やはり書きたいところを書くのが正義と改めて気づいた今日この頃。
「――剣術無双・剣禅一如――」
神速の一刀は音を置き去りに、地に影を残さずに奔る。
距離を詰め、斬り、残心のため距離を取るまでの一連の流れ。それは敵が近づかれて両断された事に気づかず、距離を取られて納刀し漸く血が噴出するほどの疾さ。
百戦錬磨の赤い弓兵をして、比肩する者の無い
白百合の騎士や狂った愛を抱く怪人にも出し惜しみは無かった。初手で開帳された奥義が閃くや、交戦を開始してより一合も斬り結ばず首を刎ねる。刎ねられた首に載った敵の表情は、まだ敵と戦わんとしている顔で――己が死んだ事にも気づいていなかった。
「――
狂化を施され本来の冴えを失った狩人を多数の剣弾で射殺し、血塗れの王鬼を不死殺しの投影宝具が蹂躙する。
古き聖女であろうが敵は敵。呵責なく、容赦なく、一度の交戦を経ての二度目の交戦で、マスターの指示を受けた弓兵はワイバーンごと敵を殲滅した。
そして、最後の戦い。
「
真名を解放し、セイバーが聖剣を振りかぶる。
すると竜の魔女と魔元帥は最期を悟ったのか、星の内海で鍛えられた神造兵装の燦めきに目を眇めた。
最期に交わされた両者の囁きを聞く事はできなかった。
「――
十三拘束の半数を解かれた極光は、強大な邪竜を屠りそのまま魔女とその創作者を両断する。
竜の魔女から零れ出た聖杯を回収し、保塚望月は形式的に宣言した。
「戦闘終了。特異点化の元凶と思われる対象の撃滅を確認。マシュ、カルデアと通信を繋げ。人理定礎の復元が成されたかを確かめ、問題がないようならこのまま帰還する」
「了解」
王妃や音楽家、聖女との出会いはあった。語らい、共に旅もした。しかし彼らとの間に劇的なドラマはない。彼らが戦う事はなかった。
雑魚は保塚の魔犬と弓兵の射撃で事足りて、接近戦の心得のない敵を剣聖の写し身が斬断した。そして最たる難敵は、聖剣の一撃で吹き飛ばしたのだ。
揺らぎはなく、安定している。危なげなく対処して事は済んだのである。
――故に復讐者は失笑した。
歯応えのない狂化英霊は論外として、邪竜にはそれなりに手こずるかと思いきや、聖剣を撃たんとする騎士王を弓兵と剣聖が護ったばかりに一矢報いもせず一蹴された。湖の騎士を残していればまだ違った展開になっていたかもしれないが、あの騎士の宝具は実に有用だった。狩らない理由がない。
次の特異点では特に何もせずにいて、今度こそ観察に徹すればいいものを見れるかもしれない。そう思うも、此度も収穫があるにはあった。
「やはり最も先に殺るべき敵は貴様か――」
復讐者の視線の先には、剣聖の写し身がいる。収穫とはその奥義を見れたこと。――否、正確には
遠目にて目を凝らしていたはずの自分すら、残像すら捉えられなかった神速の斬撃。宝具によるものだ、その一撃はおろか踏み込みや抜刀、斬、後退を目で追えなかったのである。
あれは宝具であっても純然たる技。武器や防具、概念ではない故に奪えはしない。技を昇華した宝具だけは奪えない。
あの小娘と斬り結べば、ネメアの皮で護っている部分は無事でも、それ以外の部分を切断されるか貫かれる可能性に襲われる。悪竜の血鎧も貫通し、すんなり四肢を断たれかねない危険性もあった。無論尋常に立ち合い遅れを取るつもりはないが、絶対に勝てると断言するのは侮りでしかない。あれは神の技を超えた人の技だ、人間として素直に賞賛してやりたくすらある。
弓兵の手口は見た。あの男は交戦を重ねる度に手強くなる守戦の達人だ、一度か二度の交戦の内に接近戦へ持ち込めば、然程手古摺る手合いではない。騎士王の宝具や技、マスターによる指示の癖も見た。眼が良いのではなく勘が良い厄介さだが、しかし手古摺りはしても一対一に持ち込めばどうとでもなる。
殺す順番は、最初があの小娘だ。あの小娘がいるだけで有利な接近戦で弓兵を狩れず、戦闘を長引かされ手強くなる。そして弓兵が健在なら騎士王が重石となるマスターの護りに専念せずともよくなり、積極的に前に出られるようになる。
「確か――ガートルードと呼ばれていたな」
好ましい少女だ。人間として、その霊基共々尊敬すべき存在だろう。
だが関係ない。次の特異点で死んでもらう。
なに、直接切り結び矢を撃つ事ばかりが戦いではない。意識の外から罠に掛ける――狩りとは、狡猾に仕掛けるものなのだから。
