スキルのせいで厨二病患者に認定されました   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


五階は墓地。残りのメンバーはいつも通り

コーヒーとメイプルは五階がサリーの鬼門であると分かった後の行動は早かった。

まず、コーヒーが屋根のない鉄壁の小舟を作り、メイプルはその小舟の上で【身捧ぐ慈愛】と【天王の玉座】を発動。幽霊避けの蝋燭も取り出し、幽霊達に対して最強の布陣を敷いた。

 

この階では完全な戦力外となったサリーはマフラーからローブに装備し直すとコーヒーの背中にしがみついて視界を完全に遮断していた。

 

「よーし!一気に駆け抜けよう!!」

「そうしたいのは山々だが……罠も警戒しないといけないから慎重に行くぞ」

「……早く突破してね」

 

なるべく気にしないようにしているコーヒーの発言にサリーは力無く要望を伝える。本音では一瞬で突破してほしいところではあるが、それで罠にかかったら元も子もないし、以前罠によって分断され、トラウマ寸前の怖い目にあったサリーとしては諦めるしかなかった。

 

ちなみに、サリーは自覚してないがコーヒーにしがみついていることで恐怖が和らいでいることも許容した理由の一つである。

 

ボスは【黄金劇場】と【影ノ女神】のコンボ、対策が取られていたら超強化した【グロリアスセイバー】で吹き飛ばす予定だから、また運営の精神が彼方へ行く案件である。

コーヒーが攻略のために小舟を進めると、青い光を放つ墓石から青白く透けるゴーストが現れた。

 

「わっ、早速出た!!」

「いっ、言わなくていいから!!」

「弾けろ!【スパークスフィア】!!」

 

コーヒーは速攻で雷球を放ってゴーストを吹き飛ばし、そのまま荒野を駆けていく。

地面からは腐肉の腕や骨の腕が伸びてくるが、小舟は飛んでいるので虚しく宙を切っているだけに終わっている。

 

「うわぁ……地面が腕だらけで凄いことになってるよ」

「だから言わなくていいからぁっ!!」

 

メイプルの呟きにサリーは涙目でコーヒーにしがみついている腕の力を強める。

コーヒーとしてもサリーに抱きつかれるのは本当は色々と心にくるのだが、大のお化け嫌いなサリーだから仕方ないと諦めていた。

 

そんな三人にゴーストは黒い霧を放つのだが、【天王の玉座】によって通用せず逆に雷の餌食となっていく。

 

「あの黒い霧はどんな効果があったのかな?」

「んー、地面の手を考えればAGI低下辺りじゃないか?」

 

コーヒーは地面から生えている幾つも腕にチラリと視線を送ると、すぐに視線を上へと戻し、上空から近づいてきていた白い幽霊達を片っ端から射抜いていく。

 

サリー?コーヒーにしがみついたまま震えていますが?

そんな感じで三人は順調に進んでいくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方、残りの【楓の木】のメンバーも最高難易度の攻略を順調に進めていた。

 

「……うう、素材が……お金が消えていくわ……新アイテムの製作が……装備が……」

「んー、クーラーボックスで眠ってる換金アイテムいるー?ジベェ、【水鉄砲】ー」

 

遠い目となって【塩爆弾】をゾンビの大群に向かって投げ続けるイズに、ジベェに攻撃を指示しながら地面から素材アイテムを釣り上げているミキがそんな事を言う。

 

何故イズとミキが二人だけとなっているのかと言うと、数メートル先から全く見えないほどの濃厚な霧のトラップによってパーティーが二人一組に分断されてしまったからだ。

 

しかも、分断されたメンバーの位置はマップにも表示されていない為、合流もままならない。

つまり、その場にいるメンバーで先へと進まなければならないのである。

 

「……いいの?」

「いいよー。代わりにー、釣りに役立つアイテムを作ってねー」

「任せて!!とびっきりのアイテムを作ってあげるわ!!」

 

