スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


解体と傘購入

互いの成果を話し終えたコーヒー達は、次の階層について話し合っていた。

 

「イベントも終わったし、また少ししたら階層が増えるかもしれないね」

「そうだねー、次はどんなところかな?」

「自然、機械、妖怪、雲だから……次は火山かもな」

 

コーヒーが思い浮かべるのは、噴火が常に起きている火山と鍛治が盛んな町が広がっている光景だ。

そういう場所は……ロマンが刺激されそうだ。

 

「だから、ここでやり残したことはやって……それで次に行こう?」

「やり残したことって……何だっけ?」

「クロムとカスミさんが見つけた雨がゆっくり降っているエリアか?確か……【雨水晶】というスキルの巻物が手に入るんだったか?」

「ええ。ついでに攻略情報も上がってるわ。ちなみに例の孔雀は鳥の形をしたホーミング性能を持った雷弾を放つスキルが手に入ると上がってたわ」

「……【孔雀明王】よりそっちを手に入れたかったな」

 

サリーの情報にコーヒーは溜め息を吐いて呟く。

自分だけ得られたスキルが違うのは、間違いなく三層の機械天使が関わっていると見ていいだろう。

あんな使いづらいスキルより、サリーが伝えたような使い易いスキルの方が良かった。

 

「そうかしら?確かに使いづらいけど、凶悪なスキルなのは変わらないでしょ」

「それもそうか……」

「雷のエリアは?」

「んー……そっちはいいかな?私じゃあまり役に立ちそうにないし」

「同感。どう見てもタンク向けのスキルだからな」

 

メイプルの【天空の玉座】は座らないと効果を発揮しない。つまり、回避が出来ないのでモンスターとプレイヤーの格好の的となるのだ。

つまり、コーヒーやサリーのようなプレイスタイルのプレイヤーには向いていないスキルである。

 

「そっか。じゃあ……」

 

メイプルが雨の降るエリアに今から行くか確認しようとしたところで、ガチャリとギルドの扉が開く。

部屋に入って来たのは……どんよりとした雰囲気を纏ったカスミだった。

 

「えっと、カスミさん……?」

 

明らかに元気がないカスミの様子に、コーヒーが何があったのかと声を掛ける。

俯いていたカスミがコーヒーの声に反応してゆっくりと顔を上げると……目が死んだ魚のようになっていた。

 

「CFにサリー、メイプルか……済まないが、今は一人にさせてくれないか?」

 

本当に一体何があったのか、本当にいつもと様子が違うカスミにコーヒー達はますます心配していく。

 

「えっと……カスミ?本当に何があったの?良かったら相談に乗るよ?」

「……そうだな。溜め込んでいては解決策も思い浮かばないからな」

 

メイプルのその言葉にカスミは頷くと、自身の画面を操作して何かを取り出す。

取り出したのは……半ばで折れた脇差しだった。

 

「この脇差しが原因なのか?」

 

コーヒーはカスミが取り出した脇差しを手に持ち、メイプルとサリーと一緒に詳細を確認していく。

 

 

===============

《折れた脇差し》

【ナマクラ】

【装備不可】

===============

 

===============

【ナマクラ】

自身が所有するすべての装備品の耐久値の減少が五倍となる。

このスキルは装備していなくても効果を発揮し、売却、譲渡、廃棄では手放すことは出来ない。

===============

 

 

「「「うわぁ……」」」

 

折れた脇差しが完全なお荷物であった事にコーヒー達は何とも言えない気分となる。

そして、カスミが落ち込んでいた原因が何なのかを察した。

 

「完全に呪いの装備だね……」

「ああ……《月夜の髪飾り》で幾ばくは軽減しているだろうが、それでも倍であることには変わらないんだ……」

「……どうやってこれを手に入れたんです?」

 

取り敢えず、解決方法を見出だす為にコーヒーはこれを手に入れた経緯を問い質す。

 

「この脇差しが背中に刺さったナマケモノからだ。何度も挑戦し、最後の挑戦となった戦いで苦し紛れに【跳躍】から【七ノ太刀・破砕】でこの脇差しを叩き割ったら……」

「それが手に入ったと」

 

サリーの言葉にカスミはこくりと頷く。

 

「ああ。その直後に体を大量の脇差しに刺し貫かれて死に戻りしたら……その脇差しがすぐ傍に転がっていたんだ。最初は嬉しかったのだが、中身を知った時はまさに絶望の淵へと叩き落とされた気分だ」

