青王と逝くブリテン異聞帯   作:飴玉鉛

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矛盾とかあるかもだけど許して……許して……


あーもうメチャクチャだよ

 

 

 

 

 えっそれは……?(困惑) ちょっと待って。ほんと待って?(真顔)

 何があったの? 私、何かしましたっけ? マジで待ってください。チャート確認してきます。

 ……うん。

 ………うん。

 はい、確認してきました。私は確かにチャート通りに進めてますし、これまでの試走で同じ道を通ったこともあります。

 これまでホモくんの死体を幾つも積み上げて練り上げたチャート。狂いなんかなかったはずなんですが……えぇ? なんで? なんで今回に限ってこんなことに? チャート壊れるぅー!

 

 あーもうメチャクチャだよ。ふざけんな!(声だけ迫真) なに勝手なことしてくれてんの? こんなんじゃRTAになんないだろ(正論)

 ホモくんお前、一番態度悪いって言われてるよ。何してたかログ視たら分かるから。

 こっちの事情も考えてよ。試走何回してると思ってるの? あの周回除けば36回だよ36回。うん? 36……普通だな!

 

 これは……リセ案件、ですかねぇ……。今ならまだ、私のメンタルも致命傷で済みますし……。

 

 もしかしたら私の把握してなかったマスクデータがまだあって、私が気づいてない内に変なフラグ踏んでた可能性があります。

 もう一回、今度は鯖でも変えて同じ道走ってみましょうか。私の勘ですがこれ、原因は青王なんじゃないかって思うんですよ(名推理)

 だって色んな鯖で試走して、第二部入りまでは確実なチャートだと確定してたんです。で、今回のコレ。今までと違うのは青王とかいう大正義強鯖を引いてたことなんですね。

 

 はぁ(クソデカ溜息)

 

 いやマジでアイツどうしてくれましょうか。げんなりっすよげんなり。違った、うんざりっすようんざり。

 割と大変だったんですよ? しかも今回のホモくん、今までのホモくんより良い体してる最高傑作っていうか。これはイケるって確信してたんですよね。なのにこの仕打ちですよ(震え声)

 とりま、再走します。クッソ面倒臭いですがやむを得ません。第一部時点でガバるとか有り得ませんから。しゃあないんでホモくんには自殺してもらって……んー。でもなぁ、こんなパターン視たことありませんし、もしかしたら私のチャートより早くなる可能性も微レ存してるかもですしね。うーん……ホモくん、惜しいし。うーん……! 悩ましい!

 

 キメました。とりあえず続行してみます。もしかしたら奇跡的に上手くやれて、なんやかんやとタイム短縮できるかもですし。

 

 ですが私とて暇ではありません。もし一度でもリカバリー不能そうな事態が起こったり、明確にタイムロスになる事態になったら、躊躇なく再走です。まあ多分再走することになると思うんですけどね。

 だって第一部ってあれ、かなり綱渡りですよ? 色んな要因が絡み合ってマジもんの奇跡が起こってゲーティアに勝てたんです。そうでなければ詰みますよいやホントに。なので第一部だけはガチで原作通りが一番良いんです。

 ここテストに出ますが、色んな先駆者兄貴達も口を揃えて言ってます。安定して第一部クリアしたいなら原作通りにしろって。

 変にホモくんとかいうイレギュラー投入したら……ゲーティアがどんなアクション起こすか想定不能ですよね。最後の最後までナメプしてくれてたのは、相手が一般人で平凡な主人公フジマールだからですし。Aチーム・マスターのホモくんがいると、微妙に力加減を変えやがる可能性は充分にあります。仮にゲーティアがナメプしようとしてくれても、他の魔神柱が意見出して潰しに来ることも有り得ちゃうんですよね。

 

 なーのーで。

 

 今回は捨て回のつもりで流しますね。試走の心構えです。

 何気に本作のAIはかなぁり優秀なので、オートで流すと想定外が起こる事が儘あります。

 で、第六特異点でどうなるかを視て今後の趨勢を占いましょう。前も言いましたが、ホモくんが冬眠中もタイムストップしてないんで、何もかもを上手くやれば第一部のタイム短縮をできたりするかもです。

