土門、土門春哉って言うんだ。よろしく
---燃える-家が-庭が-桃の木がー愛用のぬいぐるみがーー大好きだった父親が---
『ここにもいずれ追っ手がくる…あなた達はこの道から山を降りて、なんとしても逃げ切りなさい。私が…逃げる時間を稼ぐから…!』
---燃える
『どこまでも逃げて…その生を全うしなさい!……例えこの身が朽ち果てても…あなた達を見守り続けると、約束するわ!』
燃える燃える燃える---何もかもが燃えていく、ここは地獄か、はたまたもっと恐ろしきなにかか。
『……さようなら、あなた達の母であれて、私は幸せでした』
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魔法。誰もが聞いて、1度はそれを使う自分を夢見たおとぎ話。だが現代においては、それはおとぎ話ではなく現実のものとして定着をしている。
事の発端は1つのテロ…狂信者集団による核兵器テロを超能力…魔術を行使して阻止したことにより、全世界に超能力…魔術の存在が認知された。テロをも防ぐことができ、ともすれば軍事力としても使用することができるかもしれない超能力…魔術の登場を国々は歓迎し、こぞって研究、開発、解明に勤しんだ。
その結果、超能力…魔術は魔法という呼び名でお手軽に使える兵器となり、第三次世界大戦においては主力武器として使用されるまでに至った。その後魔法は能力を持つ一般の人々にも普及し、魔法に関する法整備が進められ、魔法を使えるおとぎ話は現実のものとなり定着をした。
……が、そのようなおとぎ話の実現などそもそもの魔術を使う魔術師に取っては身を滅ぼすものでしかなかった。そもそも魔術とは秘匿されることにより真価を発揮し、『根源』に至るツールとなる。魔術師はその秘匿されるツールを使い『根源』に至ることを唯一至上の目的とし、存在してきた。それが1つのテロにより、一瞬にして奪われてしまった。秘匿されるものである魔術は全世界の人々に認知されてしまい、あろうことか国々が研究、解明を始めてしまったことにより、完全に神秘を失ってしまった。
魔術による『根源』への到達を目指していたものはみな一様に絶望し、『根源』を捨て古式魔法と名前を変えて生きるもの、解明されるのをなんとか逃れ、ますます秘匿に力を入れて『根源』を目指し続けるもの、そして…この世から消滅するもの、三者三様の分岐をみせた。しかしそのようなこと、一般の人々にとっては取るに足らないことでしかなく、今現在も魔法は普通なものとして扱われている。
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「…ここが魔法科高校かぁ……広いなぁ…」
季節は春、満開の桜に出迎えられながら1本の道を延々と登り、校内に辿り着いた俺…
だがそんなことは今この状況においてはさほど重要じゃない、先程も言ったがこの学校…広いのだ、とてつもなく、広い。加えて自慢ではないが、俺は地図とか読むのが苦手な方向音痴だ。
つまるところ……
「……ここ…どこ…?」
かんっぺきに道に迷っていた
「……や、やばいやばい。入学式がもうちょっとで始まるってのに……いきなり式から遅刻だなんて冗談じゃないぞ…!」
もしかしたらの大事に備えて早めに来てたのにそれもパァだ。くそ、せっかくだから校内を見て回ろうとか思うんじゃなかった…!
加えて
「入学式間近だからか…だーっれもいねえ…!」
道を聞こうにも辺りに人っ子一人居ないのだ。
「くっそ…どうする……どこに行きゃいいのか分かんねえし…人も居ねえし……地図も分かんねえし…万事休すか…?」
このままだとマジで入学式に遅刻しかねない。もう考えるのはやめにして手当り次第に歩いてみようか……そう思っていた時だった。
「……ん?おい!そこにいるのは1年か!?あと少しで入学式が始まるぞ!」
1人の救世主が声をかけてきた。
「た、助かった…!あの!俺道に迷っちゃってて…地図も見れないから途方にくれてたんです!入学式の会場までの道を教えていただけないでしょうか!」
そう言うとその救世主は一瞬呆けたような顔をして
「…全く、念の為に遠くの方まで見回りに来て正解だったな…。おい!入学式の会場はこことは全く正反対だ。今から行くから、私についてこい」
「わ、わかりました!…いやぁ、あなたが来てくれて助かりましたよ!入学式遅刻なんてことになったらマジでシャレにならないんで…」
「ここは入学式会場からは結構離れてるからここには1年は居ないと思っていたんだがな…まぁ、万が一を考えて見回りに来て正解だったよ」
その女の先輩は苦笑しながら歩き出した。俺も置いていかれないように慌てて隣に並ぶ。
