スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


巨人から獣へ

溶岩の奥から現れた巨人は、溶岩を撒き散らしながら三人に向かってゆっくりと進んでいく。

 

「何かすっごく強そうだけど!?」

「まずは私が様子を見る!二人は上空から援護をお願い!!」

「分かった!!」

 

サリーの指示に頷いたコーヒーは小舟の高度を上げていく。

溶岩系のモンスターは固定ダメージを与える可能性が高く、《救いの手》の空中移動では機動力が足りないからだ。

 

「【氷柱】……やっぱり駄目か」

 

サリーは予想通り【氷柱】が使えないことを確認すると、安全地帯を器用に飛び移りながらボスとの距離を詰めていく。

 

「【古代ノ海】!!」

 

サリーは移動しながら【古代ノ海】を発動。自身の周りにふわふわと宙を泳ぐ青い光を纏う魚を出現させる。

 

「流せ、【ウォーターボール】!!」

 

さらにサリーは水魔法も発動し、溶岩鳥と同じアプローチを試みる。

巨人の動きは遅く、水魔法も、魚が撒き散らすAGI低下の水も当てることは容易だった。命中した水は巨人の体の一部を黒くしたので有効であることは確定した。

 

その巨人は変わらずにサリーに向かってゆっくりと進んでいく。その度に溶岩が波打ち、数少ない足場を溶岩の中へと沈めていく。

 

「うわ。あいつが移動する度に足場が溶岩に沈んで……!?」

 

サリーが巨人の動きを確認していると、その巨人は溶岩の腕を振り上げ、サリーの方へ叩きつけて溶岩の津波を作り出した。

 

「やっば……!」

 

サリーは顔を引き攣らせながらメイプルから貰った靴《死者の足》に付与されていたスキル【黄泉への一歩】を発動。空中に透明な足場を作り、その足場で【跳躍】を使って高く飛び、溶岩の津波から逃れる。

 

巨人が起こした溶岩の津波によって安全地帯の足場が一気に消え、普通であればサリーはそのまま足場のない溶岩に落下するのだが、近くまで来ていたコーヒーの小舟の船底に【糸使い】の蜘蛛の糸を引っ付け、そのまま小舟へと乗り込んで事なきを得る。

そのまま小舟を安全圏まで上昇させると、三人は作戦会議を始めた。

 

「巨人は暴れて火柱や津波を起こしてるな」

「そうね。これじゃあまともには戦えないわよね」

 

眼下の巨人はフィールドをぐるぐる動いており、そのせいで足場が数える程度しか残っていない。しばらくしたら足場は浮上するが、その多くがすぐに溶岩に呑み込まれているのでほとんど意味がない。

 

空を飛ぶ手段がなければ、確実にダメージを受けていたのが想像できる。

その後は【アシッドレイン】や【機械神】の銃撃、【流れ星】といった攻撃を安全な上空から放ったが、ダメージは通らなかった。

 

なので、効果があったサリーの水魔法を主体にすることに決めた。

そして、肝心のサリーが移動する為の足場は《信頼の指輪》で【ワイルドハント】を共有し、使用料金と筏の購入料金だけを払った。

 

《信頼の指輪》で共有したスキルは個別となるため、使用回数制限があっても大丈夫だが、今回の場合は不便に感じることとなった。

 

「それじゃ……【召喚:筏】」

 

サリーは使用可能となった【ワイルドハント】で小舟のすぐ横にふわふわと宙を浮く筏を召喚し、その筏の上に飛び乗る。

 

「うーん……動かすこと自体は少し厳しいけど……足場にする分には問題ないわね」

 

ある意味、【黄泉への一歩】よりも使い勝手が良い足場にサリーはそう呟く。筏は一撃でも受けたらすぐに壊れる紙耐久だが、三秒ごとに召喚できるから最初にお金を払うことを除けば本当に便利なスキルである。

メイプルも安全策で純白装備と【身捧ぐ慈愛】を発動してHPも回復して万全である。

 

「それじゃ二人共。固まった時に一気に攻撃を叩き込んでね」

「りょうかーい!!」

「ああ」

 

メイプルは呼び出した巨大化シロップの背中に乗って元気良く頷き、コーヒーもブリッツを呼び出してすぐに【砂金外装】状態にして小舟の上で待機させる。

 

「それじゃ……【水神陣羽織】!!」

 