 序盤のあの周回で加算したタイムロスを、帳消しにしてお釣りがくる事態になったら……次回に活かせる材料にして、チャートを良い具合に改善できる可能性がなくもないです。

 

 はい、というわけで再開。

 

 フジマールは既に第六特異点に逝ってるようですね。もちろんマッシュも。で、カルデア職員達がホモくん解凍作業に移っております。

 ロマニキはどうやらダ・ヴィンチちゃんに説明を受けてたらしく、ダ・ヴィンチちゃんが特異点入りしてる中、彼女の代わりにホモくん解凍作業を主導してくれてるようです。

 

「――ああっ! よかった、本当だったんだ!」

 

 〉ロマニ・アーキマンが喜色を浮かべて、コフィンの中から出てきた貴方を出迎えてくれた。

 

 笑顔が眩しいですねぇ。曇らせたくなります。しかし今のホモくんは野獣と化してるので近づかない方がいいっすよ?(善意)

 ほらホモくんコフィンから出た途端、ガオーってロマニキに襲い掛かりそう。理性の力か何かで耐えてるのは吸血衝動、死徒がなるアレ。まるでお薬(意味深)の禁断症状みたいだぁ。

 

「うわわわっ!? ああそうだった、レオナルドにこれ渡せって言われてたんだった!」

 

 〉貴方は「死徒化解除薬」を受け取り、すぐにその場で呑み干した。

 〉肉体への負担が大きかったのか、貴方は気絶してしまう。

 

「だ、大丈夫かい!? 大変だ、かなり弱ってる……皆、彼を医務室へ」

 

 サーッ(迫真) って、ホモコロリ入りのアイスティーでも飲まされたみたいに、ホモくんがコロッと気絶しましたね。

 ……うーん。なんか駄目っぽいですが、まだ判断は早い気もします。目を覚まして行動を開始するまで、生温かい目で見守ってあげましょう。

 

 ホモくんが寝てる間、医務室にはロマニキが。

 個室に二人の男たち、何も起きないはずがなく……なんてこともなく、普通にロマニキは出ていきましたね。今のところ見るべきところもないんで、サクサクッと流しましょう。

 

 〉貴方は、ロマニが出ていった瞬間に目を覚ました。どうやら気絶したフリをしていたらしい。

 

 おっ? やりますねぇ! どうやらホモくんは初動で何かをやらかすつもりみたいですよ。

 視聴者のみなさん。AIがどう判断するかを見守ってるだけの今回、ただの実況動画になってる現状ですが、再走するかしないかの判断を下すためにもう少しだけ様子見させてください。

 

 〉待機状態で励起していた魔術礼装『百一匹魔犬(イソップ・テイル・ドッグ)』を起動した貴方は、限界まで絞っていた魔力を供給してもらい、またたく間に回復した。

 〉そして早速起き出して、自身の状態と礼装を確認。聖杯の状態も確かめると、魔術刻印も起動して魔術を行使した。

 〉するとカルデアの管制室にいた職員に擬態していた魔犬が、自律行動モードから指令入力を求める待機状態へ移行する。

 

 あっ、ふーん(察し) なるほど謎は全て解けた(大嘘)

 

 〉貴方は素早く指示を出した。すると貴方の端末はこれまで通り職務に忠実で、善良な職員に立ち返ったようだ。

 〉わざわざ待機状態に移行させたのは、単なる動作確認のためだろう。

 

 ん……? おっかしいな……ホモくんは弱視とはいえ千里眼持ちで、直近の未来なら視えるはずです。わざわざ確認する意味なんかなくないです?

 なんかおかしい。ちょいホモくんの状態を確かめま――なんだこれ(素)

 なんとホモくん、精神状態が『緊張』になってます。それもそこそこ重度な感じの。そのせいでやらなくても分かってることを、無駄にやって確認とかしてしまったんですね。

 ホモくんは今までずっと冷静沈着だったんですが……そんなホモくんが緊張してるってことは……うーん、もしかして、勝負に出る気、とか? それもホモくんの千里眼では視えないぐらいヤバイ勝負に?

