鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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各々の想い

「カナエさん、無事か?」

 

「けほ……うん、なんとか」

 

 楓がカナエの隣に座り、カナエが呼吸を整えながら呟く。

 傍から見てもカナエと楓は満身創痍であり、現時点で下弦の鬼程度の襲撃の場合でも、勝てる見込みは少ないだろう。

 

「悪い、やっぱり勝てなかったよ」

 

 楓の言葉に、カナエはふるふると左右に頭を振る。

 

「……気に、しちゃだめよ。上弦と対峙して、生き残れたんだから、私たち」

 

 カナエは「けほけほ」と息継ぎをしながら呟いた。

 

「……ふふ。私たち、ほぼ重傷、ね」

 

「あー、まあそうだな」

 

 自身の体を一瞥する、楓とカナエ。

 楓の予想では、もうそろそろ救援が到着する頃合いだろう。一応、周囲を警戒するだけに留めて、楓とカナエは大人なしく救援を待つのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 蝶屋敷で鴉の報せを受け取った時、しのぶとカナヲは心臓が止まりそうになった。

 鴉の情報が『階級“癸”、栗花落楓っ!花柱、胡蝶カナエっ!上弦ノ弐ト交戦!交戦!救援ヲ求む!救援ヲ求む!』という内容だったからだ。

 

「(……お兄ちゃんっ!)」

 

「(姉さんっ!……――大丈夫、姉さんたちは強い花の剣士。上弦なんかに負けない)」

 

 しのぶとカナヲは腰に日輪刀を下げ、高鳴る胸を押さえながら楓たちの元へ急ぐ。――しのぶとカナヲは「きっと大丈夫」と不安を振り払うように内心で呟きながら。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 しのぶとカナヲが交戦場所に辿り着いた時には、既に日が昇っていた。

 ほぼ同時刻に隠の人々と合流し共に周囲を探索した所、町の外れの場所で肩を寄せ合って座っている楓とカナエが、しのぶの目に映る。遠目から見ても二人は血だらけであり、見るからに重傷である。

 

「――姉さんっ!楓っ!」

 

 しのぶは弾かれたように駆け寄る。

 それに気付いたカナヲも「……お兄ちゃんっ!カナエ姉さんっ!」と叫びながら駆け寄る。

 カナエは肋骨と内臓が傷つけられていて、楓は複数の部位の骨折に、凍傷、切り傷と重傷だ。

 

「……しのぶさん。カナエさんの手当てを最優先に頼む。肺への損傷が酷いと思うから」

 

 そう言う楓は見るからに痛々しく、激痛を我慢しているようにしのぶは見えた。

 

「黙ってっ!楓もすぐに見るわっ!」

 

 しのぶは声を荒げる。

 楓の傷も、並の剣士なら既に死んでいてもおかしくない損傷具合なのだ。それでも尚平静でいられる楓は、さすがは花柱の弟子と言えるだろう。

 

「……死なないで、お兄ちゃん。カナエ姉さん」

 

「……うふふ。死なないわよ、カナヲ。大丈夫、私鍛えてるから」

 

「そんな師匠の弟子だからな、俺は。こんな所で死なないよ」

 

 涙目で呟いたカナヲに、カナエと楓はカナヲが安心できるように笑みを浮かべる。

 そして、しのぶの迅速な手当の元、カナエと楓は隠の人々の手によって蝶屋敷に運ばれたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~狭霧山~

 

 翌日。この知らせは、同期である真菰の元へ届くことになる。

 小屋から離れた場所で木刀を使い素振りをしていた所で、真菰の鴉が自身の右肩に乗る。

 

「カァー!カァー!真菰、同士ノ鴉カラ報セダ!」

 

 その鴉の報せは、真菰を動揺させるには十分な内容だった。

 

「同期デアル栗花落楓、花柱胡蝶カナエ。両者トモ上弦ノ弐トノ死闘ノ末重傷!重傷―!」

 

 真菰は「……嘘」と目を丸くする。

 真菰が楓と別れたのは、数日前のことだ。その彼が、僅かな時間で重傷を負ったなんて信じられなかった。

 でもこうも思った「きっとカナエを助ける為、死地に飛び込んで行ったんだろうな」とも。

 

「意識は?」

 

「両者共傷ハ深イガ、共ニ意識ハアルソウダ!蝶屋敷デ療養中!」

 

「そっか。――お見舞い、行きたいな」

 

 でもそうすると、師の鱗滝の許可を貰ってからになる。

 ……鱗滝が、真菰一人で蝶屋敷まで歩ませるのかは疑問なんだが。まあ最悪、真菰は「泣き落としを使おう」と考えている。

 

「鴉君、報告ありがとうね」

 

「構マワナイゾ!カァーカァー!」

 

 そう言ってから鴉は、真菰の肩から飛び去って行く。

 それから真菰は、「どうやって鱗滝さんに言おうかな」と考えながら、小屋へ向かうのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 そして、この事項は産屋敷耀哉の元にも報せが届いた。

 耀哉は縁側に座り、隠から届けられた手紙に目を通す。

 

「そうか。カナエたちは無事なんだね」

 

 上弦と戦闘になり、生き残った。上弦は下弦の鬼を凌ぐ力量の持ち主。その顔触れは数百年変わらず、遭遇した柱、隊士は殺されていった。

 そんな中、上弦を倒すことは困難だったが、二人は生き延びた。この一戦には、耐え難い価値がある。――上弦の弐。という情報が。

 

「それに――」

 

 そう言って、耀哉はもう一人の名前を見やる。

 ――――栗花落楓。彼は、上弦相手でも臆さなかった。

 

「――凄い子だ、彼は」

 

 情報によれば、彼は二年間、胡蝶カナエの弟子として活動していた。もしかしたら、彼の力量は『柱』に匹敵するかも知れない。でなければ、上弦と遭遇して、生き残れる確率は激減するのだから。

 近々、柱合会議が開かれる。そこで、カナエか楓、もしくは両者を会議に召喚することになるだろう。でもまずは、怪我の回復が優先だ。




ちなみに、楓とカナエさんは治療後も意識を覚ましてます。
眠っていたのは、戦場から蝶屋敷に向かう僅かな時間ですね。

ではでは次回(*・ω・)ノ

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