと散々な目に合わされ続けたのだ。

 

何より一番質が悪いのが、どこにどの罠があるのか分からないことだ。中には形状そのものが変わって迷宮のような部屋になっていた場合もあり、その場合は丸ノコや壁から槍、ギロチンモドキ等の物理トラップが豊富だった。

 

「それらに加えて、モンスターが徘徊している場合もあるんだ。モンスター自体はそこまで強くないが、ノックバック攻撃の上に範囲も広いんだ。どこにトラップがあるか分からないから回避もままならないし、ノックバックで飛ばされたら、もれなくダンジョンの罠の餌食。本当に難易度が高過ぎるんだよ……」

「うわぁ……本当にかなり難易度が高いダンジョンね」

 

そんな鬼畜仕様のダンジョンにサリーは今度は同情する目でコーヒーを見やる。

 

「正直、これ以上の挑戦は時間の無駄になりかねない。もうこの辺りで塔への挑戦を止めるしかないかと考えている。悔しいけどな」

 

コーヒーはそう言って再び机に突っ伏す。こうも連敗記録を更新し続け、チケットも無駄に消費している為そう考えるのも仕方ないだろう。

 

このまま塔に挑戦し続けるより、他の場所を探索した方が効率的。何より今回のイベントではMP増加スキルが手に入るのだ。魔法を使うプレイヤーとしては喉から手が出るほど欲しいスキルである。

 

「そのトラップだらけのダンジョン……私も挑戦してみようかな?」

「……勝算があるのか?」

 

サリーの呟きにコーヒーは確認するように問いかける。

 

「うん。多分、魔法トラップはジャングルで手に入れたスキルでやり過ごせると思うわ」

「マジか……」

 

何度も返り討ちにあったダンジョンをサリーが攻略出来る可能性を突き付けられたコーヒーはショックを受けて再び机に突っ伏す。

 

仮にサリーが攻略して情報を持ち帰っても、ダンジョンの性質から道中の情報は無意味。攻略したければサリーが手に入れたスキルを手に入れるしかないだろう。

 

「ちなみにそのスキルは?」

「【魔力感知】。ボス級のモンスターがドロップするスキルよ」

「そのモンスターは?」

「アラクネ。多分、エリアボス」

 

サリーのその情報に一度は希望を見出だしたコーヒーは再び心にダメージを負う。エリアボスなら再ポップする可能性が低く、仮に再ポップしてもジャングルは本当に広いのでそのアラクネを探し出すのは骨が折れるからだ。

そんなコーヒーに、サリーはある提案を持ちかけた。

 

「CF。その塔の攻略……一緒にやってみる?」

「……どうやって?今回のイベントはパーティーは組めないし、転移先もバラバラ。合流地点も決められないから実施不可能だぞ?」

「大丈夫よ。その辺りも考えてるから。それで、どうする?」

「……お願いします、サリーさん。一緒に例の塔の攻略を手伝って下さい」

 

敬語でお願いする辺り、本当にプライドをかなぐり捨てて攻略したいコーヒーにサリーは思わず苦笑してしまう。

 

「てっきり少しは悩むと思ったわ」

「一人で彼処を攻略するのは無理だと嫌と言うほど理解させられたので」

 

どうやらへし折れる寸前だったようだ。

どれだけ悪辣なダンジョンなのかとサリーは思いつつも、向こうでの合流手段をコーヒーに話していくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

場所は変わってジャングル。

 

「……本当に合流できたな」

「ミキのアイテムのおかげでね」

 

無事に合流できたコーヒーとサリーは少し苦笑気味に呟く。

サリーが提示した方法。それはジャングルの木々の天辺まで登り、サリーが発煙筒のようなアイテム【誘惑の筒】で赤い狼煙を上げて存在をアピールするというものだ。

 

今のサリーには【糸使い】があるので、蜘蛛の糸を巧みに使って簡単に木の天辺に登れる。

それをスキルで空を飛んだコーヒーが見つけ、一直線に駆けつけたのである。

 

「【誘惑の筒】は周囲のモンスターを誘き寄せるから、使いどころは限られているけどね」

「それはそうだが……一つ聞いていいか?サリー」

「何?」

「恥ずかしくないのか?」

 

【孔雀明王】で空を飛んでいるコーヒーは、お姫様抱っこされているサリーに至極真っ当な疑問をぶつける。

 

「運営から公開処刑されたから今更よ。それに、【クラスタービット】は温存しておいた方がいいしね」

 

対してサリーは何てことのないように答える。

サリーも本音を言えば結構恥ずかしいが、コーヒーにも言った通り運営に公開処刑されて今更感があるし、【クラスタービット】も極力温存しておきたい。

 

幸い【孔雀明王】には回数制限がないので、移動手段としては一番最適である。

そうこう話している内に例の塔が見え始めてくる。

 

「あれが例の塔?」

「ああ」

 

