「な、なんつうプレイしてるんだよ……」
互いの素性が分かり、話の流れもあって本条のプレイ内容を白峯と聞いた浩は疲れたような表情で呟いた。
ウサギと一時間戯れた結果、極振りした防御力は上昇。
ダンジョンでは毒竜の攻撃に耐え切って毒を無効化。
毒竜は武器が駄目になったので食べて撃破。結果、ユニーク装備ゲット。
そして、爆発スキル狙いでフィールドのモンスターを食べたら、盾に付与したあの凶悪スキルをゲット。
うん。絶対に普通じゃない。
「というかモンスターを食うって……」
「毒竜の味はピーマンのように苦かったけど、ブレスのおかげで辛味が追加されて食べやすかったよ。爆発テントウは弾けるお菓子みたいだったよ」
「味の感想は聞いてない!予想以上にぶっ飛び過ぎだろ!!」
本条の感想に浩はツッコミを入れる。狙ってではなく、脱線した先で得た力が強力過ぎる。
きっと運営も本条のプレイは予想の範囲外だったに違いない。
「新垣も楓ほどじゃないけど十分ぶっ飛んでるわよ……ダメージを与えられないヤツとの戦闘続行なんて、普通はしないでしょ……」
白峯の呆れたようなツッコミに浩はスッと目を逸らす。多少は自覚がある故である。
その運営は、一部の飲み物に若干苦手意識を抱きつつあるのだが、その元凶は当然知るよしもない。
浩がプレイ内容を明かしたのは、本条だけ明かすのはフェアじゃないと考えたからだ。
「はあー……これは追いつくのが大変そうだなぁ……」
「で、でも私や新垣くんと同じようにすれば……」
本条が白峯を気遣ってそう口にしかけるも、当の本人は手を胸の前で交差させてバツ印を作って首を振った。
「楓は楓。新垣は新垣。楓や新垣の見つけたスキルを掠め取る気はないの。スキルを手に入れる糸口は貰っちゃったけど……それは仕方なかったということで」
「それについては白峯さんと同意見だな。というか、真似したいとも思えないし」
いくらスキルが欲しいからと言ってモンスターを食べるとか……普通にやりたくない。
「まあ、【口上強化】は既に取得方法が拡散されているし、【名乗り】も他のプレイヤーが取るのも時間の問題の気もするし、その二つは―――」
「いや取らないから。いくらゲームでも、人前で痛い台詞を吐きたくないから」
浩の言葉を白峯は真顔で真っ向から拒絶する。理由は……記憶の片隅に封印しているものがひょこっと顔を覗かせているからである。
ついでに、部屋に厳重封印している黒歴史のノートも。
「それで、理沙はどうするの?」
「楓とパーティー組むなら魔法使いかな?でも、後衛だと新垣と被りそうだし……」
むーっと唸りつつ考えごとをする白峯。少しして何かを思いついたようにニヤリと笑った。
「決めた!私は『回避盾』になる!!」
「回避、盾?」
「相手の攻撃を全て避ける上級者向けの前衛スタイルか。確かに相性としては悪くないな」
浩も『回避盾』は不可能ではないが、特段目指しいるわけでもなく、むしろ戦闘の緊迫感と破壊による装備強化の為にわざと掠る程度に食らっている始末である。
例の麒麟との戦闘は本当に地獄だった。HPが減る度に攻撃がどんどん苛烈になっていったのだから……
「おおおお!格好いい!……でも、盾なら私がやるよ?」
本条が疑問に思ったことを口に出す。対して白峯はチッチッと指を本条の前で振って理由を答えた。
「楓と私のパーティーはどんな戦いに出てもノーダメージ!いつだって無傷!どう?格好良くない?」
不敵に笑う白峯の言葉に、本条が同意するようにぶんぶんと首を縦に振る。興奮し過ぎて腕まで振っている始末だ。
「あー、水を差すようで悪いが、たぶん難しいぞ?」
「え?」
「どういうことよ?新垣」
「今後のアップデート次第だが、高確率で防御貫通系スキルが増えると思うぞ。レベルがそこまで大きくなかったキャラが防御極振りでイベント三位に入賞したんだ。今後のゲームバランスを考えたら、間違いなく出てくるぞ」
「そ、そんな~……」
「……あー、確かに。下手したら必勝スタイルでゲームがつまらなくなるから、当然と言えば当然よね」
浩の言葉に本条はガックリと肩を落とし、白峯は理解してか納得の言葉を零した。
「けど、こう考えたらどうだ?一人は幾ら攻撃しても全然削り切れる気がしない鉄壁プレイヤー。もう一人は同じく幾ら攻撃しても当てられる気がしない回避プレイヤー。その二人がパーティーを組んでいる光景を」
浩のフォローを聞いてその光景を想像してか、落ち込んでいた本条は復活。白峯は怪しいくらいに口元に笑みを浮かべていく。
「良い!それも凄く良いよ!!」
「そのコンセプトもありか……むしろそっちの方が無敵感が増して……燃える!!」
フォロー成功。本当にお気に召したようである。
そして、今夜は一緒にプレイすることとなり、話を終えた浩は席に戻って読書(無意味)を再開するのであった。
―――――――――――――――
「おー!町はこんな感じなんだー!」
本日初ログインの白峯が周りを見渡して、嬉しそうに声を上げる。
「楓……っと……危ない。メイプルとコーヒーの装備との見た目格差があり過ぎてちょっと辛い」
メイプルを本名で読んでしまった白峯はプレイヤーネームに言い直して話す。
「あはは、まだ初期装備だもんね」
「プレイ歴が違うから仕方ないだろ。後、お前のこっちでの名前は?」
「サリーよ。本名をひっくり返してサリー」
「サリーか……安直だな」
「そっちは適当でしょ。それでプレイヤーネームより略称が広まっているCFよりマシというものよ」
「うぐっ!?」
白峯―――サリーの返しに、コーヒーは胸を押さえる。メンタルに60ダメージ!!
