スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

78 / 147
今回は兄貴強化回
てな訳でどうぞ


鐘と骸骨

サリーがジェイソンモドキに精神的ダメージを刻まれた翌日。

クロムはギルドホームに顔を出していた。

 

「……また、ミキがおかしなものを釣っているのか」

 

部屋を埋め尽くす程に積み重なっている骨、ドクロ、札、墓石、棺桶、地蔵を前にクロムは遠い目となる。

この光景、サリーが見れば卒倒するだろうとクロムは思いつつ、一番山となっている箇所の隣に地べたに座って釣竿を垂らしているミキに話しかけた。

 

「今度はどんなアイテムを釣り上げたんだ?」

「んー、ゾンビや幽霊のみにダメージを与える札にー、破壊した人物に大ダメージを与える地蔵ー、素材の骨にー、後は換金アイテムかなー?」

 

この階層に本当にマッチしているアイテムに、クロムは苦笑いするしかない。

 

「ちなみにイズは?」

「新しいアイテムを作ってるよー。確かー、幽霊にもダメージを与えられる爆弾だったかなー?昨日釣れた【聖水】を材料にするんだってー」

 

どうやらイズは新しい爆弾を作っているようである。

 

「ちなみにー、昨日は幽霊を吸い込む掃除機を作ってたよー。効果は三分でー、自分よりレベルが低くかつ小型でないといけない上にー、経験値も一切入らないようだけどー」

「……完全に【異常】枠に踏み込んだな、イズは……」

 

どこぞのホラーゲームに登場する対幽霊武器を作っていたイズに、クロムは何とも言えない表情で呟く。ブーメランであることは自覚しつつ。

 

もはや、【普通】のカテゴリーに(ギリギリ)入るのはカスミだけである。

ボスモンスターをほぼ一撃で葬れるマイとユイ、シアンの三人。

 

【夢の鏡】のスキルを大量に魔導書として保存し、強力な魔法やスキルを大量生産できるようになったカナデ。

プレイヤースキルが人外レベルのサリー。

 

メイプルとコーヒーは言わずもがな。

まさに【異常】のフルコースである。

 

「さて、そろそろ行くかな」

「どこいくのー?」

「町の中にあるとある廃墟。そこで受けられるクエストに挑戦しにな」

 

そのクエストは死亡回数が50回以上でないと受けられず、情報も既に出回っている。

だが、未だにクリアしたものがおらず、何が得られるかは不明のままだ。

クロムはそのままギルドホームを後にし、目的の場所へと向かっていく。

 

「お、クロムか」

「こうして顔を合わせるのは久しぶりですね、クロムさん」

「ドラグとサクヤか。今から二人で狩りに行くのか?」

 

その道中であったドラグとサクヤにクロムは予定を軽く聞く。

 

「イエス。本当はビビデリカさんも一緒でしたが、向かう場所が西の洋館だと知ったら逃げてしまいましたので」

「?何で逃げたんだ?フレデリカも幽霊が苦手だったのか?」

 

クロムのその疑問にドラグが首を振って否定する。そして、フレデリカが逃げた理由を明かした。

 

「いや、実はフレデリカ一人でその洋館に行ったそうだが……そこで怖い目に合って死に戻りしたんだよ」

「死に戻りって……ログアウト制限がかかるエリアで徘徊する幽霊にやられたのか?」

「いや、そっちじゃなくてあっちの方だ。確定ダメージを与えられるスキルが手に入る方の」

「あいつか……掲示板でもわりと話題になっていたな」

 

主に怖い、心臓に悪い、もう会いたくない、行きたくない、趣味が本当に悪い、夢に出てきそう、トラウマになりそう等という心を折られたコメントでだが。

 

しかも、ホッケーマスクのその下は血塗れのゾンビ顔だともある。その為、ジェイソンモドキへの挑戦はある意味高難度のクエスト扱いとなっていた。

 

「彼女も魔法を滅茶苦茶に放って応戦したようですが……最終的には捕まってデッドエンドだったそうです。まあ、数日経てば懲りずに挑むでしょう。そこがあの人の美点かつ残念なところです」

 

サクヤの事実だが辛辣なフレデリカへの評価に、クロムとドラグは苦笑いするしかない。

そのフレデリカはやられて以降、ジェイソンモドキにリベンジしに行くことはなかったが。

 

