鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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狐面の少女

 楓は最終選別に向かう道中で、二手に分かれる道の前で考え込んでいた。

 

「……どっちだっけ?」

 

 楓は、最終選別が行われる藤襲山までの地理はカナエに聞いていたんだが、「どちらの道に進めばいいのか?」をど忘れしてしまったのだ。

 こんな所で道草を草を食っていたら、最終選別開始までに間に合わなくなってしまう。

 そう考えていたら背後から気配を感じ、楓は、刀の柄に手を掛けばっと振り返った。

 

「わあっ!?」

 

 少女は驚きの声を上げる。

 

「わ、悪い。驚かせたよな」

 

 楓が申し訳なさそうに呟き刀の柄から手を下ろすと、楓の言葉を聞いた少女は「ううん、大丈夫だよ」と言ってから苦笑する。

 そう言って少女の容姿は、花柄の着物に、肩まで伸びた黒髪。蒼みを帯びた水晶のような瞳であり、側頭部には花柄の狐面がつけられていた。

 

「君も最終選別に?」

 

 少女の言葉に楓は「なぜ最終選別に行くって解ったんだ」と内心で首を傾げる。

 でも確かに、少女の腰部には楓と同様に刀が下げられている。きっとこの少女も、最終選別の参加者なのだろう。

 

「まあ。てことは君も?」

 

「ん、そうだよ」

 

 楓の言葉に同意する少女。

 楓は、珍しいなと思った。楓はカナエから、鬼殺隊の八割は男性と聞いていたからだ。

 

「私は真菰っていうんだ。君は?」

 

「俺か?俺は栗花落楓だ」

 

 真菰は「楓か。いい名前だね」と言ってから笑みを浮かべる。

 楓の名前を褒めてくれたのは、カナエが褒めてくれた以来である。

 

「楓はこの場所で止まっていたけど、どうかしたの?」

 

「……どっちに行けばいいのか考えてた」

 

 意地でも、迷った。と口に出さない楓であった。

 そんな思いを汲み取ってくれたのか、真菰は藤襲山に繋がる分かれ道を指差す。

 

「最終選別にはこっちの道だよ。一緒に行く?」

 

「助かる」

 

 楓と真菰は、藤襲山へ繋がる道へ歩みを進める。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「真菰、その面って何なんだ」

 

 楓が真菰の側頭部につけられている狐面を指差す。

 真菰は狐面を一撫でしてから、

 

「これは、私の育手が創ってくれた大切なお面だよ」

 

 真菰が言うには、この厄除の面は育手である――鱗滝左近次からの手創りのお面だ。

 真菰はそれからも鱗滝のことを語った。修行のこと、挫学のこと、育手との暮らしのこと。それはとても嬉しそうに語っていた、真菰は鱗滝のことが大好きなのだろう。そして鬼殺隊の――元水柱だと言うことも。

 

「それにしても良くできてんなぁ」

 

「……あげないよ」

 

「いや、要らないから」

 

「むぅ~。それはそれでちょっと複雑だなぁ」

 

 真菰は両頬をリスのように膨らませる。

 小腹が空いた楓は、背負っている小さな風呂敷を取り、右手で中から木の皮で包装されているおにぎりを取り出し包装を解く。

 

「食うか?」

 

「楓のおにぎりでしょ?食べていいの?」

 

 真菰は首を傾げる。

 すると、真菰のお腹から可愛らしい、くぅ~と音が鳴り、真菰は恥ずかしさで顔を朱に染める。

 楓は苦笑し、

 

「食べていいぞ。味は保証する」

 

 楓は左手でおにぎりを半分に割り真菰に手渡す。

 おにぎりを受け取った真菰は「いたただきます」と言ってから、おにぎりを小さな口でちょぽちょぽと小動物のように口に含み、咀嚼してから飲み込み口を開く。

 

「美味しいっ!まさか白米がここまで美味しいなんて予想外かも」

 

「そうなんだよなぁ。カナエさんはどうやって握ってるんやら」

 

 楓はそう言ってからおにぎりを一口食べる。

 真菰は楓の『カナエ』の発言を聞き、「興味を惹く話」を聞けるかもと思った。

 そう。名前を聞く限り、『カナエ』とは女性の名前だろう。

 

「カナエって楓の育手であり女性なの?」

 

 楓は咀嚼した白米を飲み込んでから口を開く。

 

「まあな。俺に花の呼吸を教授してくれた師匠だ」

 

 真菰は鱗滝から、育手の中で“花の呼吸の育手”は聞いたことがない。

 なので、花の呼吸を教授できるとすれば――花柱、胡蝶カナエだけだ。そして真菰は、知識として現鬼殺隊の“柱”の名前を押さえていた。

 