ミキのクーラーボックスの中に眠ってる換金アイテムだけで売上総額が12桁になることを知っているイズは、先程までの遠い目が嘘のように目を輝かせ、【塩爆弾】や三階で手に入れた素材で作った新爆弾【ボルケイノボマー】、【フリーズボム】を惜しみもせずにポンポンとゾンビと新たに現れたスケルトンの大群に向かって投擲していく。

 

ミキの所持金は【楓の木】随一。その所持金は11桁だから相当なお金持ちである。なのでクーラーボックスに眠ってる換金アイテムを手放しても問題ない上に、釣り上げた他のアイテムもまだまだ大量にある。

 

そんな大量のゴールドが一気に手に入ることで上機嫌となったイズが投げる爆弾は次々と爆発し、フィールドを溶岩に変えたり、氷の地面に変えたりと地面を凄く泣かせていくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方、クロムとシアンの二人も順調に濃霧の中を進んでいた。

 

「輝け!【フォトン】!!」

 

シアンが放つ威力のおかしい光球は群がっていたゾンビ達を吹き飛ばし、簡単に光へと還元していく。

クロムも攻撃役のシアンを守るため、近づいてくるゾンビの攻撃を大盾で受け止め、鉈で一体一体を確実に葬っていく。

 

「この程度の敵なら、回復は十分に追い付くな……シアン!俺の方は気にせずに奥のゾンビをおもいっきり吹き飛ばしてくれ!!」

「はい!解き放て!【シャイニング】!!」

 

シアンが杖を正面に構えて光魔法を発動すると、白い輝きを放つ極太の光線が一直線に放たれる。

その極太光線は、クロムごとゾンビ達を呑み込むのであった。

 

「……あ」

 

シアンはやってしまったといった感じで声を洩らすも、パーティーメンバーに直接攻撃をぶつけてもHPには何の影響もないので、光が収まると無傷のクロム佇むだけだった。

 

「クロムさんごめんなさい!!」

「いや……パーティーメンバーだから問題ないし、むしろ一気にゾンビを殲滅できたから今の内に出口を目指して進むぞ」

 

実際は光で目が少し痛かったが、頼れるお兄さんであるクロムは大丈夫だと優しい嘘をつき、クロムが変わらずに先頭を進んで合流を目指していく。

 

「マイちゃんとユイちゃんは大丈夫でしょうか……?」

「メッセが来てないから、二人も無事に進めていると思うが……やっぱり心配だな」

 

離れ離れとなったマイとユイの二人を心配しつつ、クロムとシアンは濃霧の中を歩いていくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

一方、カスミとカナデはというと……

 

「これは……少し骨が折れそうだな」

「そうだね」

 

カスミとカナデが見つめる先には、四メートルはあるであろう黒い半透明な幽霊がゆっくりと近づいてきている。

 

「どうする?強引に突破するか?」

「そうだね。無理に戦う必要もないしね」

 

二人は黒い巨大霊とは戦わずにスルーすることを決め、カスミは【超加速】を、カナデは【フレアアクセル】を使って巨大霊の横を通り抜け、そのまま先へと進んでいく。

だが、しばらく進むと再び例の巨大霊が見えてきた。

 

「また例の幽霊だね」

「このまま突き抜けるぞ!!」

 

二人は再び巨大霊とは戦わずにすり抜けて進むもうとするも、巨大霊はそうはさせまいと言わんばかりにその巨大な右腕を二人に向かってすくい上げるように振るう。

 

「はぁっ!!」

 

それをカスミは両側に展開されている具足を纏い大きな刀を持った腕―――妖刀のスキル【武者の腕】の紫の炎を纏った右腕で逆に右腕を切り裂いてダメージを与える。

そのまま戦わずに二人は突き進み、しばらくしてまた例の巨大霊と遭遇する。

 

「またあの幽霊か。ここも―――」

「待ってカスミ」

 

カスミは三度目の巨大霊も無視して進もうとするも、カナデがそれに待ったをかける。

 

