スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


今回は仕方なし

サリーを保護し、メイプルとも合流できたコーヒーではあったが、メイプルにまとわりついた例の幽霊に対して少し頭を抱えていた。

 

「本当にどうしよう……出会って早々に嫌な予感がしたから【天王の玉座】を使っちゃったんだけど……」

「その判断自体は間違ってないな。触られるとAGIが減って、AGI0になると即死攻撃が飛んでくるからな」

 

AGI0のメイプルでは見つかってすぐに即死攻撃が飛んでしまうので、【天王の玉座】で幽霊のスキルを無効にしたのは間違いではない。

 

同時に、自力で脱出することは不可能となってしまったのである。

しかし、それもコーヒーが来たことで解決したが。

 

「とりあえず、追い払うか」

 

コーヒーはクロスボウをメイプルにくっついている幽霊に向けて構え、躊躇いなく引き金を引く。

矢が肩に刺さった幽霊は呻き声を上げるとメイプルから少し離れていく。

 

メイプルにくっついていた幽霊にはHPバーが存在しないので、倒すことは不可能。しかも、こちら側からは触ることは出来ない。

 

なのでこの幽霊を追い払うには純粋な物理攻撃ではなく、属性攻撃や魔法しかないのだ。

コーヒーはそれを何度も繰り返し、幽霊との距離をどんどん開かせていく。

 

「【クラスタービット】」

 

コーヒーは攻撃を続けながら【クラスタービット】を展開する。展開理由は攻撃ではなく移動の為である。

 

「砕くは雷槌 怒るは巨人の王 その戦槌で憎き仇敵を叩き潰せ―――砕け、【崩雷】!!」

 

コーヒーはVIT10%減少と麻痺とスタンが高確率で付与される【雷帝麒麟】の魔法【崩雷】を発動させ、幽霊の頭上から極太の杭の形状をした雷を叩き込んで押し潰した。

 

「……ぅぅぅ……」

 

【崩雷】をマトモに喰らった幽霊はダメージを受けずとも、麻痺とスタンの状態異常がしっかりと入り、その場から動けなくなった。

 

「よし、今の内に離脱するぞ。メイプルはすぐに【クラスタービット】に乗ってくれ」

「うん!でも、その前に……【天王の玉座】!!」

 

メイプルは一度玉座を消すと、【クラスタービット】の上に玉座を再び出現させる。そのまま玉座の上へと座った。

 

「こうすれば追い付かれても大丈夫だよね!」

「……そうだな」

 

コーヒーはAGI0のメイプルを運ぶ為に展開したのだが、メイプルはそれを利用して移動玉座にしてしまった。

実際、【系統:悪】のスキルや効果は【天王の玉座】で封じられるので、【身捧ぐ慈愛】も発動しているメイプルがその状態で動けば幽霊達は触れるだけの存在に成り下がってしまう。

そんなある意味無敵状態となったコーヒー達は、来た道を戻ってこのエリアから抜け出そうと進んでいく。

 

「なあ、サリー。お前が目が眩む程欲しいと感じたのはここで手に入るスキル以外でどんなものがあるんだ?」

「……状態異常付与スキルやAGI強化や加速スキル。後は空中透明な足場を一つ作れる靴です……」

 

コーヒーに手を引かれているサリーは消え入りそうな声でそれらが手に入る場所を伝えていく。靴に関してはドロップアイテムで確率は低いそうだ。

 

「でも、珍しいね。サリーが見誤るなんて」

「苦手なものを前に、冷静に吟味出来なかったんだろ。行くか行かないかで頭をずっと悩ませてただろうからな」

「うん……CFの言う通りです。ちょっと見て欲しいと思ったことを、本当にすごく後悔してます」

 

何せ、ジェイソンモドキにトラウマを刻まれかけたのだ。というか、あれは誰であっても恐怖を感じる。幽霊が特に苦手なサリーなら尚更である。

 

「まあ、あれは苦手じゃなくても怖いだろ。というか、誰だってビビる」

 

コーヒーは状況が状況だけにスキルを速攻で放ったが、もし一人であの部屋に入ってジェイソンモドキに会えば確実にビビっていたと考えている。

 

