青王と逝くブリテン異聞帯   作:飴玉鉛

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 拙者評価くれくれ侍。不躾に御免。

 ガートルードちゃんの名前の由来が感想欄で見抜かれたので初投稿です。


自動生成式主人公が事故ったようです

 

 

 

 

『物心がついた頃には――』

 この一節から始まる小説では、幼少期の原風景として思い浮かぶものが描写される。それは夏の日の長閑な田舎の光景だったり、深窓から見上げる冬の雪だったり、なんとなしに見上げた春の桜だったり――あるいは春夏秋冬に限らない、他人との遣り取りに起因した言葉だったりする。

 となると、わたしの原風景は無菌室の全き白なのだろう。それを少しばかり味気ないなと思う程度には、わたしの情緒も育っている。

 わたしの境遇から判ずるに、そうした情緒がひとりでに育っているのは異常だろう。それもこれも、外付けの知識は元より、わたしの内に在る霊基(ジイサマ)の影響なのかもしれない。

 

 わたしはデミ・サーヴァントだ。

 

 生身の人間に英霊の魂を宿した、人間ならざる人間だ。

 

 宿した霊基の名は柳生但馬守宗矩というらしく、彼はカルデアに召喚された第三号の英霊で、召喚されると共にわたしに宿るとわたしの境遇を知り、快くとは言わずとも協力を承諾してくれた。

 彼はわたしに対するカルデアの所業に不快感を懐いたようだが、同時に自分が協力した場合としなかった場合のわたしの待遇を考慮してくれたのだ。既にわたしという存在がある以上、どうあっても状況が好転することはない。だからせめて宗矩がわたしに力を与える事で、カルデア内でのわたしの価値を押し上げてくれたのだ。

 おかげさまでわたしは隔離されず、カルデア内なら自由に動き回る権利を得られた。とはいえ常にわたしには監視要員がついて回る事になっているようだが。

 監視カメラも常にわたしを追っているし、あらゆる計器が四六時中わたしを観測している。まあ監視してくる人に関しては、わたしの視界に入らない程度の配慮はしてくれてるので気にはならない。

 

 セイバーのサーヴァント、柳生宗矩。やろうと思えばわたし程度の自我など押し潰し、自らの我を表に出せただろうに。彼はわたしなどを尊重して力と技術を与えてくれた。わたしの中に留まり続け、わたしが有用な存在であると示すために稽古の仕方や、心構えの仕方も教えてくれている。

 もし――なんて空想を抱くのも馬鹿らしいけど、彼が普通のサーヴァントとして現れ、会う事が出来たならわたしは最大限の感謝を伝えたい。彼はわたしにとって誰よりも重い、恩人だ。尊敬する人だ。

 

 剣の技、禅の心。わたし如き若輩の身では、とても扱えるものではないはずだ。剣聖というに相応しい彼は、今も霊基の中に教えを遺しわたしを鍛えてくれる。

 

【 我が心は不動。しかして自由にあらねばならぬ。即ち是、無念無想の境地なり 】

 

 鞘に収めた刀を膝に乗せ、座禅を組む。

 脳裏に浮かぶ言霊は、きっと剣聖・柳生但馬守宗矩の至った極致を表している。

 

「――剣は生死の狭間にて大活し、禅は静思黙考のうち大悟へ至る」

 

 わたしはわたしでいい。わたしは嘆かない。わたしはどんな所にいても、この心は揺らがぬ不動。そしてそれ故に自由だ。

 一瞬。一瞬だけ動く。いや、動いたという認識を置き去りにする。

 片膝立ちに立ち上がり抜刀、踏み込み、斬りつけ、飛び退き、納刀、元の位置に戻り座る。この一連の所作をひと呼吸とは言わない、瞬間の間に終えている。きっとわたしを捉えてる監視カメラや、わたしを見てる人にも動いたことを認識できてないだろう。

 

