そんなこんなでイベント当日。
『ガオ~!それでは、第一回イベント!バトルロワイヤルを開始するドラ!』
集まったプレイヤー達の頭上に現れた、マスコットキャラのようなヘンテコドラゴンがイベント開始の合図を告げる。
「「「「うおおおおおおおおおっ!!!!!!」」」」
それに伴い、あちらこちらから怒号が響き渡る。皆さん、大変ノリノリである。
「うおおおおおおおおっ!!」
せっかくなのでコーヒーもこのノリに乗っておく。逆に乗らないと場に水を差して白けさせてしまうからだ。
『それでは、もう一度ルールを説明するドラ!制限時間は三時間。ステージは新たに作られたイベント専用マップドラ!ポイントは倒したプレイヤーの数と倒された回数、被ダメージと与ダメージで算出されるドラ!ポイントが高い上位十名には記念品が贈られるから、皆頑張るドラよ?』
ヘンテコドラゴンの説明を捕捉するなら、参加者はランダムで今回のイベント専用マップに飛ばされる。相手プレイヤーを探したり、逃げたりするのも戦略の一つとなってくる。
ちなみに、現在のコーヒーのステータスはこうなっている。
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コーヒー
Lv.44
HP 435/435(+48)
MP 153/153(+23)
STR 34(+30)
VIT 5(+16)
AGI 92(+63)
DEX 63(+38)
INT 22(+36)
頭装備 疾風のゴーグル 【HP+10 AGI+15 DEX+5】
体装備 震霆のコート・雷帝麒麟 【VIT+10 AGI+20 INT+10】
右手装備 雷霆のクロスボウ・閃雷 【STR+30 DEX+20 INT+10】
左手装備 (装備不可)
足装備 黒雷のカーゴパンツ 【HP+8 MP+8 DEX+13】
靴装備 迅雷のブーツ 【AGI+28 INT+14】
装飾品 フォレストビークイーンの指輪 【VIT+6】
マジックグローブ 【MP+5 INT+2】
マジックリング 【MP+10】
スキル
【狙撃の心得VIII】【弩の心得VII】【一撃必殺】【気配遮断IX】【気配察知IX】
【しのび足V】【雷帝麒麟の覇気】【無防の撃】【ソニックシューター】【砕衝】
【アンカーアロー】【流れ星】【扇雛】【チェイントリガー】【跳躍V】
【壁走りV】【体術V】【連射IV】【魔法の心得III】【遠見】
【暗視】【狩人】【射程距離強化中】【釣り】【水泳IV】
【潜水IV】【採掘IV】【HP強化小】【MP強化小】【毒耐性中】
【口上強化】【名乗り】【MPカット小】【MP回復速度小】
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メイプルと別れた後で新しく手に入れた【狩人】のスキルは、モンスターへの与ダメージが10%増加とドロップ数が一つ追加なので、今回のイベントには役に立ちそうにない。
【扇雛】はスキルショップで購入した弓専用の攻撃スキルだ。放つと矢が8つに分身し、扇状に真っ直ぐ進むのだが、射程が通常の半分となるので近接時の迎撃用だ。
ちなみに値段は120万Gとかなりお高い。
そしてメンタルを容赦なくぶった斬った【名乗り】は……今回は【口上強化】も含めてバリバリ使うことにした。
もし上位入賞入りを果たし、これらのスキルは便利だという印象を広めれば……
『三ッ!二ィッ!一ッ!―――ゲーム、スタートドラッ!!』
ヘンテコドラゴンのカウントが終わり、同時にスクリーンに表示されていた数字も0となる。
その瞬間、コーヒーは光に包まれ、イベント専用マップへと転移された。
「ここは……どこかの森の中か」
コーヒーが転移させられた場所は樹木が生い茂り、所々に見上げるほど高い岩山が聳え立っている。
コーヒーにとっては、かなり良い場所に飛ばされたようだ。
「迸れ!
