スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


四階はすぐに終わらせる

最悪とも言えるハプニングが起きた翌日。その朝の教室にて。

 

「おはよう、本条さんに……白峯、さん……」

「おはよう新垣くん!」

「あ……おはよう、新垣……」

 

浩はいつものように挨拶しようとするも、やはり昨日のことがあって白峯とは目を合わせることが出来ないでいる。白峯も同様で、浩の顔をマトモに見ることができずに挨拶を返している。

挨拶をすませた浩は自分の席に付いて持ってきていた本を読むのだが、何とも微妙な雰囲気が辺りに漂っている。

 

「そうだ理沙!!今日は頑張って進まないとね!!」

「そ、そうね……今日は四階をクリアしておかないと……ね」

 

本条の言葉に白峯は頷くも、先日のことを意識してか頬が若干赤く染まっている。

それは、授業中にも出てしまっていた。

 

「それでは、白峯さん。この問題を解いて下さい」

「…………」

「白峯さん?」

「あっ、はい!あれは事故です!!……あ」

 

ゲームでのあの出来事に未だに悶々としていた白峯は反射的に答えてしまい、周りから訝しげな視線を集めてしまう。

 

「…………」

「あはは……」

 

浩は言い当てられる前の白峯と同様の状態。理由を知っている本条は何とも言えない表情となっている。

 

「……ちゃんと授業に集中するように」

「……はい」

 

教師に注意された白峯はそう答え、恥ずかしげに教科書に顔を戻して縮こまっていく。

浩はと言うと、教科書とノートに視線を向けつつも、チラチラと白峯に視線を向けている。

 

(本当にどうしたらいいんだよ!?いくらVRで事故とはいえ、付き合ってもいない女の子とききき、キスをするなんて……!)

 

昨日は事故、ゲームでの出来事として片付けようと浩は結論を出していた。だが、いざ顔を合わせるとあの事故の記憶と感触が鮮明に甦ってしまい、見事に意識してしまっていた。

それはもう一人も同様だった。

 

(何で唇同士がぶつかるのよ!?普通はおでこや鼻じゃないの!?どうせなら、もっとロマンのある……って何考えてるのよ私!?)

 

一体どんな確率なのだと、白峯は本気で自身の運のなさ?を恨みたくなるのであった。

―――放課後。

 

「……明らかにあの二人の様子がおかしかったよな?」

「やっぱりそう思うよな?」

「向こうで一体何があったんだ?」

「まさか……羨まけしからんことが起きたのか?」

「それなら一体どんな……」

「抱っこは……違うよな。ラノベだと、事故による……」

「「「「…………」」」」

「……あり得るのか?」

「分からない。だが、それ以外で思い浮かぶ可能性があるのか?」

「ボディタッチは……装備からして違うよな」

「本条さんはいつも通りだったから……被害には合ってないと考えるのが普通だし……」

「やっぱり……」

「「「「あのお約束か!!なんてう―――憎たらしいことを!!!」」」」

 

非リア充四人組は正解に辿り着いていた。

後日、彼らはさらに荒れることとなるのだがそれは別の話である。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方、運営では。

 

「あれ?あの三人パーティーが四階を途中で止めてますね」

「少し気になるな。録画映像を確認するか」

「「「「…………」」」」

「おい!このシーンの別カメラは!?」

「全部確認します!!」

「俺も手伝うぞ!!」

「俺も!」

「俺も!」

 

男達は一致団結してその場面のすべてのカメラを逐一確認し始めていく。

 

「頭上カメラは被さって見えるが、肝心なのはその距離だからこれは駄目だ!!」

「横カメラは……小舟が壁になって見えません!!」

「一つだけ何とか二人が綺麗に写ってる映像がありました!!」

「でかした!!」

 

その映像がモニターに映し出され、男達は目が点になるほどに凝視していく。

 

「これは……次の公式動画に採用だ!!ハプニング映像としてな!!」

「流れとしては、サクヤとドラグの丸呑みとミザリーとカミュラが吐き出される蛙シーンの次で!!」

「あのサンドイッチより此方の方がおいし―――見応えがあるからな!!」

 

後日、新たに公開された運営の公式動画で一人のプレイヤーに一部からヘイトが集中するのだが……それも別の話である。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

本日も三人は塔の前へと来ていた。

 

「それじゃあ、今日も頑張って攻略しよー!!」

「「お、おー……」」

 

メイプルの宣言にコーヒーとサリーは互いに顔を合わせることなく、片腕を突き上げて力なく同意する。

本音を言えば、色々と意識してしまうので数日はゲームで顔合わせしたくはない。だが、イベントの日数と難易度を考えると、あんまり悠長にもしてられないのだ。

 

三人は四階の入口へと再び入り、コーヒーは【ワイルドハント】と【クラスタービット】のコンボで屋形船の形状にして……空を飛んで強硬突破に踏み切った。

 