 シミュレーターのなかで、シャドウサーヴァントが首を断たれて消滅する。傍から見れば、わたしが何もしていないのにシャドウが斬られたように見えただろう。

 

『――状況終了。訓練は終わりよ、ガートルード』

「は」

 

 スピーカーから、新所長オルガマリーの固い声が聞こえる。わたしはそれに従い、シミュレーター室から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでよぉ――って聞いてる? なんだか一人でくっちゃべってる気がしてきて寂しいなぁ、おい」

「………」

「ん? おお……」

 

 通路を歩いていると、珍しい組み合わせに出くわした。Aチームのマスター候補、保塚望月(ホヅカ・モチヅキ)とBチームのベリル・ガットだ。

 保塚は何やらベリルに絡まれているようだが、無表情でやり過ごしている。しかし若干鬱陶しそうではあった。

 彼は寡黙な人柄だ。わたしも彼が声を発してるところを、数えるぐらいしか目にしたことがない。ただ優秀な魔術師で、故マリスビリーが直々にカルデアへスカウトした事からも能力は折り紙付きだ。死霊魔術師という事もあってか誤解される事も多いようだが、わたしとしては別段思うところはない。むしろ良い人だと思っている。

 対してベリルは――まあ、ちょっと嫌な人だ。具体的にどこがと言われたら困るけど、なんか……嫌な感じがする。ベリルはわたしを見掛けると破顔し、軽薄な笑みを浮かべて声を掛けてきた。どうもこの人はわたしの事を気に入ってるらしい。マシュやわたしに近づいて、Dr.ロマンに追い散らされたことを忘れているかのようだ。

 

「よぉガートルード。訓練帰りか? 大変だなぁ、デミ・サーヴァントとしての力を使いこなすための訓練つっても、お前さんにはもう必要ねえだろうに。憧れるぜ、機械みたく人を斬るガートルードはさ、なんつーか陳腐な言い方だが綺麗でよ――痛ぅッ……何しやがんだよ、保塚」

 

 機嫌良くペラ回すベリルの頭に、保塚がかなり強く手刀を叩き込んだ。

 振り返って抗議するベリルに、保塚は氷のような表情で冷たく言い捨てる。

 

「彼女に構うな。ベリル・ガット、またドクターに睨まれるぞ」

「うへ……そりゃ勘弁だ。仕方ねえ、また今度なガートルード。次は二人きりで、な……」

 

 あ、喋った。

 なんか助け舟を出してくれた保塚に対し、わたしはそんな事を思った。

 ベリルが何かを言っていたような気もするけど、保塚が喋った事に気を取られて全然聞いてなかったけど、どうせまた気持ち悪い事を言ったに違いない。

 保塚に対してだけ会釈をして通り過ぎていく。その時、保塚は言った。

 

「余り英霊の力を使うな。死が近づくぞ」

「―――」

 

 すれ違ったあの人の顔を見ることは出来ないけど、なんだか気遣われている気がする。やっぱり、良い人だ。

 そうして自室を目指していると、今度は別の人に出くわす。見ると、それはわたしと瓜二つの容姿をしている少女だった。

 

「あ、姉さん」

 

 彼女はマシュ・キリエライト。わたしと同じ遺伝子で設計されている、いわば双子の姉妹という奴だ。

 わたしが左目隠れ属性なのに対し、マシュは右目隠れ属性だ。それ以外に容姿での判別は不可能だろう。

 とはいえわたし達の間に、本来なら姉も妹もない。同時に生まれ、同時に実験されて、同時にデミ・サーヴァントになった。格差はない。英霊召喚第二号のサーヴァントを宿してるマシュと、三号のわたし――ちなみに関係ないけど四号がダ・ヴィンチちゃんさん――だ。

 だけど彼女に宿った英霊には、政治的判断能力が欠如していたらしく、退去こそしていないもののマシュの中で眠り続けているようだ。冷静に判断をしていれば、デミ・サーヴァントとしての訓練こそ強制されるものの、多少の便宜は図ってもらえたのに……Dr.ロマンが抗議して、彼女の資質を持ち出し故マリスビリーを説得しなければ、こうして表を歩くこともできなかっただろう。