 

 なーにをやらかそうとしてるんでしょうねぇ。今回はマジでよりよいチャートを練るための試金石にしようかしら。

 

 うん、ホモくんの好きにさせましょう。駄目っぽそうなら即消し、そんで良さげな感じになったらオートモードをやめて、私がコントローラー握ります。

 嬉しいだルルォ? ホモくん殴り合いクソザコナメクジなんだから。なにがあっても私のプレイスキルでなんとかしてやりますって。私で無理だったら諦メロン(無常)

 私は優しいので、緊張してカッチカチな彼の緊張をホグしてあげようと思います。今までホモくんが『俺には感情がない(キリッ)』プレイしてたので、一回も使う機会がなかったプレイヤーのコマンドスキル『沈静化』を施してあげましょう。

 これは恐慌状態に陥ったPCキャラやNPCキャラ、この場合はホモくんと、ホモくんと契約してる鯖を対象に使えます。するとホモくんは一瞬で冷静になります。なお一日で使用できる回数は三回しかなく、FGOの令呪システムと同じで一日一回分回復する仕様です。

 

 〉貴方はナースコールで医療スタッフを呼び出し、回復したので早速仕事に取り掛かりたい旨を伝えた。

 〉スタッフに呼ばれたロマニがやってきて、消極的に言う。

 

 モブにはセリフなんて用意してませんってか? ひでぇや。

 

「君は病み上がりだ。ドクターストップを掛けたいところなんだけど……バイタルを見るに、本当に回復してるね……どうなってるの?」

 

 〉「ダ・ヴィンチから話を聞いていないのか?」

 

「え。ああ、うん。レオナルドは君からのメッセージで、君が解凍可能な状態で、君が用意してる薬さえ渡せば元気になるとしか……後は君が大丈夫そうならすぐにレイシフトさせてくれって……サーヴァントは現地で、マシュの盾を基点に召喚すれば良いんだって言ってたな」

 

 〉「ならすぐに仕事だ。動ける人間は動くべきだろう」

 

「話が早すぎて何が何やら……」

 

 〉ロマニは貴方のやる気を見て困惑している。

 〉だが貴方はロマニに自分の事を話す気はなかった。必要になればダ・ヴィンチが勝手に話すだろう、と。

 

 どうやら特異点にレイシフトするみたいですね。

 ホモくん達がコフィンのあるとこに行きました。早速コフィンに入ったホモくんは、自分が持てる最高の装備を整えてます。

 

 〉貴方はレイシフトする直前、スタッフに擬態してる自分の端末に指示を飛ばした。

 

 ん?

 

 〉『百一匹魔犬』の内の三体で構成された端末が、絶妙のタイミングで素早くレイシフト先の座標を改竄する。

 〉そして貴方の指示に沿い、貴方のバイタルデータを隠蔽した。

 

 あっ(察し)

 

 〉これで端末の役割は終わり。以後貴方の支配下から切り離された端末は、善良なスタッフに擬態したまま過ごし、破壊されるその時まで稼働していくだろう。

 〉「百一匹魔犬が九十八匹になったところで……俺にとっては大差がない。どうせすぐに補填できる」

 〉貴方はコフィンの中で呟き、レイシフトした。

 

 〉レイシフトした先には、誰もいない。

 〉どうやら思惑通り、藤丸立香やマシュ・キリエライト、レオナルド・ダ・ヴィンチから遠く離れた地点にやって来れたようだ。

 〉カルデアはパニック状態だろう。貴方のバイタルを辿って居場所を掴もうにもどうにもならず、通信まで繋がらないのだ。

 〉原因は貴方。貴方は冷静に始動する。

 

 〉暫く人目を避けて彷徨っていると、貴方は目的地を発見した。第六特異点での敵首魁、獅子王を名乗る女神のいる聖都だ。

 〉貴方はそれを見つけると、遠く離れた地点に伏せた。そしてそのまま、時を過ごす。

 

 はい。割とマジで何しようとしてるか視えてきました。

 歳甲斐もなくワクワクしてきますね。

 

 〉貴方はそこで待った。何時間も、何日間も。その間の水や食糧の調達は、隠蔽特化した礼装の魔犬群に行わせた。

 〉どれほど経ったのか、時間の経過など貴方は気にしない。

 

 私はするんですけどね(真顔)

 

