稲妻の咆哮   作:COTOKITI JP

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ユーハングここに在らず

《A.D.1989年 07 25 マビラ飛行場 医務室》

 

「……っ……」

 

目覚めは突然にやって来た。

実際の時間はかなり経っていたが、意識を失っていた彼女からすればほんの一瞬に感じられた。

 

目を開けて知らない天井を見て、そして起き上がった所で医務室の扉が開き、一人の男が入って来た。

 

「おっ、起きてたか。 いきなりこんな所にいて混乱はするだろうがまぁ今は兎に角食え」

 

盆に乗せられていたのはスープにパン、牛乳にデザートとしてパンケーキ(・・・・・)が二切れあった。

 

盆をテーブルの上に置いて食べるように促すと彼女は真っ先にパンケーキにかぶりついた。

 

空腹もあったろうが、パンケーキに肉食獣の如く食らいつく少女に男、リジーナは苦笑いした。

 

「そんなにパンケーキが好きだったのか。 ならもっと持ってこようか?」

 

「うん!」

 

口の中にパンケーキを詰め込みながら笑顔で頷く彼女にリジーナはじゃあたらふく食わせてやるよ、と快活に答えて厨房へと向かった。

 

 

 

 

ベッドに座って食事を取っている少女、キリエはパンケーキ以外の料理を食べながらこれまでの経緯を思い出す。

 

まず真っ先に思い浮かんだのは空戦の風景だった。

 

「確か空賊と戦ってて……そんでエンジンが故障して……それから更に目の前に穴が開いてそこに突っ込んじゃって……」

 

医務室を見渡す。

 

「そして今はここ」

 

もう既に料理の皿は空になっていた。

 

自覚はしていなかったがかなり腹が減っていたようだ。

食べ終わっても胃の虫が鳴いている。

 

それに関しては先程の男が好物のパンケーキを沢山持って来てくれるそうなので気長に待つことにした。

 

ふと自分の戦闘機、キ43 隼の状態が気になった。

エンジンが故障した上にそこから更に被弾したので無事では済まされないだろう。

 

溜息を吐くキリエだったが、リジーナが片手に大量のパンケーキが入った袋を持って扉を開けると態度が一変するのだった。

 

 

 

 

《A.D.1989年 07 26 同所》

 

ベッドで静かに眠っていたキリエを叩き起したのは飛行場だけでなく街中に鳴り響く警報音だった。

 

慌てふためく中、医務室の扉が開いてリジーナが入って来た。

警報が鳴り響く中、彼はキリエとは違ってこの状況に慣れているかのように平然としている。

 

「何!?何!?何が起こったの!?」

 

「おいおい、落ち着けって。 いつもの事だよ」

 

「いつもの事って……」

 

火の着いた煙草を咥えながらリジーナは医務室の窓から滑走路の様子を見た。

 

滑走路には緊急出動の為に戦闘機が幾つも並べられていた。

 

「この街、マビラはちっと隣人関係が宜しくなくてなぁ、月に二回か三回位のペースで機銃と爆弾で嫌がらせに来るのさ」

 

キリエも窓を覗き、滑走路を見た。

戦闘機隊は既に一番滑走路と二番滑走路から離陸を始めている。

エンジンの甲高い稼働音が右から左へと過ぎ去っていく。

 

窓の外の戦闘機を凝視する。

 

見たことの無い戦闘機だ。

胴体は飛燕に似ている、しかし主翼とキャノピーは角張っていて丸みが無い。

胴体は灰色のカラーリングに機首は黄色に塗られている。

 

「あの戦闘機は?」

 

「BF-109E7だ。 F型の調達も進めてたんだが引っ張りだこでなかなか手に入らなくてな、先週ようやく機種転換が決まった所だ」

 

「び、びーえふイチゼロキュー? イーナナ?」

 

聞き慣れない名前にキリエは困惑した。

日本の機体とは型番が全く違うのでしょうがない。

 

煙草を吸い終わって携帯式の灰皿に吸殻を入れてツナギのポケットに仕舞うとベッド脇の丸椅子に腰掛けた。

 

二人は未だに自己紹介が出来ていなかった。

あの時忙しかったのもあるが彼が単純に忘れていたというのもある。

 

未だにあの機体の名前を反芻するキリエを黙らせ、口を開いた。

 

「そういえばまだ俺達まだ自己紹介すらしてなかったな。 俺はリジーナだ、お前は? 」

 

「キリエ」

 

「そうかキリエか。 よし、どうせ戦闘機は飛んじまって仕事はねえだろうし、話でもするか」

 

朝日に照らされた静かな医務室でリジーナとキリエは二人きりで話をする。

 

別に二人きりだからどうかなるという訳でもなく、ただ普通の会話が続いた。

 

「まずキリエ、お前の身分を知りたい」

 

「雇われの用心棒」

 

「用心棒か、戦闘機に乗るってことは相手は空賊か……」

 

若干遠い目になるリジーナにキリエは不審感を覚えたが気にせず話を続ける事にした。

 

「リジーナは何処で産まれたの?」

 

「ガルクっていう南西のノンド大陸に位置する街だ」

 

「知らない名前…どんな所なの?」

 

「分かった、教えてやる」

 

リジーナはポケットから手帳とペンを取り出し、白紙のページに簡易的だが地図を描いた。

 

地図を描き終えてその地図の下の方を指差す。

 

「ここがノンド大陸だ。 つってもここ、ルドーレ大陸とか、アーキアイズ大陸よりかは小さい方だけどな。 それで、ノンドは赤道上に位置しているから毎日が夏みたいに暑い。 ガルクの街としての規模はそこまででも無いが海に面してて……」

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

「ん、どうした?」

 

突然話を止めたキリエ。

理由は予想の斜め上を行った。

 

「私が知ってるイジツは海なんか無いし、その地名も長らく用心棒やってたけど聞いた事ない」

 

「……???。 待ってくれ、どういう事だ。 海が無い?イジツって何だ?」

 

ここでようやく、二人の知識が食い違っている事に気付くのだった。

 

 

 




皆さん海外機はどこの国推しですか?
私はドイツとイタリアが好きです。

お気に入り、感想よろしくお願いさしすせそ。
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