「モトオミ」
「望月だ、いい加減覚えろ。それとノックも」
マイ・ルームに断りもなく入って来たかと思うと、似ているようで全然違う名前を呼ばれて振り返る。
ウンザリした目で見るとセイバーは怯んだようだ。相変わらず意味不明な所で意味不明な反応を見せる女である。
特に理由はないが、他人に名前で呼ばれる事を許した事はない。しかし初対面時から馴れ馴れしいこの女は名前で呼んでくる。間違えもするし、不愉快でしか無いはずが、逆にそう呼ばれるのが自然であるように感じるのが不可解であった。
セイバーの顔を見ていられない。俺はなんとも言えない気分でデスクに向き直り、背中越しに対応する事にした。淋しそうな顔が直前に見えたが、努めて気にしないようにする。
「何の用だ。俺はレポートを纏めてる最中だ、無駄話に付き合う暇はないぞ」
「……モチヅキ。私も無駄話をしに来たわけではありません。今後に関わる話を幾つかしなくてはならないと思い、こうして参上しました」
「今後に、ね。で……それは
セイバーの言いたい事は大体察しがつく。この女は俺がダ・ヴィンチに魔力リソースの不足を伝え、話し合う場に着いてきていたからだ。
大方その話だろう。もう一つあるとすれば、恐らく特異点Fで戦った敵の事を言いたいのかもしれない。マシュも岸波も気にしていなかった……いや、その余裕がないようだが、俺は一応警戒網を常に敷いていたのにまるで掛からなかった。メスガキは頭の中を空っぽにしたまま最善、最速の行動を取れるから心配はしていないが、奇襲でも掛けられたら最悪だった。
「お察しのとおりです」
「……何も言ってないんだが」
「モチヅキが私の考えを見透かせるように、私も貴方の考えが分かります。貴方は覚えていないようですが、私は貴方のことをよく知っていますから」
「またその話か。俺は『誉田基臣』とかいう男じゃない、どれだけ似ていようが俺と混同するな」
呆れて嘆息する。セイバーという英霊は分霊だ。その本体は英霊の座という時間の概念がない位相にいる。故にどの時間軸で出会った人物も、記録として識る事はできるという話は聞いた覚えがあった。
その話はマリスビリーから聞いたが、奴の言う限りだと記録は記録に過ぎず実感の伴った記憶にはならないらしい。つまりセイバーが俺に似た他人と混同していたとしても、こうも熱烈な信頼を向ける謂れはないはずなのだ。何せセイバーにとって、現世のどんな出来事も記録に過ぎないはずなのだから。
なのにどうだ? まるで
セイバーは物言いたげだったが、いい加減諦めたかのように嘆息する。
「……分かりました、もうこの話はしません。モトオミとモチヅキを間違わない事も約束します。ええ、思い返してみればはじめての体験というほどでもない。百度の繰り返しの中で、百回初対面を果たしたのです。また同じ関係になれるように努力しましょう」
「訳が分からんな……いいが、それより話が逸れてるぞ」
「すみません。では本題に入りましょう」
背中越しでも分かる。澄んだ顔で綺麗に微笑んでいる様が。
俺は理解を拒み軌道を修正した。するとセイバーは答え合わせのような口ぶりで話し始める。
「お察しの通り私はアヴェンジャーの事を話しておきたかった。モチヅキはフランスの特異点でどう思われましたか?」
「仕掛けてこなかったな。特異点Fだと別の特異点でも俺達に攻撃してくるような事を言っていたが……存外負け惜しみの類いだったのかもしれない。奴との戦闘は今後はない可能性がある」
「それは有り得ません」
セイバーが断言すると、俺はレポートに走らせていた筆を止め、椅子を回し体ごと振り返る。
どうもセイバーの声を聞いているとそれ以外の事が頭に浮かばないのだ、レポートを書こうにも気が散って仕方ない。先に話を済ませた方が建設的だ。
「なぜ有り得ない?」
「堕ちたとはいえあの男はヘラクレスです。消滅の間際に負け惜しみを口にするとは思えません。それにあの男の台詞には確信がありました……また戦う事があるという」
「フランスで仕掛けてこなかったのは、俺達の戦術を俯瞰した視点で観察するためだったと言いたいわけだ」
「はい。ですのでアヴェンジャーが我々を見ていた事を前提に対策を立てたいと思います。貴方は私より頭がキレる、策の算段を立てているはずだ」
