スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


漆黒の飛竜

ワイバーンはコーヒー達を視界に収めて早々に尻尾をしならせ、遠心力を利用して刃のような棘を同時に幾つも飛ばしてきた。

 

「連なり守れ、【多重障壁】!!」

 

フレデリカが何枚もの障壁を展開するも、障壁はその棘によってすべて破壊される。

だが、フレデリカの障壁によって勢いは減少して簡単にかわせられる。

 

「爆ぜろ!【炎帝】!!」

 

ミィが得意の炎球をワイバーンに向けて飛ばすも、ワイバーンは俊敏な動作で意図も簡単に避けてしまう。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!!我が矢は不浄の楔―――【鏃の毒】!!」

 

コーヒーは【名乗り】でステータスを底上げし、【シャーウッドの森】に内包されているスキルの一つ【鏃の毒】を発動させる。

 

この【鏃の毒】はランダムではあるが、一分間自身の放つ矢に状態異常やデバフが付与されるスキルである。

だが、ワイバーンは木々を足場に縦横無尽に駆けてコーヒーの矢の雨さえも避けてしまう。

 

「本当に素早いな!」

「ああ!加えてジャングルすべてがヤツの足場で非常に戦いづらいんだ!!」

 

コーヒーの愚痴にミィが同意している間もワイバーンは木々を駆け、弾丸の如くコーヒー達に飛び掛かる。

 

「舞え!【雷旋華】!!」

 

コーヒーは攻防一体の雷属性魔法【雷旋華】を発動してカウンターを狙うも、ワイバーンは翼がついている前足をはためかせて強引に制動をかける。

 

「同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

「爆ぜろ!【炎帝】!!【連続起動】!!」

 

一瞬の停滞にフレデリカとミィが魔法の弾幕を放つも、ワイバーンは口から螺旋渦巻く風のブレスを放って相殺してしまう。

 

「【七式・爆水】!!」

 

そのタイミングで【糸使い】で木を登ってワイバーンの頭上を取ったサリーが、落下しながら高ノックバック効果のある斬撃を右の前足に叩き込む。

 

【貌なき王】で完全に姿を消していたサリーの一撃を弾幕の防御に意識を向けていたワイバーンが避けられる筈もなく、滞空のバランスを崩したことでそのまま地面へと落下していく。

 

「姿が見えないけどナイスだよサリーちゃん!!同時に弾けよ、【多重雷弾】!!」

「ああ!滾れ!【噴火】!!【連続起動】!!」

「矢は煙となって足元から迫る―――【茂みの煙】!!」

 

サリーが作ったチャンスを逃すまいと、フレデリカは杖から幾つも展開した魔法陣から金色の雷球を、ミィはワイバーンの落下地点から火柱を次々と立ち昇らせ、コーヒーはランダム付与の煙を放って容赦なくワイバーンに攻撃を仕掛ける。

 

雷球は落下中のワイバーンに次々と当たり、連続で起こる火柱も容赦なく呑み込み、青い煙が地面から噴出し、ついでとばかりに星も落ちてきて、ワイバーンに手心を加えずに攻撃を続けていく。

 

「うわ……まるで集団リンチね」

【糸使い】で空中にぶら下がっているサリーは眼下の光景に対して軽く引き攣っている。

 

即席パーティーではあるが、互いの能力をある程度把握しているトッププレイヤーなら合わせることも不可能ではない。

そんな猛攻にHPバーが七割を切ったワイバーンに変化が訪れる。

 

「ビィアアアアアアアッ!!!」

 

ワイバーンが甲高い咆哮を上げると、火柱と煙が吹き飛ばされる。

火柱と煙を吹き飛ばしたワイバーンは魔法陣を自身の足元に展開して風の刃を無差別に連続で放ち始めた。

 

「【左手:糸】!【三式・水鏡】!!」

 

当てずっぽうな攻撃を放ち始めたことを認識したサリーは蜘蛛糸を消しつつ、水の盾を展開して落下しながら防いでいく。

コーヒー達の方も【クラスタービット】を壁にして難なく防いでいた。

 

「魔法も使えるのかよ、あのワイバーン」

「だが、足が止まっているのならチャンスだ」

 

MPポーションでMPを回復していたミィは不敵に笑い、奥の手の一つを切る。

 

「万物の根源 象徴たる炎 我が仇敵を繋ぎ止めし絶対無敵の軛となれ―――閉じ込めろ!【火炎牢】!!」

 