「カナデ?」

「多分だけど……僕達は同じ場所を歩いているんだと思う。あの幽霊が何よりの証だと思うよ」

 

カナデがそう言って指差す巨大霊のHPバーが、何かしらのダメージを負ったのか減少している。

 

「なるほど。つまり、先へ進むためにはあの幽霊を倒すしかないということか」

 

カスミはカナデの言い分に納得すると、妖刀を巨大霊に向けて構え直し、刀を振るうと同時に具足を纏った右腕が振るわれる。

その右腕は黒い巨大霊の胴体を切り裂くと、何の前触れもなく光となって消えてしまった。

 

「何!?」

 

カスミは驚いて再度【武者の腕】を発動させようとするも、発動しない。それどころか、服装も普段の格好へと戻ってしまっている。

 

「まさか……二階の黒い腕と同じスキル封印か?」

「かもしれないね。【怒れる大地】」

 

カナデが地面から鋭く尖った岩を飛び出させて巨大霊の注意を引いている間に、カスミは自身のスキルの状況を確認する。

すると、【武者の腕】だけでなく、妖刀のスキルそのものが【封印】状態となっていた。

 

「ありゃ?【魔導書庫】が使えなくなっちゃったよ」

 

カナデもどうやらカスミと同じくスキルを封印されてしまい、戦力が一気に激減してしまう。

 

「うーん……今日の【神界書庫(アカシックレコード)】のスキルじゃあれを一撃で倒せそうにないし……あれを使おうかな」

 

カナデは諦めたように呟くと詠唱を開始していく。

 

「虚空より出でるは運命の鏡 対極の鏡は汝を閉じ込める 冥界の境界は鏡の中に―――誘え、【鏡ノ結界】!!」

 

カナデが二階で手に入れたスキルを発動させると、巨大霊の前後に縦三メートル、横二メートルはあるであろう巨大な鏡が現れる。

その鏡は巨大霊を挟み込むようにスライドしていき、巨大霊を一枚の鏡の中へと閉じ込めた。

 

「【七ノ太刀・破砕】!!」

 

その鏡に向かってカスミが刀を上段で振り下ろし、一撃で叩き割ろうとする。

巨大霊を閉じ込めた鏡はそこからヒビが幾つも入るも、破壊にまでは至らない。

 

「カスミ!!いつまで持つか分からないから早く鏡を壊して!!」

 

カナデはMPポーションを次々と開け、どんどん減っていくMPを回復して【鏡ノ結界】を維持していく。

 

「分かっている!!【四ノ太刀・旋風】!!【一閃】!!【二ノ太刀・斬鉄】!!」

 

カスミは次々と鏡に向かってスキルを放ち、鏡のヒビを増やしていく。

そして、防御貫通スキルの一閃が決まると鏡は粉々に砕け散り、鏡は巨大霊もろとも消えるのであった。

 

「ふう……やっぱりマイとユイがいないと中々破壊できないな。妖刀のスキルが使えていればもっと早く破壊できたのだが……」

「仕方ないよ。あの幽霊のスキル封印能力は予想外だったからね」

 

カナデも使い捨ての魔導書で【魔導書庫】が封印されたのは予想外だったので、一日1回しか使えない【鏡ノ結界】をここで使ったのは結構な痛手だった。

 

【鏡ノ結界】はMPが尽きる、もしくは十分経過しないと脱出できず、物理攻撃でしか破壊不可能という縛りはあるが閉じ込めた相手をスキルの有無に関係なく葬れるので、中々に凶悪なスキルである。

 

「そうなると……クロムとシアンが厳しいな」

「そうだね。皆にもこの情報を伝えておかないとね」

 

カナデは先ほどのゴーストの特徴を皆にメッセージで伝えると、濃霧にいつの間にか出来上がっていた大きな空洞をカスミと共に通っていく。

その空洞を通過すると、二人は濃霧の外へと出られた。

 