本当に見透かされていて、しかもそれが心地よく感じる。頭を振ってそれを振り払おうにも、芯に染み付いているかのように拭えない。
ともあれ俺も同じ確信を懐いていた。故に対策を講じようとしていたわけだが、そこで目についたものは確かにある。
「……セイバー、お前は岸波に対してどう思う?」
問うと、彼女は首を傾げた。
「どう、と言われると……彼はよくやっていますね。アーチャーに指示し、ギリシャの女狩人やドラクルを討ち取ったのは赫たる戦果と言えるでしょう」
「分からないか? ああ、
「う……」
「人を見る目がないんじゃなくて、単に評価の基準が高すぎるのかもな。比較対象に円卓の騎士でも置いてるのかもしれないが……いいか? 岸波はあれが
そう指摘すると、セイバーはハッとした。どうやら俺の言いたい事がわかったらしい。
「異常だ。なんだって新兵がああも的確に判断を下せる? 右も左も分からず俺やマシュに頼り切るのが普通だ。魔術回路やレイシフト適性こそ並だが、岸波は戦術眼だけで言えば現時点で俺に並んでいるだろう。あと一度か二度の実戦で俺を超えるかもしれない。――天才だよ。いや、才能じゃないなあれは。たかが才能なんざで、英霊同士の戦闘を俯瞰し指示を出せるわけがない。あれはある種の異能とすら言えるかもしれないな」
「――では?」
「アヴェンジャー対策として俺達に出来ることは限られている。サーヴァントの追加召喚もできない現状、隠せるのは俺達の技能やお前達の宝具やスキルしかない。が、そのどちらも既に知られている。なら伏せ札として隠し、いざという局面で刺せるとしたら……それはマスター側の成長力だけだ」
俺はこの後で岸波に言うつもりだった。アヴェンジャーの事を考慮し、どうにもならなくなるまでは、アーチャーに指示を出さず好き勝手にやらせろと。
一の実戦は百の訓練に勝るが、千の訓練を積めば岸波は万の実戦を潜り抜けるかもしれない。そう思わせるだけの異常さがあった。
際立つのはその戦術眼を活かせる精神力もだろう。どう足掻いても普通じゃない。凡人に見せかけた別の何かだ。
「カルデアにいる時は集中的に岸波を鍛える。俺とお前、マシュとメスガキで岸波とアーチャーを袋叩きにする。その模擬戦を只管繰り返し、岸波が俺達を倒せるまでになれば充分だ」
「……期待が過剰ですね。彼が潰れるだけだと思いますが……貴方は彼がその重圧を跳ね除け、期待しているほどの戦術家になると見ているのですか?」
「ああ。荒事の経験がない、二十歳未満のガキが、いきなり戦場を経験すれば普通は壊れる。恐れに耐えるので精一杯になるはずだ。そうならず二度の実戦だけでマスターとしては俺に並んでいる。博打ではあるが賭けるには不足がない。それともなんだ、お前はアヴェンジャーに対処できるのか? 冬木だとかなりの数で押してやっと倒せた化け物だぞ」
「はい。私とマスターなら、絶対に勝てます」
その声音には、どこまでも揺るぎない自負があった。
自分とマスターなら、どんなに強大な敵でも打ち倒せる。自信と確信に満ち溢れていて――それを笑おうとしたのに笑えなかった。
確かに、と。そう思ってしまったのだ。
「………」真一文字に口を引き結び頭を掻く。付き纏うこの感覚が、痒くて痒くて堪らない。治りかけの傷がカサブタになっているかのようである。
いい加減、この感覚にはうんざりだ。そろそろはっきりさせるべきだろう。だがそれは、この話を済ませてからだ。
「……どうやってだ」
訊くと、セイバーは打てば響くように言った。
「あの男は狩人です。狩人に徹している内は厳しい、しかし戦士に戻してやり正面戦闘にさえ持ち込めれば、後はどうとでもできます」
「冬木ではしてやられていたのにか?」
「あれはわざとです」
わざと? あの死闘の中で、手を抜いていた? ――なんでそんな真似をしたと詰るべきなのだろう。そんな余裕はないはずだ、と。
だがそれを聞いて再び腑に落ちる感覚がある。それでこそと誇らしくも感じる。どんな意図があったのか、既に理解していた。
「念の為断っておきますが、カルデアに損害が出る局面なら手は抜きませんでした」
「分かっている」
