鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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蝶屋敷

 蝶屋敷に帰還し、屋敷の玄関前で楓を迎えたのは、胡蝶カナエだ。

 

「お帰りなさい、楓」

 

「ただいま、カナエさん」

 

「うん。ねぇ楓、柱合会議(柱合裁判)、大丈夫だった?」

 

 カナエにそう言われ、どよんと両肩を落とす楓。

 

「……色んな意味できつかった」

 

 楓が、「取り敢えず、賭けには勝ったけど」と告げると、カナエは安堵の息を吐く。

 それからカナエは、ふふ。と笑みを零す。

 

「あと、しのぶから聞いたわよ、――楓が私のことで怒ってくれたって」

 

 カナエは「ありがとう、楓」と言って花のような笑みを浮かべた。

 そして、それにあたふたする(見惚れる)楓。……さすがに、時々見せる笑顔()は反則である。

 

「い、いや。……つい手が出ちゃってな」

 

 でもそういうことは、楓がカナエのことを大切に想っているからである。

 まあでも、楓にとっては蝶屋敷の全員がそれに該当するが。

 

「こ、この話はこの辺で終わりっ!――そ、そう。た、炭治郎たちはどこかな?」

 

 楓は「逃げるが勝ち。この話題は強引に終わらせよう」と思い、履き物を脱ぎ、屋敷に上がって病室を目指し歩き出す。

 それを見たカナエは、両頬を膨らませる。

 

「もうっ、逃げないでよ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 柱合裁判を無事終えて、処分を免れた炭治郎は、妹の禰豆子と共に治療の為蝶屋敷に運ばれていた。

 そこの病室には、那田蜘蛛山で共に戦った善逸が入院しており、炭治郎たちは嬉しい再会を果たす事ができた。

 

「……善逸、オレって弱過ぎだよな」

 

 患者着で、ベットの上で上体を起こしている炭治郎がそう呟いたのには理由がある。

 炭治郎は『禰豆子を護って見せる』と決心していたのに、結局は禰豆子と共に護られていたからだ。

 そんな炭治郎を見た善逸は、励ましの言葉を掛けようとしたが、その場で思い留まった。――そう。自身よりしっかりしている炭治郎に励ましの言葉なんて、自分は何様だ?と思ったからだ。

 

「まあ、禰豆子ちゃんが無事でよかったじゃん。――炭治郎っ!それよりも見た!?」

 

 善逸は、無理矢理?話を切り替えた。

 

「蝶屋敷の主人である胡蝶カナエさんっ!あの柔らかい笑顔に、絹のような肌っ!綺麗な指っ!あ――――!(汚い音声)マジであの人女神だわ!オレ、ここに入院できて幸せっ!結婚したいねっ!うん!」

 

 当初は「薬が苦い!」と騒いでいた善逸だが、カナエたちに治療をしてもらってからは、騒ぎ立てずに治療を受けていたのだ。

 今の善逸は、幸せの絶頂。と言わんばかりに、蝶屋敷での入院生活を満喫していたりもする。

 

「いやでも、しのぶさんと真菰さんも可愛いよ!屋敷で助けてくれたとき、本当に天使かと思ったもん!絶対顔だけで飯食っていけるもん!でも、やっぱりオレはカナエさんを推すね!てか、蝶屋敷って美人の巣窟だったりすんの!?」

 

 炭治郎は「女性を邪の心で見たらダメだぞ」と言ってから首を傾げる。

 

「でも善逸、カナエさんに求婚の申し込んでも、絶対断られるはずだよ」

 

「何でッ?」

 

 そう言って、善逸は目を丸くする。

 炭治郎は「理由は簡単だよ」と前置きをして、

 

「カナエさんは、楓さんの隣をずっと歩いているから、かなぁ」

 

 善逸は、思い出したようにハッとする。

 

「楓さんって、桜柱・栗花落楓さん?」

 

「善逸、楓さんのこと知ってるのか?」

 

「知ってるもなにも、オレたち一般隊士の中じゃ有名人だぞ。――栗花落楓さんと言えば、一般隊士と普通に飯を食ってたり、隊士たちからは“分け隔てがない柱”って言われていたり、最近では“変り者の柱”として有名人だぞ」

 

 善逸にそう言われ、炭治郎は内心で納得する。

 楓は炭治郎と邂逅した後も、時間が空けば様子を見に来てくれ、偶には他愛も無い話をしたり、修行に付き合ってくれたりと、対等に接してくれたのだ。

 

「初めて知ったよ。一般隊士の間じゃ、楓さんはそう言われてるんだなぁ」

 

「いや炭治郎。お前、どこで栗花落楓さんと会ったんだよ?」

 

「え、ああ。修行中に会ったんだよ。――それからも親身になってくれて、優しくしてくれてさ。楓さんは、オレが尊敬する人なんだ」

 

 善逸は「へぇ、そんなことが」と頷くが、

 

「でも、なんで栗花落楓さんが出てくるんだ?カナエさんとは関係なくね?」

 

「いや、関係はあるぞ。――楓さんの育手はカナエさんだし、カナエさんは元花柱であり、楓さんはカナエさんの継子だったらしいよ」

 

 なので、絆、という面では、誰一人として断ち切ることは不可能だろう。

 そしてカナエとの修行を収め、楓は柱へ就任しているのだ。

 

「……マジかよ。それを聞く限り勝ち目なくね?」

 

 ガックリと肩を落とす善逸。

 絶対に勝てないと悟った善逸は、話題を変える。

 

「ところで炭治郎、炭治郎と禰豆子ちゃんどうやって危機を逃れたんだ?噂で聞いた話だと、柱の殆どはブチ切れてたらしいじゃん」

 

「ああ。楓さんと義勇さん、師匠と真菰さんにカナエさんが庇ってくれて、どうにか無事だったんだよ」

 

 先に話した通り、炭治郎は文の内容を聞いた時、自身の不甲斐なさを感じていた。

 そう。禰豆子の為に五人が文字通り命を懸けて守ってくれていて、多大な迷惑を掛けているからだ。

 

「あ、そういえば伊之助はどこだ?違う病院だったりするのかな?」

 

「いや、伊之助なら隣で寝てるよ」

 

 炭治郎が善逸の左隣に目を向けると、

 

「あっホントだ!思いっ切りいた!気付かなかった」

 

 伊之助は猪の頭物をし、静かにベットに横になっていたのである。

 

「伊之助!無事でよかった……!ごめんな、助けに行けなくて……!」

 

「……イイヨ、気ニシナイデ」

 

 そう言った伊之助の声はガラガラだ。

 善逸の話によると、伊之助の喉は潰れているらしい。最後は自身の大声が引き金になったとか。

 そんな時、話の話題になっていた蝶羽織りを羽織った柱と。花柄の着物に袖を通した屋敷の主人が病室に足を踏み入れるのだった。




ちなみに、しのぶは先に蝶屋敷に帰還しており、柱合会議(裁判)の結果は、楓から聞くようにカナエに伝えています。
また楓が屋敷に帰還する前に、真菰たちは善逸たちの治療を行っていました。

大正のコソコソ噂話。
楓はカナエの弟子、という形であるが、表面上から見ると、花柱の継子と見られている。
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