スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


裏ボスを釣り上げる

フランケンシュタインを撃破してから数日が経過した六層のギルドホームにて。

 

「それじゃ、今日はどうするか―――」

 

コーヒーは今日の予定を考えていると、ギルドホームの扉が音を立てて開かれる。

そこから入ってきたのは……

 

「……またおかしな方向に進化したのか」

 

宙に浮く【白雪】と【紫晶塊】という名の大盾を携えたメイプルだった。

 

「あっ、コーヒーくん!クロムさんは?」

「クロムなら数分前にイズさんとマイとユイ、ミキの四人と一緒に出ていったぞ」

 

それを聞いたメイプルは分かりやすいほど肩を落とす。入れ違いのタイミングとなってしまったのだから当然かもしれないが。

 

「そっかー。クロムさんに盾の上手い使い方を教えてもらおうと思ったのに……」

「……取り敢えずその宙に浮く盾は何のスキルだ?いや、装備の効果か?」

 

最初はまたおかしなスキルを手に入れたのかと思ったが、よくよく考えたらスキルだったら町の中でそのままにはならない。見た目も大して変わってないことから装飾品辺りの効果だとコーヒーは当たりを付けた。

 

「うん!《救いの手》という装飾品でね。装備すると右手、もしくは左手の装備枠を合わせて二つ増えるんだよ」

「……手?」

 

メイプルの説明に何となく察したコーヒーは椅子から立ち上がり、宙に浮く盾の横を覗き込むと白い手首が確かに盾を持っていた。

 

「……オカルト感満載の装備だな。サリーが見たらビビるぞ、これ」

「あはは……実はサリーに一度プレゼントして、返されたんだよね……」

「確認してなかったのかよ」

 

メイプルの言葉にコーヒーは呆れたように溜め息を吐く。

手首から先しかない手が二つ、自身の両サイドに浮く等普通にホラーである。そんな装備をサリーが許容できる筈もない。

 

「何にせよ、盾が三枚に増えて防御しやすくはなったんだな」

「うん!だけど上手く操作できなくて……」

「まあ、普通はそうだよな。こればっかりは地道にやっていくしかないだろ」

 

一先ずはメイプルと一緒に【訓練場】へ行き、模擬戦をやってみる。

メイプルは【天王の玉座】に座ってコーヒーの攻撃を防いでいくのだが……盾が増えたことは地味に凶悪だった。

 

何せ防御の面積が増えたのだから遠くから当てる矢は本当に対処しやすく、魔法も増えた盾で防ぐから通りが本当に悪い。

 

大抵のプレイヤーなら泣き寝入り案件である。

……もっとも、コーヒーは途中から【孔雀明王】でメイプルのスキルを全部封じて、【ライトニングアクセル】による高速機動で蜂の巣戦法でメイプルを蜂の巣にしてやったが。

 

「我が才と情熱を見よ 我を讃える万雷の喝采を聞け 我が摩天は至上の美 舞い散る華は愛の薔薇 降り注ぐは遥か彼方で煌めくステラ 公演は舞台の幕が降りるまで終わらず 観客は退席も許されぬ 燃え上がる情熱と唯一無二の才に撚り 咲き誇る華と共に此処に開演せよ!!すべてを蹂躙する終焉城塞の命で開け!【黄金劇場】!!」

 

対するメイプルも黙ってはおらず、いつの間にか取得していた【口上詠唱】で【黄金劇場】を発動して強制的に専用フィールドへと転移させた。

 

ちなみに、【口上詠唱】で発動した【黄金劇場】は即強制転移、妨害を受けずに即発動という鬼畜仕様だった。代わりに効果時間の延長はなかったが。

 

「【皇帝権限】!【百鬼夜行】!!でもって、【皇帝権限】!【念力(サイコキネシス)】!!」

 

その劇場内でメイプルは【皇帝権限】によるデメリット無しの【百鬼夜行】を強制発動。おまけとばかりに【念力(サイコキネシス)】で青鬼を浮かせるという最悪のコンボを展開した。

 

地上にも鬼。空にも鬼。本当に悪夢である。

その後、コーヒーがどうなったのかと言うと……鳥のように叩き落とされたとだけ言っておこう。

 

「【黄金劇場】……本当に凶悪過ぎるだろ……」

 

これが【黄金劇場】が終了した後のコーヒーの第一声である。

盾が増えたことで攻撃の通りが悪くなり、ダメージを与えても玉座で回復。その状態で開演して使い勝手が悪いスキルを強制発動によってノーリスクで使用。

 

