間違った世界で生きていく   作:輪廻の主

4 / 4
感染者を虐げて来たウルサスが悪か。

レユニオンのしたことは果たして正義と言えるだろうか。

目には目を。歯には歯を。罪には罰を━━━━

誰もこの世界の負の連鎖からは逃れられない。





災厄

情報を引きずり出すことに成功した僕は、真っ直ぐ救出部隊との合流を目指していた。あくまでも最優先事項はドクターの救出だ。なるべく戦闘は二の次に。被害は最小限に。助けられる人は助ける。

 

彼ら(ウルサス人)が感染者にしたことを知っている。それに対して怒りを露にし憎悪の剣を振りかぶる気持ちも分からなくもない。だが━━━

 

燃える町。殺されていく人々。幼い子供ですら、彼らの復讐の炎の前には等しく焼かれていく。これが、この惨劇が、彼らのしたかった事なのか………?

 

今にも剣を振り下ろそうとする奴を蹴り飛ばして子供を助ける。多少の擦り傷をしているようだが、大きな傷は無かった。倒れている子供を優しく抱き上げ立たせる。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん、ありが………ヒエッ」

 

少年は僕の顔を見て怯えてしまった。どうして………あぁ、そう言えば仕事用のマスクをしていたままだった。僕はいつも仕事中に着けているマスクを外す。歯が剥き出しになったような黒色のマスク。左目だけが見えるようになっている為、かつての傭兵仲間からは、『隻眼』と呼ばれていた。

 

少年に出来るだけ優しく声をかける。

 

「まだ歩ける?」

 

「う、うん、大丈夫」

 

「お父さんやお母さんは?」

 

「わ、わからない………お母さんと逃げてる途中で……いつの間にかいなくなっちゃってて……」

 

はぐれたのか………。まぁ、これだけの混乱の中だ。無理もない。

しかし、今は迷子の両親を見つける時間はない。

 

「ごめんね。お兄ちゃんは行かなくちゃいけないんだ。ここを真っ直ぐ行くと脱出用の船があるはずだから、そこへ行くと良い。たぶん他の大人の人もいるはずだから」

 

「お兄ちゃんは……?」

 

「お兄ちゃんは大丈夫。とっても強いから。ほら、早く行っておいで」

 

「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」

 

そう言って少年は走っていった。無事に逃げられると良いな…………。

少年を見送っていくと、背後から足音が多数聞こえてきた。その足音からは怒りや苛立ちが聞き取れる。レユニオンだろう。逃げてきた少年達を追ってきたのか。ここで彼らを通してしまったら、あの少年も殺されてしまう。それは駄目だ。

 

「お前は、誰だ?」

 

リーダー各であろう人が話し掛けてくる。ここに居る時点で敵であることはほぼ間違いないだろうに。随分と呑気なことだ。

マスクを着け直し、親指で人差し指を押さえながら鳴らす。いつからか身に付いてしまった癖だ。

 

「貴方達に恨みはありません。だけど、貴方達のしたことは許せない。だから━━━」

 

四本の鱗赫が蛇のように鎌首をもたげる。

 

「死んでください」

 

四本の鱗赫はそれぞれ一番近い敵の心臓に突き刺さった。速さに誰も反応できなかったらしく、殺された人のすぐとなりに居るやつは目を見開き硬直していた。

全員が僅かに固まったこの瞬間を逃すほど、僕は優しくない。

 

空中へ飛び上がり、羽赫をマシンガンのように撃ち下ろす。これだけで全員死んだ。レユニオンの雑兵ではこの程度だろう。

 

「早く行こう」

 

予想外の出来事に時間を食ってしまった。予定通りに進んでいれば、アーミヤさん達は既にドクターを救出したはずだ。

 

 

混乱が支配する街を駆け抜けて行くと今日一番の衝撃を感じた。それはすぐ近くで起きていた。

 

超高熱の炎は近付くだけで死をもたらすだろう。それに抗うは黒いアーツ…………あれは━━━━

 

「アーミヤさん……?」

 

敵の炎を押し留めているアーミヤ。彼女の背には、救出部隊とドーベルマンさんやAceさん、二アールさん達もいる。そして彼らが取り囲むようにして守っているのがドクターだろう。フードを被り顔の大半をマスクで隠している為、表情はおろか性別も分からないが、恐らくは男性だろう。

 

 

アーミヤと敵の攻防は拮抗していたかに見えたが、それも一瞬の事だった。再び激しい衝撃の後に立っていたのは━━━

 

「面白い力だ━━━しかし、これで終わりだ」

 

敵だった。

 

彼女の周りは燃え盛る炎に呑まれ灰塵となる。それは感染者の負の感情を表しているようで、何故か僕にはそれが、とても痛々しく見えた。

 

状況は正に絶体絶命。今の彼らにあの敵を倒せる力は無い。あと炎の前にはどんな盾も剣も、等しく灰となるだろう。

 

