場面的には、前の話からちょうど一日後、再三、夜に集まって会議をするところからです、9000字程度です。
前夜と同じメンバーが集まっていた。 思ったとおり、タバサの姿もある……やっぱりタバサは強い。
「昨夜は取り乱した、もう落ち着いてる、心配いらない」
やはり、ガリア王と両親をめぐる話に関しては譲れはしない、という意図を強くにじませてタバサが言う。
昨日と同じく、なにかを知った風に言うことが嫌なので、わざとそっけなくする。
「そ、落ち着いてるならいいわ、アルビオンの話をしましょう」
タバサを説得したいとは思っていない。
譲れない気持ちが理解できないわけがないし、状況が許すなら、復讐に手を貸してもいい。
だが、彼女はどうしたいのだろうか、ガリア王を殺したいのか?
それとも他人どろこか自分のことさえ、何とも思ってなさそうな、あの怪物に何かを刻みつけたいのか?
それとも頭を下げ、十分な誠意を示してもらい、母君の治療を一緒に行ってもらえれば十分なのか?
どうにもそこらへんが、まだ整理がついていない気がする。 彼女に葛藤と迷いがあるのは明らかだ。
少なくとも彼の王に対してアクションを起こす前には、彼女の気持ちを確かめることが必要になる。
タバサもそのことは解っているはずだ。 だから、今は保留だ。
「結局、アルビオン王国の何が問題になってるんだ?」
「内戦だって。 なんでも”聖地”の奪回と、貴族の共和制による統治という理念を掲げて、レコン・キスタって組織が革命戦争を起こしたらしいわよ」
「ちなみに聖地ってのは、東方にあるエルフの支配領域のことです、才人さん」
私たち二人がそうやって、問題を一旦保留したことを察したのか、才人、キュルケ、シエスタが話を進めだす。
「天空の大陸に、エルフまでとは、さすが剣と魔法のハルケギニアだな」
剣と魔法のファンタジーと言われても、こっちはピンとこない、単なる私たちの現実世界だからだ。
逆にこっちから見たら、地球がいわゆる近未来SFの世界になる。
もし地球と戦争したら負けるのはハルケギニアであるのは明らかだし、こっち視点の方が不思議や驚きが大きいと思う。
「そのエルフなんだけど、なぜか人間を毛嫌いしてて、人間側もエルフを恐ろしいものだって思って毛嫌いしてるわ」
「今は表立って戦争をしてないけど、そこも問題よねえ、エルフって系統魔法と違う、独自の精霊魔法ってのを使うし、めちゃくちゃ強いらしいわよ」
「強くても強くなくても、上手くやっていきたいところですよね、隠れて交流があること自体はつかんでますし、何が原因なのか把握したいところです」
そうなのだ、別に仲良くしなくても、上手く住み分けれれば十分だ。
それを私たち貴族の仕事、その名を政治という。
だがエルフに接触するのは難しいし、人間側もどうにも事情を秘匿しているから、原因がわからず、手が打てない。
「ま、エルフの話は今はおいて、話を戻すと、アルビオンは絶賛内戦中だけど、どっちにも理由なしに肩入れすることができないわ。
言い方は悪いけど、よその国の出来事で、私たちには直接には関係ないことだから」
「聖地奪回とやらはともかく、貴族の共和制という理念は別に悪いことでもないですから、どちらかに肩入れする理由も特にないですからね」
そう、他国の内戦に理由もなく、表立って参戦するのはあまり賢いとは言えない。
どこの国も、自分の利益誘導のために義勇兵派兵とか、経済的な封鎖とかはやってるけど。
……うちは唯一の地図上の隣接国であるクセに、何もしてない様子があって心配だが。
「ってことは、何か別の理由があるんだな?」
「そう、私たちにとって直接的ではない理由と、直接的な理由と両方あるわ、大きく3つほど」
「まず、ジョゼフが裏で糸を引いてる」
タバサが間髪入れずに一つの理由を言った 「落ち着いてよ」 と言いたくなるが、我慢だ。
話題としても触れておくべき話だし、この間も彼女がいなくなってから、少し考えていたことでもあるから。
「ああ、ガリア王だったな、なにか意図があるんだろうな」