四層で手に入れたスキルで水神モードとなったサリーが安全圏から強化された水魔法や【四式・交水】を当てて巨人の黒い部分を増やしていき、その間にコーヒーは【ワイルドハント】の大砲を幾つも展開していく。

 

もちろん巨人も黙ってはおらず、腕を振るって溶岩の飛沫をサリーに向かって放つも、サリーは筏と透明な足場を巧みに使って簡単に溶岩の飛沫を避け、どうしても回避できないのは【水神結界】で防いで攻撃を続けていく。

 

「【水神蒸発】!!」

 

そして、効果が切れる直前で水蒸気爆発を放ち、それをまともに受けた巨人は、黒い部分が点在していた溶岩の体を余すことなく黒一色へと染め上げた。

 

「【攻撃開始】!!シロップ、【精霊砲】!!」

「【砲撃用意】!!ブリッツ、【電磁砲】!!」

 

分かりやすい攻撃のチャンスにメイプルとシロップ、コーヒーとブリッツは攻撃を開始し、砲弾と光線の雨が黒く凝固した巨人に降り注ぐ。

それらは巨人の黒く凝固した体に命中し、ゴリゴリとHPを削っていく。

 

「やった!銃も効くようになってる!!」

「このまま一気に畳み掛けるぞ!!」

 

メイプルは嬉しそうに、コーヒーは一気に決めんと攻撃していると、巨人の体がまた赤く輝き始める。

 

「ああー、もう終わっちゃった。サリー……」

「メイプル、【イージス】を!」

「へ?」

 

メイプルはもう一度巨人を黒く固めてもらおうとサリーにお願いしかけるも、コーヒーの唐突な指示に間抜けな声を洩らす。

その燃え盛る巨人は、メイプル達に向けた腕から一際大きい炎を上げていた。

 

「メイプル、早く!!」

「う、うん!【イージス】!!」

 

元に戻ったサリーも筏と透明な足場を駆使して急いでコーヒー達の下へと戻っており、メイプルも炎に気付いてダメージ無効化スキルを発動させる。

 

メイプルが生み出した光は三人と二匹をまとめて包み込み、溶岩の塊と言える赤を完全に防ぎ切る。

光がゆっくりと薄れて視界が元に戻ると、溶岩の巨人がいた場所には青く輝く塊が地面から少し浮かんでいた。

 

「えっ!?何あれ!?」

「炎……じゃない?氷?」

「まさか……」

 

三人がそれぞれの反応をする間に、その塊から冷気が放たれて地面を凍らせ、天井に氷柱を作り上げる。

塊からも木が伸びるように氷が伸び、氷の巨人へと姿を変えた。

 

「形態変化!?だけど……」

 

サリーは形態が変わったボスに驚きつつも笑みを浮かべる。何故なら。

 

「氷なら私も戦えるよ!!」

「逆にやりやすくなったな!!」

 

メイプルとコーヒーは手を緩めることなく攻撃を続けていく。当然、氷形態となった巨人はダメージを受けていく。

 

「よし!このまま―――」

 

コーヒーは更に攻撃を叩き込もうとするも、不意に頭上に陰が差したことで攻撃を中断して上を見る。

そこには折れて落ちたであろう氷柱が迫っていた。

 

「危なっ!?」

 

コーヒーは小舟をバレルロールしてその氷柱をかわす。見れば、氷柱はどんどん折れて落ちてきており、凶悪な対空ギミックとして発揮していた。

 

しかも、落ちてくる氷柱は防御貫通能力を有しているようで、直撃したメイプルの背中に赤いダメージエフェクトを散らしたのだ。

 

「メイプル、シロップを戻して!!どんどん降ってきてる!!」

 

サリーも氷の柱を作ってその陰に隠れてやり過ごすも、天井の氷柱は絶え間なく落ち続けている。

コーヒーは【クラスタービット】を発動して傘代わりにして天井の氷柱を防ぐも、召喚した大砲はさっきの氷柱の雨で全部潰されてしまっている。

 

「……そうだ!!」

 

メイプルは思いついたように自身のインベントリを操作してあるアイテムを取り出す。そのアイテムは―――【獄炎石】である。

 

「これを使えば天井の氷柱は消えるよね!!」

 

メイプルはそう言って【獄炎石】を使用。瞬く間に蒸気が広がり、天井と落下中だった氷柱を一瞬で溶かし、氷の地面も黒曜に輝く黒い地面へと変えていく。

……サリーが出現させた氷の柱も溶かしてしまったが。

 