しかしそうはさせない。

 

「アーミヤさん!下がって!」

 

僕の声に近くに居たAceさんがアーミヤさんの腕を引っ張り無理矢理下がらせた。

 

羽赫による攻撃が炎を纏った敵に降り注ぐ。これだけで倒せるとは思ってないけど、目眩まし程度にはなるはずだ。

 

「なんとかご無事なようで何よりです。ここは僕が引き受けます。アーミヤさん達は直ちに離脱を。もう時間がありません」

 

ここに来る途中から状況は最悪なものとなった。天災が容赦なく降り注いでいる。この中で戦うなど無謀すぎる。しかし、やらねばならない。

誰かがやらないと…………この怪物を押し止めていないと━━━

 

 

「…………珍しい物を見た。喰種(グール)か?」

 

「……………」

 

答えは無し。口を開くな。体を動かせ。少しでも長くこの怪物を足止めする事だけを考えろ。

 

僕の羽赫が流弾となり相手を襲う。しかし相手はそれを剣を横一閃に振るっただけで消したのだ。

 

状況を冷静に処理していく。僕と相手との力量差は明確だ。まともにやり合えば勝ち目は薄い。0じゃない。奥の手を使えば勝てるかもしれない。あくまで可能性ではあるけれど、それにはアーミヤさん達が完全に離脱することが条件だ。と言うかまだ居たのか。

 

「カイン………さん……っ」

 

 

アーミヤさんは気を失ったようだ。だがこれは都合が良いのかもしれない。彼女はどうも優しすぎる。リーダーとしての素質は十分だが、やはりまだ幼い。状況次第では仲間を切り捨てねばならないのだ………。

 

「………リンネ」

 

「ドーベルマンさん、即座に離脱を。天災に巻き込まれて任務失敗なんて嫌でしょう? ここは僕に任せてください」

 

「━━━すまない」

 

流石は元軍人。やはり判断が早いし的確だ。

僕はこの間にも相手から目を逸らさない。殺そうと思えばいつだって殺せるはずだから。

 

「リンネ。俺も残る」

 

後ろから盾を構えたAceさんが僕の隣へ並び立った。確かに彼の実力は高い。彼もまた、ロドスを支えるエリートオペレーターだ。それに彼が居れば稼げる時間も長くなるのかもしれない。だけど

 

「いいえ。貴方も一緒に撤退してください。ここは僕一人で十分です」

 

「それは無茶だ。奴のヤバさは既に知っている。ここで仲間を一人残して行くことなど」

 

「ですが貴方も、同じ状況ならそうしたはずです」

 

Aceさんは苦い顔をして黙った。やはりそうだ。僕の任務は突入部隊を安全に帰還させること。それにAceさんはこんな所で死んで良い存在じゃない━━━━

 

「まだお喋りする余裕があるとは………気楽なものだ」

 

ッ!不味いッ!

 

敵の前だと言うのに喋りすぎた。

 

敵の炎はまるで津波のように迫ってくる。あらゆる物を飲み込む絶望として、僕達を飲み込もうとする。それはまるで怪物の顋のようで━━━

 

「ふっ!はああああああっ!!」

 

Aceさんが盾を構える。何をしたのかはよく分からなかったが、どうやら炎の津波から守ってくれたようだった。

 

「感謝します」

 

「礼なら良い。それよりも━━」

 

状況は最悪と言って良いだろう。次第に激しくなっていく天災。目の前にはその天災にも似た怪物。フリーの傭兵と言う立場だったなら迷いなく逃げるんだけど………そうもいかないな。

 

せめて彼女達が逃げきるまでは

 

「僕が、時間を稼ぐ(捨て駒になる)━━!!」

 

僕の鱗赫が激しく蠢く。赤いシンプルな触手状から、禍々しいモノへと━━━。

 

「………化け物め」

 

「貴方に言われたくないですね」

 

僕を見て顔をしかめる敵のリーダー格………そうだ、名前。彼女の名前は━━━。

 

「気をつけろカイン。油断すれば一瞬で死ぬぞ」

 

「Aceさん……」

 

「俺には仲間を一人残していく事などやはり出来んよ。共に戦わせてくれ」

 

「…………はぁ、あなたも頑固ですね。あなたの部隊も同じですか?」

 

チラリと後ろを見ると、Aceさんの部隊のみんなは頷いた。

 

「では、なるべく死なないように。死んだら僕のご飯になることを覚悟してください」

 

「おいおい」

 

「嫌なら、絶対に死なないで━━━ッッ来ますよ!!」

 

 

再は怪物が動き出す。全てを灰塵へ帰さんがために。

 

 

 

 

━━━全く、ロドスでの最初の任務が、こんなハードモードだなんて聞いてませんよ………

 

 

 

 

 




原作死亡キャラを生存させるか否か……悩みますねぇ。

遅くなりましたが、今回も良ければコメントくださいね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。