まあ、その扉は血だらけであらかさまにヤバい雰囲気を発していたので普通は入ることを躊躇うが。

サリーも追いかけられていなければ絶対に入らなかっただろう。だが、追い詰められていた故に確認を怠ってしまい、自ら地獄に足を踏み込んでしまったが。

 

「えっと……そんなに怖い幽霊がいたの?」

 

そのジェイソンモドキに出会っていないメイプルの質問に、コーヒーはジェイソンモドキの特徴を伝えていく。

 

「確定ダメージが入るんだね……絶対に会いたくないなあ」

「まあ、そいつは部屋から出ないからその部屋に行かない限りは大丈夫だ」

 

一応、そこで新しいスキルのことも教えたが、ジェイソンモドキに有効な攻撃手段を持っておらず、確定ダメージを与えてくることから、メイプルは会わないことを決めた。

そんな中、背後から誰かの叫び声が聞こえてきた。

 

「……たぶん、例の幽霊と遭遇して悲鳴を上げたんだろうな」

「うん。私もそう思うよ」

 

コーヒーとメイプルは冷静に話す中、サリーは自分もああだったのだろうと少し顔を赤くしながらフードを深く被り直した。

そうして、三人はログアウト可能な場所まで戻ることができた。

 

「ありがとう、CF。それに、メイプルもね」

「別に構わないさ」

「えへへ……どういたしましてー!」

 

無事に戻れたことにお礼を言うサリーにコーヒーとメイプルが応えた直後、背後から冷たい腕が伸びて三人をまとめて抱きしめた。

 

「ひっ……!」

「おおっ!?」

「んっ!」

 

ピロリン♪

『スキル【冥界の縁】を取得しました』

 

三人が驚いて一瞬固まり、その後でスキル獲得の通知が届いた。

一応、これが一部のアイテム効果が二倍となるスキルだが、フレーバーとしては時折背後からそっと手を貸してくれる誰かとの奇妙な縁というものだ。

 

「う……そんな縁いらないよ」

 

コーヒーの手を握ったまま、その場にへにゃっと座り込んだサリーは画面を見てそう呟く。メイプルも画面を見ていることから無事にスキルは取得できたようである。

 

「どうするサリー?次の探索まだ私は付き合えるよ」

「ログアウトする。帰る」

 

メイプルの質問にサリーは即決で答える。流石にあんな怖い目にあって探索できるほど、サリーは強くはない。

 

「だよね、ずっとコーヒーくんの手を握ってるし」

「…………」

 

メイプルのその指摘に対し、サリーは無言のままログアウトして逃げるのであった。

 

「あ、逃げちゃった」

「まあ、今回は本当に仕方ないだろ。部屋に入った時は台の上に拘束されてノコギリで解体寸前の光景だったし」

「うわあ……それは確かに怖いね」

 

コーヒーが当時の状況を話すと、メイプルはそれは怖いと同意する。

 

「流石に戻ってこないかな?」

「少なくとも数日は戻ってこないだろ。というか、あれが少しトラウマとなって絶対に立ち入らない気がしなくもない」

 

サリーが落ち着くまでの間、コーヒーは部屋の中も確認していたので彼処は本当に心臓に悪いと感じている。むしろ、下手したら本当にトラウマになりかねない程だ。

そんなコーヒーの言葉に、メイプルは少し悩んでからあるお願いをした。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

現実世界へと戻ってきた理沙はベッドから起き上がり、ゲームを終えて片付けた。

 

「お風呂は……ま、まだいいかな?ご飯を食べてからでも」

 

理沙はそう言って、いつもよりそっと扉を開け、左右を確認してから部屋を出て一階へと降りていく。

 

「…………」

 

若干周りを見渡しながらリビングの方まで行くと、丁度晩ご飯の支度をしている母親がいた。

 

「理沙?晩ご飯はまだよ?」

「うん、ちょっとテレビ見にきたの」

 

理沙はそう言ってテレビをつけてソファへと座る。

ただ、テレビにはあまり興味がないように、流し見ているだけというような調子だが。

 