幸い、先日の水の矢で【クラスタービット】にダメージが入ることなく防ぐことが出来たのは確認できていたので、この強硬策は有用だと判断できたからだ。

 

何より―――こうすることでサリーをメイプルに任せっきりにできて顔を合わせなくて済むからだ。

さらに【遊雷星】も発動して小舟の周囲に展開し、メイプルの兵器も展開しているので隙はない。

そして、小型の浮遊戦艦となった小舟を水面から浮かせ、川に沿って移動し始めた。

 

当然、水面から小舟に向かって水の矢が次々と放たれるが、貫通攻撃無効の【クラスタービット】にコーティングされた小舟には通じず、虚しく弾かれる、もしくは周りに漂う雷球に消されていく。

そうして進んでいくと、例の巨大蛙が大岩に佇むエリアが見え始める。

 

「【攻撃開始】!!」

 

メイプルが小舟の左右に展開していた武装から銃弾やミサイルを大岩に向けて放ち、巨大蛙を早々に追い払っていく。

 

「ふふーん!矢を気にしなくていいから撃ち放題だよ!」

「……そうね」

 

メイプルは自慢気に兵器を撃ち続け、サリーは挑戦前に自身のインベントリを整理して売却したお金で購入した【ワイルドハント】の爆弾を川に投下しながら短く返す。

正直、サリーが攻撃に参加する必要はほとんどないのだが、何かしないと例の出来事を思い出してしまうからだ。

 

進むにつれて水の矢の弾幕がどんどん激しくなり、岩場に佇む巨大蛙の数も地味に増え、トビウオやカジキのようなモンスターが飛び出して小舟に攻撃を仕掛けていたが、すべて漂う雷球と銃撃、爆弾によって返り討ちとなっていた。

 

「今までの苦戦が嘘のように進んでるね!!」

「まあ……複数のスキルが噛み合って効果を発揮しているからな」

「そうね。普通はこんな簡単にはいかないものね」

 

上機嫌のメイプルの言葉に、コーヒーとサリーは遠い目で頷く。

対空の水の矢は【クラスタービット】で防がれ、巨大蛙はメイプルの銃撃に追い払われ、固定ダメージを与えるカジキは漂う雷球とサリーが投げる爆弾の餌食となっている。

 

そんな運営が見たら阿鼻叫喚となる進行を続けること数十分、三人は水の矢が放たれず、水流も緩やかとなっているエリアまで来た。

 

「今日はドロップアイテムがいっぱいだね!!」

「上から容赦なく攻撃したからね。この中から幾つか売って財布の足しに……」

「じゃあ、ここからは川の流れに任せるか。ぶっちゃけ、【クラスタービット】と小舟の同時操作で少し疲れた」

 

コーヒーはそう言って小舟を川へと降ろし、その場に寝転がって寛ぎ始める。もちろん、サリーとメイプルからは十分に距離を取って。

 

メイプルとサリーも特に意見することもなく、何か起きるまではのんびり釣りでもしようと釣糸を垂らしてのんびりしていく。

 

サリーはAGIとDEXが高く、スキル【釣り】もあるから次々と魚を釣り上げていくが、VIT特化のメイプルは一匹も釣れない。

 

「ううー……一匹も釣れないよー……」

「メイプルはVITにしかステ振ってないからね」

 

そう話していると、メイプルの釣糸が水の中へと引っ張られる。

 

「!来た!!」

 

メイプルは嬉しそうに声を上げながら釣竿を引っ張る。

そうしてメイプルの釣糸に掛かっていたのは……巨大な蛙だった。

 

「「…………」」

 

メイプルとサリーがあまりいい思い出のない巨大蛙の前に沈黙する中、巨大蛙は口から巻物を吐き出すとそのまま水の中へと戻っていった。

 

「……あれはスキルの巻物かな?」

「……確認しようか」

 

メイプルはその巻物を引き寄せると、その中身を確認していく。

 

 

===============

【口寄せの術】

蛙を一匹召喚する。蛙のステータスは召喚毎にランダムで変化する。

召喚してから十分後に帰還する。

使用回数は一日1回。

===============

 

 

「……何とも微妙なスキルね。どうする?」

「一応取得しておこうかな?何か役に立つかもしれないし」

 

メイプルはそう言ってスキル【口寄せの術】を取得した。

その後は途中で川が分かれることもなく、周りの森も終わって景色がパッと開ける。

広がるのは一面の海。光を受けてキラキラと輝く海は波も小さく穏やかだ。

 

「……ここが終着点?」

「どうだろう?足場が全くないし……うーん、【ワイルドハント】の筏を足場にすれば戦えぞうだけど……」

「普通に考えれば不利なフィールドだよな」

 

