星がまたたく夜、流星街に帰ってきた。
懐かしき我が家、シズクさん家を見てシミジミと思った。俺はインドア派だと、家が一番だと、確信したね。…なんかこみ上げてくるものがある。色々あったからなぁ…
その日は疲れていたので、家に入り、すぐさま寝た。
数日のんびり過ごし、またゴミ探しのバイトを始めた。状態の良い家具を売ったり、まだ使える重火器を売ったり、そこそこの収入になった。
帰りがけに飯の材料を買い、ウキウキ気分で家に戻った。
「ただいま帰りました。シズクさー、ん…」
扉を開けると、そこには当たり前だがシスグさんが居た。
ただし、見知った顔の人達も何故か居た。ウボさん、ノブさん、マチさん、フェイさん、フィンさん、シャルさん、コルさん、の七人だ。狭い家がさらに狭く感じる…いや実際に狭くなってるのか…
つか!なにゆえ!この人達がっ、ここに居る!?
そして何故!最後の良心フランさんがここに居ない!?
「久しぶりだな!ハルト!」「おっ、戻ったか」「元気そうじゃねぇか、すぐヤレるな」「良かったネ。これから痛めつけるヨ、元気じゃないと殺りがいないネ」「ハンターライセンス取れた?」「久しぶり」「ふんっ」
訳わかんないのでいっせいに喋らないで欲しい。
そして訳のわからぬまま外に連れ出された無理矢理。しかもシスグさんは「頑張ってね」と手を振り俺の事を見送った。気分はドナドナだ。
ついた場所はゴミ山の一角、わりと平らな地面がある所だった。
「殺されそうになった、らしいな」
とノブさんが言い。
「俺達が鍛えてやるよ」
とフィンさんが続け。
「さぁ!派手に殺ろうぜ!」
とウボさんが締めくくった。
…つかウボさんの趣旨違くない?
そんな事を思ったのもつかの間、いきなりウボさんが殴りかかってきた。後ろに飛びのいてよけると、豪腕は地面に当たり、アホみたいに地面を陥没させていた。
当たってたら死んどるわ!
馬鹿なのかこの人!いや実際に!馬鹿なんだ!
これだから脳筋は嫌だ!
拳を避けたり、逃げていたら、ウボさんに「戦え!ハルト!」と言われた。無理をおっしゃる。さらに俺が逃げて避けていたらウボさんが地面を殴り、土煙りが上がった。視界は最悪、しかも…隠か。
念を使い、ひとまず俺は逃げた。下からウボさんを探し、見つけた。ウボさんから10mほど離れた真後ろに俺は出た。静かに抜き足差し足で近付き、ナイフを一閃した。それは見事なカスリ傷をウボさんの体につけた。よしっ。
しばらくしてヘナヘナとウボさんは倒れた。麻痺毒の話を俺はウボさんに説明してあげた。その後、全てのナイフを取り上げられ、俺の攻撃力はゼロになった。ついでに念能力も使うなと命令された。
そして修行と言うなのイジメが幕を開けた。
フルボッコ、修行と称し皆で俺をフルボッコだ。
途中フランさんが来たので、えっぐえっぐ涙をこぼしフランさんに抱きついた。しかしフランさんは「よし、今度は俺と殺るか」笑いながら言い放った。その後も修行は続き、やっと夕方に終わった。俺は大の字で地面に寝転がっていた。
フェイさん、マチさん、あの二人は本気で殺しにきてた。フランさんの攻撃もヤバ過ぎた。こんなん修行じゃない!絶対違う!イジメだ!恨みがましい目で皆様方を見ていた。
するとシャルさんが俺に近付き「この修行ね。シズクが皆に頼んだんだよ」見下ろしながら笑っていた。へっ?と俺が困惑していたら、シャルさんは立ち去っていた。
〜
今日も今日とて地道味にバイトをしている。よく分からない薬を拾ったり、精巧に出来た等身大の人形を拾った。それらを売り払い、まぁまぁの金になった。
家には戻らず、ゴミ山の一角に向かった。
あれから、自主的に修行をしている。修行の相手はだいたいノブさんとウボさん、この二人とやり合う事が多い。ぶっちゃけ修行つーか、中身は殺し合いだ。
そして今日、ノブさんとウボさんの二人に飲み行かないか誘われた。もちろん早く帰りたいので断ったが、無理矢理に連行された。
酒を飲まされ、飲まされ、無理矢理に飲まされ、俺の意識は混濁していった。急性アル中で死ぬかもしれないと思いながら。
次に気がついたのは、朝だった。いや、昼かも…
つーか頭が痛い。すごぶる痛い。ガンガンする…
頭から手を離し、ふと手の甲を見たら…、蜘蛛がいた!
ひぃ!?と情けない声を出し、手から蜘蛛を払い落とそうとしたが、取れなかった。そもそも取れるはずがなかった…
だって、その蜘蛛は、イレズミだったから!
ぼーぜん…だった。朝起きたら手に蜘蛛のイレズミが彫られてた。なんで!?どうして!?こうなった!?
寝こける二人をグワングワンに揺さぶり、起こした。ウボさんは「頭いてぇ」と言い、ノブさんは「気持ちワル」と言っていたが、んなこと関係ねぇよ!それどころじゃねぇよ!
落ち武者とゴリラの話をまとめると。
一度俺はぶっ倒れ、しばらくして起きたらしい。しかし記憶がないよ。その後さらに酒を飲み続け、テンションが上がり、何故かイレズミを彫りに行く事になった、らしい。
大事な所が抜けとるわっ!!肝心な部分がねぇよ!!ふざけてんのかっ!
しかし、落ち武者とゴリラは「番無しのイレズミだ。準団員だからな」「似合ってるぞ」良い笑顔が、心底腹立たしい。
また眠り始めた落ち武者とゴリラの顔にイタズラして俺は帰った。
家に着いたのは12時頃だった。当たり前だがシズクさんは起きていた。俺は昨日と今日の出来事をシズクさんにありのまま伝えた。別に愚痴では無い!けっしてな!
俺が全てを話し終え、シズクさんが発した言葉は「名前、私もアダ名が良い」だった。落ち武者とゴリラはアダ名じゃないですから、むしろ蔑称ですからね。しかしシズクさんはアダ名が良いと頑なに主張した。でも俺に素敵なアダ名が思いつくはずもなく、とりあえず「シズク」の呼び捨てに落ち着いた。
なんか疲れた。頭、痛いし…疲れた。寝みぃ…
そんな事を俺がつぶやくと。
「寝る?」
そう言いながら、シズクさんが自分の太ももに手を置いた。
「いっ、いいんですか?」
俺の声、震えてないよな?
「うん。いつもハルトがしてくれるから、お返し」
いつも膝枕してて…、良かったぁ!!
「じゃあ、失礼いたしますです」
ド緊張しながらシズクさんの太ももに頭をのせた。
膝枕、癒されるぅ〜
凄くいい匂い。する!
つか、やわらかい。
天国や!ここはヘヴンや!
はへぇ〜
ウトウトしながら思った。
明日からもバイト頑張ろ。
とうぶん修行は辞める。