五階のボスをメイプルの最凶コンボで瞬殺した三人は次の階である壁のところどころが結晶に覆われてキラキラと光る洞窟内にいた。
「綺麗な結晶だね」
「んー、そうだな。珍しい鉱石系のアイテムとかありそうだな……だからサリー、もう大丈夫だぞ」
コーヒーの言葉にサリーは恐る恐るといった感じで肩越しに洞窟内を見て、一先ずは大丈夫そうなので息を吐いてコーヒーの背中から離れた。
「うぅ……今回は本当にごめん。あれは本当に無理だから……」
「いいのいいの!!四階のボスはサリーのおかげですごく楽できたし!!」
「まあ、お前の幽霊嫌いは今に始まったことじゃないし、別に構わないさ」
「……うん」
幾ら本人達が気にしないと言っても、迷惑をかけた本人はそれで納得する筈もない。ここで冗談でも言えば和らぐだろうが、コーヒーは先日のハプニングがあってあまり言えそうにない。
なので、メイプルが現状回復に努めることにした。
「そうだ!!せっかくだから写真を取っておこうよ!キラキラしてて綺麗だし!!」
メイプルはそう言って何枚か写真を取り、それらの写真をコーヒーとサリーの二人に見せる。
その二人は……顔を真っ赤にして固まっていた。
「……あれ?」
二人の予想とは違う反応にメイプルは首を傾げて写真を確認する。そこで二人の反応の理由が分かった。
「あ」
そう、先ほど撮影した周りの景色の写真の中に、先日撮影した件のハプニング写真が混ざってしまっていたのだ。
「……ぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」
「撮られてた……あの瞬間を撮られてた……ぁぁぁぁぁ……」
コーヒーは頭を抱えて悶絶、サリーも両手で顔を覆って蹲ってしまっている。
あの雰囲気から脱せられたが、別の意味で気まずくなってしまった。
それから十分後、コーヒーとサリーは何とか落ち着きを取り戻した後……
「メイプル、あの写真は消去しろ。俺達の目の前ではっきりくっきりと」
「断るなら……今後メイプルの恥ずかしい瞬間を写真に収め続けていくから」
「い、イエスマム!!」
得物を突き付けての
「この階はどんなモンスターが出てくるのかな?」
「どうか幽霊が出ませんように……」
「幽霊メインはもうないだろ。流石に被りはしない筈だし」
そんな会話を続けながら洞窟内を歩いていると、通路の奥から全身が煌めく宝石でできたゴーレムが姿を現した。
「見るからに硬そうだな」
「そうね。それじゃ早速、五階の分を取り戻そうか」
サリーは防御貫通スキル【六式・圧水】で、コーヒーは頭部に矢を放ってゴーレムに攻撃していく。メイプルも【機械神】で援護射撃していくが、命中と同時に悉く弾かれてしまう。さらに、このゴーレムは防御力が高いだけでなく、HPも高い上に即死攻撃も無効にするようで、コーヒーとサリーは何度も攻撃する羽目となった。
そうしてゴーレムを倒した三人は地面に転がった素材を拾いながら溜め息を吐いた。
「うう……防御力が……」
「はー、めちゃくちゃ硬い上に体力も高かった……」
「【一撃必殺】も通用しないから、結構面倒だな……」
メイプルはVIT特化、サリーは手数で低い火力を補うタイプ、コーヒーは【無防の撃】で確実にダメージは与えられるが基礎火力は低く、高威力の攻撃は連発できない。
このパーティーの弱点である攻撃力の低さが露骨に現れる形となってしまった。
「ただ、メイプルの防御も破られなかったから負けはしないんだけど……特別なアイテムとか持ってない限り基本はスルーかなあ」
「特別なアイテム?」
「【万年氷】や【獄炎石】のようなフィールドギミックを解除するようなアイテムだな。ないと通れないような状況にならない限りは道中のモンスターは無視するか」
「そうだね」
ゴーレムを倒すのに掛かった時間から、素材が貴重でも回収の効率が悪すぎるのでこの階も戦闘は極力避けることとした。
「ボスもあんな感じなのかなあ?」
「そうだとしたら面倒だな」