「あ、ごめんサリー!サリーの氷も溶かしちゃった!」

「あはは……大丈夫だよメイプル。おかげで天井を気にせずに攻撃できるし」

 

謝るメイプルにサリーはそう返し、ダガーを構えて氷の巨人に近づいていく。

氷の巨人はその豪腕をサリーに叩き付けようとするが、サリーは紙一重でかわし、逆にカウンターを決めて切り裂いていく。

 

その間にコーヒーはメイプルを回収。メイプルもシロップを指輪に戻し、【クラスタービット】の屋根がある小舟から【毒竜(ヒドラ)】と銃撃を放っていく。

 

コーヒーもブリッツを指輪に戻し【サンダージャベリン】や【スパークスフィア】、【崩雷】を叩き込んでダメージを与え続け、サリーも復活した天井の氷柱や巨人の肩周りから放たれる氷の刺を避けながら確実にダメージを与えていく。

そして、ボスのHPが残り二割となったことで、ボスから冷気が放出され、氷の形状が変わり始めた。

 

「メイプル、溶岩形態になる前に決めて!!」

 

巨人の中心から溶岩の赤い輝きを確認したサリーはそう言って、激しい乱撃を加えてから宙を駆けて避難する。

 

「任せてっ、【滲み出る混沌】!!【暴虐】!!」

 

小舟から飛び降りたメイプルは化け物形態となり、形態変化している巨人に猛攻を仕掛けていく。

 

『あれ!?ダメージが入ってない!?』

 

形態変化中のボスを攻撃したメイプルが驚きの声を上げる。

確かにメイプルの言う通り、ボスのHPは減っておらず、噛み砕いた氷の内側には溶岩が煌々と燃えて輝いている。

 

それによくよくボスを見れば、氷は溶けていると言うより形を変えているのだ。それも人から獣に変わるように。

そんなボスの口には、溶岩と同じ光が放たれている。

 

「!メイプル、避けて!!」

 

サリーの焦燥の言葉に、【暴虐】モードのメイプルは咄嗟に右に飛ぶ。直後、ボスの口から赤い光線が地面を抉るように直線上に放たれる。

その光線を受けた地面は赤く染まり、天井に届く程の溶岩を噴き出させた。

 

それと同時に地面から溶岩が至る所でボコボコと噴き出し、三、四人程度が乗れる大きさしかない氷の足場を幾つも残しつつ、地面を最初の溶岩の海へと変えていく。

 

『うわっ!?』

 

そんな浮いているだけの氷の足場は安定せず、サイズも合ってない【暴虐】モードのメイプルはバランスを崩して溶岩の海に落ちてしまう。

当然、溶岩の海に落ちたことでダメージが入り、【暴虐】モードのメイプルのHPはどんどん減少していく。

 

「メイプル!!」

 

サリーが慌てて蜘蛛の糸を【暴虐】モードのメイプルの腹に向かって放ち、メイプルも溶岩の中に完全に沈む前に【暴虐】を解除。蜘蛛の糸に引っ付けられたメイプルを引き上げて何とか救出する。

 

その間にボスは完全に形を変え、外側は氷、内側が溶岩となっている一角獣となった。

外側の氷はパキパキと音を立てて、噛み砕かれた箇所をゆっくりと修復していっている。

 

「氷と溶岩を同時に使う形態かよ……」

「多分、外側の氷を砕いてから水属性の攻撃を当てて、そこから攻撃しないとダメージが通らないと思う」

「氷が本体を守る鎧なんだね……」

「ボスはその場から動かなくなったが……頭上の氷柱も健在だから相当やりづらいぞ」

 

むしろ、一角獣となったボスの攻撃で噴き出す固定ダメージの溶岩と頭上から落ちる防御貫通の氷柱で上も下も注意しないといけなくなった。

 

【クラスタービット】の屋根がある宙を浮く小舟ならフィールドギミックは大丈夫だが、ボスの攻撃はそうではないだろう。

現にボスは頭部の長い角の先端に赤い光を集めているのだから。

 

「しっかり掴まってろよ!!」

 

球状の赤い光から幾条もの閃光が放たれたことで、コーヒーはそう言って乱暴に小舟を操作して赤い光線を避けていく。

 

放たれた赤い光線は氷にぶつかると、氷を溶かしながら反射するように曲がって逃げ場をどんどん消し去っていく。

コーヒーはその光線を何とかかわしているが、小舟は大暴れしているので滅茶苦茶に振り回されている。

 