 〉すると戦いの気配がする。貴方が起き上がり空を見上げると、なんとピラミッドが聖都に落下しているところだった。

 〉貴方はそれを見るとすぐに走り始める。

 〉貴方は疲労しない――走り続ける。

 〉貴方は速い――魔犬群の統括者だから。

 〉そうして貴方は、聖都の門が掌型に貫通しているのを見て、そこを突破していく。

 〉道中、邪魔立てする者は全て倒した。聖杯を動力源にしている貴方に勝つには、サーヴァント並の戦闘力が必要だろう。

 

 うーん、強い(確信) ホモくんが、ではなく『百一匹魔犬』が。

 ケイネス先生の水銀ちゃんと違って群体なので手数が多く、聖杯の魔力で出力が桁違いに跳ね上がってますね。

 しかもホモくん、的確に自分が見つからない道を選んで、どうしても見つかるところは数が少なく脅威度が低いところを、ワンちゃん達を使って強行突破してます。セイ抜の騎士達も、破産(意図的な誤字)軍団も、貴方を見つけられないでしょう。

 

 厄介というか凄いのは、ホモくんの千里眼が見落としてる敵も、ワンちゃんが匂いや音で感知できるところです。これはガバらない。強い(二度目)

 次走る時もワンちゃん作りましょうそうしましょう。こんなクッソ有能な礼装作らないわけにはいきません。

 本当はケイネス先生クラスでしかないのに(先生はマジ強である!)、聖杯パワー使うとシャドウサーヴァント級の戦力になるとか有能過ぎィ!

 

 〉貴方は藤丸立香達と、獅子王の決戦に間に合った。

 〉だが貴方に、カルデアへ加勢するつもりはない。もちろん獅子王にも。

 〉やがて決着が訪れ、獅子王は敗れた。

 〉聖剣が返還され、騎士ベティヴィエールはその旅を終えて。

 〉特異点が崩壊を始め、カルデアのメンバーは貴方を残して特異点から退去した。

 

「――そこにいるのは誰だ」

 

 〉すると、貴方の存在に気づいていたのだろう。獅子王が聖剣を手に、貴方のいる方へ鋭い視線を向けてきた。

 〉貴方は姿を現す。獅子王も、貴方も、互いに冷たい視線を交わした。

 

「何者だ」

 

 〉問われ、貴方は答える。

 

 〉「俺は()()()()()()()。そして()()()()()()()()()()、セイバー」

 

「セイバー? 何を……いや、そうか。貴様はサーヴァントである私を……正確には聖槍ではなく、聖剣を持ち続けた私を召喚したことがあるのか」

 

 〉「そうだ」

 

「何を戯けたことを。私は貴様のサーヴァントではない。起源は同一でも決定的に分かたれた別人だ。――それで、私になんの用があってここにいる? 私にはもう時間がない。急がねば間に合わなくなる」

 

 〉「交渉がしたい」

 

「交渉だと? カルデアは私の敵だったが、カルデアの敵もまた私の敵でしかない。無様な死に様を晒すとはな……」

 

 〉獅子王は聖剣を手に、貴方に歩み寄ってくる。

 〉明確な殺気があった。時間がないからだろう、貴方が敵だと理解した獅子王は、貴方を殺すつもりでいるようだ。

 〉だが、貴方に焦りはない。寧ろ分かっていたように、呟いた――

 

 お? おぉ?

 おぉおお!? なんだ!? ムービーがはじまりましたよ!?

 こんなの私知らない! っていうか誰も知らないんじゃないですか!?

 まさか私、新規ルート開拓しちゃった!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――まあ、そうなるだろうな。視ていなくても分かっていたさ。なあ……アルトリア」

 

 ピクリと形の良い眉を動かした獅子王は、明確な脅威を感じた。

 目の前の、ただの人間に。

 サーヴァントですらないただの人間に、だ。

 なんだ、なんだというのだ。

 悪寒がする。獅子王は訳も分からないまま、勢いよく(ソラ)を見上げ。

 

「勘が鈍ったな。俺の知るお前が敵だったら、直前に俺の首を刎ねれていただろうに」

 

 淡々と嘆く青年に、しかし女神は答えられない。

 ()()()()()()()()()()。指先一つ動かせなくなっている。

 