「……あの時は私の別側面もいました。あれが私とは認め難いですが、私であることに違いはありません。あの私は敢えて我々の盾となり、アヴェンジャーの力を見せるために立ち回りました。私は様々なクラスのヘラクレスと戦った経験がありますが、アヴェンジャー・クラスのヘラクレスは初見だったからでしょう。その結果、基本的なステータスでは他のクラスには劣るものの、セイバーやアーチャー、ランサーなどにある武装の縛りがない事、
「………」
「
「……確実に、か?」
「はい。根拠は別の話に関係するので後回しにします。なので私がモチヅキに考えてほしいのは、如何にしてアヴェンジャーを白兵戦に引き摺り込むかについてでした。既に考えているものと思い込んでいましたが……」
俺をなんだと思ってるんだ、コイツは。俺は未来を見通せるような化物軍師じゃないぞ。
だが本当に勝てると言うなら、考えても良い。寧ろ考えるべきだろう。俺は顎に指を這わせ、無精髭を撫でた。後で剃らなきゃな、と思う。
熟慮は後にしよう。話は途中だ。
「アヴェンジャーについては了解した。考えておく。で、他に話はあるか?」
「はい。カルデアの魔力リソースの不足、それを補える手立てがあります」
「……、……なに?」
ミサイルを唐突にブチ込まれた気分だ。絶望的なカルデアの現状を、この女はどうにかできると言ったのである。
フランスでは竜の爪や牙、逆鱗などを集め、カルデアの炉に足して魔力に返還させたが、焼け石に水程度の効果しかなかった。それを知っているはずのセイバーが、こうまではっきりと断言するとは予想外だった。
まじまじとその少女の顔を見詰める。するとセイバーは自身の胸に手を当てて、宝具を取り出すかの如く金色の粒子を放つ。
「その手立てというのが、私がアヴェンジャーに勝てると言った根拠にも繋がります。これを見てください」
セイバーが取り出したのは――鞘?
豪奢で華美な拵えだ。聖遺物として特級の魔力を感じる。
騎士王の宝具に鞘があるとは知らなかった。アーサー王伝説に詳しくはないから、こんなものを見せられても特に効果は思いつかない。
まさか宝具をカルデアの炉にブチ込むのか? しかしそんな真似をするのは戦力が充分でない現在、積極的にやるべきじゃないと思うが……。
「これは聖剣の鞘、真名を
「……ん? つまり……なんだ。霊核さえ無傷で保てば、実質不死だという事か?」
「はい。ヘラクレスといえばヒュドラの毒が思い浮かぶでしょうが、それも私には効きません。また私と契約しているモチヅキも、これを有していれば限りなく不死に近い存在になれます。本来の担い手である私が傍にいるという条件付きで、ですが。そしてそれらは副次効果に過ぎません。真名解放をした際の力は別にあり――」
俺はセイバーの鞘の力を聞き、笑いたくなってしまった。聖剣の鞘とは言うが、もはや鞘以外の何かだったからである。
持ち主の傷を癒し老化を停滞させる。真名を解放すれば数百のパーツに分解し、所有者をあらゆる干渉から守り切る。あらゆる物理干渉、並行世界からのトランスライナー、多次元からの交信をシャットアウトする――もはや魔法の域にある。宝具のランクでは格付けも困難だ。
だがセイバーは聖剣の鞘を指して言った。
「――アヴェンジャーに敗けないと言ったのは、これがあるからです。彼の技を私は知悉している、即死を避けるだけなら容易い。そしてあの男の『宝具を奪う宝具』も、あらゆる干渉を反射するアヴァロンの性質上、真名解放時に奪われる心配もありません。即死を防ぎ、聖剣の一撃を浴びせれば、どんな敵にも遅れを取る事はないはずです」
「……確かにな。それなら勝つ算段は立てられる。なら考えるべきなのは奇襲を如何に阻止するかだけだ。で……それは理解したが、これがどうしてカルデアの魔力リソース不足解消に繋がる?」
「これは妖精郷と同じ名を冠しています。そしてそうであれば、
言って、セイバーは微笑んだ。それはほつれる事なき信頼を懐く者への、確信的な言葉。それに俺はピンとくる。
「もしかして魔術師マーリンの事か?」
「ええ。これがなくともマーリンなら、いずれカルデアを見つけ出し、秘かにプロメテウスの火へ魔力リソースを寄越してくれていたでしょうが――」
「……は?」
「彼は偏屈ですからね。どうせ傍観者なのだからと、陰ながらの支援に徹するつもりでしょう。ですがこの期に及んで、傍観者気取りなど烏滸がましいとは思いませんか?
