魔法科高校の復讐生   作:ボロ93

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2話目となります。


新入生総代の司波さんだ。

入学式が終わり、講堂を出た新入生達は続いてIDカードの配布を受ける。

今の時代、クラスの発表などもこのIDカードで知らされるようになっており、講堂をでた春弥、雫、ほのかの一行も例に漏れず早々とそのIDカードを受け取っていた。

 

「……土門さんは何組だった?」

 

「えーと…A組だね。」

 

「それじゃあ、私達と一緒」

 

雫が自分のIDカードを見せてくる。そこには大きく1年A組の文字。幸先のいいスタートに思わず笑みが零れる。

 

「よかった、2人と同じクラスになれて安心したよ。よろしくね、北山さん」

 

そんな会話を北山さんとしているなか、光井さんはそれには混ざらずそわそわしながら前方--かなり人でごった返してる所を見ていた

 

「……えーと、光井さん?そんなに向こうを見つめて……ん?」

 

光井さんが見つめていた先には1人の女性。妙に顔の整った人だ。確かあの人はさっきの入学式で……。

 

「新入生総代の司波深雪さんだよ」

 

思い出せずに居ると横から雫が助け舟を出してくれる。

 

「ああ、そうだった。新入生総代の司波さんだ。すっかり名前を忘れてたや。……にしても凄い人気だねぇ、彼女。あんなに人に囲まれてちゃ鬱陶しいだろうに」

 

「あれだけ綺麗で魔法力も凄いってなったら注目されるのも当然…実際ほのかもあの人が気になってるみたいだし」

 

そう言って光井さんを見つめる北山さん。なるほど、光井さんはそれであんなにじーっと向こうを見てたのか……。

 

「…あー…光井さん?気になるなら司波さんの所に行ってみたらどう?何事も始める時はまず最初の1歩を踏み出すことだよ」

 

「そ、そうですけど……あの中に入って行くのは少し…」

 

そう言って光井さんは顔を(しか)める。司波さんを取り囲んでるのは光井さんと同じ女子ではなくほとんどが男子だった。

しかも現在進行形で司波さんはかなり迷惑そうな顔をしてる。正直それに気づかないで囲んでる人達はどうなんだ…と思わなくもないが、確かに気の弱そうな光井さんだとこの中に入って行くのは厳しそうだ。

 

「うーん…だとしたら捌けるのを待つか……多分相当時間経たないと捌けないだろうな…これ」

 

「捌けるの待ってたら凄い時間を無駄にしちゃう」

 

俺と北山さんで苦笑いしていると、急にその囲いが割れ、1組の男女が司波さんの前に姿を現した。

 

「あれ、なんか女の人が司波さんと話してる…あれは上級生、かな?」

 

「多分、うちの学校の生徒会長だと思う」

 

「生徒会長?」

 

「うん、確か名前は七草真由美さん。九校戦の時に……土門さん?」

 

雫が言葉を止めて怪訝そうに俺を見てくる。そんな中俺は自分の顔を顰めるのを止められなかった。嫌な名前(・・・・)を聞いてしまったから。

 

「…ごめん、なんでもないよ。生徒会長から声をかけられるなんて司波さんは凄い人だね」

 

なんとか顔を取り繕って北山さんに答える。北山さんは不思議そうな顔をしつつも言及することは無かった。

 

「うん。もしかしたら生徒会への勧誘とかをしてるのかも」

 

「なるほど…彼女は新入生総代だし、ありそうな話かもね。……でもそしたら、ますます光井さんが声をかけるタイミングが無くなっちゃうね」

 

そう言いながら光井さんを見ると彼女はまだ諦めきれないかのように司波さんを見ていた。そんなに彼女の事が気になるのか……

 

「はぁ…。私はもう少しほのかと一緒に居ようと思うけど、土門さんはどうする?」

 

「うーん……そうだな…。北山さんには悪いけど俺はここで失礼させて貰おうかな。ちょっとこの後も予定があるし…」

 

正直ここに残ってもいいのだが、囲まれてる司波さんを光井さん達と一緒に待ち続けるのも如何なものかと思い、先に帰ることにする。

 

「わかった。それじゃあまた明日、学校で」

 

「うん、また学校で」

 

 

 

 

 

 

♠ ♠ ♠ ♠

 

 

 

 

初めての学校に初めての教室。そこで醸し出される雰囲気は例えここが魔法師を育成するエリート学校であろうとも普通の高校と何ら変わることは無いように思う。初めて出会ったクラスメイトとの挨拶や自己紹介、知り合いと出会って再会を喜ぶ声。そんな感じの雰囲気だ。

