スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


捻れた大樹とナマケモノ。互いの成果

メイプルが盛大に失敗していた頃。

コーヒーとサリーは協力して襲いかかるモンスター達を撃退しながら進んでいた。

 

「んー……今のところ、目ぼしいアイテムは落ちないわね」

「普通はこんなもんだろ。ああいうのばかりだと、ゲームバランスが崩壊しかねないだろ」

「それもそうね」

 

コーヒーの言い分にサリーは確かにと納得し、回収したアイテムを自身のインベントリにしまう。

 

「一応、例の素材アイテムでどんな装備を作るんだ?」

「んー……装飾品かな?今のところ《絆の架け橋》しか装備してないからね」

 

サリーの装備はブーツ以外はユニーク装備だ。オーダーメイド製のユニーク装備なら、ブーツにして全身をユニーク装備にするのも面白そうだが、それよりはスキル付きの装飾品の方が現実的とサリーは考えていた。

 

(ステータス補正はAGIよりSTRかな?最近は火力不足を感じていたし……形状は黒の指ぬきグローブが良さそうね。それに見合う素材は……)

 

サリーが装備についてあれこれ考えていると、まるで途中から溶けてしまったかのように、不自然にぐにゃりと曲がった木々が見え始める。

 

「ようやく目的の場所に到着したな」

「そうね。ちゃちゃっと攻略して手に入れちゃいましょ」

 

掲示板の情報で場所の特徴は把握していたコーヒーとサリーは歪んだ木々の森の中へ入ろうとする。

だが、その前に新たな人物達が姿を現した。

 

「あ!コーヒーさんにサリーさん!!」

「CFにサリーか。お前達とも邂逅遭遇するとはな」

 

笑顔で手を振って存在をアピールするシアンと涼しげながら微笑を浮かべるテンジアにコーヒーとサリーも笑みを浮かべて返す。

 

「シアンもMP増加スキルを手に入れに来たの?」

「はい!その道中でテンジアさんと会って、せっかくなので一緒に来ました!!」

 

シアンはINT極振りの魔法使いなので、MP関係のスキル取得は必須事項。【漏れ出る魔力】で前もってMPをポーションで貯蓄出来るが、勿論ポーションはタダではないのであまり多用は出来ない。

その為、シアンはINT強化だけでなく、MP関連のスキル取得も必須事項となっていた。

 

「テンジアの方は?」

「私の方は素材集めだ。強力な長剣を手に入れるという大願成就の為にな」

 

テンジアの方はスキル集めよりも素材集めに精を出しているようだ。

確かにこのジャングルにはナル○モドキのワイバーンもいたから、そういったボスクラスのモンスターを狩れば強力な装備を作れる素材は手に入る可能性はあるだろう。

 

「それなら、一緒に行動するか?人数が多ければある程度は楽になるし、探索もしやすいだろ?サリーもいいか?」

「私も良いわよ。このフィールドじゃHPは回復できないし、協力しあえるならした方がいいしね」

 

コーヒーの提案にサリーは反対することなく頷く。

シアンとテンジアもコーヒーの提案にあっさりと頷き、四人は歪んだ木々の森の中へと進んでいく。

しばらく進むと、何本もの太く大きな木が絡み合ってできた大木を見つける。

 

「あ、木の根元に入口と上へと繋がる木の階段がありますね」

「んー……天辺に何かあるみたいだから、取り敢えず登ろうか」

 

【魔力感知】でその大木を調べたサリーの言葉に頷き、四人は慎重に木の階段を登っていく。

何事もなく階段を登り終え頂上に辿り着くと、大きな木の枝の先に緑色の魔法陣が輝いていた。

 

「ダンジョンの入口だな、あれは」

「そうね。間違いなくダンジョンの入口ね」

「私もそう思います」

「異口同音だな。いきなり戦闘となる可能性もあるがな」

 

四人はそう言いながらコツコツと音を鳴らして枝の上を歩いていく。

そうして接近した、キラキラと輝く魔法陣に触れて別の場所へと転移される。

転移した先は不気味な程に静かな森の中だった。

 

立ち並ぶ木、青々とした葉といういきいきとした森にも関わらず、小鳥の囀りも木の葉のざわめきも、自分達の足音さえ鳴らない程、無音に支配された場所であった。

 

「不気味なくらいに静かだな……」

「まるで幽霊が出てきそうなくらい静かですね……」

 

森の様子を窺っていたシアンの呟きに、サリーはビクッと反応する。

 

「……流石にゴースト系統のモンスターは出ないだろ。出ても擬態系のモンスターだろ」

「そ、そうよ!決められたルートを進めば、モンスターには一度も遭遇しないしね!!」

 

若干遠い目となったコーヒーの言葉に、サリーは自身に言い聞かせるように頷く。

ちなみにサリーはいつもの情報収集で幽霊が出ないことは知っている。なのに何故反応したのかは……罠だらけの塔の出来事を思い浮かべてしまったからだ。

ついでにコーヒーもヘッドロックで感じた腕の温もりを思い出してしまい、ひたすら無心になろうと必死だったが。

 

