スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


防御特化と奏者、劇場へ行く

コーヒーとサリーがジャングルの中央へ向かっていた頃。

 

「うぅー……失敗したなぁ……」

 

町の広場でメイプルが深い溜め息を吐いていた。

その理由は単純、HPが回復出来ないジャングルで間違って【身捧ぐ慈愛】を発動してしまい、一時帰投を余儀なくされてしまったからである。

 

加えて【暴虐】も使ってしまっているので今日はもう使えない。【影ノ女神】は対峙したボスモンスターの効果によって装備を強制的に変更されたお陰でまだ未使用ではあるが。

 

「うーん……チケットはまだあるし……もう一回行こうかな?」

 

メイプルは少し悩んだ末、十分に休んでからチケットをもう一枚使ってジャングルに再挑戦することを決めた。

帰還から一時間後。

 

「それじゃ……使用!!」

 

HPと気力を十分に回復し、装備も元に戻したメイプルは、チケットを使って再びジャングルへと赴く。

 

くどいようだが、出現場所はランダム。ダンジョンにこそ飛ばされないが、どこに転移させられるかは運次第。

つまり、何が言いたいのかと言うと。

 

「あれ?目の前に魔法陣があるよ」

 

転移して早々にこうなることがあると言うことである。

メイプルの目の前で展開されている魔法陣は形こそ転移のものだが、発光色は金色だ。

 

「どこに繋がっているのかな?」

 

メイプルがその魔法陣の近くでしゃがんで眺めていると、近くの茂みががさがさと揺れる。

メイプルがそちらに顔を向けると、その茂みから姿を現したのはサクヤだった。

 

「あ、サクヤちゃん!」

「メイプルさんですか。貴女もこの転移の魔法陣を探していたのですか?」

 

サクヤのその言葉にメイプルが分からずに首を傾げていると、サクヤが律儀に説明していく。

 

「掲示板の情報では、ジャングルの何処かにある金色に輝く転移の魔法陣の向こう側はパイプオルガンが付設された劇場だそうです。そこではゴーレムの大群と戦う羽目になるとも」

「……つまり、サクヤちゃんはパイプオルガン狙いで?」

「イエス。そういうメイプルさんは?その様子からして偶然見つけたのですか?」

 

サクヤは頷きながらメイプルが此処にいる理由を問いかける。

 

「えーと……転移して早々にこの場にいたと言いますか……」

「……アンフェア。リアルラックが高すぎます。出来ることなら私に分けて下さい」

 

サクヤはそう言って、ガシッとメイプルの両肩を鷲掴みにしてジト目を向ける。

サクヤは掲示板の情報から新しい音楽系統のスキルが手に入るかもしれないと考え、度重なる探索でようやくその魔法陣がある場所を割り出したのに対し、メイプルはスタート地点として此処に来れたのだから当然ではあるが。

 

「あはは……」

 

対するメイプルは困ったように笑みを浮かべるだけであった。

 

「……まあ、二割ほどのジョークはさておき、良ければ一緒に行きませんか?」

 

逆に言えば八割は本気だったサクヤはメイプルに一緒に挑戦しないかと提案する。

正直、サクヤ一人では厳しいと考えていたので今日は下見で済ますつもりだったが、色々な意味で規格外なメイプルが一緒なら一発クリア出来る可能性があるからだ。

 

「うん、いいよ!それじゃあ、一緒に行こう!!」

 

そんなサクヤの提案をメイプルはあっさりと受け入れ、二人は転移の魔法陣に乗って金の光に包まれる。

 

「おおー!金ぴかの劇場だー!!」

「イエス。形としてはローマ劇場ですね」

 

光が消え、転移した先は黄金と赤い装飾が施された半円形の形状をした劇場。観客席には誰も居らず、上を見上げれば青い空が広がっている。

 

一見すれば趣味が悪いように見えるが、実際は誰もが魅了させられる洗練された造りとなっている。

そしてその劇場の舞台上には……豪勢なパイプオルガンが鎮座していた。

 

「あれが目的のオルガン?」

「イエス。早速―――」

 

サクヤがそう言ってパイプオルガンに向かって一歩踏み出した瞬間、惚れ惚れするような音色がこの辺り一帯に響き始めた。

同時に観客席から剣や槍、弓や斧、様々な武器を持った金ぴかのゴーレム達が大量に現れていく。

 

「うわっ!?金ぴかのゴーレム達が此方に近づいてきてるよ!?」

「なら、素早く倒してしまいましょう。正直、早く弾きたいです!!【痺れる調律】!!」

 

