シズクルート   作:眼鏡最高

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決めました…
あと三話で…
絶対に終わらす!
もう!やってられるかっ!





第十四話 霧の都

やって来ました!霧の都ロヴェルディ!テンション上がりまくりだぜ!とは、いかなかった。

なぜなら最終列車に乗り、夜遅くに着いたので、どこもホテルが満室だった。都会のど真ん中で、まさかの野宿?

 

駅の近場のホテルは空いてなかったので、俺とシズクは二手に別れて少し遠くまで歩いてホテルを探すことにした。

 

できるだけ明るい通りを歩いているが、怖そうな若者や危なそうなお兄さん達がチラホラたむろしてる。カツアゲされそうで、マジ怖い。

 

目線を合わせないようにウロウロと辺りを歩き回っていたら、夜露に濡れた路地裏から、ナイフの斬り合う音が、確実に聞こえてきた…

分厚い雲で月明かりもなく、暗くて先が見えない…

 

んー、関わらない方が良いな。うん。と心の中で諸手を上げて決めたが、女性のうめき声が聞こえてきた。

 

はぁ…

やっぱり助けに行かないとマズイよなぁ。

あぁ、もう、仕方ない。

 

腹を決めて路地裏を進むと、地面に倒れてる女性、あと男性がメスを右手に持ち立っていた。特徴をあげるとすれば、女性は目が死んでる、男性は目つきが凶悪だ。

ちなみに詳しく現場の状況を言うと、男性は女性の首元にメスを突きつけ、今にも殺そうとしていた。

う〜ん、どう見ても悪者は男だよね?

 

「こんばんは。え〜っと痴話喧嘩では無いですよね?」

声を掛けると二人はいっせいに俺を見た。ちなみ自分でも何を血迷って先ほどの事を聞いたのかは謎だ。つーか、変な匂いがする。なんの匂いだろ?んー、まったく分からん。

 

で件の男性と女性だが。女性は男性の隙をつき砂を投げつけ、その隙に女性は立ち上がり距離をとっていた。なかなかやるね。

 

トライアングル!?

失礼。今の状況を説明しよう。

何故だが三すくみの状態になっていた…

なにゆえ三つ巴?

いつから俺って参戦したっけ!?

 

意味不明な膠着状態が続いていた。切実に帰りたい。マジで関係ないもん。おれ。

 

そんな時に動いたのは、第三者ではなく、第四者だった。まず最初に警笛が、次に騒ぐ声が、ついで足音が聞こえ、姿を表したのは二人の警察官だった。

しかし、ただの警察官じゃない!なんと犬面だ!完璧に顔が犬だ!獣人初めて見た!

 

「いたぞー!!ここだー!!」と一人目の犬面警察官は大声を何度も上げ、二人目の犬面警察官は警笛を赤い顔で鳴らしまくっていた。

 

気が付けば、男性は遠くに逃げ、女性は既に消えていた。逃げ足、はやっ!

 

つか俺も逃げた方が良いのか?と思っていたら俺は多勢の犬面警察官に包囲された。なんか可愛いなぁとのんびり思っていたのも束の間、ブルドッグっぽい犬面警察官の「かかれ!!」の掛け声で、いっせいに犬面警察官が飛びかかってきた。

 

あっけなく俺は捕まった。お縄でグルグル巻きだ。つか俺が何をした!何もしてないぞ!ただホテルを探し歩いていたら、変な女性と男性に会っただけだ!

 

何一つ俺の主張を通らず、ドナドナ的な雰囲気で警察署に連行されそうになっていた。そんな時。

 

「警部、彼の犯行では無いでしょう」

見るからに探偵っぽい服装の人が登場した。顔を見ると、またも犬面だ!

 

良いぞ探偵ワンちゃん頑張って!でも犬面警部は探偵ワンちゃんの言葉を聞かず、俺を警察署に連行した。ちくしょう!一瞬でも可愛いと思った自分が憎い!

 

その後、俺は牢屋に入れられた。

で、その日は、そのまま牢屋で過ごすことになった。毛布一枚とか、感謝感激だな。はぁ、もう寝よ寝よ。

 

 

明けて翌日。

取り調べ受けて分かったことは、今この都ロヴェルディには無差別殺人が起こってるらしい。昨日も殺人事件が起こり血眼になって探していたら、俺を見つけたらしい。

 

何度も「お前が犯人だろ!」と言われたり、首をしめられたり、照明を向けられたりしたが、その度に俺はを振った。苛烈な取り調べを受けているのだが、これには訳がある。

俺のナイフだ。右手に一本、左手に一本、腰に一本、懐に一本、右足に一本、左足に一本、合計六本のナイフを持ってたからだ。しかも五本はベンズナイフ、まぁ、まともな人間だとは思わないだろう。

 

ただ、なんとか昼頃になって誤解はとけた。

誤解が解けた理由は三つある。

①パスポートの入国日を見て、これまでの殺人が無理な事。②最初に出会った犬面警察官の証言で、他に男性と女性が居た事。③ハンターライセンスを持ってる事だ。

 

あとナイフの件は「自衛の為に、今の世の中、物騒でしょ」と無難な言い訳を口にした。

 

そして、ようやく俺は釈放された。

ちなみにカツ丼は出なかった。

けっこう、楽しみにしていたのにな。

 

 

 

街をブラブラ、あてもなくシズクを探してる。

一人って、寂しいなぁ…

まっ!シズクはいなかいけど仕切り直しだ!