「正直、この場所は一知半解……正しいルートを通ればモンスターに一度も遭遇せずに済むのは知っているのだが、そのルートを正確に把握していない。サリーは?」

「私も似た感じかな?ボスモンスターがいる場所の特徴は覚えているけど」

「……ごめんなさい。私もそこまで詳しく調べてないんです」

「俺も同じく。ある場所の攻略に躍起になっていたからな」

「「「「…………」」」」

 

全員がここエリアを正確に把握していなかった事が分かり、微妙な空気が漂っていく。

 

「……取り敢えず、ボスモンスターについて確認するか」

「……そうね」

 

ある意味現実逃避とも言えるコーヒーの提案に、サリーを含めて全員が頷いてこのエリアのボス情報を確認、共有していく。

 

ボスモンスターは木で構成された160センチほどの人間。ツタと木の葉でできた帽子を被り、同じく木で構成され花のツタ巻きついた杖を持っているとのこと。

 

そのボスの一番の特徴は、現在の装備をインベントリの中の装備とランダムに入れ替え、戦闘終了まで固定するという魔法を使ってくることだ。

 

「装備の強制変更か……俺やサリー、テンジアは避けられるだろうが、シアンがキツいな」

 

AGI0のシアンでは回避行動すらままならない。その為、シアンの所持している装備次第では弱体化しかねない。

 

「そうね。シアンはどんな装備を持ってるの?」

「え~と、実は初心者装備とイズさんに作って貰った装備しかないんです……おしゃれしてみたいですけど、お金はポーション代に消えて……」

「「「…………」」」

 

微妙な空気再び。

やはりシアンにMP関連のスキル取得は必須であった。

その後はテンジアとサリーが恐怖センサーや勘をフルに発揮して正規ルートを辿り、ボスモンスターもサリーに背負われたことで戦闘機となったシアンによって苦もなく倒されるのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

罠だらけの塔とナル○モドキ、無音の森の攻略から数日が経過した頃。

カスミは今日もジャングルを探索していた。

 

「確か、この辺りが特殊なモンスターの遭遇場所だった筈だ」

 

カスミはそう呟きながら、周囲を忙しなく見渡していく。

カスミが口にした特殊なモンスターとは、掲示板で話題に上がっているモンスター達のことである。

そのモンスター達の強さはボスクラス。それもダンジョンで挑戦者を待つのではなく、ジャングルを徘徊してプレイヤーに襲いかかるという、少し変わったモンスター達だ。

 

その姿形は様々。大蛇だったり、城のようなゴーレムだったり、紅い虎だったりと本当に様々なのだ。

中には刃を生やした黒いワイバーンもいたそうだが、そのワイバーンはここ数日は誰も見かけておらず、誰かに倒されたというのがもっぱらな噂だ。

 

カスミはそのワイバーンがコーヒー達によって倒されたという事は情報を共有した際に知ったが。

そして、罠だらけの塔のMP増加スキル狙いでカナデとシアンも挑戦に向かったが、悪辣なトラップの前に全敗中である。

 

ついでにフレデリカも全敗中だ。最新の死に戻りは転移の魔法陣に触れた瞬間の水攻めだ。

さらにミィも挑戦しているのだが……こちらも言わずもがなである。

 

その為、カスミはその内の一体―――脇差しが背中に刺さっているナマケモノを誰かに倒される前に倒そうとこうして赴いたのである。

 

このナマケモノは特定の場所から動かず、見つける事自体は容易なのだが強さが鬼畜だと話題になっている。

さすがにあの鬼ほどではないだろうとカスミは考えていると、木の枝にぶら下がっているナマケモノを見つける。

 

「灰の体毛に背中に刺さった脇差し……間違いないな」

 

カスミは刀に手を掛けてそのナマケモノに近づこうとしたその時、ナマケモノに刺さっている脇差しが銀色の光を放ち始めた。

 

「!?」

 

カスミが警戒して居合いの構えを取った瞬間、カスミの周りに数えるのが億劫になる程の脇差しが宙に浮いた状態で現れ、その切っ先をカスミに向けていた。

 

「―――は?」

 

その光景にカスミの目が点になり、大量の脇差しはそんなカスミに構うことなく容赦なく襲いかかった。

 

「く―――ッ!!」

 

すぐに我に返ったカスミは自身に襲いかかる脇差しを必死に弾き飛ばしていく。

まるでシンの【崩剣】に似たスキルだが、数は遥かにこちらが上だ。

 

だが、脇差しの群れは十本で隊列を組んで順番に襲って来ているので、すべてを同時に操ることは不可能なのだろう。

なら、勝機はまだある。カスミはそう思ったがそれもすぐに吹き飛ばされた。

何故なら、脇差しがぶれたかと思った瞬間、カスミは十本の脇差しに身体を切り裂かれたからだ。

 

「!?」

 

