スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


暴走する者達

コーヒーが幽霊船を吹き飛ばしてから数日、コーヒーはギルドホームで改めてスキル【ワイルドハント】の詳細を確認していた。

 

「……やっぱり十全に使う為には相当金がかかるな」

 

【ワイルドハント】の内容を改めて確認したコーヒーは遠い目で呟く。

筏や小舟、大砲等は一度購入したらそれ以降は召喚できるようになるが、金額が高いもの程、再召喚可能となるまでの時間が増えていく仕様となっている。

 

例えば、筏だと三秒後に再召喚可能、小舟だと十秒後に再召喚可能といった具合だ。その分、金額が高いほど耐久値や威力は高いが。

 

後、全部購入すると【ゴールデン・ハインド・フリート】が使えるようになると説明欄の最後に記載されている。

【ゴールデン・ハインド・フリート】はスキルなのか、筏等と同じ召喚物なのか、この時点では不明である。

 

「それとこの指輪、どうするかな……」

 

コーヒーはそう言って先日手に入れた《信頼の指輪》を取り出し、難しい顔で眺めていく。

《信頼の指輪》は最初に自身が登録しているフレンドの中から一人選んで登録し、次に自身が取得しているスキルを最大三つまで登録する。

 

勿論、これだけではこの装備品は効果一切発揮しない。効果を発揮するにはそのフレンドも同じように《信頼の指輪》を装備してそのフレンドを登録し、スキルも登録しなければならない。

そして、その状態でパーティーを組むと、その登録したスキルがその相手も使えるようになるのだ。

 

例えば、コーヒーが【聖刻の継承者】と【暗視】を《信頼の指輪》に登録し、メイプルが【機械神】と【絶対防御】を登録しておけば、コーヒーは【機械神】が使えてVITが二倍、メイプルは【聖刻の継承者】が使えて暗い場所でもはっきり見えるようになるといった感じだ。

 

勿論、登録していたスキルを相手が既に持っていた場合は効果を発揮しない。

具体的な例を上げるなら相手も【彗星の加護】を取得している状態で《信頼指輪》に【彗星の加護】を登録しても、星が二つ同時に落ちることはないのである。

 

つまり、この指輪を満足に使うにはスキルとステータスを互いに見せ合わなければならないという、相手との信頼関係が重要と言える装備品なのである。

そして、この《信頼の指輪》は装備すると()()()()()()()()()()()()()指輪でもある。

 

一度、コーヒーは指輪を右手の人差し指に装備した際、指輪は光となって右手の人差し指から消え、左手の薬指に現れたことで判明したことである。

ちなみにこの時、それを見たイズが口元を押さえて苦笑いしていた。……実際はほくそ笑んでいたが。

 

「これ……結婚指輪になるだろ……地味に運営の悪意を感じるぞ……」

 

絶対面白がって実装したと確信しつつ、コーヒーは【ワイルドハント】を満足に使用する為のお金を稼ぐ為にフィールドへと赴くのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

六層に移転した【カフェ・ピグマリオン】のとある一室にて。

 

「ではこれより、会議を始めたいと思います!!」

「それは構わないが……ギルドホームでも良かったんじゃないか?」

 

メイプルの宣言にクロムが疑問の声を上げる。この場にはコーヒーとサリーを除く【楓の木】のメンバーが全員集合している。

 

「馬鹿なのクロム?ギルドホームじゃコーヒーとサリーちゃんに聞かれるかもしれないじゃない」

「だねー」

 

イズの呆れた物言いにミキが同意する。地味にクロムの株が下がった瞬間である。

 

「取り敢えず今回の会議は?」

「“二人の疑似結婚式開催方法”です」

 

カナデの質問にメイプルが笑顔で答える。それはとてもいい笑顔で。

 

「実はねー、コーヒーが同じデザインの指輪を二つ手に入れていたのよ。それも左手の薬指に強制的にはめられるのを、ね」

「加えて、シアンちゃん達がコーヒーくんから貰った装備を見せた時、サリーがムッスリしていたので」

「だから“疑似結婚式”なのだな」

 

イズとメイプルの説明で、カスミは納得したように笑みを浮かべる。本当に意地の悪い笑みで。

 

「ちなみに結婚式場は?」

「私の【黄金劇場】で!!あのエリアはログアウト不可能みたいだから!!」

「【黄金劇場】なら見た目も申し分ないな。本当は教会が妥当だが、流石に第三者にまで見せるのは酷だからな」

 