「お前は女神だ。だが神核を砕かれ、満身創痍の状態では抗えないだろう」

「き、さま……」

「ん、喋れるのか? 大したものだよ」

「き……さまぁ……! 聖都(ここ)に、()()()()()()()ぁ……!」

 

 青年は俎板の上の鯉となった女神に向け腕を掲げると、袖を捲って()()()()を見せた。

 それは、令呪だ。

 だがカルデア製のものではない。その令呪は――

 

「これは大令呪(シリウスライト)。お前を今、縛っている者から与えられた代物だ」

「ぐ……」

「俺は以前、()()と交渉した。対価としてこれから起こる人理焼却を伝え、その上で()()()()と。そうすれば人理が焼却されている中で、特異点でも俺を通せばお前の力を及ぼせるだろうとな。

 そしてそれは叶った。賭けだったが実現した。しなかったらここでお前に殺されていただろうが……まあ、それはそれで良しとできたな。だが――下手に力を出せば、人理焼却の下手人に存在が露見する。動けるのは特異点が崩壊し光帯が消えた後しかない」

「答え、ろ……! 私を、どうする気だ!?」

 

 青年は、微笑んだ。それはまさに夢見るような、爽快な笑みだ。

 

「お前としようとした交渉内容はな、『折角ここまで築いた世界を手放すのは惜しいだろう。俺の手を取ってくれたら、この世界を残せる』というものだ。もちろん拒否権はない。ああ、たった今お前を縛っているのは異星の神だよ。万全のお前なら抗えただろうが、敗れたばかりのお前にその力は残っていない。だから――詰みだ。俺と異星の神はこの特異点を、お前の聖槍で固定して世界の裏側へ移動させる。未だ人理焼却が及ばない理想郷(アヴァロン)と同じ次元にな。ああ――『できると思っているのか? 私は貴様になど協力しない。私を縛れても、私を支配する事は出来ないだろう』か。その通りだ」

「――――」

 

 先回りして言われた言葉に、女神は戦慄する。

 自身の命運が、本当の意味で――しかも覚悟していたものとは全く違う形で――尽きようとしている。

 抗う術が、なかった。

 

「世界の裏側へ跳んだこの特異点は、カルデアからは観測されない。もちろんアヴァロンを発見できず、焼却できていない魔術王からも。そして来たる時に表世界へ再来しよう。他の異聞帯のように剪定事象からの刺客としてではなく――特異点から変異し、昇格した異聞帯として。お前にはその異聞帯の王になってもらう。無論、お前自身はここで消えるわけだが」

「おの……れ……」

大令呪起動(シリウスライト・スタンバイ)――目の前の女神を贄として希う」

 

 青年が唱えた。自身の胸に手を当て、そこから()()()()を分離させて。

 そして彼は死に体の女神を贄とする。復活の礎とする。

 ただの英霊召喚ではない。生きた女神という、最高の神性存在を利用した霊基の再臨だ。

 異聞帯の王になってもらうには、元の騎士王では力が足りない故に、聖槍をも備えた聖剣の騎士王として――女神の神核を持って蘇ってもらうのだ。

 

「告げる――汝の身は我がもとに。我が命運は汝の剣に――」

「わかって……いるのか……? どんな、私であれ……私は、貴様の行ないを……糾す」

「――フン。何を言うかと思えば。そんな事――とうの昔に知っている。だが約束したんだよ、俺は」

「何……?」

「俺は、俺だけはお前の味方だと。お前の望みを……ブリテンを救うという願いを応援するとな。無論俺が生き残ることが最優先だが――まあ、この世界のブリテンは少し遠いが、時間の壁を抜けての帰還も容易いだろう。この大令呪を以ってすれば」

 

 もはや言葉は不要だった。

 青年は断行する。全ては己の命のために。そしてその上で、己に孤独を与えた憎い女を……愛しい女を……再び、自分の許に喚び出すために。

 

「――聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うのなら――」

 

 願った。子供のように。迷子のように。

 どうかお願いだ、嫌わないで――

 

「――応えましょう。なぜなら一度誓いました。私は貴方の許へ、再び舞い戻ると。マスター……貴方は、とんでもない大馬鹿者でしたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと書きたいスタートラインにしてゴールラインに辿り着けました。
満足したので失踪します。
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