そう、タバサがこの話に積極的な理由だ。
彼女の熱意に絆されたのもあるが、元より私も出来ることはしてあげたい。
「そうね、でもガリア王らしく、そうとわかるように関わってないわ。 だからタバサには悪いけど、私たちが関わる理由としては3番めのものよ」
「仕方ない、ルイズたちにはルイズたちの目的がある」
タバサの目は明らかに言っていることと違う感情を湛えていたが、熱くならずに話をしている以上、追求しない。
「2番めは貴族の共和制という理念を、国家の枠組みを超えて実現しようとしていることです。
トリステイン含む各国の貴族に呼びかけています」
「我がゲルマニアも例外なく声をかけられてるみたいよ、一部怪しい動きを見せている貴族も現れてるわね」
「なるほど、世界規模の革命運動……というか思想という資本をめぐる戦いなわけか。
それだとトリステインは無関係とも言えないな」
「そ、王政の恩恵を受けてる人間なら、革命が成就しないように願うし、行動するわけね、基本的には」
アルビオンだけの革命運動だと、他国の貴族にとっては、国を超えて協調する理由が薄い。
当の貴族にとっても、なにかと現状維持で王政のほうが都合がいいことも多いからだ。
何よりトリステインやガリアで自分だけ行動を起こすと、敵中に孤立する形になってしまう。
もちろん、思想や理念が国を超えて、革命運動抜きにいきなり世界に波及することもあるだろう。
けれど、今回に関しては革命が成るその前から、ハルケギニア全体でこれだけ影響を持っているのは妙だ。
「他国にまで影響するのが早すぎるから、ガリア王含む、何か別の力が働いてる可能性が濃厚ね」
「間違いなくジョゼフ、あいつならやる」
そこはタバサに賛成だけど、もう少し落ち着いてほしいわね。
実は変温動物だろ、というくらい冷血だが、ガリア王は間違いなく、歴史に名を刻む突出した為政者ではある。
その狙いはガリア、あるいはハルケギニア全体に、何か良い影響があると踏んでのことだと、私は見ている。
「まあ、つまり、トリステインとしても、アルビオンの王党派を助ける理由があるわけです」
「なるほど。 でもそれは、ルイズたちが今回の件で動く、直接の理由にはならないだろ?」
「そのとおりです。 あくまでよその国の内戦ですから、私たちがやる必要はありません。
国全体に方針も実際の行動も任せたほうが良い、とも言えるわけですね」
そうなのだ、それだけなら最初の話通り、対岸の火事とも言える。(そうも言ってられいない状況になりつつあるが)
別に国全体がやることに任せてしまっても良い。
……まあ今の我が国の実情では、そうやって任せる気はないのだが。
「ルイズってガリア王みたいに合理的でもあるけど、人情家でもあるのよねえ。
”タバサのためになる”ってだけのことで、実際は動いてるわけよ。
色々言い訳がましく1番目の理由があるとか言ってるけど。 ね、ルイズちゃん?」
「そこは心配してない」
「ふむ、ルイズだもんな、それはそうだ」
「……なによ、文句ある?」
実際、ここでガリア王を糾弾できる材料を手に入れられるとしたら、大きな戦果ではあるのだ。
もちろんタバサのためじゃないとは言わないけど、結局、合理的にしているだけ。
実際、優先度は低くしてるじゃない、最後の3番目よ……ほんとよ?
「で、ルイズの狙いは何なんだ? どうせガリア王みたいなとんでもないことを考えてるんだろ?」
「いっぺん、才人にとっての私がどういう人物なのか、聞いておく必要があるわね」
「なんだ? 未来の為政者って考えると、人情に弱いきらいはあるけど、新進気鋭のハルケギニア改革者、やり手の公爵令嬢だろ?」
「うぁ?」
間抜けな声を出した私をみんながニヤニヤと見てくる。
いや、私はそんな大それたものではない。
……そうなればいいなと思っていないわけじゃないけど。
「あら、これは才人に一本取られたわね、そのとおりじゃない? ルイズちゃん」
「……うっさい」
なんでこいつらは、私をからかって遊ぶのだろうか、なんとも言えない気持ちになっちゃうでしょ!