理沙がそうしてリビングで晩ご飯を待っていると電話の着信音が鳴り響く。

理沙は若干ビクッとしながらも音の鳴った方へ顔を向ける。

 

「あら……はい、白峯です。はい」

「…………」

 

母親はしばらく誰かと会話していたが、やがて電話を切って理沙に話しかけた。

 

「理沙?お母さんちょっと急用が入っちゃって、行かないといけないの。お父さんも今日は遅いみたいだし……ご飯冷めちゃうから食べておいて」

「え……う、うん……」

 

理沙が歯切れ悪く返事をしたことで、母親は支度をするために急いで部屋を出て行った。

 

「なるべく早く帰れるようにするから」

「……分かった」

 

そうとだけ言って母親は出かけていった。

外はもう暗く、静かな家にはテレビの音だけが流れてくる。

 

「ご、ご飯食べよう」

 

理沙母親を見送った後、玄関の鍵を閉めてリビングへと戻りご飯を食べ始める。

 

「…………」

 

理沙はテレビのリモコンを手に取って音量を上げ、灯りも付けられる場所は全部付けていく。

その状態で食事を再開するも、足は落ち着きなくふらふらと揺れ、目は辺りを気にするように若干細められている。

箸の進みも、当然遅かった。

 

「ごちそうさまでした」

 

理沙は食器を片付けて、テレビのチャンネルを適当に変えていく。

天気予報では今夜は雨になるらしい。

 

「…………」

 

理沙はカーテンや扉を隙間なく閉め、ストレッチしたり、新聞を読んでみたりと普段より落ち着きなく時間を過ごしていく。

その原因など、本人も分かっていた。

 

「じっとしてると……怖い……」

 

言葉にすると余計に怖く感じ、理沙は新聞を片付けるとソファに置いてあったクッションを抱きしめて体を縮こまらせる。

 

「お風呂入らないと……でも……」

 

あの出来事のせいで余計に恐怖を感じている理沙の体は若干震えている。

 

「……そうだ!」

 

理沙は思いついたのか、ソファから立ち上がって灯りを付けたままの自分の部屋へと戻り、携帯電話を手に取った。

理沙が思いついた解決策。それは楓に電話して話し相手になってもらおうというものだ。

 

幸い、携帯電話は防水なのでお風呂に持っていっても問題はない。

理沙はお風呂に入って早々、楓に電話をかけた。

 

『もしもし?』

「あ、楓?今大丈夫?」

 

電話をかけてすぐに出てくれた楓に理沙は内心で感謝しつつ、話しても大丈夫かを確認する。

 

『んー……大丈夫だよ、何?』

「いや、急にログアウトしちゃったし、迷惑かけちゃったからねー。それで」

 

理沙は最もらしい理由を上げて、電話してきた本当の理由を上手く誤魔化した。

 

『あはは、そっかー』

「うん。それでゴメンね?お礼もそこそこにログアウトしちゃって」

『大丈夫だよー。今まで理沙にはいっぱい手伝ってもらってたし!むしろ、ようやく一つ返して上げられたし!』

「ありがとう楓。後、新垣にも明日謝らないと」

 

むしろ、今日一番迷惑をかけてしまったのは新垣だから、今日の埋め合わせはしないといけないと考えていた。

 

『それなら、明日じゃなくて今日言えばいいよ。電話番号を教えてもらったから』

「……へ?」

 

楓のその言葉に理沙は間抜けな声を出す。

少しして楓の言葉の意味を理解してか、理沙は慌てたように問い質した。

 

「な、なんで楓が新垣の電話番号を知ってるのよ!?というか、何時教えてもらったのよ!?」

『実は、理沙がログアウトしてすぐにお願いしたんだよ。きっと私に電話してくると思ってたし……あっ』

 

楓が思わず余計なことまで言ってしまったといったように声を上げるが、理沙は意を決して電話をかけた本当の理由を話すことにした。

 

「……楓、今私以外に家に誰もいなくて」

『うん』

「それで心細くて……」

『うん』

「しょ、正直……怖いからっ……電話続けていい?」

『いいよ』

 