スキル【名乗り】を使い、自身のステータスを底上げする。幸い、周りに人がいないのでメンタルダメージは軽微だ。
コーヒーは強化されたステータスで、近くにあった岩山を【跳躍】と【アンカーアロー】を使って軽々と駆け上がり、少しの時間で天辺へと到達する。
「据えるは彼方 我が眼は万里の先を見通さん―――【遠見】!」
そして、【口上強化】で強化された【遠見】を使い、眼下を汲まなく探っていく。
そこで、何名かのプレイヤーを捕捉することが出来た。
「最初は……アイツにするか」
コーヒーは最初の相手を緑色の装備に身を包んだレンジャーっぽいプレイヤー―――ドレッドを最初の獲物として狙いを定める。
ドレッドは有名なトッププレイヤーの一人なので、ここで仕留めて出鼻を挫いてやるのが狙いだ。
「天翔る星よ 彗星となりて突き進まん―――【流れ星】」
スキル【流れ星】。初速が遅く、近距離だと避けられやすい攻撃スキルだが、徐々に加速していき、最高速度は10メートル地点以降で二倍となる。
もちろん、これだけでドレッドに当てられるとは思っていないので、コーヒーは手早く二射目を放つ用意をする。
「閃け雷光 天地を翔て彼方を撃ち抜け―――【閃雷】」
コーヒーが次に選んだのはクロスボウに元々付いていたスキル。この状態で矢を放てば、自身のAGIとDEX分、メートル単位で加算される。それも秒速で。
加えて【名乗り】でステータス強化されている上に【口上強化】も行っているから……二射目は弾丸並みの速度で襲いかかってくるのである。
そんな事実を知らないドレッドは、死角からの攻撃だったにも関わらずに身を捻って【流れ星】をかわすも、かわしたタイミングで放たれた【閃雷】を避けることはできなかった。
ちなみに頭に矢が突き刺さったドレッドはと言うと。
「弾速とか、ズリィだろ……」
そんな言葉を垂れて、光の粒子となってその場から消え去っていた。
一発で消えたということは【一撃必殺】が決まった証である。最も麻痺とスタンが効いていたので、その間に終わっていただろうが。
「さあ、容赦なく狩らせてもらうぞ?」
コーヒーはクロスボウを構え、手当たり次第に【遠見】で捉えた射程内にいるプレイヤーを岩山の天辺から撃ち続けていく。
当然、コーヒーの存在に気づいたプレイヤーが攻めに行くも、その前に撃ち落とされる、もしくは麒麟の魔法で無情に吹き飛ばされていく。
「放つは轟雷 形作るは天の宝玉 仇なす者に雷球を落とさん―――【スパークスフィア】!!」
「「「「うぎゃあああああああああ―――ッ!?」」」」
「ちくしょう!!厨二病患者のくせに手強い!!」
「何としてでもCFを彼処から引き摺り落とすんだ!!そうすれば、俺達にも勝機がある!!」
「厨二病患者じゃない!!それと、俺の名前はコーヒーだ!!迸れ!