正直この様子を見てると魔法科高校に通っていると言えども普通の高校生と何ら変わらないな、と思うし。実際その雰囲気に高揚してる自分も普通の高校生と変わらないんだろうなと苦笑する。

だけどそんな中で昨日の入学式で早々と友達を作れたことは、俺にしては上手くいった幸先のいい事だった。

 

「おはよう、北山さんに光井さん」

 

「おはよう、土門さん」

 

「おはようございます、土門さん。…あの、昨日はすいませんでした…」

 

挨拶と同時に光井さんが謝罪してくる。多分昨日のことを気にしての謝罪だろう。

 

「いや、そんなに気にすることじゃないから大丈夫だよ。それで司波さんとはお話出来た?」

 

「いえ…それがあの後お兄さんと帰る約束があるとかで……結局話せないまま帰っちゃいました」

 

光井さんが傍から見てもわかるくらいしょんぼり肩を落として答える。彼女は残念そうにしてるがあそこで話しかけるのは正直あまり良い手では無かった思うので、結果的には良かったんじゃないかと思う。

 

「そっか。まぁ…同じ学校に居るんだしいつかまた話す機会もあるよ。もしかしたら同じクラスになるかもしれないよ?」

 

そう言って光井さんを励ます。すると光井さんは顔を赤くしながらあわあわしだした。

 

「そ、そんな同じクラスなんて畏れ多いですよ!…でももし同じだったら嬉しいし…はうぅ…」

 

…何だこの生き物は、可愛い。

 

と、そんなやり取りをしていると不意に教室内がザワザワしだした。振り返ってみると…そこには新入生総代の司波さんが居た。…司波さんが、居た。

 

「おはようございます」

 

お淑やかさを感じつつも凛とした声で挨拶をして入室してくる。そんな姿に誰しもが見とれ、注目していた。相変わらず、ため息が漏れそうなくらい整った綺麗な顔立ちだ。整いすぎて一一少し不気味ささえ感じてしまう綺麗な顔。しかし、こっちの方は今そのようなことを深く考えられる状況では無かった。

 

「ほのか、司波さんだよ。私達と同じクラスだったみたい」

 

「あ、あわわ…どうしよう…!」

 

司波さんは周囲に注目されるのを気にする様子もなく自分の席を探そうと端末を確認する。

確認し終えると、席を探しながらこちらへ向かってきた。

 

「…あれ?もしかして司波さんの席、こっちの方なんじゃないの?」

 

「え、ええ!?」

 

驚く光井さん。なにせ司波さんはどんどんこっちに向かって歩いてきてるので、十中八九この辺に咳があるのだろう。今現在俺たちは北山さんの机に集まって通路に立っているので、もしかするとすれ違う可能性もあるかもしれない。

特段司波さんに注目する訳でもない俺と北山さんはそんなこともあるだろうと思っていたが…光井さんはそうもいかない。明らかにさっきよりも数段マシであわあわしだした。

 

「ど、どうしよう!こっちに来るよ!?」

 

「どうしようって…普通に挨拶したらいいんじゃないかな?」

 

「ほのか、自己紹介するチャンスだよ」

 

「ええ!?で、でもでも!」

 

小声で3人でコソコソ話してると…司波さんはもう俺たちの目の前まで来ていた。そして自分の端末に目を落として確認し、北山さんのすぐ後ろの席に座った。そして自分の鞄を下に置きつつ、俺達が注目しているのに気づいたのか顔を上げてニコリとこちらに微笑みかけてきた。

 

「ほら、光井さん。今がチャンスだよ」

 

「…う、うん!」

 

再度光井さんに促すと覚悟を決めたのか並々ならぬ決意を胸にしたような顔でしっかりと頷く。

ただの自己紹介なのに……。

 

「あ、あの!司波ひゃんっ!?」

 

そして一一噛んだ。盛大に、噛んだ。

見る見るうちに顔を赤くしプルプルと肩を震わせる光井さん。こっちも笑いをこらえるのに肩を震わせていたが、状況は向こうの方がより悲惨だろう。

 

「…?あ、あの…?おはようございます…?」

 

いきなり声をかけられた上に盛大に噛んでフリーズしてる学友を前に流石の司波さんも戸惑った表情を浮かべていた。すると見かねた北山さんがそのフォローに回って

 