メイプルの答えに質問したカスミは比較的良心的な発言をして賛同する。二層の町に教会はあるが、カスミが言った通り他のプレイヤーに目撃される可能性がある。流石にそんな公開処刑を行うほど彼女達は外道ではなかった。

 

「じゃあ、神父役はクロムかな?僕よりクロムの方が似合いそうだし」

「じゃあ、神父服も作らないとねー」

「サリーにどうやって着せる?」

「AGI特化の装備として試しに着てもらうのはどうかしら?幸い、工房で眠っているのはAGI特化だし」

「じゃあ、【影ノ女神】とのツーショットという口実で!!」

「名案ですメイプルさん!!」

「はい!!自然かつ、疑われない流れで閉じ込められます!!」

「実行は今度のホワイトデーイベントが妥当と思います!!」

「それは名案だな。当日は臨時メンテ故に一日ずれてしまうが、今回は幸いだな」

「じゃあ僕とクロム、CFで一つの大きなケーキを買う口実で……」

「ウェディングケーキを買うという寸法か。だが、間に合うのか?」

「大丈夫よー。アロックに確認したら、『報酬は同伴。イベント当日は有給を使う。無論、他言無用は約束する』って返ってきたから♪」

「以外とノリがいい人なんですね」

「花束はー?」

「短剣としての装備があるわ」

 

こうして、二人にとっての黒歴史計画が着実に進行していくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――ホワイトデーイベント当日。

五層のギルドホームの訓練場にて。

 

「うう……凄く恥ずかしい……」

 

イズの依頼で純白のウェディングドレス状のAGI特化装備に身を包んだサリーは頬を赤く染めて恥ずかしげに呟く。最初は恥ずかしさから断ろうとしたが、メイプルが【影ノ女神】とのツーショットを撮ってみたいと言ったので、仕方なく承諾したのである。

 

「凄く似合ってるわよ、サリーちゃん」

「うんうん!今から楽しみだよ!!」

 

ウェディングドレス姿のサリーにイズとメイプルは本当にいい笑顔で称賛する。

勿論、この後の出来事も思い浮かべて。

 

「祭壇はここかなー?ケーキ用のテーブルはこっちかなー?」

 

ミキはマイとユイ、シアンと共に雰囲気作りの為の準備を進めていく。

当然、サリーはメイプルとのツーショットの後に男性陣からバレンタインデーのお返しをもらえると信じており、疑似結婚式の為の準備だとは知るよしもない。

 

「はあ……早く終わらせていつもの装備に戻りたいなあ……」

 

サリーがそう呟いた直後、男性陣が訓練場へと入って来る。

メンバーはグレーのタキシード姿のクロムとカナデ、店の服装のままのアロック。

そして、純白のタキシード姿のコーヒーであった。

 

「……CF?何で純白のタキシード姿なの?」

「……カナデがせっかくだからビシッとした姿でお返しをしようという事になって、クロムから手渡された。サリーこそなんで花嫁姿なんだ?」

 

サリーの質問に、素材不足で一つだけ色違いになったと説明を受けて渋々装備したコーヒーはそう答える。勿論、素材不足は嘘である。

 

「私は死神モードのメイプルとのツーショットという話で着たんだけど……」

 

この時点でコーヒーとサリーは何となく嫌な予感を覚えるも、時既に遅し。

何故なら、コーヒー達が入ってきた瞬間にメイプルが【黄金劇場】を発動しており、そのやり取りでコーヒーとサリーは貴重であった逃亡時間を見事に潰してしまったのである。

結果、その場にいた全員は黄金の劇場へと強制転移させられるのであった。

 

「「…………」」

「【身捧ぐ慈愛】!!……それではこれより、二人の結婚式を始めたいと思います!!」

 

天使モードとなったメイプルの宣言。

クロムはグレーのタキシード姿から神父服姿の装備に姿を変え、祭壇の前に立つ。

 

「「謀ったな(わね)、メイプル!?」」

 

ここで漸く、まんまとしてやられたことにコーヒーとサリーはハモってメイプルに言葉をぶつける。対するメイプルは『テヘッ♪』といった感じで舌を出して茶目っ気満載で返す。

 