襲い掛かるプレイヤーの無視出来ない言葉に反論しながら、時間切れとなった【名乗り】を再使用。
そのまま地面へと急降下しながら、【雷旋華】とクロスボウのヘッドショットでプレイヤーをキルしつつ、地面へと降り立つ。
「厨二病患者が自ら降りて来たぞ!!」
「このチャンスを逃すな!!一気に仕留めろ!!」
「だから厨二病患者じゃないと言ってるだろうが!!これは全部スキルだっつーの!!」
メンタルをいちいち傷つけてくるプレイヤーに、コーヒーは必死に反論しながらも、一気に殲滅する為に大技を使うことにする。
「輝くは不屈の雷光 残響する雷吼は反逆の証 雷呀の鎖と為りて一切合切を打ち砕け―――【リベリオンチェーン】!!」
MPを一気に消費して、コーヒーの足下に蒼色の魔法陣が展開される。
魔法陣から大量の雷の鎖が発生し、それが辺りを縦横無尽に駆け、相手プレイヤー達の攻撃を弾きながら縛り上げていく。
「サンダー!!」
コーヒーが叫ぶと、相手プレイヤー達を縛っていた雷の鎖が一気に放電。その場にいた二百人近いプレイヤーは黒焦げとなった。
―――観客席では。
「なんだよ、あれ」
「すんごい無双してるよね」
「ペインは当然として……痛い台詞を吐きまくっているCFと大盾のメイプルちゃんがヤバすぎる」
「そのメイプルちゃんもたまに痛い台詞を吐いてるよね……」
「ペインが一位だと思うんだけど……見た目の派手さではCFとメイプルちゃんがぶっちぎりだよな……」
「ちなみにCFって?」
「コーヒーというプレイヤーの略称だよ。ほら、名前が少しややこしいし」
「二人とも凄いわね~」
コーヒーとメイプルの二人が、他のトッププレイヤーとは別の意味で話題になっているのであった。
そんな観客達を他所に、イベント開始から二時間が経過する。
後一時間で全ての順位が決まる中、ヘンテコドラゴンのアナウンスが大音量で鳴り響いた。
『ガオ~!現在の一位はペインさん、二位はコーヒーさん、三位はメイプルさんドラ!これから一時間、上位三名を倒した際、得点の三割が譲渡されるドラ!三人の位置はマップに表示されるドラから、一発逆転が狙えるドラよ!それじゃあ、最後まで頑張るドラ!』
「二位か……ペインが一位なのはともかく、メイプルが三位かよ……」
ヘンテコドラゴンからもたらされた情報に、コーヒーは乾いた笑みを浮かべる。
「どうにも簡単には終わらせてくれないようだ」
「やった!私三位だ!」
ちなみにペインは危機感を感じない様子で呟き、メイプルは喜んでいた。
ついでにドレッドは、運悪くメイプルの
「しかし、マップに表示されるとなると……おっ、ここからだとメイプルが一番近いのか」
はてさて、どうすべきか。
無視すべきか、それとも欲を出して狙うべきか。
「いたぞ!」
そうこう考えている内に大勢のプレイヤーがわらわらと集ってくる。
「うげぇ……流石に囲まれると面倒だから……適当に撒きながらやるか。迸れ!
【名乗り】でステータスを上げ、【壁走り】でさっさと岩山へと登り、そこからヘッドショットで次々と撃ち抜いていく。
「チクショウ!何であんなに命中率がいいんだよ!?」
「厨二病患者のくせに!!」
「本当にしつこいぞ!!」
本当に一々メンタルを傷つけてくるプレイヤー達に、コーヒーは苛立ちを発散するように矢を放ち続けていく。
そんな中、一人のプレイヤーが軽快な動作で岩山を駆け、矢の雨をかわしてコーヒーに迫って来ていた。【扇雛】でさえも両手に持つ短剣で弾き飛ばしてだ。
「チィッ!」
コーヒーは舌打ちして手に持っていたクロスボウで、接近と同時に振り下ろされた二振りの短剣を受け止める。
「リベンジマッチかよ?」
「俺のガラじゃねえけどな。でも、やられっぱなしは癪だろ?CF」
コーヒーの言葉にそのプレイヤー―――ドレッドは口調こそ気怠げだが、その眼は普段より一層鋭くなっている。
「確かに、な!」
コーヒーは同意しながらドレッドに足蹴を喰らわせ、その勢いを利用してそのまま地面へと落下していく。
本当は略称に関して文句を言いたいところではあったが。
「逃がすか!」
ドレッドはそう言って、滑り落ちるように岩山を下って追いかけていく。同じように飛び下りないのは、魔法攻撃も視野に入れた結果だろう。