「それにしても…この学校、広すぎじゃないですか?高校なのにこれだけ広いって…学校生活始まっても暫くは迷い続けそうですよ……」
「何言ってるんだ、ただの高校じゃなくて魔法を学ぶ高校なんだ。これくらいの広さ、当然だぞ?君だって魔法を学びにこの学校に来たんだろ?1科の1年生」
「…ええ、まぁ……」
「ならこの学校の広さくらい、早く慣れないとダメだ。入学式が終わったら校内地図を頭に叩き込むことをオススメするよ」
本当は魔法を学ぼうと来た訳では無いのだが……先輩には関係の無い話なので適当に答えを濁しておく。
そうこう話して居るうちに、人の出入りが頻繁に行われてる建物が見えてきた。きっとあれが入学式の会場なのだろう。
「ほら、前に見えるあれが入学式の会場だ。ここまで来れば君でも大丈夫だろう。」
「あれ…ですか、分かりました。ここまで連れて来てくれてありがとうございます。」
連れて来てくれたことに感謝し頭を下げる。
すると先輩は快活な笑みを浮かべながら
「はは、気にするな。困ってる後輩を助けるのも先輩の役目だからな。私はもう少し周囲を見てくるからここで失礼するよ、縁があったらまた会おう」
そう言って先輩は踵を返して歩き…出そうとしたところでまたぐるっとこちらを向いてきた
「忘れるところだった…私はこの学校の風紀委員長をやっている渡辺摩利だ。新1年、君はなんて言う名前なんだ?」
「風紀委員長!?…あ、お、俺は…土門、土門春哉と言います。」
案内してくれた先輩はまさかの風紀委員長だった。びっくり。
「ふふ。土門春哉、だな。覚えたよ。それじゃあ土門、またいずれ。今度は迷わないようにな」
渡辺先輩はくすくす笑いながら再び踵を返して来た道を引き返して行った。その姿を感謝を込めて見つめて……
「…あ、やばい時間っ!!」
俺も先輩と同じように踵を返して会場までの道を走った。
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「…すごいな、これ……」
なんやかんやでいろいろあったが、なんとか会場に辿り着いた俺は目の前の光景に驚いた。
…少し話は逸れるがこの学校には1科生と2科生と、2通りの生徒がいる。1科生は魔法力が優秀な生徒達でいろんな面で優遇され、肩に花のエンブレムが着く。一方2科生は簡単に言えば
…とまぁ、こんな感じで2通りの生徒がいるのだが、俺が何に驚いたかと言うと……別れているのだ。入学式の席は自由に座っていい事になっているはずなのだが、綺麗に前は1科生、後ろは2科生で別れている。
「…1科生は自信の現れ…2科生はその逆かな…?」
とはいえ別段それもおかしなことでは無いだろう。あくまでも席は自由なのだから、この人達は自分自身で選んでそこに座ってるのだ。力を持った人と持たない人の優劣は世の習い。ましてやここは…魔法科高校なのだから。
「とりあえず空いてる席空いてる席っと…あぁ、あったあった。すみません、お隣、よろしいですか?」
もうほとんど席が埋まってる中、空いていた席をなんとか見つけ、隣に座っていたクールな雰囲気の生徒に声をかける。
「……どうぞ」
パッと俺の顔を見てクールな子は席を差し出してくれた、隣にいる明るそうな女の子は知り合いだろうか。
「ありがとうございます。空いてる席がほとんどなかったので助かりました」
なんとか席が見つかってよかった…と思いながら席に座るとギリギリに来たのが気になったのか、隣にいた女の子達が話しかけてきた。
「…こんなギリギリに来るなんて、寝坊でもしたの?」
「いやぁ…恥ずかしい話だけど、ちょっと校内が広くて迷っちゃって……」
「え?でも学校に入る時に専用の地図、貰いましたよね?」
「…これもまた恥ずかしい話だけど、地図を見るの苦手で……たまたま先輩が通りかかってくれたから何とかなったけど、そうじゃなかったら今頃まだ校内をさまよってたと思う」
「すごい…なんというか、方向音痴…なんですね…」
女の子達は苦笑いしながらこちらを見てくる。やめてっ…そんな目で俺をみないでっ!……なんて心の中で茶化しつつ
「そうだ、自己紹介がまだだった。俺は土門、土門春哉って言うんだ。よろしく」
「私は北山雫、よろしく」
「私は光井ほのかと言います。こちらこそよろしくお願いします」
自己紹介を済ませたところでちょうどよく式が始まり、壇上の方に向き直る。
道に迷ったりアクシデントもあったけど、こうして友達も出来たし高校生活も何とかなりそうだ。俺は心の中で安堵しながら壇上に立った、えらく整った顔立ちの新入生総代の話に耳を傾けることにした。
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