「ごめんなさい、司波さん。この子あなたの事が凄い気になってるみたいで…緊張してるんです」

 

「ちょ、し、雫!?」

 

光井さんが抗議の視線を送るがそこは抗議じゃなくて感謝の目線じゃない?と笑いを堪えながら考えていると、司波さんがそのフォローに乗っかって反応した。

 

「あ、ああ。そうでしたか。ふふ、そんなに緊張なさらなくてもいいんですよ?えっとーー」

 

「あ…み、光井です!光井ほのかっていいます!」

 

そう言えば噛むだけ噛んで名乗ってすら無かったな。と笑いを堪えながら考える。すると司波さんはまたニコリと微笑みながら

 

「光井さん、ですね。よろしくお願いします」

 

と光井さんが今1番望んでるであろう言葉をかけてきた。途端に幸せそうな顔をする光井さん。

 

「よかったね、ほのか。私は北山雫といいます。よろしくお願いします、司波さん」

 

「北山さんですね、こちらこそよろしくお願いします。……苗字だとどことなくよそよそしいですから、深雪と呼んでください」

 

「それなら私のことも雫って呼んでください、もちろんほのかのことも。ね?ほのか」

 

「えっ!?あ、も、もちろん!ほのかって呼んでくれて大丈夫です!」

 

「ふふ、わかったわ。よろしくね、雫、ほのか。」

 

司波さんは口調をフランクなものに変えてふわっとした笑みを浮かべながら答える。そしてずっと笑いを堪えてる俺に気づいたのかこちらにも視線を向けてきた。

 

「えっと…貴方は」

 

「…ん、ああ、すいません。俺は土門、土門春弥っていいます。よろしく、司波さん。」

 

そう言って手を差し出すと司波さんは嫌がる顔もせず握手を返してくれた。

 

「土門さんですね、こちらこそよろしくお願いします」

 

その後4人で軽く談笑をしているとホームルームの始まりを告げるチャイムが流れてくる。もう少しみんなと話をしていたかったが、チャイムが鳴ったのなら仕方がない。俺たちはそれぞれの席に戻っていった。

 

 

 

♠ ♠ ♠ ♠

 

 

指導教官による簡単なオリエンテーションは終わり、この後にはそれぞれの判断で校内の見学するもよし、あるいは実技授業の見学をして一科生の特権である先生のレクチャーを受けるもよしといった時間になった。

さて自分はどうしようか…と悩んでいたところで()が近づいてきて声をかけてくれた。

 

春弥(・・)は何を見に行くとか、もう決まったの?」

 

「いや…特に決まってないから、適当にブラブラしようかなって思ってるよ。特にこれが見たい!…っていうのもないしね」

 

「そうなの?じゃあ、クラスのみんなとは回らないの?」

 

「うーん…クラスのみんなと回るのもいいけど……あれだとちょっとね」

 

そう言って目を向けるのは深雪(・・)の席。深雪はクラスのみんなから囲まれて何を見に行くのか、一緒に見に行かないか。などとクラスメイトからの質問攻めにあっていた。

 

「…確かにあれは少しキツイかも」

 

「でしょ?だから俺は適当にブラブラしてくるよ。雫達はどうするの?」

 

「私達は…みんなと一緒に回ろうかなって思ってる。見たい先生の授業もあるし…それに、ほら」

 

雫が再び深雪の席に視線を移すと、ほのか(・・・)が質問攻めにあっている深雪をなんとか助けようとしていた。

 

「ほのかも深雪と一緒に行きたがってるから」

 

「なるほどね。ほのかのことを考えたらそりゃそうか」

 

「うん。…あ、私とほのかはお昼を学食で食べる予定だから、もし良かったら春弥もどう?」

 

「学食…うん、いいね。それじゃあ俺も混ぜてもらうよ。ありがとう、雫」

 

「これくらい友達なら当然。…それじゃあ、春弥、また後で」

 

後ろの方では深雪が移動をしようとしてクラスメイトが大挙してそれについて行こうとしているところだった。ほのかが急かすようにこちらを見ている。

 

「ああ、また後で。雫」

 

これ以上ほのかを待たすのも申し訳ないし、俺と雫はここらで会話を切り上げ、別れることにした。

 

 

 

♠ ♠ ♠ ♠

 

 

さて…自由行動になった俺は1人校内をブラブラしていた。特に目星い講義もないし、こういう時にどこに何があるのかを覚えておくのは非常に有意義な時間の使い方になるだろう。……そう思っていたのだが…