「と、言うわけで私はコーヒーのことはこれからCFって呼ぶことにするからね。コーヒーだと本当に飲み物と混同しそうだし」
「グハァッ!?」
コーヒーのメンタルに120のダメージ!!コーヒーは後ろへとよろめいた!
「あはは……」
「ま、それよりさっさとフレンド登録を済ませようか」
コーヒーのメンタルを傷つけたサリーは平然と話を進める。
メイプルは苦笑いしながらサリーとフレンド登録し、コーヒーも一応復活してサリーとフレンド登録を済ませた。
「色んなステータスに振ってるんだね」
「これが普通だから!」
「VITとMP、HPにはステ振りしてないのか……回避盾を目指すならVITとHPは必要ないか」
サリーのステータスを見たメイプルとコーヒーはそれぞれ感想を洩らす。メイプルの言葉にサリーは速攻でツッコミを入れたが。
「まあ、MPとINTの方は魔法を使うかどうか今は分からないからね。STRの方は武器である程度補えるしね」
「コーヒーくんのステータスもそうだけど、サリーも色々考えているんだねー」
メイプルはポイント全部VITへ振るから、確かにこういった事で考えることはしないだろう。
「ふふふ……受けきってノーダメのメイプルさんとは考える量が違うのだよ。そういえば……上位入賞の品は装備品じゃなかったの?」
どちらも聞いた話のままの装備のメイプルとコーヒーに、サリーが疑問の言葉をぶつける。
「あれは記念メダルだったよ。装備品かもと期待してたんだけどなぁ」
「メダルは持っておくと良いことがあると言っていたから、何かしらのイベントアイテムだとは思うんだが……」
「え?そうだったの?」
コーヒーの言葉にメイプルが今知ったというような反応をする。
「あー、そう言えばメイプルはインタビューで噛んでしまって、その後は恥ずかしさで俯いていたんだったなぁ」
「わああああああっ!?それはいいから!!」
恥ずかしい記憶を掘り起こされたメイプルは両手を振り、声を上げてその話を打ち切ろうとする。
サリーはそんなメイプルに少し同情する視線を送っている。
「それで、今日はどうするの?」
「俺はイズさん……知り合いの生産職の人に素材を持ち込んで装備品の作製を頼みに行くよ。その後は今のところ、特にないかな」
「私は地底湖!そこで獲れる白い魚の鱗が欲しいから!」
「じゃあ、CFの用事が済んだ後に地底湖に行きましょうか」
「じゃあ、それで!!」
予定が決まり、先ずはコーヒーの用事を済ませる為にイズの店に行く。
「いらっしゃいコーヒー。メイプルちゃんも昨日は白水晶は手に入ったかしら?」
「はい!おかげ様で!!」
「良かったわねー。……それで、そっちの女の子は?もしかして通報した方がいいかしら?」
イズはそう言って画面を操作し、コールボタンに指をかける。
イズのお馴染みに近いブラックジョークに、コーヒーは冷静に対処する。
「彼女はメイプルのリアルフレンド。今日は一緒に行動することになったんです。なので、その物騒なボタンを押さずに画面を閉まってください」
「と、言っているけど?」
「実は、CFに脅されて……」
「おいこら、サリー」
イズの冗談に乗って、両手で自身の体を抱きしめてわざとらしく身震いするサリーに、コーヒーはジト目で睨む。
「あらあら。随分とノリが良い娘ね。サリーちゃんって言うのね?」
「あ、はい。サリーって言います。メイプルとはリアルの友達で。CFは……偶然知り合いました」
「そうなのー。私の名前はイズ。二人から聞いていると思うけど、見ての通り生産職で、その中で鍛冶を専門にしているわ」
互いに挨拶し合うイズとサリー。ブラックジョークで早々に打ち解けられたようである。
「それで、コーヒー。今日来たのは制作の依頼かしら?」
「はい。素材も無事に集まったので」
コーヒーは画面を操作して、作製に必要な素材をカウンター前に置いていく。
「この素材で費用は……」
「300万Gよー」
「了解です」
イズが提示した金額を、コーヒーは前金でしっかりと払う。
「うわぁ……格の違いを見せつけられた気分よ」
サリーが若干引いていたがスルーだ。
その後、イズの店を後にしたコーヒー達は、鈍足メイプルをサリーが背負って地底湖へと向かう。