あと、皆もそれなりに気づいているようだが、確かにガリア王には、かなり親近感を感じている。
流石に私には、あそこまで出来ないだろうし、やろうとも思わないが。
全体を見て、不幸な人を減らし、幸福な人を増やすために、上手くやろうとする姿勢は、理解を示さないわけにはいかない。
……実際、もしかしたら爬虫類王ジョゼフも、私と似たような戦略構想を持っていて、今回のアルビオンの件に噛んでいる可能性は高いのかもしれない。
「それで、結局ルイズがアルビオンに関わりたがる理由ってなんなんだ?」
「アルビオンにトリステイン空軍の駐留する軍事施設を作らせること。
ある程度は利害をズブズブにして、一蓮托生の同盟国になってもらうことね」
「……戦略爆撃か?」
さすがの地球人、しかもそれを最も過酷に体験したという国の出身者だ、真っ先に正解にたどり着く。
「そうよ、才人の知識もあって、実際にかなり有効であることを確信したわ」
そうだ、アルビオンという国は空に浮いている以上、どれだけ上手くやってもまともに攻め入ることができないのだ。
メイジだって、どれだけ優れていても、軍勢を伴って運用しないのであれば、軍事的に見ればそこまでの脅威ではない。
メイジだけで、戦争にまつわる作業のすべてと、捕虜や敵負傷兵の管理などをやりながら、相手の軍勢を打ち倒すのは不可能だからだ……なにせ相手にもメイジはいるわけだし。
そう考えると、兵員と兵站をまともに送りこむことができない以上、アルビオンは正面からの手段では侵攻不可能な国であると言い切って良い。
なんなら、地球の技術で見積もっても難しいだろう、地球の軍事専門家に聞いてみたいくらいだ。
それにも関わらず、アルビオン側からは射程に入る各国を、一方的に戦略爆撃の脅威に晒すことができる。
外交カードとして、こんなに無茶苦茶なものはありえない。
戦略爆撃という構想が出てきたら、国土の小ささに反して、最も恐れられる国の一つになるだろう。
「まあ上空3000メイルに浮かんでますからねぇ。
自国の心配をせずに、一方的に軍事的圧力をかけるのに、これほどいい立地はありません」
「しかも、別に本当に爆撃をする必要はないわ
……思い知らせるために、何度か実際にする必要はあるでしょうけど……
できるということ自体が無視できない外交カードよ」
『言うこと聞いてくれないなら、ノイローゼになるまで射程範囲の重要都市や施設に爆撃してやる』
などと言われた日には、かなり難しい判断を迫られるだろう。
「……ガリア王に負けてないと思うぜ、それ。 異世界庶民の俺としてはちょっと怖い」
「まあそうね、私だって嫌だけど、それくらいの圧力がないと、なかなか平和って維持しづらいものなのよねぇ」
もちろん私だって、好きこのんで誰かを傷つけたり、殺したり、その生活や幸福を破壊したいとは思わない。
だが悲しいことに、将来的に為政者になる身としては、そうも言っていられないのだ。 嫌になる。
「しかもトリステインはわが祖国ながら、国土も狭い上に、基礎的な国力が総合的に見て低いからね。
今と違って、まともに統治と政治ができていたと仮定しても、運が悪ければガリアやゲルマニアに飲み込まれるのは明白だわ」
「アルビオンは平和維持に逆説的に必要」
「まあ私たちも、あくまでそういう構想がありえるんじゃないかって検討してただけですよ。
才人さんのもたらす知識がなければ、この話はまとまってなかったと思います」
そうなのだ、地球人の知識は、庶民の把握する範囲に絞っても、十分にこちらの世界では劇毒なのだ。
私もあくまで、アルビオンに恩を売って、のちのちに空軍や立地条件をなにかに使えないか? くらいにしか考えていなかった。
「皮肉よねぇ、軍事的な力や野心が結果的に相互に協調を強いるなんて」
「囚人のジレンマってやつに似てるな……そんなんでも、結果お互いに踏みとどまれるならいいことか」
「まあ、そういう一切合切を無視して、無茶苦茶する国もたまにあるけどね。
そういう意味では現状どこもまともだから」
ゲルマニアはそういう面では、びっくりするほど普通の国だし、ガリア王はむしろ私と似たようなことを考えている可能性がある。
あいつなら、ハルケギニア全体を平和で豊かにする、などと考えていても驚かない……手段を選ばない冷血トカゲだけど。
「まあそんなこんなで、アルビオンは今とても重要な話なのよ。
しかもガリア王が上手いことやったのか、王党派、負けそうなのよねぇ」
当初のアルビオンにおけるレコン・キスタは、大した規模でもなかったのだ。