「なので、サリーさんへのこけ脅し目的でこのスキルを手に入れようと思います。話を聞いて彼女のビビる姿が今から楽しみです」

「マジで止めてやれ。場合によっては冗談じゃすまないからな」

 

あまりにツッコミどころが満載であったが、サリーを心配してクロムがサクヤに対して苦言を呈する。

後日、意気揚々と挑戦したが鉄の処女でドラグが即死し、一人となったことでフレデリカと同じ末路を辿ったサクヤがフレデリカに頭を下げて謝罪し、更に気分転換で五層へ行きサリーとも痛みを分かち合うことになるのだが……今はいいだろう。

 

「で、お前は今日は何しに行くんだ?」

「この町で受けられるクエストに挑戦しにな」

「そうですか。では頑張って下さい」

 

そうしてドラグとサクヤと別れたクロムはそのまま目的の場所へと向かっていく。

しばらくして、目的の廃墟に到着したクロムは扉を開けて中へと入る。

 

その小さな廃墟の部屋は一つ。その中央で不気味な輝きを放つ魔法陣が展開していた。

この魔法陣は50回以上死亡しないと現れない転移の魔法陣であり、これが現れないとクエストが受けられない仕組みである。

 

「よし、行くか」

 

クロムは覚悟を決めて魔法陣に足を踏み込み、別の場所へと転移する。

光が収まった先には、空中に浮く少しボロボロの階段があった。

まるであの世への階段だと思いつつ、クロムはその階段を登って行く。コツ、コツと階段を登る音だけが響いていく。

 

少ししてクロムは階段を登りきる。階段の先は決闘フィールド並みの広さを持つ広場であり、その中央には薄汚れた鐘が鎮座していた。

 

さらに、その鐘の前に何者かが佇んでいる。

その何者かは、無骨な大剣を広場の地面に突き刺し、全身を漆黒の鎧に身を包み、頭に角を生やしたドクロであった。

 

『人間か……どうやら死を繰り返したことで此処へこれたようだな』

 

ドクロの騎士はそう言って顔を上げ、その顔をクロムへと向ける。背丈は自身と変わらないにも関わらず、圧倒的な威圧感を放っている事にクロムは生唾を思わず飲み込んでしまう。

同時にクエスト受注画面も表示され、クロムは少し躊躇いながらも承諾のボタンを押した。

 

『汝の望みは我の後ろにある鐘の力であろう?欲しければ、鐘が鳴り止むまで我の攻撃を凌ぎ切ってみせよ。さすれば、汝は力を得るだろう』

 

ドクロの騎士はそう言って大剣を片手で構える。HPバーは……表示されていない。

 

「情報通りだな。こりゃ、何としても耐えないとな」

 

クロムはそう呟いて大盾を構える。

このクエストのクリア条件は鐘の音が鳴り止むまで生き延びること。それだけ聞けば簡単かもしれないが、実際はかなりのハードモードなのだ。

 

それを証明するように、ドクロの騎士は背後の鐘が鳴り始めると同時に、クロムとの距離を瞬時に詰めて大剣を片手で振りかぶった。

 

「うおっ!?」

 

クロムは何とか大盾で無骨な大剣の一撃を捌いたが、後ろへと大きく吹き飛ばされてしまう。

吹き飛ばされたクロムは何とか体勢を立て直そうとするも、それより早くドクロの騎士が接近。クロムを切り裂いた。

 

「ぐあっ!?」

 

ドクロの騎士の一撃をマトモに受けたクロムのHPバーが一気に減少する。HPが0になる瞬間、背後から不気味なオーラを放つ骸骨―――HPが0になる際、50%の確率でHP1で生き残るスキル【デッド・オア・アライブ】が発動してクロムは何とか生き残る。

 

「まるで死神メイプルだな……盾で受け止められるだけマシだが」

 

運良く生き残ったクロムは立ち上がりながら一人呟く。その間も鐘は大きく揺れてゴーン、ゴーンと音を響かせていく。

 

一撃でHPを全損させる攻撃。異常に高いAGI。広場は不可視の壁に阻まれて逃げ出すことは不可能。つまり、ドクロの騎士の攻撃を防ぐか避けるしか出来ないのである。

 

(【不屈の守護者】とミキの【身代わり人形】があるから確実に二回は生き残れるが……それでも何度も喰らう訳にはいかないな……)

 

