鬼滅の刃~花咲く桜舞~   作:舞翼

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手鬼

 ――最終選別六日目。

 楓と真菰が選別開始時と同様鬼を狩っていたら、木々をの間から他の参加者が飛び出して来た。

 その参加者は全身に泥が付着しており、背中からは何者かに斬りつけられたのか血を流している。

 

「な、なんだあいつはッ!?あんな鬼が最終選別にいるなんて聞いてないぞッ!」

 

 受験者の一人が喚くように呟いた。

 そして楓と真菰は「どういうことだ?」と顔を見合わせた。

 藤襲山に捕らえられている鬼は、人を、三、四人程度しか喰っていない雑魚鬼だけだ。――受験者の発言の意図が見えないのだ。

 その数秒後、楓たちはその正体を知ることになる。

 受験者が飛び込んで来た方向から、気味悪い緑の肌、黄色く瞳が濁っており片目が十字に裂け、頸を幾重の腕で守る鬼が姿を現したのだ。

 そう。明らかに今まで相手にして来た雑魚鬼とは違ったのだ。

 

「ここは任せて、お前は逃げろ」

 

 楓がそう呟くと、受験者はコクコクと首を固く振り、踵を返しこの場を去った。

 

「お、また来たな……オレの可愛い狐が」

 

 手鬼は、真菰の側頭部につけられたお面を複数の指で指差す。

 

「狐娘。今は明治何年だ?」

 

「……今は大正だけど」

 

「大正?……大正」

 

 真菰の答えに手鬼は呆けた様子を見せる。

 

「アアアぁぁぁあああっ!年号がっ!また年号が変わっているううぅぅうう!」

 

 手鬼はガリガリと複数の腕で体中を掻き毟り狂ったように叫び出す。

 

「まただ!また!オレがこんな所に閉じ込めれている間に、あいつのせいで許さんんんッ!鱗滝め、鱗滝め、鱗滝ぃぃぃいいい!」

 

「……鱗滝さん?」

 

 手鬼が叫んだ名前に真菰が反応すると、ピタリと叫ぶことを止めた手鬼が複数の手で真菰を指差した。

 

「そうだ、狐娘!鱗滝はお前の師匠だろう?その面、それが鱗滝の弟子の証だ」

 

 手鬼は顔を歪めクスクスと笑う。

 

「――オレはなぁ、ここに閉じ込めれてから、鱗滝の弟子は皆喰ってやるって決めてるんだ」

 

 手鬼は、複数の指で真菰を指差す。

 

「十一、十二……十三人目だ」

 

「……何の話?」

 

「クスクスクス。オレが喰った鱗滝の弟子の数だよ。アイツの弟子は皆殺してやるって決めてるんだ。だからその狐面をつけている奴らは皆オレの腹の中だ。フフフ、弟子たちは鱗滝が殺したようなものだ」

 

 真菰は手鬼の言葉を聞き、怒りを込み上げる。――だが、それは戦闘では悪手になる。呼吸を乱してしまい、怒りに飲まれてしまったら手鬼の掌なのだから。

 この時、話を聞いていた楓がぽつりと呟く。

 

「――――お前、可哀想な鬼だな」

 

「なにぃっ、小僧?」

 

「可哀想な鬼って言ったんだよ。そうすることでしか自身の存在価値を見出せないし、隠せない。……いや、悪鬼だから見出しても意味ないか?」

 

 楓がそう言うと、手鬼の体に無数の血管が浮き出る。……楓が手鬼に対しての煽りが想像以上である。

 

「貴様ああぁぁッ!死ねぇぇッ!小僧ッ!」

 

 手鬼は目を血走らせ、複数の腕を楓に向けて放つ。

 

 ――桜の呼吸 参ノ型 秋桜・螺旋。

 

 右手で刀を抜いた楓が、地を踏み込と共に流れる水のように動き、触手を全て斬り捨てる。

 攻撃を終えると、怒りを鎮めた真菰が楓の隣に立ち、右手で刀を抜く。

 

「楓。こいつの頸は私に斬らせて」

 

「わかった。この腕は俺に任せて、真菰はそのまま突っ込め」

 

 楓はこのように平然に言っているが、触手を全て捌きながら味方の支援は、ある程度の力量が伴わないと不可能な事柄でもある。……まあ、楓は無意識の内にその力量を身に付けていたんだが。

 

 ――水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫。

 

 楓の問いに頷いた真菰は、飛び跳ねる飛沫を共に高速で手鬼の頸元へと迫ろうとする。

 

「チッ。ちょこまかと!」

 

 手鬼は複数の腕を真菰に伸ばすが、

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 ――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。

 

 それは伸ばした直後に、花の九連撃で全て斬り落とされる。

 そして、地面に不信感を持った楓は、一帯の地に桜の刃を振り落とす。

 

「(な、なにぃ。この小僧ッ、地に隠した腕がわかったのかッ!?)」

 

 手鬼は驚愕に包まれる。

 鱗滝の弟子と戦いで危うくなった時、地に隠した腕で追い詰め、止めを刺してきたのだ。……でも今は、その利点は無くなったのだ。

 

 ――桜の呼吸 参ノ型 秋桜・螺旋。

 

 楓が手鬼の周囲を舞うように動き、周囲に纏う触手を斬り裂いていく。――宛ら、果物の皮剥き。と言った所か。

 

「こ、小僧おおぉぉおおッ!」

 

 手鬼はそう叫ぶが、奴の攻撃手段はほぼ残されていない。――手鬼の巨体は、“秋桜・螺旋”が半分以上を削ぎ落している。

 そして、手鬼の頸元には届こうとするのは真菰の刀だ。

 

 ――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り。

 

 真菰は空を飛び、両腕を交差させてから振るった刀の軽やかな水の一閃が手鬼の頸を刎ねた。

 そしてそれは、手鬼のとっては嘗ての鱗滝の天狗面の姿と重なった。

 

「が、はぁっ!」

 

 手鬼の頸がドサリと地に落ちると、頸は徐々に消滅させていく。

 

「(くそっくそォオ!死ぬ!体の消滅が止まらない。――最後に見たのが、鬼狩りの鱗滝、なんて……)」

 

 手鬼は怖かったのだ、蔑んだ目が、憎悪の目が、だから鱗滝の弟子を殺して喰ってその感情を隠してきた。

 だからこそ、楓にその確信を迫るような発言に過敏に反応したのだ。

 

 ――ああ、あの餓鬼共もオレをそんな風に見るのか……。

 

 目を閉じることも逸らすことも出来ず、手鬼は真菰と楓を見続けることしか出来なかった。

 だが手鬼の予想を反して、地に両足を付けた真菰、楓が浮かべていたのは哀れむような、悲しそうな顔だ。

 

「……私はあなたを許すことは出来そうにないけど、あなたが行く場所に、あなたを許してくれる人が居るといいね」

 

「次の生では、鬼にならないように願ってる」

 

 真菰と楓はそう願い、手鬼はその体を消滅させていった。

 手鬼は全てが消える瞬間、どこかで甘える弟と「しょうがないな」と苦笑する兄の声が聞こえた気がした。




うーん。戦闘すぐ終わっちゃったかなぁ……。
ま、まあ。あの場に楓(ほぼ柱)が居たんじゃそうなるか(無理矢理感)

ではでは次回(*・ω・)ノ

大正のコソコソ噂話。
この最終選別で、楓と真菰の息(連携)はかなりのもの。
そして鬼に対する思考も、若干似たり寄ったりでもあったりする。てことは、カナエの考えに共感できる人物でもあるのだ。
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