裏切るはずもない家臣が裏切ったり、どこからともなく兵士が現れて増えたりしたのが問題で、あれよあれよと王党派は負けそうになっている。
「王党派が勝ったほうがいいのか? 理念的に難しくても、反乱軍に勝ってもらって、そっちと交渉するってのも手に思えるけど」
「それはそれで一つの合理的な判断ではあるわ、さすが才人ね。 でも考えてもみなさい……あのガリア王よ?」
「……なるほど」
あの冷血動物王が何を企んでいるのかハッキリしていないが、レコン・キスタに肩入れしている以上、戦後やそのさらに後のことまで、きっちり構想は練っているだろう。
アルビオンの革命が成った暁には、アルビオンはガリアの傀儡になっていたとしても不思議はない。
そうなると戦争になれば2正面を相手にすることになってまず負けるし、そこまで行かないにしても難しい舵取りを迫られる。
……だから情報戦に優れた使い魔が欲しかったのだが。
あの王の狙いも、やっていることも全然つかめないから私たちに打てる手がないのだ。
「ま、このまま何もなければ、あと1ヶ月くらいで王党派の負けは覆せなくなるんじゃない?」
「俺の力を使えば勝たせられるだろうけどな……」
「それはそうでしょうよ……」
実際、ただ王党派を勝たせたいだけなら、そういう手もないわけではないだろう。
才人一人で、十分に王党派を勝たせられるだけの力がある。
なにやら視認するのも難しい速度で戦場を飛び回り、一薙ぎで金属鎧を着込んだ味方を、複数人まとめて切り裂いてるやつが、相手の軍勢にいる。
たちの悪い冗談か、夢を……それもとびきりの悪夢を……見ているしとしか思えないだろう。
そんなことをしてしまえば、私や才人のことが露見して、政治的に祭り上げられて自由を奪われるか、そもそも消されるかしてしまうが。
それに、私は人を殺すのは……しかもそんなにたくさん手にかけるのは……嫌だ。
仕方ないのでなければ、別の手を模索したい、才人本人は余計にそう感じているだろう。
「まあアレは反則ですからね」
「もちろん、そんなことをさせる気は、これっぽっちもないわよ。 ていうかするな」
「ああ、俺もしたくないな……」
そうでしょうよ。
「ま、そんなこんなが一連の話なわけよ、アルビオンについて相談して、作戦を決める必要があったわけね」
「なるほど、説明ありがとう」
「どういたしまして。 と言っても、こっからの作戦会議が本題で、現状ほぼ何も決まってないと言ってもいいわ」
そうなのだ、相手の狙いもやってることもあまりに不透明だから、策もなにもないのだ、現状は情報がほしいという段階でしかない。
「”聖地奪回”なーんて、本気ではないでしょうし、なんで革命なんて狙ってるのかしらね」
「情報は探ってますけど、いまひとつハッキリしないです」
「野心ある人が、権力構造の中枢を狙うためだけ、という線もなさそうなのよね。
アルビオン王家の当代のジェームズ一世とウェールズ王子は為政者としての能力はともかく、人格者ではあるからね。
貴族としても、正当な手続きを経て、共和制への移行を訴える方が早いし、賢いもの」
「民のためになるならってやつか?」
「そ、誇り高く、高潔なのよ。 ちょっと酔ってるところもあるけど、それを含めて人格的には信用できる。
真正面から世論を味方につけて説得するほうが、色々と良いはずよ」
実際、今回の私の件も、王党派を助けた恩義に加え
『平和維持のためにアルビオンに空軍基地を作りたい』
と言えば、実現させてもらえる可能性は高い。
同じ為政者として、”そんなんで大丈夫なのか?” と心配になってしまうが、浮いていて隔絶しているお国柄、お気楽になってしまったところがあるのかもしれない。
「やっぱりジョゼフにそそのかされたとしか考えられない」
「まあそれはそうでしょうけど、そうだとしたら、ますますガリア王の狙いがわかんないわね。
別に内戦なんてさせずに、最初からアルビオン全体に取り入ればいいじゃない」
「……そうかもしれない」
実際、アルビオンみたいなところに内戦なんてさせても、近い国(例えば我がトリステインとか)に逆に取り込まれる可能性の方が高い。
しかも露呈した時のリスクが高すぎる。
「まあ別に、理由はわからなくても、さっき言ったみたいに、義勇兵だなんだと言って、王党派に肩入れする手立てはないわけじゃない。
うちとアルビオンだと言い訳くらいできる付き合いが以前からあるからね。
ただ、できるなら情報をつかみたいわ。 だから今回は情報を得るための模索を優先してるんだけど、いい案は浮かびそうにないわね」