「……仕方ないかな」

 

【糸使い】で小舟にくっついていたサリーはどこか諦めたように呟くと画面を操作する。

画面をスクロールさせ、目的の項目を出してタップし、僅かに躊躇いつつも《購入》ボタンを押した。

サリーは画面を消し、光線が消えたタイミングで購入した【ワイルドハント】のスキルを発動させる。

 

「【召喚:大砲・水弾】!!【砲撃用意】!!」

 

小舟の周りに空間を突き破るように無骨な大砲が三つ現れる。その大砲は派手な音を炸裂させながら大きな水の砲弾を放った。

放たれた水の砲弾はボスの溶岩部分に見事に命中し、瞬く間に黒く固めていく。

 

「CF!」

「ああ!【聖刻の継承者】!!【雷神陣羽織】!!集え、【グロリアスセイバー】!!」

 

言うが早いか、コーヒーは強化した【グロリアスセイバー】を一角獣の黒い部分に叩き込み、残りのHPを全て吹き飛ばした。

 

「ああ……3000万の出費が痛い……スキルは登録から一度外してもリセットされないから無駄金にならないのが救いだけど」

 

ボスが光となって消える中、サリーは一気に五桁となった自身の所持金に対して遠い目となったが。

 

ピロリン♪

『スキル【氷霜】を取得しました』

 

「お、新しいスキルの通知だ」

「あ、私も!」

「……私にも来たわね」

 

三人は予想外のスキル取得の通知に、ステータス画面を開いて獲得したスキルを確認する。

 

 

===============

【氷霜】

発動から三分間、氷属性の攻撃を当てる度にHP・MPを除くステータスを1%低下させる効果を付与する。

十分後に再使用可能。

口上

冷徹なる息吹 氷結により脆弱にせん

===============

 

 

「うーん……使いどころがなさそうなスキルだな……サリーなら使えるか?」

「え?これ、結構MPの消費が大きくて使いづらいんだけど?三秒の硬直も痛いし」

「え?」

「え?」

 

明らかに噛み合っていない会話にコーヒーとサリーは揃って首を傾げる。

そこで互いのスキルを確認すると、サリーの取得したスキルは【大噴火】という攻撃スキルであった。

 

「メイプルも【大噴火】となると……原因は【万年氷】と【獄炎石】か?」

「そうね。この階層での違いはそこしかないし、それらのアイテムを所持した状態でボスを倒したら手に入るスキルでしょうね」

 

メイプルも【大噴火】を取得していたことから、スキルの取得条件がアイテムの所持が条件だとコーヒーとサリーは結論づけた。

 

「あ、彼処にスキルの巻物が落ちてるよ!!」

 

そう言ってメイプルが指差す先には、ボスが佇んでいた場所に三つの巻物が落ちている。

コーヒーは小舟を操作してその場所に降り立ち、巻物のスキルを確認する。

 

 

===============

【永久凍土】

氷属性の魔法とスキルが炎系統の影響を受けなくなる。

===============

 

 

「お、これはいいんじゃないか?」

「ええ」

 

コーヒーの言葉にサリーは頷き、【永久凍土】を取得する。

そして【氷柱】を発動させると、溶岩の上にも関わらず氷の柱がそこに出現した。

 

「おおう……溶岩でさえ溶けなくなるのか」

「そうみたいね……」

「溶岩の上の氷……凄く神秘的だよね!!」

 

全く溶けずにそこに存在する氷の柱にコーヒーとサリーは遠い目となり、メイプルはキラキラと目を輝かせるのであった。

 

 

 




『溶岩と氷のアイテムを使わず持ってたらスキルが手に入るらしい』
『メイプルちゃん達はどうだったかな?溶岩の海で確実に使うだろうけど』
『二回使わないと厳しいよな』
『そういえばCFは空を飛べるんだよな』
『まさか』
『いやそんな筈はない』
『もしそうなら……事案だな』

見守り隊のスレ抜擢。

『奴は絶対羨まけしからん行動を取った筈だ!』
『ああ!!メイプルさんとサリーさんに抱き締められたに違いない!!』
『CFは俺達非リア充の敵。だから間違いない。俺はギルドマスターの兄に担がれた』
『絶対にCFを倒してやる!!』
『その為にも今回のイベントでスキルを手に入れるぞ!!』

非リア充のスレ抜擢。

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