「やっぱり、あれを倒さないと出られない仕組みだったね」

「相変わらずの凶悪な仕掛けだ。どの階にも言えることだがな」

 

カナデとカスミはモンスターが出ないことを確認し、その場でみんなを待つことにする。

少しして濃霧に再び穴が空き、そこからイズとミキが姿を現した。

 

「二人も無事に突破できたんだね」

「そうだよー。【塩爆弾】を片っ端から投げて吹き飛ばしたよー」

「お金はごっそり持っていかれちゃったけど……ミキちゃんから換金アイテムを全部貰えるから大儲けよー!!」

 

イズは工房を展開して【塩爆弾】の素材を購入しては作りを繰り返し、素材とゴールドが大分持っていかれてしまったがミキが釣り上げた素材やアイテム、この後貰える換金アイテムで今回の損失は帳消し。むしろイズの言う通り大儲けである。

 

その後、属性付与アイテムで台風のごとく回転して進んでいたマイとユイ、クロムとシアンも無事に濃霧エリアを突破し、無事に合流を果たすのであった。

 

ちなみにあの巨大幽霊は純粋な物理攻撃が普通に効くと後から知った際、本当に嫌らしいモンスターだと彼等は改めて思うのであった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

その頃、運営はイベントの進捗とバグがないか確認していた。

 

「やっぱり十階は多かったか?八階からはボスモンスターだけだけど」

「難しいですよね。五階は六層のボツモンスターの再利用ですし」

「せっかくですし、五階の録画映像を流そうか。公式動画のピックアップも兼ねて」

 

男は画面に録画映像を映すと作業していた他の二人もその映像を確認していく。

 

「あー、ペイン達が【斬鉄剣】の巻物を手に入れましたね」

「あれは片手剣、長剣、大剣、刀、蛇腹刀といったある程度リーチのある長い剣でしか使えないからな。あのメンバーで使えるのはペインとレイドだけだな」

「硬直時間を考えれば、実際に使うのはペインだけでしょうね」

「そういえば、ペイン達はこの階の探索に他より時間を掛けていますね」

 

映像を見れば、サクヤが上機嫌で五階を探索しており他のメンバーは苦笑いしながら彼女に付き合っているような感じである。

 

「この探索でサクヤがアンデッド召喚の音楽スキル【屍の伴奏】を手に入れましたが……何で他より探索に力を注いだんでしょうね?六層でも積極的に探索してましたし」

 

サリーにリベンジを果たす為に幽霊関係のスキル取得に精を出しているとは知らないので、運営は揃って首を傾げるしかない。

 

「メイプル達の映像はどうする?一応、リアルタイムでボスに挑んでいるみたいだが」

「……見よう」

 

三人はどこか覚悟を決めた表情でボス部屋の状況を確認する。

確認された映像では……黄金の劇場内で漆黒のウェディングドレス姿のメイプルにボスが瞬殺されている光景が写っていた。

 

「「「…………」」」

 

三人はどこか悟った顔でその映像を見つめる。

 

「……CFとサリーは?」

「……【ワイルドハント】の小舟の上にいますね。サリーはCFの背中にくっついていますが」

「……やっぱりサリーは幽霊が弱点なんだな」

 

またしてもボスを瞬殺される映像を見た三人はそっと映像を閉じ、作業を再開していくのであった。

その後、五階のボスを担当した人物が四階のボスを手掛けた人物と同じ末路を辿るのであった。

 

 

 




「グッド!この階はグッドです!!皆さん、ここは隅々まで探索しましょう!!」
「サクヤが六層の初日と同じテンションになってるな……」
「ここも他の階と同じでいいだろ……」
「ノウ!!サリーさんへリベンジする為、この階の詳細な探索は必須です!!」
「ピンポイント過ぎるだろ」
「とにかく!時間が惜しいので早く行きましょう!!ハリー!ハリー!!」

サクヤのテンションに呆れるパーティーメンバーの図。
※この後、サクヤは地下に引き摺られてゾンビの餌食となりました。

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