スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


対極の場所と二つのアイテム

コーヒー達は溶岩の海が広がっていた広場を引き返した後、最初の広場にあった別の通路へと向かった。

広場を飛び回る溶岩鳥は通路にはやってこないようだ。

 

「大丈夫みたいだね」

「これで後ろからの襲撃は大丈夫だな」

「とりあえず別の道に入ったけど……他にもあったよね?」

「一つずつ確認するしかないよ。っと……道の雰囲気が違うから、注意しておいてね」

 

溶岩が噴き出していた通路と違い、黒曜石のようになっている地面にサリーは警戒を促す。

 

「了解。どうやら少し下り坂になってるみたいだから、少し気を付けないとな」

 

コーヒーはそう言って小舟を操作し、少し下がっている地面の通路を進んでいく。

先程の溶岩だらけの場所とは違った場所に行けそうな予感に、三人は警戒しつつもワクワクしてしまう。

 

その気持ちのまま通路を抜けると、黒く固まった溶岩でできた壁と地面が中心となっている空間が広がっていた。

広さは同じだが、溶岩は時折地面から小さく噴き上がる程度の比較的安全な場所である。

 

「この辺りは固まってるみたいね。これならモンスターがいるかもよく分かるね」

「今のところは何もいなさそうだけど……こういう時は!」

 

大分ゲームに慣れて分かってきたらしいメイプルはそう言ってサリーの方を見る。

 

「うん、隠れていると考えるべき。っと、言ってたら来たよ!!」

 

ボコボコと地面が盛り上がり三メートル程の岩の巨人が立ち上がる。

三人の体より大きな黒い拳と足、響く足音。

 

途中で見てきたモンスターと比べると見るからに強力そうなそのモンスターは、数本の矢が頭部に突き刺さると光となって爆散した。

 

「「…………」」

「普通に攻撃が通ったな。動きも遅いし、頭を何回も撃ち抜けば簡単に倒せるぞ」

 

【無防の撃】と【一撃必殺】、【ミラートリガー】のコンボによって出会い頭で岩の巨人を倒したコーヒーに、メイプルとサリーは何とも言えない表情となる。

 

三人はそのまま先へと進んでいくと、三人はある変化に気づく。

それは、新たな広場に辿り着いたことで確信に変わった。

 

「サリー!コーヒーくん!」

 

広場の光景に目を丸くしたメイプルが驚いたように二人の名前を呼ぶ。

対する二人も、目の前の光景にメイプル同様に驚いていた。

 

「これは……驚いたな」

「そうね……さっきまでとは真逆の光景だからどうしても驚くよね」

 

三人の目の前に広がっていたのは、雪に覆われて真っ白な地面に、大きな氷でできた壁。

最初の溶岩溢れる世界とは本当に真逆の、凍てつくような白の世界なのだからどうしても驚いてしまうのである。

三人はその雪と氷に支配された洞窟内に目を奪われつつも、小舟に乗ったまま奥を目指して進んでいく。

 

「こうも舟の上でのんびりしてると体が鈍りそうね」

「じゃあ、ここらで一回降りて歩いて移動するか?」

「急に足から凍ったりしないかな?」

「しない……と思うけど、念のために魔法による罠がないか確認するね」

 

サリーは【魔力感知】で雪で覆われた地面を確認していく。すると、地面に小さな赤い靄がそこら中に点在していた。

 

「うわ……赤い靄が幾つもあるわね。モンスターか罠のどっちか確認しないとね」

 

サリーはそう言って赤い靄の一つに火魔法を放つ。

サリーの手から放たれた火球は表面の雪を溶かし、その下にあった氷の地面を露にする。

その地面には、一つの小さな魔法陣が刻まれていた。

 

「完全に罠だな」

「罠だね」

「そうね。見つけること自体は簡単だと思うけど、一々雪を溶かさないといけないことを考えると面倒ね」

 

結局このまま降りずに進むことを決め、三人は周囲を警戒しながら進んでいく。

 

「メイプル、CF。あそこの天井の氷、紐のような赤い靄が見える。多分、モンスターが隠れてる」

「分かったよサリー。【攻撃開始】!!」

 

メイプルは言うが早いか、既に展開していた兵器を天井に向け、いつものレーザーや銃弾、ミサイルを放っていく。

メイプルの攻撃を受けた天井はバキリと砕け、そこから幾ばくかダメージを受けた氷でできた蛇が地面へと落ちる。

大きさは、メイプル達くらいなら一呑みできる程である。

 

「【雷炎】!!砕け!【崩雷】!!」

 

コーヒーは【雷炎】で属性を変え、【詠唱】のみで魔法を発動し、雷の槌を氷蛇の頭部へと叩き落とす。

雷の代わりに炎が炸裂し、頭部が半分溶けた氷蛇はスタンが入ってその場で痙攣する。

 

「滲む混沌 出でるは猛毒の化身 三首の顎ですべてを穢さん―――【毒竜(ヒドラ)】!!」

 