「【閃雷】!!」
コーヒーは出だし重視で、【口上強化】なしで【閃雷】を放つ。狙いはブレーキを掛けている左足だ。
「チッ!」
ドレッドは舌打ちをし、降るのを中断して矢の一撃から逃れる。
「本当に一番適した対応ばかりしてくるな。ヤになるよ、本当に」
コーヒーは愚痴にながらも地面に着地。その瞬間を狙って他のプレイヤーが一斉に襲いかかってくるも。
「纏うは迅雷 刻むは万里を描く軌跡 金色の雷獣となりて駆け抜けん―――【ライトニングアクセル】!!」
【口上強化】込みで魔法名を告げた途端、コーヒーの体が蒼い雷に包まれ、同時に凄まじい速度で駆け出し始めていった。
直線上に走り続ける限り、AGIを大幅に上げる魔法【ライトニングアクセル】。
その魔法で先程までいた岩山を【壁走り】を使って再び駆け上がっていく。
魔法使いより魔法使いやっているというツッコミはなしだ。スキルを有効活用して何が悪い。
「何!?」
雷を纏って岩山を文字通り走ってくるコーヒーに、再び滑り落ちてきていたドレッドは驚きの声を上げる。
そんなドレッドに、コーヒーは手心を加えることなくクロスボウを突きだし、ドレッドの腹にめり込ませる。
そして、そのまま止まることなく天辺へと走り続けていく。
「連なるは魔弓の演舞 その繋がりを以て射抜き続けん!【チェイントリガー】!!―――【連射】!!」
その状態でコーヒーは二つのスキルを発動。
二つのスキルの合わせ技でドレッドの腹に、同じ箇所に当たる度に威力が上がる攻撃を13連射で叩き込む。
【無防の撃】と合わさったこの一撃は―――並大抵では耐えきれはしない。
「あーあ、二連敗かよ……」
HPを削り切られたドレッドは諦めたように呟くと、光の粒子となってその場から再び消えていった。
コーヒーは止まることなくそのまま駆け抜け、再び岩山の天辺へと辿り着いた。
「本当にトッププレイヤーとの戦闘は疲れる……」
それからの残り時間は、相手プレイヤーを岩山の天辺から、ヘッドショットを片っ端から決めていくだけとなった。
『ガオ~!終了~!結果は一位から三位の順位変動はなかったドラ!それでは、これから表彰式に移るドラ!』
ヘンテコドラゴンがイベント終了の合図を告げた途端、コーヒーの視界が白く染まる。
最初の広場に戻ってくると、マイクを持ったヘンテコドラゴンが上位三名を壇上に登るよう促されたので壇上に登る。
此処まで来たのだから、最後まで開き直ってやる!!といった心境でコーヒーは前を見て立ち続ける。
「次は、コーヒーさん!一言どうぞドラ!」
ヘンテコドラゴンからマイクが渡されたので、コーヒーはマイクを受け取って一言。
「今回自分が二位になれたのは、【口上強化】と【名乗り】のスキルのお陰もあります。なので、次のイベントまでに取得することを皆さんにお薦めします」
この時、コーヒーとフレンド登録している観客席にいるイズと、イベント十位のクロムは同じことを思った。
今までで一番いい顔をしている、と。
「ガオ~!貴重な一言、ありがとうございましたドラ!最後に、メイプルさん!どうぞドラ!」
マイクを返されたヘンテコドラゴンが感謝を伝え、三位のメイプルにマイクを渡す。
マイクを受け取ったメイプルは深呼吸して一言。
「えっと、一杯防御できてよかったでしゅ」
噛んだ。
盛大に噛んだ。
メイプルは噛んだ恥ずかしさのあまり、後ろを向いて顔を覆ってしまった。
コーヒーもそんなメイプルに同情の視線を送るのであった。
ちなみに、四位入賞を果たした赤い髪の女性プレイヤー、ミィは……
「ミィ様!ミィ様もあのような詠唱はされないのですか!?」
「……私には必要ない。我が【炎帝】は詠唱なぞせずとも十分に燃やせる」
「そうでしたか!差し出がましいことを申し上げてしまい、申し訳ありませんでした!ミィ様!!」
「気にするな。その程度、特に気にすることでもない」
同性でも惚れ惚れするような口調での内心では……
(無理無理無理無理無理ぃッ!!唯でさえ演技してるのが恥ずかしいのに、その上で
カリスマ性が溢れる悠然とした佇まいとは裏腹に、滅茶苦茶泣いていた。
感想お待ちしてます