「その時は私が頑張るから防御以外は休んでていいよ。CFはこき使うけど」
「おい!?」
三人が進んでいくと、分岐する道が見えてくる。
そして、それを待っていたかのように煌めく鉱石の体を持った兵士のような人型モンスターも現れる。
盾と槍を持ったそのモンスターは三体で横並びになって道を塞ぎながら進んでくる。
「もう片方からは……モンスターは来てないな」
「そうね。避けることもできそうだけど……どうする?メイプル」
「避けよう避けよう!!絶対防御力高いから!!」
メイプルに押しきられるような形で三人はモンスターがいない道に駆け出すも、モンスターは追いかけることなく、その通路を塞ぐように立ち止まっている。
「どうやらあのモンスター達は通路の番人みたいだな」
「そうね。あの先に何があるのか気になるけど……今は無視して進められるところまで進みましょ」
「賛成!!」
そんな感じで分岐点ではモンスターが現れない方へと進むことを決め、三人は奥を目指して進んでいく。
分岐の度に例のモンスターは武器を変えて姿を現し、片方の道を塞いでいくので三人は決めた方針を崩さずに戦闘を避けて進んでいたのだが……
「また分岐だね」
「今度はどっちから出てくるのかな?」
メイプルとサリーがそう呟いていると、鉱石の体を持った兵士のような人型モンスターが再び姿を現す。
数は三体。武器は……二丁のクロスボウだ。
「……サリー、メイプル。あのモンスターがいる通路を進もう」
「「え?」」
唐突なコーヒーの提案にメイプルとサリーは揃って声を洩らす。そんな二人に構わず、コーヒーはその理由を説明していく。
「あのモンスターの先にはスキルの巻物があるかもしれない。それも二丁拳銃ならぬ二丁クロスボウが可能となるスキルが」
「いや、ないでしょ」
コーヒーの言い分にサリーは冷めたツッコミを入れる。確かに変わったモンスターではあるが、それだけで新しいスキルが手に入るなら苦労はしない……筈だ。
「…………」
サリーは本人曰く“普通”にプレイしてぶっ飛んでいる且つ、強力なスキルを手に入れ続けている親友の存在に断言が出来なくなってしまう。
「……マップに残しているから、その道は後で行きましょ」
結局、その道は後で行くことにして、三人は極力戦闘を避けながら奥へ奥へと進んでいく。
そうして、進んできたルートの最後に残った空白地帯である大きな部屋に辿り着いた。
「ボス部屋……じゃなさそう?」
「まだ奥に通路が見えるし違うと思う。けど……」
「けど?」
「部屋の地面が赤い靄で埋まっているのよね。たぶん、何かしらのトラップが仕掛けられてると思う」
【魔力感知】でトラップの存在を事前に察知したサリーの言葉により、再び小舟で移動することを決め、三人は再召喚した小舟へと乗り込み、その部屋へと侵入する。
その瞬間、後ろの入口が地面から生えるように伸びた青白い鉱石が壁となって退路を塞ぎ、同時に部屋の地面からも鉱石が伸び、おびただしい数のモンスターである結晶兵士を生み出していく。
「うわっ、モンスターハウス!!」
サリーが嫌そうな声を上げると同時にコーヒーは小舟の高度を上げ、天井の近くにまで持っていく。
下から弓を持った結晶兵士が次々と矢を放っていくも、【クラスタービット】で悉く弾いて防いでいく。
「うわ……部屋があっという間にモンスターでいっぱいだよ」
「この階は物量で押すタイプなのか……防御と体力が高いから倒すのにも手間取るし、真正面からの戦闘は自殺行為だな」
「こうなったら、上からちまちま攻撃していくしかないかな?CF、《信頼の指輪》に例の常時貫通攻撃スキルを登録よろしく」
「了解」
サリーの指示でコーヒーは《信頼の指輪》の【氷霜】から【無防の撃】へと登録し直し、サリーのすべての攻撃を常時貫通攻撃へと変化させる。
サリーは【ワイルドハント】の使用料金を払い、爆弾と大砲を召喚していく。
メイプルも緑色の洋服と《女神の冠》とはまた違った冠を装備して万が一の為に【身捧ぐ慈愛】も発動して準備万端である。
