鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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那田蜘蛛山

 楓が那田蜘蛛山の麓に到着すると、凄まじい刺激臭が鼻を突く。

 

「……かなり臭いな」

 

 楓が生存者を捜索する為、木々に飛び移り山の中に入って行くと、所々の木々から白い繭がぶら下がっている。繭の数は、ざっと確認した所十五程度だろうか。

 繭の中からは僅かに人の気配を感じたが、全ての繭から死臭が漂っているということは既に手遅れだろう。そして鬼は、人を繭に包んで繭の中の溶解液で殺す。と考えるのが妥当だ。

 

「(……どうか安らかに。今までお疲れさまでした)」

 

 楓は心中で手を合わせ呟き、先を急いだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 鬼が目視できる距離になった所で楓が見た光景は、女鬼は右掌から糸を飛ばし、男性隊士を包み込み繭を作っている最中であった。

 なので楓は速度を落とさずに、

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃

 

 繭を通り過ぎるようにして居合いで一閃し、繭を真っ二つに斬裂き、停止した所で後方を向くと、目を丸くしていた女鬼と目が合う。

 

「……木に吊るされていた繭は、お前の仕業か?」

 

「そ、そうよ。殺さなければ、私が殺される。だから殺したのよ」

 

「……お前たちは殺す以外に、人間と共存して生きていく選択肢はなかったのか?」

 

 楓はこうも思っているのだ。

 この事柄はカナエの夢とは違い――自身の理想論の押し付けであり、鬼を人間として見るのも、人間を鬼として見ているのは自身の矛盾ではないかと。

 カナエの想いと比べてしまうと、自身は違う論点から考えてしまってるのではないかと。

 

「人間はただの食料よ!ただの家畜なのよ!」

 

「……――そうか」

 

 女鬼は楓の風格を感じ取り「ひぃ!?」と言って、腰を抜かして尻餅を突いてしまう。

 鬼は尻餅を突きながらも右掌から糸を放つが、それは楓が抜き放った日輪刀に斬り払われ、粉々になって空を舞う。

 

「ま、待って!お願いだから待って!私は無理矢理従わされてるの!脅されてるの!」

 

「脅されている、か。……ああ、その怖さは俺にもよくわかるよ。俺も昔は似たような境遇で育ったからな」

 

「な、なら、わかるでしょう。こうでもしないと、私は殺されちゃうのよ」

 

 楓は「やはり鬼には絶大な上下関係があるのか」と悟る。

 

「それでも――奪った命はもう回帰しない」

 

 そう言ってから楓は日輪刀を構える。

 今楓できることは、女鬼に恐怖の感情を与えず殺すことだけだ。

 

「ま、待って!?殺さないで!?まだ死にたくないの!?」

 

「きっとその言葉は、繭にされた隊士も言っていた筈だぞ」

 

 そして、楓はその場から走り出す。

 女鬼は無造作に右掌から糸を放つが、楓は刀でそれを斬り落とす。

 

 ――水の呼吸 五ノ型 千天の慈雨

 

 楓は刀を振り下ろし女鬼の首を刎ねる。

 

「(……鬼狩りなのに、なんて表情をしてるのよ)」

 

 女鬼の両目に映ったのは、悲しそうな顔で刀を振るう楓だ。

 そしてこの時だけは、自身が人間に戻ったような、そんな気がした。

 女鬼は、最期の言葉を耳にする。

 

「……来世では、鬼になるなよ」

 

 鬼が完全に消えた所で、楓が納刀し、ふぅ。と息を吐いてから、先に繭を斬った所まで移動する。

 そこでは、繭の斬り口から男性隊士が出て来る。

 

「げほげほっ。た、助かった、のか?」

 

 男性の隊服は溶解液で溶けてしまっていたが、体の何処にも損傷はないようだ。

 

「そうだな。……後、申し訳ないが、隠が到着するまで服は待っててくれ」

 

「あ、ああ」

 

「よかった。じゃ、俺は行くよ」

 

 楓はそう言ってから地を蹴り、木に登ってから枝を足場にして夜を駆けて行く。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楓が木々と跳んでいると、猪頭の鬼殺隊士が全長約二メートルを超える鬼の右手に首を掴まれていた。

 

 ――閑話休題。

 

 猪頭の鬼殺隊士は、猪の口から鮮血を流していた。おそらく、()を潰されるのも時間の問題だろう。

 なので楓は、跳んでいる時に刀の柄に右掌を添え刀を抜く。

 

 ――桜の呼吸 肆ノ型 桜花乱舞。

 

 素早い一振り目で猪頭が掴まれてた腕を斬り落とすと、鬼が「グワアァァアッ!」と雄叫びを上げる。

 そして、素早い二振り目で鬼の首を刎ねると、鬼は大きな音を立てて仰向けに倒れた。

 納刀していると、起き上がった猪頭の鬼殺隊士が、楓に刀を突き付け呟く。

 

「――オレと戦え、蝶羽織り!」

 

「……はい?」

 

 楓は思わず首を傾げてしまう。

 だが、猪頭の鬼殺隊士は話し始める。

 

「お前は、あの十二鬼月を倒した!そのお前を倒せば、オレの方が強い!」

 

 見るからに、猪頭の鬼殺隊士は重傷である。

 それに、先の鬼は雑魚鬼の部類であるのだ。

 

「……傷が治ったら何時でも手合わせをしてやる。――まあ、俺が生きてたらの話だが」

 

 楓はそう言ってから地を踏み込み、猪頭の後方に回り首筋を柔らかく叩き意識を落とし、横にする。

 

「後は、隠の人に頼むか」

 

