鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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 下弦の壱との戦闘を終えた後、楓は隠を呼ばれる者に後処理を任せて月明かりに照らされながら、木々を飛び移りながら蝶屋敷へ足を向けている。

 

「オレハ、オ館様二報告ニ行クカラ、楓ハ次ノ任務マデ待機ダ」

 

「了解」

 

 楓がそう言うと、鴉が「カアーカアー」と鳴きながらこの場を後にする。

 

「(それにしても、初任務で十二鬼月、しかも壱と遭遇するとはなぁ)」

 

 初任務で十二鬼月と遭遇した楓は、幸運なのか不運なのか。

 ――そしてこの事柄は、楓は今後に関わるなど微塵も思っていなかった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 木々を飛び超えていたら、楓の後方から此方に向かってくる人影があった。

 その人物は、スカート式の隊服に身を包み、紫陽花柄の青い羽織を羽織り、肩まで伸びた黒髪、蒼みを帯びた水晶のような瞳であり、側頭部には花柄の狐の面。つまり、真菰だ。

 

「真菰か。どうしたんだ、こんな所で?」

 

 真菰が隣になった所で、楓が口を開く。

 

「えっとね。鴉さんがね、隊士が十二鬼月を遭遇したってから応援に、って聞いて現場に急行したんだよ。……まあ、事後だったんだけどさ」

 

 そして帰還していたら、楓と合流したのだ。

 ともあれ、真菰は「下弦の壱だったんでしょ?」と言って疑問符を浮かべる。

 そう。下弦の壱とならば、柱案件になるのだ。

 

「ああ。でも一人で何とかなったし、気にしなくていいぞ」

 

「(下弦となれば、血鬼術もあるし苦戦するはずなんだけどねー)」

 

 真菰は嘆息する。

 下弦の壱を戦闘後も、楓が後世でいう通常運転だったからだ。

 そう。十二鬼月との戦闘は、柱を除けば、最低でも軽傷は予想されているのだ。

 だが、楓は右頬に切り傷のみ。これを一般的に見れば、偉業とも言える。

 

「真菰さんや。蝶屋敷に帰ったら揚げ豆腐作ってくれないか。あれ、久しぶりに食いたい」

 

「ふふ。楓の好物だもんね」

 

「まあな。なんつーか、母の味がするんだよなぁ」

 

「むぅ。まだ私はお母さんじゃないよ」

 

「い、いや、例えだよ、例え」

 

 そう話しながら、楓と真菰は蝶屋敷に帰還するのだった。

 追記として、蝶屋敷の厨房で真菰が作ってくれた揚げ豆腐を食べた楓はとても幸せそうだったと書いておこう。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 月明かりに照らされる広大な屋敷の庭園付近の縁側に座り、鬼殺隊の最高責任者、産屋敷耀哉は縁側に立つ鴉の報告に耳を傾けていた。

 

「下弦ノ壱撃破。下弦ノ壱撃破。撃破シタ隊士ハ、栗花落楓!損傷ハ右頬ノ切リ傷ノミ!」

 

 耀哉は目を丸くする。

 

「栗花落楓と言えば、カナエの弟子だったね。カナエの教え子だし、上弦と刃を合わせていたからある程度は思っていたけど、ほぼ無傷で下弦の壱を滅するとはね。――彼の階級は甲であり、鬼を五十体滅するのも時間が解決してくれるだろう。近い内に再び顔を合わせるも知れないね」

 

 そうなれば、栗花落楓は“柱”に就任出来る条件を満たしたことになるのだ。

 下積みもあるし、経験もかなりの物だ。きっと、心の方も問題ないだろう。……後は、本人の意思次第と言った所だろうか。

 

「君は良い主人を持ったね」

 

「カァー。自由奔放ナ主人デモアルケレド!」

 

「ふふ。私も一度しか会ってないけれども、そんな気はするね」

 

 耀哉の呟きは、月明かりの中に溶けていったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~二ヵ月後~

 

 下弦の壱を滅してから、楓は鬼殺を重ね、討伐数は既に六十体を越そうとしている。

 階級が甲ということもあり、難易度が高い任務が舞い込み十二鬼月と遭遇した経験もある。……楓が合同任務に就いた時に、『あれで柱じゃないっておかしくないか?』と言う他の隊士の呟きが聞こえてきたが、楓の気のせいだろう、うん気のせいだ。

 そんな楓だが、鬼殺隊の最高責任者、産屋敷耀哉から『楓、話したいことがあるんだ』という手紙を受け取っている。

 

「……うーん。俺がお館様に呼ばれる理由が想像つかないんだが」

 

 手紙を見ながら、楓は産屋敷邸の庭を歩きながらそう呟く。

 ともあれ、楓は靴を脱ぎ屋敷に上がる。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~産屋敷邸。とある一室~

 

 耀哉が待つ一室に到着した楓は、座布団の上に座る耀哉と対面するように片膝をつき頭を垂れていた。

 

「楓。召集に応じてくれて感謝するよ」

 

 楓は顔を上げ、

 

「はっ。お館様におかれましても、ご壮健でなによりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます」

 

「ありがとう、楓」

 

 そう言って、耀哉は微笑んだ。

 そして、楓を呼び出した本題に入る。

 

「――今日はお話があると聞いて参上しましたが、どのような内容でしょうか?」

 

「そうだね。今日付けで、楓を――()に任命したいんだ」

 

 耀哉は「条件も揃ってるからね」と呟く。

 そして――柱。鬼殺隊の幹部、組織の中枢()になる人間。でも楓は、柱に相応しい人間か?と聞かれたら、素直に『はい』とは答えられない。

 

「……柱、ですか。なぜ、自分なんでしょう?」

 

 お館様は微笑んだ。

 

「要因としては沢山あるけど、強いて言えば、心の強さ(護りたい心)、かな」

 

「……心の強さ(護りたい心)、ですか。自分に、そんなのあるとは思えませんが」

 

「いや、楓は持ってるよ。それにカナエも『人々を護る為の意思を持った自慢の弟子です』とも言ってたしね」

 

「(カナエさん。俺の志望理由をお館様に言ってたんですか……でも柱かぁ)」

 

 柱となれば、下の者を引っ張る力も必要になるだろう。

 それに、その重圧もかなりのものだ。

 

「……お館様。考える時間を戴いても宜しいですか?」

 

「そうだね。良い返事を期待してるよ、楓」

 

 このようにして、楓と耀哉の会合が幕を閉じたのだった。




カナエさんは、報告(上弦の情報)をした後日にお館様と対面することがあり、その時に楓は自慢の弟子と語ってましたね。

ではでは次回(*・ω・)ノ
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