そして上空から―――一気に反撃に出た。
「放つは灼熱の息吹 沸き上がるは地獄の猛火 大地を憤怒の溶岩へと塗り替えよ―――【大噴火】!!」
メイプルは手から溶岩を直線上に放ち、結晶兵士達を吹き飛ばすと同時に地面にダメージを与える溶岩を残していく。
【大噴火】なら直接ダメージは与えられずとも、一分間残る溶岩によってダメージを与えることが出来る。
「【砲撃用意】!!【召喚:爆弾】!!」
サリーも【ワイルドハント】の爆弾を放り投げつつ、大砲から水弾を順番に地面に向かって放っていく。
【大噴火】を放ったメイプルも再使用可能となるまでは、サリーが召喚した爆弾を一緒になって投げていく。
【ワイルドハント】で召喚した爆弾はアイテムの爆弾の半分以下の威力だが、【無防の撃】の効果を受けているので確実にダメージを与えることが出来る。
「【砲撃用意】!!輝くは不屈の雷光 残響する雷吼は反逆の証 雷呀の鎖と為りて一切合切を打ち砕け―――迸れ!【リベリオンチェーン】!!サンダー!!」
コーヒーも展開した大砲から砲弾を放ちつつ、雷の鎖で結晶兵士達を縛り上げ追撃の電流を流して確実にダメージを与えていく。
「放つは灼熱の息吹 沸き上がるは地獄の猛火 大地を憤怒の溶岩へと塗り替えよ―――【大噴火】!!」
コーヒーも《信頼の指輪》に登録されていた【大噴火】を使用し、結晶兵士達に更なるダメージを与えていく。もちろん、クロスボウによる攻撃も忘れない。
「……やっぱり常時貫通攻撃スキルは強いわね。その分、一度に与えられるダメージが減っちゃったけど……流せ、【ウォーターボール】」
【無防の撃】の便利さにサリーはそう呟きながらも水球を斧を持った結晶兵士に向かって放つ。
しかし、サリーには【器用貧乏】という速度上昇、火力低下のスキルもあるため本格的な取得に動くことはないだろう。
ちなみに【無防の撃】は効果こそ変わってないが、取得条件に単独戦闘と同じモンスターに攻撃を当てるいう縛りが追加されたので取得難易度が上がってしまっている。
そんな上空からの理不尽な攻撃を続けること数分、結晶兵士達は抵抗らしい抵抗も出来ずに殲滅されるのであった。
「本当に楽に倒せたな」
「そうね。ほとんどCFのおかげだけど……このまま一番奥まで進みましょ」
モンスターハウスに踏み入る可能性を考慮して、三人は小舟に乗ったまま壁が消えた奥の通路へと進んでいく。
結果として、通路は新たに分岐することはなく、奥には小さな宝箱が一つ台座に乗せられていただけだった。
「んー、赤い靄がないから普通の宝箱みたいね」
「じゃあ、開けても大丈夫だね!」
念のために周りにトラップがないかも確認し、確認を終えた三人はその宝箱を開ける。そこには、スキルを取得できる巻物が三つ入っていた。
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【結晶化】
一分間AGIが半減し、あらゆるバッドステータスを受けなくなる。
三分後再使用可能。
取得条件:VIT100以上。
口上
覆いし結晶はあらゆる悪意から我が身を守る
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「これはメイプルにしか使えないな」
「そうね。私はクロムさんにでも上げるわ」
どちらもVITは低く、これからも上げる予定はないので【結晶化】を取得することはないだろう。
「じゃあ私は早速取得するよ!!」
メイプルは早速巻物を広げてスキル【結晶化】を取得する。
「この辺りはモンスターもいないし、戦闘の前に一回試しておいたら?」
「そうする!さっそく、【結晶化】!!」
メイプルが試しにと【結晶化】を発動する。すると、メイプルが光に包み込まれ、まるでコーティングされるように先程の結晶兵士と同じ鉱石が体を覆っていった。
「皮膚が変わっちゃったみたい?でもちゃんと動けるし変な感じ……」
「全身をコーティングされている感じか」