「うーん……CFはこの装備をどう見る?」

「あの時のマジもんの呪いのスキルを得た時も、その後のクエストで強力なスキルに変わったから……何かしらの方法で解決すると思うんだが……」

 

運営だって本当にただの嫌がらせでそんな物を実装したりはしないだろう。

武器の種類からして四層にヒントがあるかもしれないが、あれだけ広い町並みから探すのは困難を極めるだろう。

 

「取り敢えず、破壊してみるか?一応、破壊自体は可能のようだし」

「……正直、悩んでいるんだ。完全な枷だが、苦労して手に入れた戦利品には変わりはないからな……」

 

どうやらカスミもこの脇差しの破壊を検討していたようだ。

本当にどうするべきか悩んでいると、メイプルが思いついたように提案した。

 

「それなら、イズさんに見せたらどうなか?生産職のイズさんなら、何か分かるかもしれないし」

「「「……あ」」」

 

メイプルのその提案に、コーヒーとサリー、カスミは目から鱗が落ちた気分となる。

 

「確かにこの手の話は、まずはイズさんに相談するのが一番だったな……」

「そうね……この脇差しをどうにかする事に頭を回していたから盲点だったわ」

「ああ……イズが来たらすぐに相談しよう」

 

そうしてイズへ相談することは満場一致で可決し、少ししたらイズもログインしてきたのでメッセージを送信。

メッセージを受けてギルドに顔を出したイズに件の脇差しを見せた。

 

「これがメッセージにあった脇差しね……確かに利点が全くないわね。良かったら【解体】してみる?」

 

脇差しを眺めてから告げたイズの【解体】という単語にコーヒー達が首を傾げていると、イズは苦笑しながら説明を始めた。

 

「【解体】は【職人のレシピ】を取得した状態で【鍛治神の加護】を最大にした時に得たスキルよ。その効果は装備品やアクセサリーの解体。お金は結構かかる上に失敗すれば何も得られないし、成功しても全部戻ってくるわけじゃないけど……その装備に使用した素材に還元することが出来るのよ」

 

どうやらイズは新しいスキルを手に入れていたようで、そのスキルを使えば《折れた脇差し》を【解体】して素材を回収できるようだ。

 

「それで、どうする?費用は500万掛かるけど」

「すぐに頼む」

 

カスミは間髪入れずにイズに《折れた脇差し》の【解体】を依頼した。

カスミの依頼を受けたイズは早速工房に入り、《折れた脇差し》の【解体】を始めていく。

 

「これで失敗したら、大損害だよな」

「そうね。お金を払った挙げ句、何もなかったら……本当にキツいわね」

 

そんな会話を続けていると、作業が終わったのか、イズは石ころのようなアイテムを手にして立ち上がった。

 

「解体は無事に成功したわ。取り出せた素材は一つだけだけどね」

 

イズはそう言って手に持っていた石ころのようなアイテムをカスミに渡す。

それを受け取ったカスミはそのアイテムの詳細を確認していく。

 

「【暁の玉鋼】……この素材アイテムは一つしか使えない、と」

「どうやら【幻想鏡の欠片】や【神の鋼】と同じ素材……つまりはユニーク素材ね」

「ユニーク素材か……確かにその名称がしっくりくるな」

 

明確にそう記載されていたわけではないが、その素材で作ったアイテムが強力な装備として出来上がっているから強ち間違いではないだろう。

 

「それでどうする?補助装備としてなら脇差しが作れるけど?」

「補助装備に武器まであるんですか?」

「ええ。試しに一回作ってみたけど、特徴としてはステータス強化は無し。攻撃力は装備者のSTRの半分程度。普通なら飾りでしかないけど……ユニーク素材なら強力なスキルが付いてくるから大いに役に立つと思うわ」

 

イズの説明からして、武器としての補助装備はメリットはあまりなさそうだ。

ちなみに盾は本当に小さく耐久値も通常の盾より低いから、どちらかと言うとステータス強化の役割が強い。

 

「済まないが……さっきの解体の費用もあってお金がまったく足りないんだ……」

 

そんなイズとコーヒーに、カスミはどこか気まずそうな感じで現状を伝える。

ユニーク素材による作成費用は最低1000万ゴールド。解体費用と合わせたら合計1500万ゴールドと大出費である。

四層でかなり散財してしまったカスミとしては、さっきの解体費用もかなりの出費であったのだ。

 

「となると……しばらくは資金稼ぎか」

「ああ。後、作製に必要な素材集めもな」

「それじゃあ、カスミも一緒に雨がゆっくり降っているエリアに行く?」

「あそこか……そうだな。一緒に行こうか」

 