そのまま理沙は楓との会話を続け、ベッドに入る頃にはもう随分と理沙の気分は明るくなっていた。

 

『おやすみ理沙』

「うん、ありがとう。おやすみ楓」

 

理沙はそう言って電話を切り、部屋の電気も消して就寝につく。

外からは降り始めた雨の音が聞こえてくる。

 

いつもより早くベッドに入った理沙だが、それだけ早く眠れるわけでもない。

そして、時間が過ぎるごとにせっかく薄れた感覚も戻ってくる。

 

「んっ……んー……」

 

何とか寝ようと目を瞑ってもぞもぞと動く。だが、暗い部屋……雨の音……それらがあの恐怖を思い出させる。

 

「ひぃっ!?」

 

瞼の裏にあのジェイソンモドキの姿が浮かび上がったことで、理沙は悲鳴を上げてベッドから起き上がる。

 

「…………」

 

理沙は部屋の電気を付けると、メモを片手に、携帯電話にメモに書かれた電話番号を入力していく。

コールして数秒。電話をかけた相手はすぐに出てくれた。

 

『はい、もしもし。新垣ですがどちら様でしょうか?』

 

電話をかけた相手―――新垣の声に理沙は間違いがなかったことに少し安堵した。

 

「えっと……白峯理沙です。夜分遅くすいません」

『白峯さんか……どうせ本条さんから聞いたんだろ?』

「うん……」

 

新垣の言葉に理沙は素直に頷く。

 

「悪いけど、話し相手になってくれない?正直、瞼の裏にあれが浮かび上がって怖いから……」

『……別にかまわないさ。本条さんが白峯さんは絶対電話をかけてくるから、一人じゃ大変だから協力してと言ってきたし……口実の気がしなくもないが』

 

新垣のその言葉に、理沙は確かにあり得ると苦笑いする。

最近の楓もそうだが、ギルドメンバーのみんなも妙に外堀を埋めようと動いている気がするのだ。

 

「とにかくありがと。後、今日はお礼もそこそこにログアウトして悪かったわ」

『そっちもかまわないさ。お前にはトラップタワーで世話になったしな』

「そっか……」

『で、明日のゲームはどうするんだ?』

「……少し休もうかなと思ってる」

『よっぽどあれが堪えたのか』

「うん……もう六層には絶対行かない」

 

あんな恐怖体験を経験してもう一回行こうと思えるほど理沙はそこまで馬鹿ではない。時間が過ぎればどうなるかは不明だが。

 

『まあ、しばらくはリフレッシュしたらいいだろ』

「うん。しばらくは下層で釣りしたり、モンスターを狩ってお金を稼いだり、スキルの熟練度を上げたり、レベルを上げたりして過ごすよ」

『後、相棒のレベル上げするのもいいだろ。俺もブリッツのレベルも上げないとと思っているしな』

「そうね。朧と戯れるのもいいわね」

 

そうして他愛ない会話を続け、真夜中となる時間帯になる頃には理沙の気分は再び明るくなっていた。

 

「ありがと、新垣。おやすみ」

『ああ、おやすみ。また明日学校で』

 

それを最後に理沙は電話を切り、電話帳に新垣を登録してから電気を消してベッドに潜る。

 

「……新垣も電話番号登録したかな?」

 

そんなことを呟きながら、理沙はそのまま夢の世界に旅立つのであった。

……次の日。

 

「おはよう、二人とも……って、白峯さん?」

「…………」

「理沙ー?顔が赤いよー?」

 

夢でもジェイソンモドキが登場し、あの時と同じように助けられる夢を見た理沙は机に突っ伏すのであった。

 

 

 




『ジェイソンモドキがマジで怖い』
「あれは俺もビビった」
『ソイツを倒したらHP消費型のスキルが手に入った』
『kwsk』
『あのジェイソンモドキ武器を作っただろ?そのスキルが手に入った。ちなみに血がべったりついてます』
『心臓に悪そう』
『部屋はパーティーメンバーなら入れる。つまり』
『女性プレイヤーの危機に颯爽と現れるということが可能ということだな!!』
『『『『『採用!!』』』』』

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