 

 わたしを姉さんと呼ぶのは、多分マシュからすると自分より先にデミ・サーヴァントの力を発現し、表を出歩きはじめたのが先だからかもしれない。

 とはいえ今のマシュはAチームの主席だ。彼女がマスターになれば、わたしはマシュのサーヴァントになる予定である。立場では彼女の方が上だった。

 

「ん。何してるの、妹」

 

 しかし姉と呼ばれる事に不服はない。何せ姉は妹を守るものだとDr.ロマンが言ってた気がする。

 なら、サーヴァントとして(マスター)を守る自分は姉なのだろう。

 

「はい。その、ここでこの人が寝てるので、起きるのを待ってます」

「フォ……」

「………」

 

 マシュの姿で死角になっていたが、一人の青年が通路の真ん中で倒れてた。わたしはそれを見て眉を顰める。ついでにマシュの肩に乗っている白リスが、わたしを見て声を上げたのに会釈した。

 倒れているのではなく、眠っている? ……確かにそう表現した方が良さそうだ。この()()の青年は、とても気持ち良さそうに眠っていて――どうやらちょうど目を覚ましたようだ。

 

「ん……?」

「あ、起きました」

「………」

 

 青年は寝ぼけ眼で左右を見渡し、マシュに助け起こされるとボーっとしている。見た感じ、人畜無害だ。一般枠のマスター候補かもしれない。

 となると最初に通る関門で脳に負荷が掛かり、処理落ちに近い状態なのだろう。

 

「ここは……?」

「ここはカルデアの通路です、先輩」

「カルデア……先輩……?」

 

 マシュが謎思考からの天然を発動してるのを尻目に、わたしは彼を観察してみる。

 ……武道経験はなさそうだ。魔術師らしくもない。となると本当に一般枠で招かれた人なのだと思う。きっと外の世界で普通に、平和に暮らしてきたのだと思う。

 

 外、か……わたしには、縁のないものだ。

 

 わたしが黙っている間に、なんだか自己紹介をする流れになっていた。顰めていた眉を、更に歪める。

 

「私はマシュ・キリエライトといいます。こちらがフォウさん」

「フォウフォーウ!」

「あ、ああ……俺は――そうだな、フランシスコ――」

「ザビエルとは申されるな、御仁」

「―――」

 

 口を挟むと、青年は固まる。ネタを潰されて硬直したらしい。

 その隙にわたしから名乗った。

 

「拙者はガートルード・キリエライト。そこな娘の姉だ。呼びづらければガーちゃんでもメスガキちゃんでも好きに呼んでもよい」

「ああっ! 姉さんが借りてきた猫モードになって迷走してますっ!」

「め、メスガキちゃん……? ……あ、ガートルードとキリエライトの頭文字をくっつけて、自分が女の子だから……」

「自分をメスガキとか言わないで下さい姉さん! 妹の私の方が恥ずかしいです……」

 

 これは相すまぬ。

 なお日本語で話しかけたのに、青年は驚かなかった。ただ、微妙な顔で曖昧に笑ってくれている。

 うむ、これがジャパニーズ愛想笑い。我が師、導きの柳但先生もこんな顔を――しないな、うん。

 

 気を取り直したらしき青年が、今度こそ真面目に自己紹介をしてきた。

 

「俺は――」

 

 これがきっと、運命的な出会いという奴なのだろう、と後から振り返ってそう思う。

 なんともチープで、ありきたりだけど。

 わたしは、

 

「――岸波白野だ。よろしく、二人共」

 

 この人のために死のう、と。そう思うようになるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




(登場人物を見て)

GAIA「ファーwww」
ARAYA「えっ」

 作者の中の満足民が満足してきたので失踪します。
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