「そうね。手触りが完全に岩のそれだし」
サリーはメイプルを覆うお鉱石を触りながらそう呟く。そして、思い浮かんだ疑問を口にした。
「この状態で【発毛】を使ったらどうなるのかしらね?」
「じゃあ、一回試してみるね。【発毛】!!」
メイプルは物は試しと【発毛】を使い毛玉モードとなる。すると、毛玉も同様に鉱石に覆われており、試しにコーヒーが叩くとコンコンという音が返ってくる。
「どうやら羊毛もコーティングされるみたいだな。もう、鉱石の塊だぞ」
「そうなんだ。ちょっと外から見て見ようかな?」
メイプルの近くにいたことで羊毛に呑み込まれていたサリーはそう言うも、外に出てこない。
「え!?鉱石が壁になって出られない!?」
「嘘!?」
サリーの声にメイプルも焦ったように毛玉から顔を出そうとするも、コンコンという音が空しく響くだけで二人はコーティングされた羊毛の中から姿を現さない。
「ど、どうしようサリー!?」
「ま、まあ普通はこんな事にはならないし、次から気をつければいいよ。うん」
とりあえず、【結晶化】が切れるまでは待つこととなり、三人はその間に方針を確認していく。
「次は彼処の通路に行くか。二人も異論はないよな?」
「……そうね。どっちにしろモンスターが壁となっている通路は行かないと駄目だし」
「貫通攻撃持ちがいませんように……」
次は例の二丁クロスボウの結晶兵士が塞いでいる通路へと向かうことにし、メイプルの毛玉モードを維持したまま、宙に浮く毛玉で探索を再開していく。
そして。
「広い部屋は全部モンスターハウスと見ていいだろうな」
「そうね。武器も様々で正面から戦うのは面倒ね」
「武器的に槍やハンマーが痛そうだなあ……」
例の通路を通り、三度のモンスターハウスを突破した三人が最奥らしき部屋に踏み込むと、そこには小さな宝箱が一つだけ地面に置かれていた。
今回も罠がないことを確認しつつ、三人は宝箱を開けると、今回もスキルを取得できる巻物が三つ入っていた。
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【結晶分身】
鉱石で出来た分身を一つだけ生み出す。攻撃を三回受けると消滅する。重複は不可能。
十分後再使用可能。
取得条件:DEX80以上。
口上
鍛錬されし結晶は分身を作り出す
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「これはCFにしか取得できないわね」
「ああ。けど、思ったのと違う……」
「ま、まあ、仕方ないよ!それに、メダルスキルにそれが可能になるスキルがあるかもしれないし!!」
「……そうだ!!」
コーヒーは何を思いついたのか巻物を広げて【結晶分身】を取得すると、《雷霆のクロスボウ》のスキルスロットに付与してしまった。
「……CF?」
「これで、【結晶分身】!!」
サリーが訝しげにする中、コーヒーは【結晶分身】を発動。すると、青白い鉱石でできたクロスボウが地面から生えるように伸びてきた。
「よし!思った通りにクロスボウが分身として現れたな!これで二丁クロスボウができる!!」
コーヒーは鉱石で出来たクロスボウを握って構えを取る。
そんなコーヒーの姿を呆れた眼差しで見つめ、メイプルはカッコいいと目を輝かせるのであった。
「……なんで【結晶分身】を《雷霆のクロスボウ》のスキルスロットに付与したんだよ」
「普通なら自身の分身を生み出すだけで終わるのに……おかげで武器が複製されてしまった……」
「分身はスキルも使えますから、それを考えればクロスボウだけになったからまだマシ―――」
「いや、自動装填スキルがあるから、トンでもない強化になってるぞ」
「……加算されます?」
「……されてるな」
「「「「…………最悪だぁああああああああああああああああっ!!!!」」」」
コーヒーの行動で頭を抱える運営の図。
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