 楓はそう呟いてから、この場を小走りで後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楓が鬼の気配がする方向に走っていたら、その先で刀を構え対峙している義勇としのぶの姿が映る。そして、義勇は気を失い地に倒れている――竈門炭治郎、箱に入った竈門禰豆子を庇っていた。

 楓は「……柱合裁判が開かれるなぁ」と思いながら、ザザッ、と急停止して義勇の隣に立ってから抜剣し刀を構える。

 

「あら、楓も隊律違反に加担するんですか?冨岡さんが庇っているのは、鬼、ですよ」

 

「確かに、俺と冨岡さんが庇っているのは鬼だが、この先の可能性を秘めた()でもあるんだよ」

 

 楓が「だから退かない」と呟くと、しのぶは額に青筋を浮かべる。

 

「……カナエ姉さん(真菰)も楓も甘すぎよっ。鬼は人間の敵で、滅っする対象なのよっ」

 

 しのぶは声を荒げる。

 

「……そうだな。それが鬼殺隊のあり方で、心理、なんだろうな」

 

 だが、鬼、ということで“悪”と考えるのは早計過ぎるのではないか?

 鬼だからと言って、滅っする対象にならなければいけないのか?と、言うようなことを考えてしまうのが、楓たちなのである。

 

「……栗花落。ここはオレが受け持つ、炭治郎たちは任せる」

 

「……わかりました」

 

 楓は納刀し、箱を背負い気絶した炭治郎を背におぶりこの場から走り出すが、走っている途中で足を止める。これは――カナヲの気配だ。

 楓が後方に跳び炭治郎たちを寝かせてから歩を進め、木々を分けて姿を現したカナヲと対峙する。

 

「……兄さんが庇っている隊士の箱からは……鬼の気配がする」

 

「わかってる。でも、この箱は渡せない。――それに、鬼だから“悪”と決めるのは早計過ぎる」

 

「……兄さんは、鬼を庇うの?……兄さんは、鬼に慈悲をかけ過ぎ、だよ」

 

 カナヲは刀の柄に右掌を添えると、楓も同じく刀の柄に右掌を添える。

 

「……私はしのぶ姉さんに、鬼を滅っするように頼まれた。……だから兄さん、そこを退いて」

 

「いや、退かない。カナヲこそ、ここは退いてくれないか?」

 

「……ごめんなさい。それは無理、だよ……兄さん」

 

「……そうか」

 

 楓とカナヲの周囲が、重い空気に包まれる。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 楓とカナヲは自身の一閃で相殺させ、刀を抜き、ガキンッと甲高い音と共に刀の鍔競り合いになる。

 そして、カナヲは眉を寄せる。

 

「……兄さん、私と戦うなんて……正気?」

 

 カナヲは「隊員同士の戦闘は、隊律違反になるんだよ」と言い、首を傾げる。

 それに、柱が二人共鬼を庇うのも前代未聞の行為でもあったりする。

 

「……ああ。俺にも信念があるんでな」

 

 そこからは、楓とカナヲの無数の斬撃の応酬であり、隙を全く与えなかった。――さすが義兄妹と言うべきか、楓とカナヲの剣筋ほぼ同じである。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 楓とカナヲの九連撃は、互いの刀が正確に打ち合い相殺。

 そして、お互いに決定打を与えないのが現状だ。

 

「……兄さん、そこをどいて」

 

「……断る」

 

「……兄さんの分からず屋!」

 

 カナヲが声を荒げ刀を振るうと、桜の刃が楓に襲い掛かる。

 

 ――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 的確に急所に振り注ぐ桜の刃は、楓が周囲に放った花の斬撃が弾き飛ばす。

 やはり経験の差が見えてきたのか、カナヲの呼吸が乱れ両肩を揺らしていた。

 

「……やっぱり強いね、兄さん」

 

「俺はカナヲの義兄だしな。簡単には負けない」

 

 その時、鴉が空中を旋回し、口を開く。

 

「カァァアア!伝令!伝令!竈門炭治郎、及ビ、鬼ノ禰豆子ヲ拘束!本部へ連レテ帰ルベシ!」

 

 それから、鴉が炭治郎と禰豆子の特徴を復唱していた。ともあれ、楓は日輪刀を納刀し息を吐く。

 取り敢えず、この場は収まったと見てもいいだろう。

 だが、鴉が言葉を付け加えた。

 

「加エテ、水柱、桜柱モ連行セヨ!カアァァア!」

 

 カナヲも納刀し、口を開く。

 

「……兄さん。命令により、ご同行を」

 

「……わかってる」

 

 楓は「抵抗の意思ない」と言って、炭治郎を背負いカナヲに連行されて行ったのだった。




楓とカナエの考えは、ほんのちょっと(誤差の範囲)違いましたね。……でも、矛盾を感じて信念が揺らいでいる楓ですね(-_-;)
まあ、よく見て見ると、楓の理想(夢)の方が難しい気がするが。
で、義兄妹の喧嘩?勃発ですね。一応、カナヲの実力は甲隊士付近に設定してます。まあ、階級は一番下なんですが。
あと、カナヲは桜の呼吸も使用可能になってます。
ちなみにカナヲは、胡蝶姉妹や楓の約二年間の頑張り?もあり、心を開いた人たちには普通に話している設定です。

大正のコソコソ噂話。
楓が使用した、水の呼吸 五ノ型 千天の慈雨。は、鱗滝の所に訪問した際に、教えてもらった型である。
ちなみに、楓の水の呼吸は、 五ノ型しか使えない設定である。
またカナヲは、最近まで楓をお兄ちゃん呼びであったが、鍛錬等をしている間に兄さん呼びとなった。
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