何時になくやる気満々のサクヤは広範囲の敵に麻痺を与え、強めていくスキル【痺れる調律】の演奏を始めていく。

 

以前はサリーによって失敗に終わったが、今回は無事に発動してゴーレム達の動きを徐々に鈍らせていく。

 

「初代より受け継ぎし機械の力 我が武具を対価とし 三代目として此処に顕れん―――【機械神】!!【全武装展開】!!」

 

メイプルも【口上強化】込みで【機械神】を発動し、黒い刃と銃器、砲身とミサイルコンテナを展開する。

 

「【攻撃開始】!!」

 

メイプルが銃弾や砲弾、レーザーやミサイルを観客席のゴーレム達に向かって次々と放っていく。

ちなみに《女神の冠》を対価としたミサイルコンテナから繰り出されるミサイルは誘導ミサイルだ。

 

麻痺によって動きが鈍っているゴーレム達はメイプルの銃撃によって吹き飛ばされ、ついでに空から星が次々と降り注いで更にゴーレム達を吹き飛ばしていく。

 

【機械神】による銃撃も【彗星の加護】の星も攻撃力は固定されているが、【彗星の加護】は野外フィールドという縛りがあるからか、その攻撃力は【機械神】の銃撃よりも高い。

 

(……オウ。ある意味地獄絵図ですね。敵だと恐ろしいですが、味方だとこんなに頼もしいんですね)

 

サクヤは目の前で展開される蹂躙劇に対してそう思いながら演奏を続けていく。

だが、演奏を中断せざぬを得ない事態が襲いかかった。

 

「!?メイプルさん!!」

「え?―――うわっ!?」

 

演奏を中断したサクヤの呼び掛けにメイプルが振り返った瞬間、空から降ってきた光線がメイプルのすぐそばに突き刺さり、その衝撃でメイプルは軽く吹き飛ばされる。

 

ダメージ?もちろん0である。

見ればパイプオルガンから無数の光線が次々と上空に向かって放たれている。ついでに耳に聞こえてくるメロディも変わっている。

 

「あれもモンスターだったの!?」

「ノウ。パイプオルガンにHPバーはありません。つまり、フィールドギミックです」

「あ!ホントだ!!でも、ダメージは受けてないから大丈夫かな?」

「ノウ。音楽が変わったことでゴーレム達の出現が緩やかになったことを鑑みるに、あれも奏でる音色で効果が変わると見て間違いありません。つまり、貫通攻撃も存在する可能性が十分にあります」

「うええっ!?」

 

サクヤの推察にメイプルは変な声を洩らす。

確かに最初はゆったりとした音色がいつの間にか荒々しい音色に変わっているから、サクヤの推察はあながち間違っていないだろう。

 

「なので、私がパイプオルガンを演奏してこの音を打ち消します。楽譜も鍵盤の前にありますから可能な筈です」

「じゃあ、お願い!―――【挑発】!!」

 

サクヤの提案にメイプルは素直に頷き、【挑発】を使ってゴーレム達の注意を自身に向けてサクヤへ向かわせないようにする。

 

サクヤはメイプルが注意を引いている間にサクヤはパイプオルガンの元へ駆け寄り、鍵盤の前に置かれていた椅子に座る。

 

「まずは音を確認して……楽譜も……」

 

サクヤはパイプオルガンの鍵盤の音を確認しながら、同時に楽譜の旋律も確認していく。

その間はメイプルが攻撃を続けてゴーレム達を吹き飛ばし、注意を引き付け続けていく。

 

「……楽譜を見る限り、途中からはループですね。旋律からして難易度はかなり高めですが」

 

鍵盤の音を確認し終えたサクヤは、楽譜とにらめっこしながらゆっくりとパイプオルガンを弾き始める。

 

サクヤはもちろん、パイプオルガンなんて弾いた経験はない。だが、趣味や部活動等でピアノやギター、フルート等、多くの楽器を弾いたことがあるサクヤは徐々に慣れていき、淀みのない音色を奏で始めていく。

 

「およ?何となく威力が上がった気がするよ!」

 

光線が止み、心なしか銃撃と星の威力が上がった気がしたメイプルは変わらずに銃撃を続けていく。

サクヤがパイプオルガンを掌握して十分後。金ぴかゴーレムの軍団はメイプルによってすべて倒されるのであった。

 

ピロリン♪

『スキル【黄金劇場】を取得しました』

 

「おお!新しいスキルだ!!」

 

本日二つ目の新スキルを手に入れたメイプルはニコニコ顔で新しいスキルを確認していく。

 