「(花柱が楓の育手なんだ。楓が強者である雰囲気の根本がわかったかも)」

 

 真菰が楓と出会って感じたのは、鱗滝と似た雰囲気でもあった。

 楓の実力は柱に匹敵するのだろう。……最終選別、余裕で合格するんじゃないか。と思うのはきっと真菰だけじゃないはずだ。

 

「……最初は地獄のような修行だったけどなぁ」

 

 楓は遠い目をする。

 まあ確かに、全集中の呼吸を継続しての木刀の打ち合いから、型の舞い、日常生活でも常に継続することは地獄と言える修行内容だろう。……その甲斐合って、楓は二週間程度で“常中”を習得することができたのだが。

 

「(そりゃそうだよ。楓は花柱の継子みたいな者なんだよ)」

 

 真菰は内心でそう呟く。

 真菰が言う――継子とは、柱が弟子を取り、後継の者を育て上げる制度だ。

 この為、修行内容は覚悟がなければ逃げ出す内容ばかりだ。……でもきっと、楓はこのような制度は知らないので、これが普通だと思いながら修行に取り組んでいたのだろう。結果、二年足らずで柱に匹敵する強者が育て上げられたんだが。

 そう話していたら、最終選別の会場に繋がる石段の所まで辿り着く。見上げると、何処までも続いていそうな長い石段の先が集合場所なのだ。

 

「じゃ、行きますか」

 

「うん。頑張ろう。お――!」

 

 一人で三役もこなす真菰を見て、楓は苦笑し「そうだな」と同意する。

 風呂敷を背に掛け直しおにぎりを完食した楓と、おにぎりを完食し気合いを入れ直した真菰は石段を上っていくのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ――藤襲山。

 この山は、鬼殺隊へ入隊を希望する者が訪れる最終試練場所。特徴的なのは、山の麓から中腹にかけて一面に藤の花が咲いていること。しかも、藤の花は一年中咲き続けてるので、鬼にとっては牢獄だろう。

 集合場所には既に参加者が集まっており、真菰と楓を合わせれば約二十人程度だろうか。

 

「皆さま。今宵は最終選別にお集まり下さり、ありがとうございます」

 

 最終選別は参加者の前に現れた、提灯を持ち藤の花の柄の着物を着た白髪の少女の説明から始まる。

 

「この藤襲山には、鬼殺の剣士様が生け捕りにした鬼が閉じ込められており、外に出ることは叶いません」

 

 そして同じ柄の着物を着た、白髪の少女と瓜二つの提灯を持った黒髪の少女が口を開く。

 

「山の麓から中腹にかけて、鬼が嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからでございます。しかし、これから先は、藤の花が咲いておりませんので鬼共がおります」

 

 黒髪の少女が言うには、鬼共の数は五十体前後。

 この山の全ての鬼は、人間を三~四人しか喰っていないので、鬼の強さ雑魚鬼になるのかも知れない。でも、参加者から見ると恐怖の対象だろう。

 そして、白髪の少女は言った。

 

「山の中で七日間生き抜く。――それが、最終選別の合格条件でございます」

 

 少女たちは頭を下げ、

 

「――では、行ってらしゃいませ」

 

 それを聞いてから最終選別が開始されたが、楓と真菰は今後の方針を決めてから動くことにした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「どうする?一緒に行動するか?」

 

 楓が真菰にそう提案すると、真菰は顎に右手を当て僅かに考える。

 

「(楓と行動すれば鬼に金棒だけど、私の力を試せなくなっちゃうんだよね、でも――)」

 

 でも楓の提案に乗る方が、圧倒的に生存率は上がる。

 ――最終選別の合格内容は、藤襲山で七日間生き抜く。なら、個々で行動するより、二人で行動した方が良い。

 

「一緒に動こう。戦闘では私が前を任せてもらっていい、かな?」

 

「わかった。前衛は任せるよ、俺は後衛に徹するな」

 

 楓と真菰の方針が決まり、楓たちは鳥居を潜り藤の花が咲かない山に入る。――これから、楓たちの最終選別が開始されるのだった。




唐突ですが、アンケートを終了します。まあ、これ以上延ばしても結果は変わらないと思いますが。
皆さん、カナエさん生存は絶対なんですね(*・ω・)ノ
ちなみに、楓の力量は柱レベルです。

ではでは、次回(@^^)/~~~

追記。
カナエさんは、楓を継子にしようなど微塵も考えてません。
弟子ができた感覚です。

大正のコソコソ噂話。
真菰は、カナエの名前だけでは柱の一人とは解らなかったが、花の呼吸と女性を合わせた所で楓の育手が胡蝶カナエだと理解したのだった。
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