鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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桜咲く

 ~二年後、道場~

 

 板張りの床を強く踏み締める音が壁に反響する。

 それは、大人ですら身を竦ませる重い音だ。

 

 ――桜の呼吸 参ノ型 秋桜・螺旋。

 

 楓はバネのように前方に飛び出し、カナエの周囲を舞うように動き、カナエの部位を狙い鞭のように木刀を振るう。

 楓の斬撃は、カナエの肩、胴、足、手、手の甲と狙うが、カナエの表情に焦りは無い。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 カナエが周囲に放った斬撃は自身を護るように、楓の斬撃を叩き落としていく。使い手によるが、やはり “御影梅”の護りは固い。

 そして、楓とカナエは至近距離で互いの木刀が交差し激しい剣戟の応酬。この剣戟により、木刀全体に僅かにだが切れ目が入る。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 楓とカナエが放つ九連撃は、互いの斬撃部が正確に直撃し相殺される。

 修行から二年が経過し、楓の技の精度も増しているのだ。

 

 ――桜の呼吸 肆ノ型 桜花乱舞。

 

 楓は「なっ!」と目を丸くする。

 カナエが――桜の呼吸を使用したからだ。それに、技の繋ぎに無駄が見受けられない。

 確かに、花の呼吸の派生は桜の呼吸だ。カナエが桜の呼吸を使用できても不思議ではない。

 それに楓は“桜花乱舞”という剣技に身に覚えはない。おそらく、カナエが独自に考えた剣技なのだろう。――桜花乱舞は素早い二連撃の剣技。その光景は桜が舞い散るようだ。

 楓の隙を突いた二連撃の一連撃目で楓の木刀が弾き飛ばされ、二連撃目のカナエの木刀の切っ先が楓の首筋が当てられ、楓は両手を上げ降参の姿勢を取る。

 

「ま、参りました」

 

 楓の50勝3591敗が決まった瞬間である。

 手札の数は楓の方が一枚も二枚も上だが、カナエの剣技の質の方が上回っているのだ。

 

「私の勝ちね」

 

 そう言ってから、カナエは木刀を下ろす。

 

「及第点、かしらね」

 

「え?今のが及第点?」

 

 カナエの言葉に声を上げる楓。

 でももし熟練隊士(甲隊士)が今の楓と模擬戦をした場合、隊士の心をパキパキ折ること間違えないだろう。

 きっとカナエの基準は“柱”だったのだ。

 

「そうよ。――でも楓は一人前の花の剣士であり、私の弟子よ。胸を張って」

 

 そして楓は、花の呼吸の継承権を持ったことになるのだ。

 

「そ、そうだな」

 

 楓はそう言ってから頷く。

 

「うん。それでね。――楓には、最終選別を受ける許可をします」

 

 カナエが言う“最終選別”とは、藤襲山で行われる鬼殺隊士に入隊する為の試験のことだ。

 カナエは「でも」と言葉を続ける。

 

「危険だと感じたら途中で辞退することも考えて、決して無茶はしないで。――人は死んでしまったら、そこでお終いだから」

 

 カナエは心配そうにそう言って眉を下げるが、楓は余程のことが無い限り最終選別を無傷で突破することも可能だろう。楓には、その力量が備わっている。

 

「……必ず、私の元へ帰って来て」

 

 カナエは心配そう楓を除き込む。

 ……うーむ。カナエの言葉は、相手を十分勘違いをさせてしまう言葉だ。カナエは所謂、天然、なのだろう。……まあ、その要素は楓にもあるんだが。

 

「――必ずあなたの元に帰るよ」

 

「――約束よ」

 

 そう言ってから、カナエは微笑んだ。

 楓も「約束な」と言ってから、笑みを浮かべるのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 屋敷に戻り、夜食を食べてから楓とカナヲは縁側に座り月を眺めていた。

 

「カナヲ。俺は明日から最終選別を受けて来るよ」

 

「……帰って来る?」

 

 カナヲは不安そうな眼差しで楓を見る。

 

「必ず帰る。約束もあるしな」

 

 楓は右手を、カナヲの頭にポンと乗せる。

 

「……約束?カナエ姉さんと?」

 

 カナヲの言葉を聞き、楓は「うぐっ」と唸る。

 カナヲが言うには、楓とカナエは特別な師と弟子に見えるから、とのこと。

 

「……そんなとこだな」

 

 楓はクシャクシャとカナヲの頭を撫で、カナヲは気持ち良さそうに目を細める。それはまるで、子猫を思い出させる仕草だ。

 

「……私も、お兄ちゃんの隣に立てるかな?」

 

「そうだな。カナヲがそう望めばきっと叶うよ」

 

 カナヲは「そっか」と言って笑みを浮かべたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 そして翌日。

 楓が藤襲山に向かう日が訪れた。

 カナエと色違いの蝶羽織りに袖を通し、貸して貰った花色の日輪刀が腰部に下げた楓が蝶屋敷の門前でカナエたちに送り出されていた。

 

「はいこれ。最終選別の途中で食べて、一週間分よ」

 

 カナエが楓に手渡した包みの中には、おにぎりとその他非常食が包まれている。

 一週間分、ということは、カナエは楓が最終選別で命を落とすなんて考えは捨てているのだ。

 

「私からはこれを、楓なら怪我なんてしないだろうけどね」

 

 しのぶが楓に手渡したのは、小箱に入る塗り薬だ。

 即効性のある代物で、効果は楓によって実証済みだ。

 

「……お兄ちゃん。無事に帰ってきて」

 

 カナヲは若干涙だ。

 きっと、離れ離れになるのが辛いのだろう。

 

「――ありがとう」

 

 楓は精一杯の気持ちを伝えた。

 

「じゃ、行って来るな」

 

 楓は踵を返し、最終選別の舞台となる藤襲山に歩を進める。

 その間三姉妹は、楓の背が見えなくなるまで門前で見送り続けてくれたのだった。




この作では、カナヲは徐々に自我を取り戻しつつあります。
カナヲもこの時点で、全集中の呼吸は習得済み。剣技のレベルも、戊(階級5番目)程度はありますね。
ちなみに、楓は常中を習得済みです。

ではでは、次回(*・ω・)ノ

大正のコソコソ噂話。

楓はカナエさんが発案した剣技、“桜花乱舞”の型を修業後に教えて貰ったので、自身の剣技として使用することが可能。

今後の大筋の流れは?

  • 胡蝶カナエ生存ルート
  • 胡蝶カナエ死亡ルート
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