鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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ついリメイク版に手を伸ばしてしまった……。後悔はしてないが!


運命

 ――家とも言えない場所で、少年は古びた衣料の首元を持ち上げられてから投げられ、強く背後の壁に叩きつけられる。

 喉の奥からは紅い液体が昇り、それを吐血し、飛び散った鮮血で床を汚す。壁は壊れたまま放置されており、朝方の冷ややかな風が隙間から吹き込み体温を奪っていく。

 

「命をなんだと思ってやがるっ!」

 

 少年はふらつく両足で立ち上がり右手で拳を作り義親に向かうが、所詮は子供と大人。どちらが強いかなんて明白だ。

 

「クソ餓鬼がッ!」

 

 右手を義親に弾かれ、少年の腹に義親の右蹴りが突き刺さり、後方の壁まで飛ばされた少年は「ぐっ……」と呻き声を上げ、壁に直撃した衝撃で少年の背には激痛が走る。

 

「貴様らは、今日の夕方までに家の隅に用意した木材を売っておけッ!……できなかったら、飯を食えると思うなよッ!」

 

 義親は壊れかけの障子を開け、勢いよく、ピシッ、と締め家から出て行った後、少年は口内の鮮血を唾のように飛ばしてから、震える両膝を両手で抑え立ち上がる。

 本当の少年の両親は町の流行り病で病死し、少年は町の資金源にする為に身を売られた。巡り巡って売られ、今少年を奴隷として買ったのが今の義親だ。

 

「……お前は、大丈夫か?」

 

「………………」

 

 少年の問いに、部屋の隅で古びた衣料を身に纏う少女は小さく頷くだけだ。

 その外見も大人から見れば、汚らわしい子供、だろう。

 

「ここから出るぞ」

 

 早朝、少年はこの場の子供たちを連れて家から出て行く算段だったが、義親が様子を身に来たことによって予定を狂わされた。

 そして少年がこの場に留まっていた理由は、道中で必要になる食料や水を調達していたからだ。何の準備も無しに出て行くだけでは、野垂れ死ぬのは目に見えていた。

 少年は倒れた子供たちの脈を見るが、体は冷たくなり、息もしていなかった。――そう。目の前に横たわっている幼い子供たちは、虐待で命の灯火が潰えている。

 少年は、亡骸の目を閉じてあげ、藁を掛ける。

 

「行くぞ」

 

「………………」

 

 少女は声も出さず頷く。

 きっと、心が壊れかけているのだ。心を癒すには、こんな場所から一刻も早く離れる必要がある。

 少年は少女の手を取って、裏庭に隠した食料を手にして、この場から立ち去った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 少年と少女は、置き水で虱だらけの髪を流してはおいたが、薄汚い浮浪者のような見た目の子供が歩いていることは、周囲の好奇の視線を集めた。

 道中では、ひそひそと嘲笑うかのような声が耳に入る。

 だが今までの生活からすれば、こんなこと気に成らない少年たちである。

 

「食べるか?」

 

 少年が真新しい袋に右手を入れ、中から取り出したのは菓子パンだ。

 少女は小さく頷き、少年から菓子パンを受け取り口に運ぶ。

 

「…………美味しい」

 

 パンを咀嚼して飲み込んだ少女の言葉を聞き、少年は顔を綻ばせる。

 

「そうか、よかった」

 

 少年が「水もあるからな」と言うと、少女は小さく頷く。

 橋を渡っていた中央で、ふわふわした柔らかな声が届く。

 

「――そこの二人、どうかしたのですか?」

 

 少年が声の主を見ると、端麗な顔で蝶の羽織を袖に通し、長い黒髪を流し、その中央で蝶の髪飾りで髪留めしている少女が微笑んでいた。

 

「……俺たちのことか?」

 

 蝶の少女を睨み付ける少年。

 少年が警戒するのは当然だ。今まで、他の者たちの手によって子供たちが殺されたのだから。

 

「はい。あなたたちは、どうしてそのような恰好をしているんですか?」

 

 蝶の少女は少年に睨みにも動じず、にこにこと微笑み質問をする。

 

「……お前に関係ないだろう」

 

 少年は「話すことはない」という風に、少女の手を取ってこの場を後にしようとする。

 

「――姉さんの話を聞いてあげてください」

 

 隣からツカツカと歩み寄る足音が聞こえると、少年の前には小柄な少女が立ち塞がる。

 先程の少女と似た顔立ちだが、少し不機嫌そうに寄せられた眉、短いもみあげ、勝気な印象を受ける少女だ。その少女の髪にも、蝶の耳飾りが身につけられてる。

 

「……どけチビ。邪魔だ」

 

 少年がどうでもよさそうな声で呟くと、「あらあら」とふわふわした声が届き、前の少女の額には青筋が浮かぶ。

 

「だ、誰がチビよッ!あなただって、私と変わらないじゃないのっ!」

 

「多分俺はまだ背が伸びるから、お前よりはチビじゃなくなる。だから、お前の方がチビだな」

 

「な、なななんですってッ!」

 

 顔を紅潮させ騒ぎ立てる少女。

 てか、注目を浴びているので、この場から早く去りたい少年である。

 

「あの~、妹がごめんなさいね。どうか話を聞かせて欲しいの?」

 

「な、なんで私が悪いようになってるの!?姉さん、先に言ってきたのはあっちでしょ!?」

 

「ぷりぷり怒らないの。女の子は笑っていた方が可愛いのよ」

 

 姉は妹の頭を優しく撫でると、妹は、う~と唸るように呟いた。

 姉はにこにこ笑い、口を開く。

 

「私の名前は――胡蝶カナエ。こっちは妹の――胡蝶しのぶ。この先に、私たちの屋敷があるから、そこで少しお話しませんか?」

 

 少年と蝶との出会いで、小さな運命の歯車が回り始める。




前の作品とは、大筋を変えない感じでいきたいと思います。……まあルートによっては変わるかも知れませんが。
ちなみに少年の食料調達は、義親から目を盗んで雇ってもらった正規の仕事で、綺麗なお金で調達しています。

今後の大筋の流れは?

  • 胡蝶カナエ生存ルート
  • 胡蝶カナエ死亡ルート
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