今回はスキルを封じられていたが、封じられていなかったら銃弾やミサイルも飛び、星も落ちていただろう。

ちなみにメイプルに関するスレを見た、打倒メイプルを掲げる聖剣様は遠い目となったのは言うまでもない。

本当にラスボス感がどんどん増しているメイプルであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

フィールドのとある場所にて。

 

「今日は何が釣れるかなー?」

 

ミキはそう言って、釣糸を地面に垂らす。

 

「ドキドキ……」

「わくわく……」

 

マイとユイは何が釣れるのかと期待の目をして釣糸を見つめる。

 

「取り敢えず心臓に悪いやつは勘弁だな」

「別にいいじゃない。面白いものが釣れるから♪」

 

クロムは疲れたように呟き、イズは楽しげに呟く。

マイとユイは先日コーヒーから貰った属性付きのハンマーによって六層の探索が可能となったので、今日はミキとイズの素材集めの為にクロムと一緒となって護衛に参加したのである。

 

町の中でもアイテムは釣れるが、やはりフィールドで釣ったアイテムの方が質が高い。しかし、フィールドでは強力なモンスターも釣れる為、戦闘能力が低いミキは外での釣りは誰かとパーティーを組むのが必然となっていた。

 

「おー、さっそく掛かったよー。とりゃー」

 

ミキは相変わらずの抜けた声で地面から今回の獲物を釣り上げる。

釣れたのは……半透明なデュラハンだった。

 

「「えい!!」」

 

そのデュラハンをマイとユイが金色のハンマーで即叩き潰した。

当然デュラハンは光となって消え、素材アイテムをその場へと落とす。

……少し憐れなデュラハンであった。

 

「……俺、此処にいる意味あるのか?」

「何言ってるのよクロム。道中の盾がないと流石に此処まで来れないんだからね」

 

クロムの呟きにイズは呆れつつも、【塩爆弾】を投げて背後から迫っていた幽霊を吹き飛ばした。

【塩爆弾】はこの階層のモンスターに凄く有効だが、代わりに撃破による経験値は一切入らない爆弾である。生産職のイズには一切関係ないので躊躇いなく使用するが。

 

その後も財宝、水晶、ドクロ、木魚、塩の入った瓶、木の板、のっぺらぼう、人魂、ゾンビ等様々なものが釣り上げられていく。

モンスターは全部、マイとユイ、イズの除霊アイテムで撃退してミキは有益なアイテムをどんどん釣り上げていく。

 

「やっぱりー、フィールドで釣れるアイテムが良いねー」

「そうねー。換金アイテムも沢山だし、しばらくはお財布も大丈夫ねー」

 

ミキの言葉に頷きつつ、イズはホクホク顔でミキが釣り上げたアイテムを自身のインベントリへとしまっていく。

ついでにイズの工房には槍や大剣、斧等、誰も使えない武器が眠っている。ちなみに純白の花嫁装備一式も。

 

「……本当に暇だったな」

 

本当に暇だったクロムが力なく呟く中、ミキの釣竿が大きくしなる。

 

「おー、これは大物かもー」

 

ミキはそう言って、力の限り釣竿を引っ張る。

そうしてミキが釣り上げたのは……骨の塊だった。

骨の塊だけならまだましだっただろう。だが、その骨の塊からは竜を思わせる骸骨の首が幾つも伸びているのだ。

どう見ても、モンスターである。

 

「明らかに普通のモンスターじゃないだろ……」

 

クロムが渇いた笑みを浮かべる。

 

「「我が一撃は二撃として放たれる―――【ダブルスタンプ】!!」」

 

そんなクロムに構わず、マイとユイが速攻でそのモンスターを叩き飛ばす。

骨が吹き飛び、艶が良さそうな不気味な青色の物体が露となる。プルプルと震えている辺り、あれはスライムなのだろう。

 

「HPは半分くらい残ってるわね。あれは結構高そうね」

 

バフが限界まで盛られなかったとはいえ、STR極振りの二人の攻撃をあのスライムは耐えたのだ。だが、もう一度攻撃を仕掛ければ撃破は可能だろう。

 

だが、そんな考えを否定するようにスライムは地面から更に骨を引き摺り出していく。

スライムはその骨を使って、四足の巨大な竜となってミキ達を見下ろした。

 

「おおー、骨の竜さんになったねー」

「骨はそのままだし……もしかしたら素材アイテムかもね?」

 

何とも呑気な会話をするミキとイズ。そんなミキ達の前でモンスターの骨で竜となったスライムは口に当たる部分から赤黒い光を放ち始めていく。

 

「ッ!【カバームーブ】!!【カバー】!!」

 