 

===============

【黄金劇場】

MPを400消費することで自身を含めた半径十メートル以内にいる者達をスキル専用フィールドへ強制転移させる。発動までには十秒かかる。

スキル発動中、敵は【STR】【VIT】【AGI】【INT】の内、ランダムで選ばれた二つのステータスが半分にさせられ、HPの回復が一切出来なくなる。

【黄金劇場】の発動中はスキル【皇帝権限】が使用可能となる。

―――――――――――――――

※【皇帝権限】

自身が使用できるスキルが無対価、条件無視、制限無視で使用することが出来る。ただし、そうして使ったスキルは50時間使用不可能となる。

―――――――――――――――

転移してから五分後、もしくは【終演】と告げることで元のフィールドへと帰還する。

使用回数は一日1回。

口上

我が才と情熱を見よ 我を讃える万雷の喝采を聞け 咲き誇る華と共に此処に開演せよ

===============

 

 

「MPの消費量が凄いなぁ……」

 

説明欄を見る限り、かなり強力なスキルだが消費MPが多すぎる。

当然、VIT極振りのメイプルのMPでは全く足りない為、このスキルはスキルスロットに付与するしかないだろう。

 

「グッド。パイプオルガンを召喚、演奏できるスキルをゲットできました」

 

サクヤの方もお望みのスキルを手に入れることが出来たようだ。

 

「良かったねサクヤちゃん!」

「イエス。メイプルさんはどうでしたか?」

「私も新スキルを手に入れたよ!パイプオルガンじゃなくてフィールドへの強制転移だけど」

「オウ。私の方はパイプオルガンだけなので、行動で取得出来るスキルが違うようですね」

 

サクヤはそう呟きながらMPポーションを取り出して自身のMPを回復していく。

 

「では早速……【天上の鍵盤楽器】」

 

サクヤが新たなスキルを発動した瞬間、彼女の背後から鍵盤のないパイプオルガンが光と共に現れる。同時に鍵盤のみがサクヤの正面に展開される。

 

「おおおおおっ!!」

「楽譜の種類は……ステータス上昇、魔法攻撃と様々ですね。要練習ですね」

 

目を輝かせてはしゃぐメイプルをサクヤはスルーしつつ、楽譜の効果を確認したサクヤはパイプオルガンをその場から消し去る。

 

「それじゃあ私も……」

 

メイプルも披露しようと、【黄金劇場】を鎧のスキルスロットに付与する。

幸い、サクヤは画面で楽譜を確認し続けていたので気付くことはなかったが。

 

「【黄金劇場】!!」

 

スキルを付与し終えたメイプルは早速新スキルを発動。メイプルを中心に金色に輝く巨大な魔法陣が展開され、メイプルとサクヤは魔法陣の光に包まれる。

 

光が収まると……赤い薔薇の花弁が辺り一面に舞っている、黄金輝く美しい意匠の劇場の中心に佇んでいた。

 

「…………」

「おおおおおっ!!良いよ!凄く良いよ、これ!!」

 

その光景にサクヤは放心したように絶句。メイプルは目を輝かせて先程よりもはしゃいでいた。

 

「ついでに……【皇帝権限】!【影ノ女神】!!」

 

美しい劇場にテンションが上がっていたメイプルは、そのテンションに任せて【皇帝権限】を発動。それで【影ノ女神】を発動条件を無視して発動。【影ノ女神】モードになってしまう。

 

「――――」

 

そのでたらめさにサクヤは口を顎が外れそうなくらいに開けて絶句。漆黒の花嫁衣装となったメイプルはその場でぴょんぴょん跳び跳ねて、テンションが更に上がっていく。

 

メイプルはそのまま調子に乗って、【皇帝権限】で【身捧ぐ慈愛】や【暴虐】、【毒竜(ヒドラ)】に【捕食者】、【機械神】まで発動させてしまう。

 

それら全部、代償も回数制限、MPの消費等をすべて無視して。

そのあまりにもぶっ飛んだスキルの前にサクヤは完全に思考停止。茫然自失となるのであった。

ちなみに【黄金劇場】が終了した後……

 

「しまったぁあああああっ!!つい調子に乗っちゃったぁあああああああ―――ッ!!」

 

【皇帝権限】の代償でほとんどのスキルが50時間使用不可能となった事に、メイプルが頭を抱えて叫んだのはお約束であった。

 

 

 




メイプルはまたしてもラスボス化が進んだ(テッテレー
というか、勝てるの?これ?
感想お待ちしてます
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