【口上強化】と【詠唱】のみでミィは一日1回しか使えない魔法【火炎牢】を発動させる。

ワイバーンを中心に噴き出した炎はそのまま檻の形を形成。ワイバーンをその中へと閉じ込めた。

 

「輝くは不屈の雷光 残響する雷吼は反逆の証 雷呀の鎖と為りて一切合切を打ち砕け―――迸れ!【リベリオンチェーン】!!」

 

コーヒーも続くように【リベリオンチェーン】を発動。雷の鎖で瞬く間にワイバーンを縛り上げていく。

 

「一斉に吹け!【多重風弾】!!」

 

フレデリカも大量の魔法陣を展開して風の弾丸を次々とワイバーンに喰らわせていく。

 

「朧、【影分身】!!【四式・交水】!!」

 

サリーは朧に指示を出して自身の分身を作り出し、十字の飛ぶ斬撃をワイバーンに放つ。

 

「サン―――」

 

十字の斬撃も受け、残りHPが半分を切ったワイバーンにコーヒーが追撃を放とうとした瞬間、ワイバーンは再び甲高い咆哮を上げ、炎の檻と雷の鎖を吹き飛ばしてしまった。

 

「どうやらあの咆哮は、魔法を強制的に解除する能力を持っているみたいだな」

「ああ。どうやらそのようだ」

 

【火炎牢】と【リベリオンチェーン】を強引に解除されたことにコーヒーとミィがそう呟く中、ワイバーンの身体に変化が訪れる。

黒い体毛から鋭い両刃の刃のような鱗が次々と顔を覗かせていき、尻尾からも例の棘が大量に顔を覗かせる。加えて両目も赤く発行している。

 

「うわー……分かりやすいくらい、凶悪な見た目に変わったねー……」

「あれじゃ下手に近づけないわね。下手したら触れただけでもダメージが入りそう」

 

【貌なき王】が解けて姿が露となったサリーがそう呟いて刃まみれとなったワイバーンに視線を向けると、ワイバーンは先ほどよりも俊敏な動作で突撃してきた。

 

「【氷柱】!!」

 

サリーがワイバーンの進行を遮るように氷の柱を出現させるも、ワイバーンは跳躍して回避。木々を足場にして再度突撃してくる。

 

「飛ばせ、【爆炎】!!」

 

ミィが【爆炎】を放ってワイバーンを吹き飛ばそうとするも、ワイバーンは左の前足を振るって爆風を切り裂いて無効にしてしまう。

そのまま、右の前足の刃をミィに叩き込もうとする。

 

「【フレアアクセル】!!」

 

ミィは【フレアアクセル】で緊急離脱。コーヒーとサリー、フレデリカは自分達が狙いではなかったこともあってワイバーンの突撃自体は簡単に回避する。

 

「くっ―――」

 

狙われたミィは直撃こそ避けられたが、ワイバーンの刃が右足に僅かに当たってダメージエフェクトが弾けてしまった。

 

「掠っただけで二割も持っていかれるとは……だが―――!?」

 

自身のHPを確認したミィは苦い顔となるもまだ許容範囲と言い聞かせて地面に着地しようとするも、右足に上手く力が入らずにその場に崩れ落ちてしまう。

そんなミィに、ワイバーンが猛烈な勢いで迫っていく。

 

「【多重水壁】!!」

 

フレデリカが幾重もの水の壁をワイバーンの進路に形成して進行を妨害しようとする。

だが、ワイバーンはその水の壁を強引に突き破ってミィとの距離を詰めていく。

そのまま飛び上がり―――棘だらけの尻尾をミィに叩きつけようとした。

 

「防御!!」

 

その前にコーヒーが【クラスタービット】をミィの正面に展開。棘だらけの尻尾の叩きつけを防ごうとする。

本当なら【アンカーアロー】で引っ張りたいところではあったが、《イチイの弓》によってSTRが大きく下がっているので引っ張り切れない可能性が高い。確実に守るには【クラスタービット】の防御しかない。

だが、【クラスタービット】の浮遊盾は高ノックバックの攻撃ゆえか弾き飛ばされてしまった。

 

「【超加速】!!」

「速めよ【加速】!!」

 

その間に装備を元に戻したサリーが【超加速】を使ってミィの元へ駆け寄る。フレデリカもバフをサリーにかけて更にAGIを上昇させる。

そのお陰で、ワイバーンが尻尾をもう一度叩きつける直前でサリーはミィを担いでその場からの離脱を成功させた。

 