「………………はあ?」
言うや否や、セイバーはアヴァロンの真名解放を実行した。
黄金の光を撒き散らし、光るマイルーム。話についていけないで目を白黒される俺をよそに、セイバーは優しげに語りかけた。まるで誰かが自分を視ている事を、能力や勘ではなく、ただ信じているだけのように。
「マーリン。視ていますか? 貴方の事だ。カルデアの事を知ったなら、魔力リソースをアヴァロンからくれようとしていたかもしれない。ですがそんな迂遠な事などせず、どうか私の顔に免じて直接来てほしい。貴方が罪と感じているものは私が赦します。それでも自分で自分を赦せないなら、一時的な保釈とでも受け取ってアヴァロンから来てください。マーリン――貴方の力が必要です」
セイバーは魔力を切り、数百のパーツに別れていた鞘を結合する。そうして手にした鞘を霊基に戻して、暫くの間俺との沈黙に身を浸した。
何も起こらないじゃないか。そう言いかけた瞬間だった。
ひらり、と。一枚の花弁がマイルームに流れ込む。花? 俺の部屋に花なんて飾ってはいなかったはずだが――いや、これは、まさか。
驚きに目を見開く。花弁はやがて部屋に満ち、嵐のように渦を巻いて――その中心に一人の
カツン、と。手にしていた杖で床を叩くと、花弁は幻のように消え去る。そしてその場に佇む魔術師は、居た堪れなさそうに頬を掻いた。
「あー……
「いいえ。今の私は騎士王です」
「なら我が王と。うん……えっと……そういうわけで、アルトリアに呼ばれたとあっては無視できなくてね。あー……っと、その……アルトリアのマスター君。
なんとも座りの悪い様子で視線を彷徨わせるマーリン――話の流れからすると、英霊ではない本人そのもの――が、俺を視る。
既知感。アルトリアに感じるものに似ている。俺は、コイツと……会った事がある? それも……古い友人に感じるような、錆びついた親しみも……。
驚き過ぎて声も出ない俺に、マーリンは居心地悪げな笑みを浮かべた。
「やあ、どうやら初めましての方かな。それじゃあ初めまして、私はマーリン――
それ花じゃないだろと突っ込むべきか。それともこうもあっさりカルデアに乗り込んできたマーリンに突っ込むべきか。
悩ましい気分のまま呆然としていると、侵入者を察知したらしきカルデアに警報が鳴り響く。『モチヅキ! 大変よ! 何かがカルデアに侵入したわ! 大至急――』とオルガマリーの声が流れてくるも、それをあっさり遮断したマーリンは肩を竦めた。
「うーん……本当なら折を見てカルデアの英霊召喚システムに紛れて、分霊でも送り込もうと思っていたんだけどねぇ。まさかこうして直接出向いて来る事になるとは思わなかったよ。困った困った……私が関わるとロクなことにはならないんだが……まあ、君達がいるならそうもならない……かな?」
よろしく、と手を差し出され、流されるまま握手を交わしてしまう。笑みを深めたマーリンに、俺はなんとなく思った。
絶望的な何もかも。どうにもならなくても予定調和でしかない破滅。それがすんなりと覆るかもしれない、と。
セイバーを見る。彼女は頼もしげにマーリンを見て、それから俺と目を合わせた。大丈夫、何も心配する事はないと言いたげに。俺はそれに――
「ん? 閉じていたはずの部屋の結界が――」
「マーリンシスベシフォーウ!」
「ぐわぁぁぁ!? いきなりご挨拶だなキャスパリーィィィグ!!」
――本当に大丈夫なのか? と疑わしい気分になりセイバーの目を見詰めると、気まずげに視線を逸らされた。
突然やって来た小動物の突撃を食らい、錐揉み回転をして吹き飛んだ花の魔術師は、余程の大ダメージを受けたのか目を回していた。
ARAYA(チーター)「はあ!? こんなんチートや! チーターや!」
キングメーカーのエントリー。
なおマーリンは原作でも秘かにカルデアに魔力リソースを送ってた。レイシフトの要領で。流石は冠位魔術師…。
本人が歩いて来れたのは、アヴァロンとかいう縁深い物を目印にできたから、という独自設定です。実際できそうで困る。
なお聖剣を防げる・避けれる場面、武器、格などを持たない敵は、ほぼ確殺される模様。高度な白兵戦能力、防御力がないとメスガキに首置いてけされ。豊富な手札と柔軟な戦術がないと弓兵と月の王に完封される鬼畜モードカルデアです。ぬは犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな…。
面白い、続きが気になると思って下さった方は評価をお願いします(魔力切れ)