クロムが算段を立てている間に、ドクロの騎士は再び距離を詰めて大剣を振るう。クロムは再び大盾で受け止めるもまたしても吹き飛ばされる。

ドクロの騎士は再度急接近……せずに目にあたる空洞から蒼い熱線をクロムの胸に向かって放った。

 

「ごはっ!?」

 

胸を熱線で撃ち抜かれたクロムはそのまま地面を転がっていく。【デッド・オア・アライブ】は発動せず、【不屈の守護者】が発動して、クロムは死なずに済んだ。

 

『ぬん!』

 

ドクロの騎士は大剣を振るって土煙を巻き起こす程の斬撃を飛ばす。クロムは地面に転がったまま大盾を構えて直撃こそ防ぐも、その衝撃だけでダメージが入り、【デッド・オア・アライブ】が発動してまた生き残る。

 

「こいつはマジでキツいな……スキルがなかったらとっくに死に戻りしてるぞ」

 

ドクロの騎士の理不尽さに嫌気が差しながらも、クロムは大盾を支えに再び立ち上がる。

 

『【シャドウエッジ】!』

 

ドクロの騎士はそう言って大剣を地面に突き刺すと、クロムの足下の影が幾重もの刃となってクロムを貫いた。

 

「がはっ!?」

 

腕や足、腹を影の刃で刺し貫かれたクロムは息を吐き出す。今回も【デッド・オア・アライブ】が発動して生き残るも今度はその場から動けなくなってしまう。

 

『さあ、首を置いていくが良い―――【告死番人】』

 

瞬間、辺り一面が真っ暗になり、鐘の音だけが響き渡る。

クロムは警戒するも―――首に二度も激痛が走った。

 

「―――がっ」

 

首を斬られる激痛はこんな感じなのかとクロムは思いつつ、痛みから力が抜けてしまいその場に倒れてしまう。

今度は【身代わり人形】も発動して生き残ったが、次からは本当に運任せ。

痛みからすぐに動けないクロムの耳には、何も聞こえてこない。

 

「……え?」

 

クロムはまさかと思って耳を研ぎ澄ませる。

幾ら耳を研ぎ澄ませても鐘の音は聞こえてこず、聞こえてきたのはあのドクロの騎士の声であった。

 

『よくぞ鐘の音が鳴り止むまで我の攻撃を凌ぎ切った。汝は鐘の力を得るに相応しい』

 

その言葉にクロムは本当に終わったのだと分かり、その場に倒れたまま転がって仰向けとなる。

 

『この鐘は輪廻転生の鐘。響けば汝は死を超越する。だが、遠くの地では汝を完全に捉えることは出来ず、慢心すれば死が訪れるであろう。故に、傲らずに精進するが良い』

 

ドクロの騎士がそう忠告した直後、広場が白い光に包まれていく。

その光はどんどん強まっていき、クロムの視界を白一色に染め上げた。

 

ピロリン♪

『スキル【輪廻の晩鐘】を取得しました』

 

同時に伝えられるスキル取得の知らせ。

白い光が収まると、クロムは町の外のフィールドに放り出されていた。

 

「……流石に町の外に放り出すのはどうかと思うんだが」

 

クロムは愚痴を溢しつつも、新しいスキルの詳細を確認していく。

 

 

===============

【輪廻の晩鐘】

HPが0になる際、15%の確率でHPが満タンとなって生き残る。

===============

 

 

「……はは」

 

ある意味凶悪なスキルにクロムは思わず苦笑いしてしまう。

確率こそ低いが、HPが0になった際、生き残るだけでなくHPが全快してしまうのだ。

 

苦労して減らしたHPが決まったと思った瞬間に全快すれば、並大抵のプレイヤーは精神的にへし折られるのは間違いない。

このスキルによってクロムの不死性が更に強化されたのはもはや言うまでもない。

 

「久しぶりにおかしなスキルを手に入れちまったな」

 

自身のユニーク装備以来のおかしなスキルにクロムはそう呟くと、気持ち的に軽くなった足取りで町へ向かうのであった。

 

 

 




「止めて!本当に止めて!!」
「ちょっ、ここから出しやぐわぁあああああああああっ!?」
「待って下さい。一度止まって仕切り直しましょう。お願いですから止まって下さい!!」
「いやぁああああああっ!!助けてお兄ちゃぁあああああああああんッ!!」
「こんなのは……俺が望んだ結末ではな―――」

ジェイソンモドキの被害者の叫びの一部抜擢。

感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。