「というか、何で結こ―――」

「だってコーヒー、同じデザインの指輪を二つ持ってるよね。それも装備すると左手の薬指に勝手にはまるやつを」

「イズさぁあああああああんっ!?」

 

真の元凶がイズと分かり、コーヒーは叫び声を上げる。

 

「サリーさんがコーヒーさんから貰った装備を不機嫌そうに見てたので、サリーさんもコーヒーさんから何か欲しいと思いまして」

「イズさんが言った通り、コーヒーさんがお揃いとなる装備を手に入れたと聞いて」

「だから、それっぽい演出で私達が後押ししようと」

「余計なお世話よ!?」

 

攻撃担当の極振り三人衆がかりの笑顔の説明に、サリーは顔を真っ赤にして声を上げる。

 

「まさか、あの巨大なケーキは……」

「ウェディングケーキだ」

「用意周到すぎるだろ!?」

 

最初から仕組まれていたことにコーヒーはその場で頭を抱えそうになる。

アロックがせっかくだから俺自ら運ぼうとか、らしくない言葉をはいて同行したのには少し疑問を抱いていたが。

 

「それじゃあ、時間も限られてるから疑似結婚式を挙げちゃいましょ?二人も諦めてね?」

 

コーヒーが自身の考えの浅さを呪う中、イズが笑顔でそう告げる。

正直、このまま逃げたいところではあるが、こうも周りの空気を読んでね?という視線の中で逃げるのは……それはそれでキツい。

 

「……一応の流れは?」

「指輪交換とケーキ入刀だけよー」

 

それなら我慢できるとコーヒーは考えてサリーに視線を向けると、サリーは諦めたような表情をしていた。

 

「……早く終わらせましょ」

 

何処か無機質にも聞こえるサリーの言葉に、コーヒーは無言で頷き、《信頼の指輪》を取り出しながらサリーと一緒に祭壇の前に立つ。

 

「では、指輪を花嫁へ」

 

神父クロムの言葉にコーヒーはサリーの左手を取り、極めて無心に努めて薬指にはめようとする。

 

(これはゲーム。これはゲーム。これはゲーム。これはゲーム……)

 

まるで念仏のように繰り返しながら、コーヒーは指輪をサリーの左手の薬指にはめ終える。

 

(これはゲーム。これはゲーム。これはゲーム。これはゲーム……)

 

対するサリーもコーヒーと同じ事を考えていた。どちらも顔は真顔で赤く染まっており、本当は恥ずかしさ満点なのが丸分かりである。

 

「では、続いてケーキ入刀を行います」

 

クロムの言葉に、コーヒーとサリーは既にセットされていたウェディングケーキの前に立つ。

そして、隣に置かれていたケーキナイフを二人で持ち、無心を意識してケーキ入刀を実行した。

ちなみに二人の顔はこの時点でリンゴのように真っ赤。これ以上のイベントがあるとキャパオーバーするだろう。

 

「では最後に、互いにケーキを食べさせあって下さい」

 

進行役も務めているクロムの言葉に、コーヒーとサリーはボンッ!!と音がなったのではないかという位、顔が本当に真っ赤となる。

そして、サリーは素早い動作でケーキをカット。そのカットしたケーキにフォークを突き刺し、コーヒーの口に強引にぶちこんだ。

 

「むぐぅっ!?」

 

コーヒーは呻くように声を上げるが、サリーは羞恥心が限界に達したのか、顔を両手で被ってその場に蹲った。

 

「……これ以上は無理だな」

「無理だね」

「無理だったか」

「無理だったわねー」

「いけると思ったんだけどなー」

 

本当はコーヒーからサリーへケーキを食べさせたかったが、サリーの様子からこれ以上は無理だと判断し、疑似結婚式はここでお開きとなるのであった。

ログアウト後……

 

「ぉぉぉぉぉぉ……」

 

浩は羞恥心から自室の机に突っ伏し……

 

「ぁぅぅ……ぁぁぁぁ……」

 

理沙は羞恥でベッドの上をゴロゴロしながらも、左手の薬指を見て指輪を幻視するのであった。

一方……

 

「……今日は赤飯を食べよう」

「そうだな。今日はワインを飲もう」

「あれは美味しく頂けたからな」

 

《信頼の指輪》の行く末を見ていた運営はニヤニヤ顔で今日の仕事を切り上げるのであった。

 

 

 




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