もう面倒だし直接調べに行きたいけど、さすがにそれはマズいだろうし、大反対されて止められるのは目に見えている。
「それなんですが、ワルド様と相談してから、というのはどうでしょうか?」
「え、あいつ、こっちに来られるの? あいつが来られるんなら、是非もないけど」
「次の虚無の曜日に王都近辺で、なんとか時間を作ってくださるらしいです。
なんでも、姫様と学園視察の警護の打ち合わせで近くにいらっしゃるのだとか」
「……ああ、そういえばそんなのもあったわね」
「ワルド?」
悪いわね、才人の知らない単語が次々と飛び出るのは、致し方ないことなのよ。
「そ、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。 26歳の若さにして精強なグリフォン隊の隊長の任をそつなくこなす、数少ない優秀なトリステイン貴族よ」
「有名な風のスクエアメイジでもあるわね。 ちょっと老けすぎな感じもあるけど、外見もなかなか渋くて格好いいわよー」
「”レコン・キスタの理念に共感して馳せ参じた”という体で、内部に潜入してもらっています、二重スパイというやつですね」
「二重スパイって……信用できるのか?」
才人の疑問はもっともだ、二重スパイというのはかなりの能力と運がなければ務まらない。
まずは単純にスパイというものは消される心配がある。
次に、言われたとおり、スパイ自体の信用問題が出てくる。
三重スパイ、四重スパイというのは、いつでもどこでも起こることだからだ。
そして、そこまでスパイ活動をそつなくこなせてしまう人材だと、実際にはどこに所属しているのかわからなくなる。
最終的にどこに肩入れするかは、本人の裁量次第になってしまうからだ。
スパイの信用問題はハッキリ言って、どこまでも片付かないと言っていいし、当然考えるべき内容だ。
「国と貴族のあり方を憂いているようなやつで、そんなもんだからレコン・キスタの理念にも共感してるところがあるのは確かね。
でも、だからこそ、私たちが真っ当にやってるうちは、味方と考えて大丈夫って言えるわ、人となりもよく知ってるし」
「なるほど、ルイズがそう言うなら大丈夫だな」
才人の私に対する信頼が高すぎないかしら?
なんで私を皆そんなに褒めたり信頼したりしてくれるのか。 嬉しいけどちょっと困るわ……
話を戻して、まあ、ワルドは、野心や能力もあるが、それ以上に祖国を愛しているようなやつだ。
今の腐敗したトリステインに嫌気が差しているのは知っている。
しかし、それゆえに、私たちがやろうとしていることにも、すごく共感してくれているのは間違いない。
私も小さい頃から、この国を変えるための様々な方策について、何度か話したことがある。
「何よりルイズちゃんのことが好き過ぎるもんね、彼」
「……それは関係ないでしょ」
まあ確かに、求婚されたことが何度かある。 例のごとく、私は立場と気持ちの問題で断っているのだが。
「なんだ、ギーシュもそうだけど、ルイズってモテるんだな」
「あら! 才人も気になる!?」
「そりゃあ、そうだろ。 俺たちは思春期で、年頃の男女だぜ?」
「あらー、話がわかるぅ、そこんとこどうなのルイズちゃん?」
……茶化すな。
「ほらほら、話が逸れてるわよ。 ワルドも来るみたいだし、ちょうどいいわね。
いざという時の才人の武器も見繕いたいし、次の虚無の曜日に、皆で王都に行きましょう」
私はそっぽを向きながら、なんとか話をそらす。
こういう時に、私は基本的に友人に勝てないのだ、上手く撤退するしかない。
皆もそこをわかっているので、私をニヤニヤと見てくる。 大体ここらで、いつもどおりなら手打ちにしてくれるはずだ。
私の予測通り、十分に私をからかって楽しんだのか、キュルケが口を開く。
「いいわね、食事と、買い物と、皆でデートね」
「お、いいな、男1人で美女4人とデートなんて、今までの人生では考えられない、とんでもないラッキーイベントだな」
「シルフィードも行きたいって、連れて行っていい?」
「ああそうか、ごめんな、美女5人だったな」
「きゅいきゅい、ゆるすのね!」
賑やかで楽しそうなやつらだ、それと、デートじゃないわよ。
ま、私も楽しみにしているところは否定できない。
息抜きをするくらいで、バチはあたらないだろう。
ワルドとの相談だけしっかりやらないといけないけど。
「いいですね、私も休日の日程を調整しておきます。
お弁当はマルトーさんに頼んで作っておいてもらいましょうか?