 

「…あれー…っかしいな…俺は今どこにいるんだ…?」

 

絶賛校内地図と睨めっこしてる最中である。

 

「現在地がここだから……つまりこの辺ってことだろ?でもこの道はさっき通った道だし……うーん…?」

 

やっぱり何度地図を見てもわからない。もうすぐお昼休みの時間になるが、こんな状況だと食堂につけるかどうかも怪しくなってくる。せっかく雫に誘ってもらえたのがパァだ。

 

「やっぱ人に聞いた方がいいかな……でも食堂の場所が分からなくてって地図の前で堂々というのも恥ずかしいよな……」

 

結局その後恥を忍んで人に聞くことになるのだが…食堂に着いた頃にはすでにお昼休みが始まって少しだった頃だった。

 

 

 

♠ ♠ ♠ ♠

 

 

 

 

食堂に着いた俺は雫やほのかを探そうと辺りを見渡して…すぐに見つけた。なにせまだ深雪と取り巻きと一緒にいたのだから。あんなに大挙して集まってたら否が応でも目に止まる。

少し躊躇いつつも約束があるし、雫とほのかに声をかけることにした。

 

「ごめん雫、待たせた」

 

「あ、春弥。…遅かったけどなにかあったの?」

 

「いやぁ…やっぱりまだ校内地図が覚えられなくてさ…人に聞いたりしてようやくここまでたどり着けたんだ」

 

「あはは…食堂に着くだけで大冒険をしたみたいな感じですね…」

 

ほのかが苦笑いしながら言ってくる。実際食堂に着くまで四苦八苦した身分としては何も言えない。

 

「それで…今はどういう状況?みんなはまだご飯食べないの?」

 

「食べたいんだけど……男子達が深雪と食べるから席を外せって二科生の人達にいってるの。ほら…」

 

見ると、先頭に立っていた同じクラスの…確か森崎って名前の人だ。その人が二科生の生徒たちと口論をしていた。いや、口論と言うより一方的に暴論を突きつけてるだけだろう。正直言って見苦しい以外の何者でもなかった。かと言って止めようかと考えるがそういう気にはなれない。

結果…俺はまたみんなと離れて一人で食べることにした。

 

「ごめん、雫、ほのか。俺もうお腹空きすぎて早く食べたいから一人で食べてくるよ」

 

「待って、それなら私達も一緒に行く。深雪には申し訳ないけどもう待つのも疲れたし…あの言い方はあんまり好きじゃない」

 

「わ、私も…あれはちょっと…」

 

2人にそう言われれば断る要素は何もないので3人で一緒にご飯を食べることにした。ここの食堂は食券を自分で買って受け取りに行くという形式の食堂だ。俺が今回頼んだのはうどんとおにぎり。ようやくお昼ご飯にありつける。

適当な席に3人で座ってご飯を食べていると、雫が先程の話を切り出してきた。

 

「…森崎も二科生の人達にあんな言い方すること無かった。あれじゃあただの暴論だし、一緒にいるこっちが恥ずかしい」

 

「そうだよね…せっかく深雪と一緒にご飯食べれるかもって思ったのに全部台無しになっちゃったし…」

 

そう言って深雪の方を見るほのか。そこでは二科生から無理やり席を取ったクラスのみんなに、深雪が居心地悪そうに囲まれていた。

 

「春弥はああいうの、どう思う?」

 

「…まぁ、あれは森崎くんが悪いと思うよ。一科生が優遇されてるのはあくまで授業や講師とか、魔法に関わることだけだ。その他の高校生活に関しては一科生も二科生も平等であるべきだと思うよ」

 

そう言うと雫とほのかはそうだよね。と深く頷いた後、先程みた授業の内容について詳しく説明をしてくれた。

 

…そう、あくまで優遇されてるのは魔法を学ぶ事のみ。その他の高校生活まで幅を利かせようとは思わない。思わないけど…かと言ってあの傍若無人な振る舞いを止めようと思うかと聞かれると、そうは思わない。実際に自分に被害が及びそうならば振り払うことも必要だろうし、そうなればあの振る舞いも止めることもやむ無しだろうが、自分が預かり知らぬところで騒いでるのをわざわざ止める必要性はない。

 

自分は別に正義の味方(・・・・・)でもなんでもないのだから

 




この話に20人もの人がお気に入りをつけてくださいました。ただただ感謝です。拙い文章ですが、完走目指して頑張りますのでよろしくお願いします。

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