最終選別が開始され、楓と真菰は月明かりの下歩みを進めていた。
「なあ真菰。鬼、出なくね」
楓が刀の柄に右手を添えながら呟く。
楓が言う通り、最終選別が開始されてから約二時間が経過したが、未だに鬼と戦闘になってないのだ。
「うーん。鬼さんたちは、楓の雰囲気に気圧されてるのかなぁ」
真菰がそう言って、楓が「まさかぁ」と返事を返すが、真菰の指摘は強ち間違っていないかも知れない。
実を言うと、鬼たちは楓たちを遠目に見つけ喰い掛かろうとしていたが、
「もしかしたら、鬼を一体も倒さず合格、なんてことが有り得るかもね」
その時、真菰はピクっと片眉を上げ、それから申し訳なさそうに呟く。
「……ごめん。前言撤回するね」
そう言ってから、真菰は柄に右手を添え刀を鞘から引き抜く。
「……来てるな」
楓も真菰同様、こちらに向かって来る気配を感じ取る。
そして「グアァァァッ!」と唸りを上げながら、飢餓状態の二体の鬼が楓と真菰に襲い掛かる。
――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。
――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り。
刀の柄に右手を添えた楓が鬼を横切るように加速し、居合いの一閃を繰り出し鬼に背を向けると鬼の頸が宙を舞う。
もう一体の鬼は、真菰が振るった刀が水の軽やかな音を立て、鬼の頸を刎ね宙へ飛ばした。
そして頸が飛んだ鬼たちは、体を灰に変え姿を消していく。
「……鬼、弱くね」
振り向いてから、真菰を見た楓はそう呟き刀の柄から右手を離す。
「(そりゃそうだよ。楓の力量は柱に匹敵してるんだからね)」
刀を鞘に戻した真菰は、楓の言葉にこのように返答を返すが口に出さない。
もし真菰が言葉にしても、楓は「俺が?ないない」と否定するだろう。……うん、十中八九否定するはずだ。
「寝床探さないとなぁ」
楓がそう呟く。
鬼の特性上、日が昇っている時間帯は活動が出来ない。日の光に当て続けていれば、鬼は体を消滅させるからだ。
だからこそ、日が昇っている時間帯は可能な限り体を休めた方がいい。なので、寝床になる場所は朝日が昇ると日が差し込む場所が望ましい。
「この山って、水浴び出来る場所あるかなぁ?七日間、さすがにお風呂無しは厳しいよ」
まあ確かに、真菰の言う通り楓も水浴びだけでもしておきたい。
ともあれ、楓は背から風呂敷を取り、右手で晩飯でなるであろう包装された
「真菰、ほれ」
真菰は「わわっ!」と声を上げながら、両手で投げられた非常食を掴む。
「これは?」
真菰は疑問符を浮かべる。
「菓子パンだ。小腹が空いたら食べていいぞ」
「あ、ありがとう」
真菰は感謝の気持ちを持って呟く。
それにしても、楓の風呂敷からは様々なものが飛び出す。あの中には、
「(私、楓に餌づけされてるみたいだなぁ)」
そう内心で思ってから、真菰は苦笑する。まあでも、その食事を楓に持たせてくれたのはカナエになるんだが。
――閑話休題。
風呂敷を背に掛けた楓と気合を入れ直した真菰は、菓子パンを食べながら鬼を狩り寝床を探した。
そして二人が見つけたのは、若干開けた洞窟であり、日が差し込む場所だ。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
~朝方、若干開けた洞窟内部~
「最終日までの寝床はこの洞窟にするか」
「うん。仮眠は、護衛を替わりばんこにすれば安心して取れるしね」
楓と真菰は、最終選別の二日目はこの洞窟で眠りに就くことに決めた。
日が差し込んでいる場所なら護衛の必要はないと思うが、一応。というやつである。
それから楓は刀を置き洞窟内部で横になろうとするが、真菰が「んん」という咳払をする。
「実はね、楓。この場所を見つける途中で、小さな湧水が湧いている川を見つけたんだ」
「ああ、あの時か。少し様子見して来るって言った時か」
「そうそう。その時に綺麗な川を見つけたんだ。で、今からそこに行きたいと思います」
「おう。いってらっしゃい」
「…………」
真菰は黙り込む。
楓は真菰の言葉の裏が読み取れていない。……悲しいことに、楓はそういう面は疎い方なのだ。
真菰の言葉の裏とは『水浴びをしている間、襲撃は無いとは思うけど護衛をしてね』という意味があったのだ。
「どうした?」
未だに疑問符を浮かべる楓。
真菰は盛大に溜息を吐き、口を開く。
「ね、楓。水浴びに行くから護衛として着いてきてね♪」
語尾に
そして、ぎょと目を見開く楓。女性の
だが、今は最終選別の最中だ。有り得ないと思うが、鬼の襲撃も考慮していた方がいい。
「……わ、わかった。一緒に行くよ」
「ありがとう。……楓、覗いたらわかるよね?」
「……さ、最悪の展開にならなければ大丈夫だ」
最悪の展開になった時、きっと楓は振り返るだろう。
そう言った楓を見た真菰は、「ま、その場合はしょうがないよね」と内心で思うのだった。
――閑話休題。
そして最終選別の七日間、楓と真菰の共同生活が始まったのだ。
最終選別六日目。――真菰にとっては因縁の鬼と遭遇するのだった。
う~ん。何か、ラブコメ?的な感じになったかも……。
ま、まあ次回はアイツが登場するから大丈夫だよね?
ちなみに、カナエさんが楓に持たせてくれた食料は一週間分ですが、今後のことも考えて多めに持たせてくれています。
ではでは次回(*・ω・)ノ
大正のコソコソ噂話。
桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃は、居合いの要領でも、刀を剥き出しにした状態でも使用が可能な剣技。