そこへメイプルが銃撃と共に【口上強化】した【毒竜(ヒドラ)】を放ち、容赦なく追い討ちをかける。

サリーも火魔法を放って氷蛇を攻撃し、氷蛇は何も出来ずに倒されるのであった。

 

「毒が効くと本当に簡単だな」

「後、スタンもね。抵抗出来ない相手は攻撃も当てやすいしね」

「サリーが最初に見つけてくれたおかげだよ!」

 

互いに称賛しあっていると、サリーが毒の海と化していた地面に沈んでいる何かを見つけた。

 

「メイプル、CF。彼処に何かあるみたいだけど」

「え?あ、ホントだ」

「毒の中だし、このまま近づいて慎重に回収するか」

 

コーヒーはそう言って小舟をその何かの近くまで近づき、サリーが蜘蛛の糸で引っ付けて慎重に引き上げる。

毒の海から引き上げたそれは、ソフトボールほどの大きさを持つ氷の塊だった。

 

 

===============

【万年氷】

使用することで使用したエリアの【溶岩】を固めることができる。

効果時間30秒。

===============

 

 

「これがあれば、あの溶岩の海を突破できるな」

「そうだね!まだ二つ落ちてるし、全部回収しよ!!」

 

そうして残り二つの【万年氷】を回収し、話し合ってそれぞれ一つずつ持っておくことを決める。

 

「これで彼処は突破できるけど……どっちかなー」

「どっちって?」

「ボスが溶岩か氷かってことだろ?少なくともあの溶岩の向こうに何かあるのは確実だけどな」

「そっかー……こんなに綺麗だけど、使わないと駄目なんだねー……」

 

メイプルが残念そうに自身の手の中で輝く【万年氷】を見つめる。

アイテムは基本、使えばなくなるのだからある意味当然の反応である。

 

「なら、探してみようか」

「どっちにしろこのエリアは調べないといけないしな」

 

もしでなければ、自分の【万年氷】だけで突破しようとコーヒーは提案する。

幸い、コーヒーには【ライトニングアクセル】といったAGI上昇魔法がある上、飛行できる【孔雀明王】もある。

 

噴き出す溶岩さえなければ、突破は可能である。

その後、コーヒー達は氷エリアを隅々まで探索するも、氷蛇は出現率の低さからか、一度しか出現しないのか、発見することは叶わなかった。

 

「結局、氷蛇はあれ一匹だけだったな」

「そうね。でも、このエリアにボス部屋に繋がりそうな場所はなかったから、ボスはあのエリアの向こうだって分かったしね」

「……やっぱり溶岩を使ってくるのかなあ?」

「使ってくるだろうな。後、氷も使ってくる可能性もあるよな」

「対極だから、さすがに二つ同時に使いはしないでしょ」

 

コーヒーの呟きにサリーはそう返す。

溶岩が主体なら固定ダメージは確定なので、メイプルにとっては苦手なボスとなるだろう。

 

「流石に今日はここで終わりかな?今から彼処まで戻るとなったらまた時間がかかるし、万全の態勢で挑みたいしね」

「だな。はぁ……また一万払わないといけないな……」

 

溶岩を確実に避けるには飛行が必須なので、ノーダメージを目指すには仕方ないといった心境でコーヒーは呟く。

そうして三人は塔から出て三階の入口から改めて進むことに決め、その日はログアウトしてお開きとなるのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

日を改めて、三人は再び三階へとやってきていた。スキルの使用可能回数なども回復して準備は万端である。

 

「よーし、今日はボスを倒すぞー!」

「うん、そうだね。三階は敵も面倒だし……」

「じゃあ、この前と同じ方法で向かうか」

 

コーヒーはそう言ってお金を払って【ワイルドハント】を使えるようにし、いつもの小舟を召喚する。

三人はその小舟に乗って、真っ直ぐに目的地の溶岩の海が広がるエリアへと向かっていく。

 

三人が溶岩鳥に出会した広場に入ると、今回は溶岩鳥以外のモンスターがいた。

全長はおよそ三メートル。特徴は溶岩鳥と同じく体が溶岩で構成された蜥蜴である。

 

「あの溶岩蜥蜴、溶岩の海へ向かう通路の入口に居座ってるわね」

「ああ。どう行っても気付かれるな」

 

その溶岩蜥蜴は嫌な事に目的のエリアへの道の入口に居座っているのだ。少し様子を見るもそこから動く気配はない。

 

「仕方ない。倒すか」

「そうね。出来れば温存して起きたかったけど……」

「あ!それならこれを使おうよ!!」

 

メイプルがそう言って画面を操作して取り出したのは、一体の地蔵であった。

 

「……その地蔵は?」

「ミキから貰った【お仕置き地蔵】というアイテムだよ!!」

 

メイプルはその【お仕置き地蔵】をバズーカにセット。地蔵にペコリと謝罪するようにお辞儀をしてから溶岩蜥蜴に向けて発射した。

 

バズーカから放たれた地蔵は狙い違わず溶岩蜥蜴にぶつかり、じゅっ!という音を響かせる。

直後、特大の雷が溶岩蜥蜴に直撃。溶岩蜥蜴はドロドロに溶けて消えていった。

 