道中のモンスターはメイプルとコーヒーで瞬殺である。
そして、目的の地底湖に到着してから一時間。
「や、やっと三匹目!」
「お、またかかった!」
メイプルは3匹、サリーは12匹釣り上げていた。
「こうしてのんびり釣りするのも悪くないな」
ちなみにコーヒーは40匹釣り上げていた。
「……レベル差を痛感するわね」
「あはは……」
サリーはジト目で、メイプルは曖昧に笑ってコーヒーに視線を送っていたが。
「そろそろ釣りに少し飽きてきたし……潜って狩るか」
コーヒーはそう言って釣竿をインベントリにしまうと、軽く背伸びしてクロスボウを構える。
「え?そんなことできるの?」
「ああ。こいつもあるし、AGIも高いしな。ぶっちゃけ、素潜りで狩った方が早い」
コーヒーはそう言って湖の中へ飛び込む。コーヒーは慣れた動作で泳ぎ、近い魚に矢を撃ち込んで次々と狩っていく。
水中では矢の射程距離が10分の1にまで激減しているので遠くの魚は狙えないが。
ふと流れを感じたのでそちらに目を向けると、サリーも短剣片手に潜って魚を狩っていた。
その目はありありと文句が浮かんでいたが。
コーヒーはそんなサリーに肩を竦めて返し、別行動で魚を狩り続けていく。
ピロリン♪
『スキル【水中射ちI】を取得しました』
新しいスキル獲得の知らせ。
コーヒーは新しいスキルを確認するために狩りを切り上げ、一気に浮上する。
「あ、おかえりコーヒーくん。どうだった?」
「そこそこ大量。後、新しいスキルも手に入った」
コーヒーは巣潜りで取った白い鱗120枚を出しつつ、新しいスキルを確認していく。
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【水中射ちI】
水中での弓、もしくは弩の射程減衰が10分の1から9分の1に軽減される。
取得条件
弓、もしくは弩装備時に、水中内でモンスターを一定回数撃破すること。
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どうやらこの【水中射ち】は自動で発動するスキルのようだ。理由は口上がないから。
自動発動するスキルはコーヒーの癒しだ。痛い口上を見ずに済むから!
少ししたらサリーも戻ってきた。スキル【水泳I】と【潜水I】を取得し、鱗の方も80枚と上々である。
「ねえ……確か、今見つかっているダンジョンは3つだったよね?」
「一応、明確に判明しているやつはな」
【麒麟の隠れ家】はコーヒーとクロム以外のプレイヤーが見つけたことで、既にギミックを解くことで挑めるダンジョンとして知れ渡っている。
そこで知ったことなのだが、ダンジョンに入る方法はコーヒーがやった方法と、専用のクエストをクリアしてイベントアイテムを入手して入るという2つの方法があったそうだ。
ちなみに、情報掲示板には『ボスモンスターは弱体化しとかないと無理』と書かれていた。
だが、今肝心なのはそこではない。
「そんなことを聞くという事は……ダンジョンを見つけたのか?」
「!ほ、本当なの、サリー!?」
「たぶん。地底湖の底に、小さな横穴があった。でも……」
「一人で行きたいのか?」
コーヒーの疑問に、サリーは頷いて返した。
「うん。もしかしたら、二人と同じユニークシリーズが手に入るかもしれないし」
「ダンジョンが未開なら……初回ソロ攻略すれば手に入るだろうな。……ハードルは高いぞ?」
「上等よ。これくらいはやってのけなきゃ、二人には追い付けないしね」
そう言うサリーの目には、炎が宿っているかの如くやる気に満ちている。
「そうか」
「じゃあ、私が地底湖まで来るのを手伝うよ!!」
「ありがとうメイプル!さっすが頼りになる!」
「えへへー、それ程でもー!」
メイプルの協力を得られたサリーは、スキルレベルを上げるために再び湖に潜るのであった。
『CFがメイプルちゃんと一緒にいる』
『厨二病患者なのに』
『今日は新規プレイヤーらしき女の子も一緒だった』
『判決。有罪。死刑』
『『『意義なし!!!!』』』
『お前ら落ち着け』
~~一部スレ抜擢
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