 

『霧の都ロヴェルディ』蒸気機関で色々な機械を作っている都市だ。機械の蒸気、それに霧が発生しやすい場所なので『霧の都』と呼ばれている。あと街の中心には無いが、街の外部には何十本もの細長い煙突が天高く伸びてる。

 

う〜ん、やっぱり、何となく、この町を見たことがあるような気がする。気がするけれど、まったく思い出せない。

 

とりあえず腹が減ったので飯を食べようとしたが、マネーが少なかった。仕方なく安いファーストフードを食べた。まぁ美味しいんだけどね。

 

腹も膨れたので、俺は名所巡ることにした。時計塔、宮殿、ブリッジ、図書館、美術館。パンフを見ながら有名どころをプラプラしながら見ていた。

 

そして迷子になった。煙突が近くに見えるな。いつの間にか街の外部の方に来てしまったのか…。しかも、パラパラ雨まで降ってきた。踏んだり蹴ったりだよ。

 

ひとまず、近くの軒先で雨宿りした。

服の露を払いながら、なんとなく隣の精肉店を見ていたら、昨日見た、目が死んでる女性がいた。

しかも目が合っちゃった…

 

「どうも…」

女性の掠れた声が聞こえた。

 

「どうも」

俺はビビリながらも、平静を装った。なんも知らないし、なんも聞いてません。だからお助けを。

 

「雨宿りなら…、店に…、どうぞ」

 

「そんな大丈夫ですよ」

マジで本気で大丈夫っす!

 

「是非…」

売り物の肉に隠れて見えなかったが、女性はナタを手に持っていた。

 

「はぁい」

なんか変な風に声が出てしまった。

雨はザーザー降りになっていた。

 

 

 

精肉店に入ると、ところせましに肉の塊が吊り下げられていた。うん、だって精肉店だからね。

ハハハッ!

 

つか女性はドコ行った?

仕方なく店の中を見ていた。

そして店の奥で…

 

ん?

これって…何の肉だ?

なんかアレに似てるけど、まさかね。そんな訳がないよね。うんうん、きっと猿とかの肉だよね。うんうん。

 

「何か…、気になる?」

女性に背後から声をかけられた。

気配で分かってたけど、声が怖い!

 

「いえ、特に何もありません」

俺は首をプルプル横に降った。

 

「その肉は…、ブタよ」

何も聞いてないのに女性は答えた。

俺の馬鹿!肉を見過ぎだ!

 

「ブタかぁ」

猿じゃないのかぁ。マジかぁ。ブタかぁ。

 

「…なに?」

じーっと女性に見られている。

 

「えっ、いえ」

汗、吹き出てないよね?

 

「なに?」

さらにじーっと見られた。

マジ目が怖いよ。

 

「いや、猿の肉かっでえい!?」

話してる途中で、いきなり斬りつけられた。

 

「これだから男って嫌だわ」

ナタを手に持ち、汚物でも見るかのように俺を見ていた。しかし、すぐにブンブンとナタを振り回してきた。

 

「まったく、いきなり、なんだ」

間違いなく殺人鬼なんだろうけど、なんでこうなる。ホント嫌だわ!

 

「野蛮で汚い、獣の以下だわ」

話が通じねぇ!だから殺人鬼ってヤダ!

 

「ちょっと落ち着こう!」

店から出ようとしたが、いつの間にかシャッターが降りていた。マジかい!

 

「旅行者でしょ、死んでも、誰も気にしないわ」

 

「連れが居るわ!」

ちっ、右手、切られた。

 

「じゃあ、その連れの人も殺してあげる」

 

へぇ。

「じゃあ、先に俺がアンタを殺すよ」

一撃で頚動脈を切り裂いた。

 

派手に血が吹き出て、辺りを汚し終わると、一つの死体が出来ていた。

 

んー、返り血は付いてないな。しかし右手が痛い。居住区の方に向かい、布を使い応急処置をした。まぁ大丈夫だろう。

 

せっかくだから、肉、少し貰うか。

良さそうな肉を選び、居住スペースのキッチンで肉を焼いた。もちろんミディアムだ。肉を食ったが超美味い。さすがは肉屋さんの肉。うまうま。

 

食べ終わったし逃げるかね。

いちおう証拠隠滅の為に火を放った。

よしオッケー。逃げましょう。

 

スタコラさっさと裏口から店を出た。

雨上がりの街に、とけ込んだ。

 

 

 

 

人のいない方、いない方に、向かって歩いていたら、たぶん貧民街のような場所にたどり着いた。

 

う〜ん…

右手が痛い。どうしたもんか。

わりと布に、血が滲んでる。

 