「……何か、凄い罰当たりなことをやらかした気が……」

「深く考えないでおきましょ。ゲームだから大丈夫よ……多分」

 

現実では罰当たり過ぎる行為にコーヒーとサリーは遠い目となるも、楽に進めるからと目を背けることにした。

その溶岩蜥蜴が消えた場所には、割れ目から赤い輝きを発する黒い塊が二つ落ちていたが。

 

「あ!さっきのモンスターが何か落としたよ!!」

 

それに気付いたメイプルが指を差してコーヒーとサリーに伝え、コーヒーは何とも言えない気分ながらも小舟を操作し、その黒い塊の近くに降ろしてそれを回収する。

 

 

===============

【獄炎石】

使用することで使用したエリアの【氷塊】を溶かすことができる。

効果時間一分。

===============

 

 

「【万年氷】とは真逆のアイテムだな」

「そうね。もしかしたらあのエリアに隠し部屋があったかもしれないけど……見送りましょ」

「そうだな。今日は三階のボスを倒すのが目的だし、今回も諦めるか」

 

取り敢えず、この【獄炎石】は倒したメイプルと【万年氷】を使うコーヒーが持つこととなり、三人はそのまま目的の場所を目指して進んでいく。

今度はすんなりと進むことができ、三人は目的の溶岩の海が広がるエリアへと辿り着いた。

 

「相変わらず溶岩が溢れ返ってるな」

「そうね。やっぱり【孔雀明王】と【ライトニングアクセル】のコンボで突破する?」

「短時間で突破するには、な。【ワイルドハント】の舟のスピードじゃ時間内に突破できずに【万年氷】をもう一回使う羽目になるだろうからな」

「じゃあ、私は背中にしがみつくね!!」

 

メイプルは言うが早いか、コーヒーの許可も得ずにしがみつく。黒い鎧のカチカチの感触がコーヒーの背中を支配する。

 

「「…………」」

 

コーヒーとサリーは諦めたように溜め息を吐き、コーヒーは【万年氷】を取り出してからサリーをお姫様抱っこで担ぎ上げ、【孔雀明王】を発動させた。

 

「……早く突破しましょ」

 

少しでも早くこの状態から脱出したいサリーは、コーヒーの顔から目を背けてそう呟く。

コーヒーはその言葉に無言で頷き、【万年氷】をサリーに渡して使用のタイミングを任せる。

 

「唸るは雷鳴 昂るは信念の灯火 雷鐘響かせ威厳を示さん―――瞬け、【ヴォルテックチャージ】!纏うは迅雷 刻むは万里を描く軌跡 金色の雷獣となりて駆け抜けん―――迅れ、【ライトニングアクセル】!!」

 

コーヒーが【ヴォルテックチャージ】を発動してから【ライトニングアクセル】を発動し、その瞬間にサリーは【万年氷】を使用。途端、冷気が溶岩に向かって吹き抜けていき、瞬く間に溶岩を黒く固め上にその上を氷で覆ってしまう。

 

そのまま飛び出すようにコーヒーは氷の大地と変貌した地面の上空を風を切るように突き進んでいく。

その結果、コーヒー達は元の溶岩の海に戻る前に突破することに成功した。

 

そのまま、というか、溶岩の海を突破した後も、今までと同じように溶岩が噴き出していた為、仕方なく【孔雀明王】を維持したまま先へと進み、三人はボス部屋の扉へと到着した。

 

「本当にここにあって良かった。本当に……」

「ああ。もし、引き返す必要があったなら……塔から出てまた入口からスタートしていたところだ」

 

何度もお姫様抱っこで移動したくはない二人は、安心したようにそう呟く。

 

「よーし!それじゃあ行こう!!」

 

メイプルの号令でコーヒーとサリーは揃って扉を開ける。

中は溶岩の海となっており、飛び石のような足場が幾つもある、かなり動きづらい広間であった。

 

「これは……【ワイルドハント】の舟を使うしかないな」

「それなら私も一緒に!!」

 

【孔雀明王】を解除していたコーヒーは再び小舟を召喚してその上へと乗り、メイプルも《救いの手》で盾を増やしてからコーヒーの小舟に乗る。痛いのが嫌いなメイプルなので、この選択は当然である。

 

そのタイミングで、溶岩の海の一番奥から盛大に溶岩が噴き出す。

その噴き出した溶岩から出てきたのは、煌々と燃える溶岩でできた巨人だった。

 

 

 




「爆ぜろ!【炎帝】!!」
「ミィが凄く暴れてるね……」
「適材適所。あのエリアで私とミィは戦力外となってしまったからな」
「それは仕方ないですよ。溶岩ですから」
「その通りだ諸君。ここは私と兄上が何とかしよう(せっかくお兄ちゃんと堂々と手を繋げて溶岩グッジョブだったのに!!)」

溶岩エリアでは自慢の魔法が役立たずだった為、氷エリアで従兄と共に挽回(八つ当たり)しようと張り切る炎帝様の図。

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