それとも王都でどこかに入られます?」
「マルトーさんに頼んでもらえる? というか、私からも挨拶を兼ねて伝えるわ。
ただでさえ疲れてるワルドに、マルトーさんのお弁当もないなんて言えないからね」
ワルドとはマルトーさんとシエスタに頭が上がらない仲間でもあって、共感がある。
よくやってくれているし、それくらいの労いはあっていいだろう。
「かしこまりました、お弁当が温め直せて、防諜に優れた相談場所も確保しておきます」
「任せっきりで悪いわね」
本当にシエスタには頭が上がらない。
「いえ、前も言ったように、こうやって適切に仕事を振ってください」
「……善処するわ」
だからそんなにいじめないで。
「はは、でも本当に楽しみだな」
「そうね」
そのあと、結局虚無の曜日の予定について、”アルビオンの件以上に気合が入ってないか?” という疑問は感じつつも、私たちは話し合い、その日は解散となった。
申し訳ありません、以前の編集前の前書きに書いたとおり、時系列順に手前から繋がっている話はこれが最後で、次はクライマックスまで飛びます。
ところで、前回のアルビオン大陸の重さ計算ですが、アルビオン王国の面積および厚みは、トリステインがおおよそ7万平方キロメートルであるという設定と、ゼロ魔の公式の絵や地図から推測した値です。 面積以外は正式な設定からの計算ではないです。
船の重さも同様に設定と見た目から推測した値で、公式の設定ではないです。 資料をあたったとは言いましたが、うのみにはしないでください。
書いてた時の感想ですが、『キュルケとルイズの口調があんまり差異がわからなくて困る』、というものが殆どでした。 あとはいくつか前の説明相談会と似た感想です。
P.S. 時系列的に順番に書いてますが、時折、こういう場面が書きたいというインスピレーションが降りてくることがありますよね? そんな感じで素案として書いておいたものがいくつかあるのですが、それなりに自体で楽しめるものを一つ後書きに乗せて書かせていただきます。 甘えた供養の仕方ですがご容赦ください。
----------おまけ(アルビオン編が終わった後のワルドとの会話の原案)----------
「二重スパイをやれる立ち回りの上手さもそうだし、メイジとしても戦士としても優秀だし、ワルド、あんたを子爵から上げないのはこの国の失態の一つね」
「だろう? ルイズの手で僕を公爵にしてくれても構わないんだよ?」
「え、あんた公爵になりたい野心だけで求婚してたんじゃなかったわけ? ほんっとうに私のこと好きなの? ロリコン?」
「今更? 僕は確かに君のような幼児体型が好きさ。 だけどね、とりわけ君が”ルイズ”だから好きなんだよ。 今の体型だろうが、そうでなかろうが、僕は心から愛せる自信があるよ。 だからその気になったら、結婚するのは流石に無理だとしても、いつでも僕を愛妾にしてくれ」
「……いや、あんた性癖マジでドギツそうだし、あたしじゃ受け止めきれない心配があるわ」
「そこはほら、僕は紳士だからね。 なんなら1回試させてくれてもバチは当たらないと思うよ」
「んー、あんたを召し上げて使い倒すために、処女ってカードを切るのも結構良さそうだけど…… あたしの貞操の一番いい使い所ってどこかしらね? 決めかねるわね……」
「ルイズ、そういうとこだよ…… まあ惚れた方が負けってやつか、次はどうしましょうか、公爵殿」
「公爵の娘、よ。 まだ一応ね。 そうね、次はガリアね」
「虚無と思わしき王様かい?」
「そう、虚無としか思えない王様よ。 せっかく優先順位が上がって利害も一致するし、タバサへの義理も果たさないと」
「妬けるね、君の心の多くを占めている人が他にもたくさんいるってのがさ。 せめて君の体の一つくらいは譲ってほしいんだが」
「こんな立場じゃなければ、あんたに身体で返せるのならいくらでも返してるわよ。 ままならないわね、お互いに」
「全くだ、子爵ですらこんなに不自由なんだ、貴族なんてするもんじゃないよ。 まともな精神のやつが関わることじゃない」
「才人が”まともな為政者ならどこの世界でも同じような苦しみがある”って言ってたわ」
「そりゃ救いがない。 ま、それでも彼のような人が一般的な庶民だなんて、上手くやってるあっちの方がマシだな。 我々はそんな結果もだしてない」
「そうね、でも、私が変えてみせるわ」
「ああ、君には期待している。 潰れてくれるなよルイズ。 失望させて、私を裏切り者にしないでくれ」
「あんたもね、ワルド」
----------おまけ終わり----------