サリーの質問にコーヒーは頷き、塔の壁に手が触れられる距離で【孔雀明王】を解除する。

 

「【糸使い】【右手:糸】」

「【アンカーアロー】」

 

コーヒーとサリーはそれぞれの糸を塔の壁に張り付け、何回かそれを繰り返して安全に地面へと降り立つ。

その直後。

 

「やっと現れたなシーエフゥウウウウウウウウウッ!!」

「ここで会ったが百年目だぁああああああああああっ!!」

「その首置いていけぇ!!【ファイアボール】ゥッ!!【ウィンドカッター】ァアアアアアッ!!」

「今日がお前の命日ダァアアアッ!!【パワースラッシュ】ゥウウウッ!!」

 

茂みから槍使い、ハンマー使い、魔法使い、剣士が飛び出て、憎悪を張り付けた血眼の表情でコーヒーに襲い掛かってきた。

 

「誰だよお前ら!?【スパークスフィア】!!」

 

いきなりの襲撃にコーヒーは驚きつつも、速攻で放った【スパークスフィア】で一網打尽にする。

 

「「「「ぎゃああああああああああっ!!!」」」」

 

四人のプレイヤーはあっさりと吹き飛ばされ、HPバーを全損させる。

 

「覚えてろぉおおおおおおっ!!」

「例えこの俺が倒れても第二、第三の俺が―――」

「リア充は絶対にぶっ殺して―――」

「し―――サリーさんとイチャイチャしやがってぇえええええええっ!!!」

 

そんな言葉を最後に、彼らはジャングルから消えていくのであった。

 

「……何、今の?」

「俺が聞きたい」

 

サリーの疑問にコーヒー自身も本気でそう答える。

 

「というか、サリーとイチャイチャなんてしてないんだが……」

「それは同感ね。確かに一緒に行動することが増えてるけど、単にゲームをしているだけなのにね」

 

当人達に自覚がなかった。

お姫様抱っこ、一緒に食事……端から見れば舌打ち案件である。

 

その上、クラスメイトなのに本当に気づかれなかった彼等は……凄く哀れであった。

一先ず、謎(?)の襲撃者達を退けたコーヒーは気分を切り替えるように息を吐き出す。

 

「それでは、頼りにさせてもらいます」

「ふっふっふ、任せたまえ」

 

ビシッと敬礼して頼み込むコーヒーに、サリーも少し乗って言葉を返す。

そして塔の入口を潜って中へと入り、広々とした部屋の入口へと立つ。

 

「そういえば、二人きりでダンジョンに挑むのは初めてね」

「言われてみれば確かに」

 

サリーの言葉にコーヒーは確かにと頷く。

 

「それじゃ……【魔力感知:左目】」

 

サリーは早速スキルレベルが上がった【魔力感知III】を発動して部屋を見渡す。すると、床や壁のあちこちに赤い靄が見える。

 

「うわ……魔法のトラップがあちこちにあるわね……これで物理ギミックのトラップもあるんだから、本当に鬼畜ね」

「ああ。にしても……そのスキルの発動中は瞳が紫に変わるんだな」

 

サリーの呟きに同意しつつ、オッドアイとなっている事を指摘するコーヒー。

 

「……それは無視しなさいよ。厨二病患者一号」

「ゴハァッ!?」

 

久々の厨二病患者扱いに、コーヒーは胸を押さえて蹲る。メンタルに120のダメージ!!

ついでにサリーのメンタルにも40のダメージが入っている。理由は……黒歴史が壁の向こう側から囁いているからだ。

 

『呼んだ?呼んだ?』

「呼んでないわよ!!」

 

思わず幻聴にツッコミを入れてしまうサリーだが、誤魔化すように咳払いしてからまだ蹲っているコーヒーに顔を向ける。

 

「それじゃあ、予定通り私が先頭を行くわ。物理トラップの方は任せたわよ」

「……分かった」

 

何とか復活したコーヒーは素直に頷き、サリーを先頭にして一階の広場に足を踏み入れる。

サリーは五歩歩くとその場で立ち止まる。

 

「赤い靄の大きさからして飛び越えるのは無理か……左側は見た限り赤い靄の突き当たりが多そうだから、右側を迂回するのが妥当ね」

 

【魔力感知】で魔法トラップがしっかりと見えているサリーは通れそうなルートを選定し、そのまま先導で進んでいく。

 

「そういえば【クラスタービット】で罠を誤爆できなかったの?」

「物理トラップは確かに誤爆させられたけど、魔法トラップの方は誤爆しなかった。【クラスタービット】で床をガンガン叩いて進んでいたら、【クラスタービット】で叩いて無反応だった床が爆発したからな。そこから連鎖的に他の罠に掛かって死に戻りという結果だった」

「……本当に徹底してるわね」

 

そうしてサリーの先導で罠に一度も引っ掛かることなく、二階への階段に辿り着いたコーヒーとサリーは階段を上がって二階へと進むのであった。

 

 

 




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