「済まない、助かった」

「どういたしまして。それより動ける?」

 

ミィのお礼をサリーは受け取りつつ、状態を聞く。

 

「同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

「穿て、【サンダージャベリン】!!」

 

その間、コーヒーとフレデリカがワイバーンの注意を引き、サリーとミィに意識を向けさせないように仕掛けていく。

 

「……やはりダメージを受けた足に思うように力が入らん。HPは減っていないが……ダメージエフェクトが消えていない。ステータスの欄を確認したら【出血】という状態異常だそうだ」

「初めて聞く状態異常ね。状態からして、行動を制限するタイプのようね」

「ああ。おそらく腕に受けたら武器を持てなくなると見ていいだろう。加えて、付与率は100%だそうだ」

 

これはある意味麻痺よりも厄介な状態異常だ。麻痺の場合は何回か攻撃を当てる必要がある場合があるが、こちらは一回だけで確実に入る。

その間も、ワイバーンは周りの木々を切り裂きながら容赦なくコーヒーとフレデリカに攻撃を仕掛けていく。

 

「幾つも輝け、【多重光弾】!!」

「潜れ、【地雷】!!」

 

フレデリカは光球を同時に幾つも放ち、コーヒーはワイバーンのすぐ足下の地面に罠を設置する。

ワイバーンはその光球をひらりひらりとかわすも、【地雷】へと誘導され、踏み抜いてしまう。

地面から蒼雷が弾け飛び、まともに受けたワイバーンは麻痺して動けなくなってしまう。

 

「よし!我が矢は不浄の楔―――【鏃の毒】!!」

「ナイスだよ!同時に燃えよ、【多重炎弾】!!」

 

コーヒーは【鏃の毒】で、フレデリカは【多重炎弾】を放って追撃を仕掛けていく。

 

「【氷柱】!!」

「縛れ、【炎縄】!!」

 

サリーは【氷柱】をワイバーンの身体を遮るように作り出し、ミィはダメージこそ入らないが状態異常を確率で付与できる拘束系の炎魔法【炎縄】でワイバーンの身体を縛って動きを封じていく。

 

「サリー!!」

 

MPポーションでMPを回復していたコーヒーの掛け声に、サリーはすぐに意図に気づいて頷く。それを見たコーヒーは《イチイの弓》を構えて詠唱を始めていく。

 

「森の恵みは圧政者の毒 我が墓標はこの矢の先 その道は栄光も名誉もなき荊為り―――」

 

コーヒーが詠唱する間、麻痺が解けたワイバーンは自身を戒める拘束を解こうと必死に暴れていく。

 

「そうはいかないよ!【多重障壁】!!」

 

フレデリカはそうはさせまいと【多重障壁】をワイバーンに向けて発動。上から胴体を抑え込むように展開して動きを制限する。

 

「猛毒と弱体は爆心 麻痺と石化は必中 火傷と凍傷は癒えぬ傷 呪縛と封印は抹殺 制限と暗闇は不浄の毒―――」

「【大海】!【古代ノ海】!!」

 

コーヒーが詠唱を続ける中、サリーは【大海】と【古代ノ海】を使ってワイバーンにデバフを更にかけていく。

 

「毒傑は深緑の森より湧き出流り 弔いの樹はその牙を研ぎ澄ます!―――限界を超えし蒼き雷霆よ解き放て!【大樹の祈り】!!」

 

詠唱が完成し、新たな魔法が解き放たれる。

コーヒーが矢をワイバーンの足下に放つと、地面に突き刺さった矢を中心にメキメキと木の枝が幾つも伸び、瞬く間にワイバーンを枝の中へと呑み込んでいく。

 

「「…………」」

 

ミィとフレデリカが言葉を失う中、ワイバーンが完全に形成された大樹の中へと呑み込まれた。そして、深緑の煙が溢れ出て―――爆発した。

 

「……やっぱり【雷帝麒麟】の三倍増加は痛いか。この分だと新しい体装備を用意した方が良いかもな」

「これ見ても【普通】に感じちゃうなんて……やっぱり毒されてるなぁ」

 

【皐月の加護】で増加してなかったら確実に足りなかった【大樹の祈り】の消費量に対して呟くコーヒーと、複雑な表情で立ち込める土煙を紫の左目で見やるサリー。

 

そのサリーの左目には……赤い靄は写っていない。

そして完全に土煙が晴れると……ワイバーンの鱗や刃の翼がそこかしこに散乱していた。

 