そのモーションが【一ノ太刀・陽炎】と同じことにカスミが驚いていると、別の脇差しの隊列が今度は【四ノ太刀・旋風】と同じモーションで切り裂きにかかった。

 

「【始マリノ太刀・虚】!!」

 

HPが残り一割となっているカスミは避けきれないと判断し、自身の装備の耐久値を代償にして発動するスキル【始マリノ太刀・虚】でその場から消え、ナマケモノがぶら下がっている枝の上に現れる。

 

「【七の太刀―――」

 

カスミはナマケモノを枝から叩き落とそうと刀を上段の構えを取って振り下ろそうとするも、カスミに切っ先が向いていた脇差し達の刀身が文字通り伸びてカスミに迫る。

 

スキルのモーションに入ってしまっていたカスミは避けることも出来ず、伸びてきた刀身に体を貫かれたカスミは光の粒子となってジャングルから姿を消すのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

ナマケモノの遭遇からさらに数日。

カスミは今日もナマケモノの下に向かっていた。

あれからチケットを手に入れてジャングルに転移してはナマケモノに挑戦していたが、最後はあの伸びる刀身にやられてしまっている。

 

一度だけ地面に叩き落とすことに成功したが、刀身の長さが変わった脇差しの連続攻撃―――【終ワリノ太刀・朧月】を連想させる攻撃を捌き切れずに何度も受けてしまい、またしても返り討ちにあった。

幸い、ナマケモノはまだ誰にも倒されておらず例の場所にぶら下がり続けている。

 

「メイプルがいれば簡単に倒せるだろうが……」

 

VIT極振りのメイプルなら脇差しの攻撃をものともせずに【機械神】で倒せるだろうとカスミは考えている。

だが、転移場所はランダムの上に目印となるものも無いので特定の人物との合流はかなり絶望的だ。

 

「……まあ、無い物ねだりしても仕方がないな」

 

カスミはそんな考えを振り払うように頭を振り、ナマケモノを倒す為にジャングルの中を歩くのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

そうこうしている内にイベントは終了した。

 

「今回の成果はスキルと装備だったな。サリーは……かなりの成果だろ?」

「ええ。スキル四つと装備一つ、後は例の素材ね」

 

今回のイベントでサリーが一番収穫があったとコーヒーが思っていると、ギルドホームの入り口からメイプルが入ってきた。

 

「あ、もう来てたんだ」

「ああ。メイプルはジャングルでの成果はどうだった?」

「うーん……それなりにかな?」

「お、どんなの?」

「劇場!」

 

サリーの質問にメイプルが笑顔で答えた瞬間、サリーとコーヒーは一瞬だけ思考が止まった。

 

「……悪いメイプル。もう一回言ってくれないか?」

「……?劇場!」

「……そうか」

 

聞き間違いではないと分かり、メイプルがまたおかしなスキルを手に入れたと察した二人はどこか悟ったような表情となる。

そして、メイプルの口から【黄金劇場】の詳細が語られた。

 

「何、そのチートスキル……」

「絶対修正されるな……」

 

【黄金劇場】―――厳密には【皇帝権限】の凶悪すぎるスキルの効果にコーヒーとサリーは揃って遠い目となる。

何せ、自身が使えるスキルが文字通り自由に使えるのだ。【黄金劇場】と【影ノ女神】が組み合わさると……本当に逃げるしか打つ手がない。

 

「後、この階層で玉座も手に入れたよ!!」

「そっかあ……メイプルは王様……いや、女王様になっちゃったかあ……」

 

しかも、メイプルはこの階層でも新しいスキルを手に入れたようだ。

そのスキルは【天王の玉座】。

 

効果は召喚した玉座に座っている間、スキルを解除するか戦闘不能になるまでダメージを20%軽減し、HPも毎秒2%回復する上に、半径三メートル以内にいる自身を含めた存在の悪系統のスキルを使用不可能にするというものだ。

そのスキルが手に入った場所は雷が降り注ぐエリアの先。そこにいた光の王様を倒して手に入れたとのこと。

 

「あの時は【毒竜(ヒドラ)】や【悪食】が発動しなくて焦ったよー。それで【黄金劇場】を使って【皇帝権限】で無理矢理発動した【影ノ女神】で倒せたけどね!!」

「……絶対修正されるな」

「そうね……【皇帝権限】は確実に弱体化されるわね」

 

あまりにも呆気なく倒されたモンスターに同情しつつ、確実に弱体化となるスキルにコーヒーとサリーは天井を見上げて呟くのであった。

一方……

 

「やばい。次の階層の実装に合わせて【皇帝権限】を弱体化しないとやばい!!」

「本来は使いづらい、出番が少ないスキルを救済するためのものだったのに……」

「とりあえず、二回……いや、一回だけの回数制限を設けるぞ!」

 

悪ふざけ+不遇スキルの救済であったスキルを、運営は急いで修正するために動くのであった。

 

 

 




カスミがナマケモノに勝てたかは次回。
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