足場がないと、普通はボートか水中の二択でしか戦闘を行えない。

そんな考えを裏付けるように、三人の眺める海の一部がゆっくりと隆起すると、音を立てて弾け、ボスモンスターが姿を現す。

それは五メートルを超える海亀だった。

 

「この階のボスは海亀かー」

「ってことは、ここで戦うしかないってことだね」

「シロップとどっちが大きいかな……」

 

コーヒーとサリーはボス戦が面倒になりそうだと考える中、メイプルは楽しいことがある前のようにウズウズした様子で海亀の方をじっと見ている。

 

「……メイプル?」

「あんまり愛着湧かないようにね?」

「だ、大丈夫だよ大丈夫!!」

 

そうして会話している間に、海亀は一旦水の中へと戻り再度浮上すると、空へ向かって水の道を延ばしながら自在に空中を泳ぎ始める。

 

「お?おぉーーっ!!」

「バトルフィールドを形成しているのか?あの水の道を利用して海亀を追いかけるのがセオリーなんだろうな」

「こっちは空中を自在に飛ぶ小舟や筏があるけどね」

「どうやって倒す?」

「普通なら遠距離から攻撃するのがセオリーよね……」

 

コーヒーとサリーは普通に会話していたが、それに気付いた二人は気まずそうに顔を逸らす。

 

「そ、そうだ!!あの海亀の背中に載ってみない!?シロップやジベェに乗るのとはまた違うと思うし!!」

 

そんな二人に、メイプルが場の雰囲気を変える意味でそう提案する。

 

「……そうね。ちょっとだけなら」

「じゃあ、強引に突っ込むか。迸れ、蒼き雷霆(アームドブルー)!」

 

コーヒーはそう言って【名乗り】を使ってステータスを強化する。

 

「揺らめけ、【遊雷星】!!舞え、【雷旋華】!!」

 

さらにコーヒーは【遊雷星】と【雷旋華】を発動し、周囲を漂う雷球と周囲を覆うドーム状の雷を形成する。

準備が万端となった小舟はそのまま空へと浮上し―――空を飛び回っている海亀に真っ直ぐ向かっていく。

 

海亀は自身の周囲に青い魔法陣を展開し、大きな水の塊を撃ちだ出していくがコーヒーの雷の防御によって難なく防がれていく。

 

そのまま背中の近くまで水平となるように飛行させ、メイプル、サリー、コーヒーの順番で海亀の背中へと降り、【クラスタービット】のコーティングを剥がした小舟をそのまま放置した。

 

「海亀の甲羅は意外とひんやりしてるね……」

「さて……ここからどうしようか?」

 

相変わらず襲ってくる水の塊を【クラスタービット】で防ぎつつ、コーヒーはそう呟く。

このまま甲羅に乗ったままグサグサ攻撃していこうかと考えていた矢先、海亀の甲羅にダガーを刺していたサリーが何かを呟いていた。

 

「甲羅に攻撃してもダメージが入るのね。それなら……」

 

サリーはそう呟くと、髪と瞳の色をマリンブルーへと染め上げていく。この状態は【流水短剣術】の零式、もしくは終式の発動の証なのだが、今回は後者の方であった。

 

「【終式・睡蓮】」

 

スキルを発動させたサリーは容赦なくダガーを交互に刺し続け―――簡単に必要回数の攻撃へと達する。

巨大な海亀は睡蓮に包まれ、光となって消えていく。当然、三人も空中へと放り出されるのだが、召喚した筏と小舟でサリーとメイプルを回収。コーヒー自身はメタルボードに乗ってあっさりと墜落の危機を脱する。

 

「あっという間に終わったね……」

「そうね。普通なら条件が厳しいんだけど、今回は相手が良かったわ」

 

メイプルの言葉に、サリーはそう言葉を返す。

実際、【終式・睡蓮】は発動から三分の間に一度も外すことなく攻撃を20回当てなければならない。発動後は成功の有無に関係なく、30分間HPとMP以外のステータスが半分減少する。

 

なので、AGIが高い相手や攻撃の手数が相手には厳しいスキルでもあった。

そんな苦もなく最速でボスを倒し、現れた小島でサリーのステータスも元に戻ってから、小島にあった五階行きの魔法陣の上に乗ったのだが……

 

「「…………」」

「も、もう少し休憩しよ……?」

 

仄暗い闇の中、淡く青白い光を放つ古びた墓石がいくつも並ぶ広い荒地―――幽霊エリアにサリーは顔を青くしてコーヒーの服を掴んで、そう二人に言うのであった。

まさに、羞恥より恐怖が勝った瞬間である。

 

 

 




「「「……………………」」」
「……なあ、あいつらの口から出てはいけないものが出てきてるんだが?」
「……気にするな。理由を知ったらお前もああなるぞ」

四階のボスの瞬殺映像にショックがでかすぎた者達の図。
※五階のボス戦でも同様の者達が生まれました。

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