「……倒せたの?」

「そのようだな……」

 

ワイバーンに勝てたと確信したフレデリカとミィは脱力してその場に座り込んだ。

 

「ありがとねー。今回は本当に助かったよー。またおかしな方向に進化していたようだけど」

「ああ。あれは私達だけでは勝てなかっただろう。私からも礼を言わせてくれ」

「どういたしまして」

「それじゃ、アイテムを回収しようか」

 

フレデリカとミィの感謝の言葉を受け取りつつ、コーヒーとサリーは地面に落ちているアイテムを回収していく。

 

「【刃竜の鱗】……結構落ちてるからレア度はあまり高くないかもな」

「こっちは……うわ」

 

一枚の鱗を拾ったサリーは説明欄を見て軽く引いた表情となる。

 

「どうしたサリー?何かまずいものがあったのか?」

「いや……今拾った【刃竜の逆鱗】という素材アイテムが一つしか使えないって記載されていたから……」

 

ミィの質問に歯切れ悪くもサリーは答える。

何せ、【刃竜の逆鱗】は一つしか使えない素材アイテム。これが意味することは一つだけである。

 

「あー、高性能の装備が作れる素材アイテムかー」

 

オーダーメイドのユニーク装備だとは明言せずに、強力な装備が作れるとだけ口にしたコーヒーの言葉にサリーは頷く。

 

「あー、そうなんだー。じゃあ、それはサリーちゃんが持ってっていいよー」

「ああ。先に見つけたのはサリーだからな」

 

フレデリカとミィはそれを聞いてもたかることはせずにあっさりと所有権を譲り、アイテムの回収に努めていく。

 

「ま、二人もああ言ったし、それはサリーのもんでいいだろ。というか、金、足りるか?」

「……少しキツいかな?それに、少しでも性能を良くしたいから他の素材も集めておきたいしね」

 

サリーはそう言って【刃竜の逆鱗】を自身のインベントリにしまう。

 

「お、おおー!スキルの巻物が落ちてたよー!!」

 

そのタイミングで、フレデリカははしゃいだ声で地面に落ちていた巻物を拾う。

 

「巻物は……一つだけか。どんなスキルなのだ?」

「えっと……うわ。これ、AGI上昇系統のスキルだ。私じゃ意味ないし……ドレッドに譲ろうかなー?」

「まあ、先に見つけたのはフレデリカだし、どうするかは本人の自由だからな」

「そうね。くれくれはマナー違反だしね」

「ありがとねー!皆はこの後どうするー?」

 

フレデリカはそう言って自身のインベントリにしまい、次の行動を問いかける。

 

「私は一度ジャングルから出るしかないな。この状態異常はHPを回復しないと解けないようだからな」

「俺は……まだ探索を続けるつもりだ」

「私もCFと同意見かな?ジャングルの中央にあるMP増加スキルは出来れば手に入れておきたいしね」

「そっかー。私はもう手に入れているから行かないけどねー」

 

どうやらフレデリカは既にジャングルの中央で手に入るスキルを入手済みのようだ。さすが、トッププレイヤーの一人である。

 

「フレデリカは?」

「私は先日見つけた塔の探索かなー?」

 

その言葉にコーヒーとサリーはぴくりと反応する。

 

「……どんな塔なんだ?」

「入口に塔に足をつけない者は元の場所に返されるって壁に書かれていた塔だよー?」

 

その瞬間、コーヒーとサリーの目が死んだ。

 

「……えっと、二人とも?どうしてそんな顔をするの?」

「フレデリカ……悪いことは言わない。一人で彼処を探索するのは止めとけ」

「そうね。彼処は一人じゃ無理よ」

「もしや……二人はその塔に挑んだのか?」

 

ミィの質問にコーヒーとサリーはこっくりと頷き、塔の中はトラップだらけだと説明していく。同時に強制送還のギミックも。

 

「……何、そのムリゲー」

「中は完全なランダム……それも悪辣なトラップが多数……と」

「攻略に行くのは自由だが……よほど幸運じゃないと厳しいぞ」

「ええ。挑むならパーティーじゃないと厳しいわよ」

 

一先ず、フレデリカは下見の為に塔へ向かい、ミィは一時帰投、コーヒーとサリーはジャングルの中央へ向かう為に別れるのであった。

 

ちなみに、フレデリカは初挑戦で大量の宝箱に目が眩み、手短な宝箱を開けた瞬間、大量のミミックによって死に戻りする羽目になるのであった。

 

 

 




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