メイプルの誘いにカスミも丁度いい機会というのもあり、断ることなく素直に応じる。

 

「じゃあ、あそこへは四人で行こうか。と、その前に……」

 

サリーはそう言って自身の画面を操作して、インベントリから【刃竜の逆鱗】と幾つかの素材アイテムを取り出してイズに手渡した。

 

「イズさん。この材料で装飾品の指ぬきグローブを作って下さい。ステータスはSTR重視で」

「了解よー。……あら?この【刃竜の逆鱗】はさっきのと同じユニーク素材ね?お金は大丈夫?」

「はい」

 

サリーは作製費用もしっかりと払った後、コーヒー達と共にギルドの外へと出ていく。

 

「そういえば、カスミは持ってる?」

「いや、まだだ。イベントに集中していたからな」

「じゃあ、まずはそっちからか」

 

例の雨のエリアはゆっくり降っている雨に濡れると動きが鈍くなり、それが合図となって雨の砲弾が襲い掛かるギミックが存在している。

その鈍りは雨の砲弾を受けると解除されるが、そのダメージは強行突破を敢行するには無視できないほどだ。

その為、この町で買える傘の購入は必須事項である。

 

「……?」

 

メイプルは何を話しているのか分からないために首を傾げている。

そんなメイプルにサリーが問題として教え始めた。

 

「ほら、メイプル。雨が降っている時に使うものいえば?」

「えっと……か、傘?」

「正解!あのエリアを進むためには傘が必要なんだよ」

「だから私達は今から傘を買いに行くんだ」

「店の位置は知ってるし、値段もそんなに高くないからすぐに買えるぞ」

 

コーヒー、サリー、カスミが先頭を歩いてメイプルを案内してしばらく、四人は傘が売られている店へとやってくる。

店内には傘がところ狭しに並んでおり、種類や色、大きさまで様々である。

 

「どれにしようかな?」

「どれでも効果は同じだからねー」

 

そんなメイプルとサリーを他所に、コーヒーはわりとすぐ近くにあった少し大きめの黒い傘を手に取る。

 

「これでいいか。効果は同じだからな」

 

そんな感じでコーヒーはあっさりと傘を購入し、カスミとサリーも傘を購入……しようとしたところでメイプルが戻ってきた。

 

「……メイプル、何それ?」

 

戻ってきたメイプルの持っていた傘は全てのパーツがふわふわとした雲でできている、本当に傘なのか怪しい傘だった。

 

「ここ限定だって!」

「限定品に弱すぎだろ……」

「うっ……まあ、そうだけど……」

「それにしてもメイプル。ずいぶんと雲が大きい気がするんだけど?」

 

サリーの指摘通り、メイプル手にしている雲の傘は余裕で二人並んで入れるほどの大きさである。

 

「せっかくだからカスミと相合傘をしようかなって!!」

 

メイプルのその言葉に、どこか遠い目だったカスミも少し意地の悪い笑みを浮かべ始めていく。

その理由は……メイプルの意図を察したからである。

 

「……そうだな。例のエリアはボスしかいないからその間は相合傘でも問題はないな。出費も抑えられるしな」

 

何故かあっさりとメイプルの提案に乗ったカスミに、コーヒーはどこか嫌な予感を覚える。

その予感は、的中した。

 

「だから、コーヒーくんとサリーも相合傘で行こうよ!」

「メイプル!?」

 

まさかのメイプルの提案に、サリーは面食らった表情となる。

もし、メイプルが純白装備と【身捧ぐ慈愛】を発動して弓でも持てば……(悪魔な)恋のキューピッドを連想できたであろう。

 

「いやいや!普通に個別に傘を買えば―――」

「戦闘になればどちらにせよ傘はしまうしかない。なら、その間は個別でも相合でも問題はないだろう?」

「あるだろ!?」

 

主に精神的に!!

そんなコーヒーの思いを知らずか……否、知っていながらあえて無視しているメイプルとカスミは遠慮の欠片もなく相合傘を推奨していく。

 

「大丈夫だよ!ぴったりくっつけば濡れずに済むから!」

「問題はそっちじゃないでしょ!?」

「まあまあ。これ以上は時間を無駄に出来ないし、メイプルが傘を買ったらすぐに出発しよう」

「その間に傘が買えるだろ!?」

 

その後、周りの注目を集めてしまったことでメイプルが雲の傘を買ってすぐに退散する羽目となり、元凶たるメイプルとカスミによってコーヒーとサリー強引に例のエリアへ連れて行かれるのであった。

 

 

 




傘、男女がいればこのイベントは外せないよね!
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