嫌な予感を覚えたクロムがスキルを使ってミキ達の前に踊り出て、大盾を構える。

直後、赤黒い光は光線となってクロムへと襲いかかる。

クロムが盾となったことでミキ達にはダメージが通らないが、クロムのHPはぐんぐん減少していく。

 

「おいおい!?防御しててもダメージは受けるのかよ!?」

 

大盾で防いでいるにも関わらずダメージが入っている事実にクロムは驚き、それでも耐えようと踏み留まろうとする。

そのままクロムのHPは0になる―――瞬間、クロムを中心に鐘の音が響き渡った。

途端、クロムの僅かだったHPが瞬時に満タンとなる。

 

「ハッハー!!今回は物凄くついてるぜぇーーッ!!」

 

確率耐えスキル【輪廻の晩鐘】が発動したクロムは凶悪な笑みを浮かべて叫ぶ。どっちが悪者なのか分からなくなりそうなセリフである。

 

「ますます人間止めてきたわねクロム。だから、頑張って耐えてね?」

 

イズはそう言ってインベントリを操作し、ぶっかけるだけでHPが回復するポーションを幾つも取り出し、ミキが次から次へとクロムの背中にかけてHPを回復させていく。

端から見れば肉壁を維持するという鬼畜の所業である。

 

やがて光線が止み、スライムは反動からその場でへたりこむ。そのまま、【ドーピングシード】でSTRを強化したマイとユイの連撃であっさりと撃破されるのであった。

 

「骨がすごくいっぱいですね」

「スキルも装備も手に入りませんでしたね」

 

大量に散乱した骨をかき集めながらマイとユイはそう呟く。

あの骨を纏ったスライムを撃破したのだが、今回はスキルや装備を落とさず代わりに大量の骨が残ったので全員で回収しているのである。

 

「でもー、見た目は同じだけどー、中身は様々だよー」

「【毒竜の骨】、【銀翼の骨】、【地竜の骨】、【麒麟の角骨】、【炎虎の背骨】、【白狼の骨】、【刃竜の骨】、【鬼の骨盤】……本当に選り取り見取ねー!」

「全部骨だけどな……」

 

こうして今回の戦利品である大量の骨をすべて回収した後、ミキ達は町へと帰っていくのであった。

 

一方……

 

「「「「うぎゃぁああああああああああああああああ―――ッ!!!!」」」」

 

その映像を見た運営は頭を抱えて絶叫していた。

 

「【骸龍】が!六層の裏ボスが!!」

「何で釣りで出てくるんだよ!?」

「確かに地中にいるからミキに釣り上げられる可能性は0じゃないけど!!」

「落ち着け!!イベントフラグを無視した撃破だからスキルは手に入ってないぞ!!」

「一度の挑戦で倒したからスキル付与の素材アイテムは大量に持っていかれたけどな!!」

「悪ふざけで今までのボスモンスター由来の骨を纏わせたのが仇になっちまった!!」

「これは次のメンテナンスで絶対に修正するぞ!!」

「今すぐじゃないのか!?」

「あれはミキ以外では不可能だ!加えて、再出現は四日後だ!だから、次のメンテナンスまでは【骸龍】は出てこない!!」

「それなら安心だな!!」

「だけど……【俺達の悪意と悪ふざけモンスター】が【楓の木】にどんどん倒されていくよな……」

「麒麟に毒竜、銀翼に海皇、銀群飛蝗に幻想鏡、二代目機械神に機械の天使、白鬼に光の王、骨の義賊に刃竜……そしてジェイソンにフランケンシュタイン、今回の骸龍……」

「次のイベントのボスモンスター……どうする?」

「こうなったら……」

「「「「こうなったら?」」」」

「もっと凶悪にしよう。主に最高難度のボスモンスターを」

 

その言葉に全員が首を傾げる。

 

「逆に見てみたくないか?プレイヤー達が俺達の悪意にどこまで抗えるかを」

「「「「確かに!!」」」」

 

この日、次のイベントのボスモンスター達の更なる強化が決まった瞬間であった。

 

 

 




『メイプルちゃんの進化のおさらいをしよう』
『要塞→浮遊要塞→天使→悪意→メカ→女神→鬼→女王』
『女王メイプル』
『臣下は【楓の木】だな』
『同盟は【炎帝ノ国】と【集う聖剣】だな』
『なにその悪夢』
『ちなみに国名は?』
『メイプル帝国』
『堅牢国家メイプル』
『楓ノ王国』
『終焉公国メイプル』
『メイプルシロップ皇国』
『メイプルサリー共和国』
『厨二病合衆国』

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