シズクルート   作:眼鏡最高

11 / 16
もう、やめたい…


第十話 帰郷

星がまたたく夜、流星街に帰ってきた。

懐かしき我が家、シズクさん家を見てシミジミと思った。俺はインドア派だと、家が一番だと、確信したね。…なんかこみ上げてくるものがある。色々あったからなぁ…

 

その日は疲れていたので、家に入り、すぐさま寝た。

 

数日のんびり過ごし、またゴミ探しのバイトを始めた。状態の良い家具を売ったり、まだ使える重火器を売ったり、そこそこの収入になった。

帰りがけに飯の材料を買い、ウキウキ気分で家に戻った。

 

「ただいま帰りました。シズクさー、ん…」

扉を開けると、そこには当たり前だがシスグさんが居た。

ただし、見知った顔の人達も何故か居た。ウボさん、ノブさん、マチさん、フェイさん、フィンさん、シャルさん、コルさん、の七人だ。狭い家がさらに狭く感じる…いや実際に狭くなってるのか…

 

つか!なにゆえ!この人達がっ、ここに居る!?

そして何故!最後の良心フランさんがここに居ない!?

 

「久しぶりだな!ハルト!」「おっ、戻ったか」「元気そうじゃねぇか、すぐヤレるな」「良かったネ。これから痛めつけるヨ、元気じゃないと殺りがいないネ」「ハンターライセンス取れた?」「久しぶり」「ふんっ」

訳わかんないのでいっせいに喋らないで欲しい。

 

そして訳のわからぬまま外に連れ出された無理矢理。しかもシスグさんは「頑張ってね」と手を振り俺の事を見送った。気分はドナドナだ。

 

ついた場所はゴミ山の一角、わりと平らな地面がある所だった。

 

「殺されそうになった、らしいな」

とノブさんが言い。

 

「俺達が鍛えてやるよ」

とフィンさんが続け。

 

「さぁ!派手に殺ろうぜ!」

とウボさんが締めくくった。

 

…つかウボさんの趣旨違くない?

そんな事を思ったのもつかの間、いきなりウボさんが殴りかかってきた。後ろに飛びのいてよけると、豪腕は地面に当たり、アホみたいに地面を陥没させていた。

 

当たってたら死んどるわ!

馬鹿なのかこの人!いや実際に!馬鹿なんだ!

これだから脳筋は嫌だ!

 

拳を避けたり、逃げていたら、ウボさんに「戦え!ハルト!」と言われた。無理をおっしゃる。さらに俺が逃げて避けていたらウボさんが地面を殴り、土煙りが上がった。視界は最悪、しかも…隠か。

念を使い、ひとまず俺は逃げた。下からウボさんを探し、見つけた。ウボさんから10mほど離れた真後ろに俺は出た。静かに抜き足差し足で近付き、ナイフを一閃した。それは見事なカスリ傷をウボさんの体につけた。よしっ。

 

しばらくしてヘナヘナとウボさんは倒れた。麻痺毒の話を俺はウボさんに説明してあげた。その後、全てのナイフを取り上げられ、俺の攻撃力はゼロになった。ついでに念能力も使うなと命令された。

そして修行と言うなのイジメが幕を開けた。

 

フルボッコ、修行と称し皆で俺をフルボッコだ。

途中フランさんが来たので、えっぐえっぐ涙をこぼしフランさんに抱きついた。しかしフランさんは「よし、今度は俺と殺るか」笑いながら言い放った。その後も修行は続き、やっと夕方に終わった。俺は大の字で地面に寝転がっていた。

 

フェイさん、マチさん、あの二人は本気で殺しにきてた。フランさんの攻撃もヤバ過ぎた。こんなん修行じゃない!絶対違う!イジメだ!恨みがましい目で皆様方を見ていた。

 

するとシャルさんが俺に近付き「この修行ね。シズクが皆に頼んだんだよ」見下ろしながら笑っていた。へっ?と俺が困惑していたら、シャルさんは立ち去っていた。

 

 

 

 

今日も今日とて地道味にバイトをしている。よく分からない薬を拾ったり、精巧に出来た等身大の人形を拾った。それらを売り払い、まぁまぁの金になった。

 

家には戻らず、ゴミ山の一角に向かった。

あれから、自主的に修行をしている。修行の相手はだいたいノブさんとウボさん、この二人とやり合う事が多い。ぶっちゃけ修行つーか、中身は殺し合いだ。

 

そして今日、ノブさんとウボさんの二人に飲み行かないか誘われた。もちろん早く帰りたいので断ったが、無理矢理に連行された。

 

酒を飲まされ、飲まされ、無理矢理に飲まされ、俺の意識は混濁していった。急性アル中で死ぬかもしれないと思いながら。

 

 

 

次に気がついたのは、朝だった。いや、昼かも…

つーか頭が痛い。すごぶる痛い。ガンガンする…

 

頭から手を離し、ふと手の甲を見たら…、蜘蛛がいた!

ひぃ!?と情けない声を出し、手から蜘蛛を払い落とそうとしたが、取れなかった。そもそも取れるはずがなかった…

 

だって、その蜘蛛は、イレズミだったから!

 

ぼーぜん…だった。朝起きたら手に蜘蛛のイレズミが彫られてた。なんで!?どうして!?こうなった!?

 

寝こける二人をグワングワンに揺さぶり、起こした。ウボさんは「頭いてぇ」と言い、ノブさんは「気持ちワル」と言っていたが、んなこと関係ねぇよ!それどころじゃねぇよ!

 

落ち武者とゴリラの話をまとめると。

一度俺はぶっ倒れ、しばらくして起きたらしい。しかし記憶がないよ。その後さらに酒を飲み続け、テンションが上がり、何故かイレズミを彫りに行く事になった、らしい。

大事な所が抜けとるわっ!!肝心な部分がねぇよ!!ふざけてんのかっ!

 

しかし、落ち武者とゴリラは「番無しのイレズミだ。準団員だからな」「似合ってるぞ」良い笑顔が、心底腹立たしい。

 

また眠り始めた落ち武者とゴリラの顔にイタズラして俺は帰った。

 

家に着いたのは12時頃だった。当たり前だがシズクさんは起きていた。俺は昨日と今日の出来事をシズクさんにありのまま伝えた。別に愚痴では無い!けっしてな!

 

俺が全てを話し終え、シズクさんが発した言葉は「名前、私もアダ名が良い」だった。落ち武者とゴリラはアダ名じゃないですから、むしろ蔑称ですからね。しかしシズクさんはアダ名が良いと頑なに主張した。でも俺に素敵なアダ名が思いつくはずもなく、とりあえず「シズク」の呼び捨てに落ち着いた。

 

なんか疲れた。頭、痛いし…疲れた。寝みぃ…

そんな事を俺がつぶやくと。

 

「寝る?」

そう言いながら、シズクさんが自分の太ももに手を置いた。

 

「いっ、いいんですか?」

俺の声、震えてないよな?

 

「うん。いつもハルトがしてくれるから、お返し」

いつも膝枕してて…、良かったぁ!!

 

「じゃあ、失礼いたしますです」

ド緊張しながらシズクさんの太ももに頭をのせた。

 

膝枕、癒されるぅ〜

凄くいい匂い。する!

つか、やわらかい。

天国や!ここはヘヴンや!

 

はへぇ〜

 

ウトウトしながら思った。

明日からもバイト頑張ろ。

とうぶん修行は辞める。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。