「おじさん怪我してる!わかった!先生の家がわからないんでしょ!私が案内してあげる!」

 

いきなり幼女に「おじさん」と呼ばれ若干悲しかったが、否定する間もなく手をグイグイ引かれ、歩いて行った。

 

たどり着いた場所は、なかなかのボロさの小屋だった。幼女が「先ー生!患者さーん!」と大声で叫ぶと、ドアがガコンと変な音をたてて開いた。

 

出て来たのは、ゆる〜い表情のゆる〜い感じの白衣を着たゆる〜い男性だった。

 

「ありがとう、リノア。でも今は危ないから、あまり外に出ちゃダメだよ」

まず白衣の男性は幼女に話し掛けた。

 

「はぁ〜い」

幼女は不満タラタラな声で返事をしていた。

 

その後も幼女と男性はやり取りは続き、いつの間にか幼女は男性と遊びに行く約束を取り付け、帰って行った。やり手の幼女だな。

その後、俺と男性は幼女を見送った。

 

「すいません。お待たせしました」

やわらかい表情で男性は話し掛けてきた。

 

「いえいえ。でも、お金が少ないんですが…」

恥ずかしながら昼飯を食べて、ほぼ金が無い。

 

「あれ?私のこと知りません?」

男性は不思議そうな表情だった。

 

「いやぁ。あの子に手を引かれて…」

アハハと渇いた笑いで誤魔化した。

 

「あぁなるほど。私は無料で治療してるんですよ。ここ、番外地区で医者をしてます。マグノです。どうぞよろしくお願いします」

 

「無料ですか?」

生活どうしてんの?

つか番外地区ってなんだ?

 

「はい、そうですよ。ちなみに番外地区の方々にお世話になって生活してます」

笑いながらマグノさんは答えていた。

 

で、ようやく家の中に上がらせてもらった。

椅子に座り、右手の傷を見てもらった。一通り傷を確認すると、マグノさんは医療道具を取りに行った。

 

最初に変な匂いの消毒液を、傷にぶっかけられた。超しみる…、慣れた手つきで縫合し、あっという間に治療が終わった。

 

それにしても、この消毒液の匂い。どっかで嗅いだことあるなぁ。どこだっけ?

クンクン手当てされた場所を嗅いでいたら…

 

「気付いちまったか?」

知らない男の声が聞こえた。声の方を向けばマグノさんが立っていた。しかし、雰囲気が違う。まるで別人だ。

 

おもむろにマグノさんは、いや男は、蛇口から水を出し、手で髪を濡らし、オールバックのようにすると、あの日に出会った。凶悪な目つきの男の顔があらわれた。

 

俺は思った。

さっきまでと、顔、別人じゃん…

 

「バレたからには死んでもらうぜ」

いきなりメスで切りつけてきたので、俺は椅子から飛び上がるように立ち上がり避けた。

 

すぐコレだから。

ホント殺人鬼ってヤダわ。

 

「あんたマグノさんじゃないよな。誰だ」

ナイフを一本取り出しながら尋ねると。

 

「さぁ知らねぇよっ。ただコイツの面倒事を見てやってるだけさ。なのによっ、コイツは俺の存在を知らねぇ。まったく嫌になるぜ」

男は、喋りながらも斬りかかってくる。

「だが、まぁ、いいさ。あの幼女、あの幼女をバラしたら、コイツはどうなるかねぇ、あぁ、たまらねぇなぁ。血まみれで入れ替わったら、さぞ面白いだろうなぁ」

 

「よく喋る。耳障りだ」

新たに出したナイフで、心の臓を一突きした。

 

口から血を吹き出し、膝からガックリと床に倒れた。死に顔は、笑ってるマグノさんの顔だった。

 

少し血が付いたので、包帯で血を拭い去り、ここから出ることにした。たてつけの悪いドアをこじ開け、プラプラと街を歩き出した。

 

 

 

 

あれからテキトーにプラプラ歩き、少し疲れたので、今は路地裏の隅に座り込んで休んでいる。

 

ぼーっと宙を見ながら休んでいた。

 

「見っけ」

シズクが立っていた。

 

「シズク…、久しぶり」

たぶん疲れきった声だったんだろう。

シズクは無言で俺の頭をポンポンと撫で始めた。

 

 

 

あの後シズクが泊まってるホテルに向かった。色々とあり過ぎ、疲れたので、俺は寝た。すぐに寝た。

 

翌日。

起きてからシズクに今まであった事を話した。逮捕されたり、殺人鬼に出会ったり、殺人鬼に出会ったり、そんな事を話した。

 

シズクの話も聞いたが、特にコレと言った大事件はなかったようだ。ただ、ヨークシンで仕事があるので、このまま行くとのことだ。

 

俺もヨークシンには用事があるので、シズクと一緒に行くことにした。

 

まったく殺人鬼だらけの街だったな。

ホント疲れたわ。

 







あとがき
今さらですが読んでくださり、ありがとうございます。
評価などもつけて頂き、ありがとうございます。

書くのが遅くなり、すいません。

誤字脱字は脳内変換でお願いします。
それでは失礼しました。

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