稲妻の咆哮   作:COTOKITI JP

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ぬわあああああああああああん疲れたもぉぉおおおおおおん。(持久力ガバガバ)



敵は100マイル先に

《A.D.1989 07 30 マビラ飛行場》

 

格納庫の中で待機してからかれこれ一時間経った。

いつまで経っても哨戒機が戻って来る様子は無く、ただ静かに風が熱せられたアスファルトを冷ますように吹いていた。

 

整備兵達が暑さによるものではない汗をかき始めてきた頃、リジーナが空を見ていると何かが上空で光ったのが見えた。

 

「……! 機影だ! 複数こっちに来る!」

 

一番早く見つけたのはリジーナであり、他の整備兵はどこだどこだと目を凝らして空を凝視していた。

キリエは何とかそれらしい発光体は見つけられたらしく、ゆっくりと一機ずつ数を数えている。

 

哨戒には突発的な交戦に備えて四機編隊で飛ばした。

これはここにいる全員が知っている事だ。 キリエも含める。

 

ここで真っ先に異常に気が付いたのもまたリジーナだった。

明らかに数が多いのだ。

四機なんてものじゃない。 見えるだけでも数十機は見えた。

 

それの意味する所は一つだ。

 

「味方機なんかじゃねぇ!アレは敵機だ!!この飛行場を狙ってやがる!!」

 

リジーナが言い終えたと同時にキリエがここに来て二日目に聞いたあの空襲警報が鳴り響いた。

とはいえ整備兵の彼等もこういう事態には慣れている。

 

敵の規模は違えど平静を崩さず急いで飛行場に備えられている地下壕へと避難する。

リジーナもそれに続き、キリエを入れて一番最後に地下壕に駆け込んだ。

 

全員が地下壕に避難したことを確認し、扉を閉める。

 

それから直ぐに耳を劈くような爆音と機銃弾が地面や建物に降りかかる音が聞こえてきて、同時に地震のような揺れが起こり、天井の土が落ちてきた。

 

「ヤンバ!明かりを付けてくれ」

 

整備兵であり同僚であるヤンバに近くにある電灯のスイッチを入れさせた。

すると天井から吊るされていた電灯が光り、ある程度の視界が確保出来た。

 

光は小さなものだがこの狭い地下壕を照らすには丁度いいくらいだ。

明かりが付いたので周りを見渡すと整備兵達は皆落ち着いた表情で壁に背を預けていた。

 

キリエはと言えば平静を保とうとしつつもこれ程の規模の爆撃は初めてなのか手足が目に見えて震えており、爆音が地下壕に響くとバネのように体が跳ね上がった。

 

こんな狭い中で大勢に見られているのであまりやりたくなかったが、考えた末に放置する訳にもいかないと仕方なくキリエの背後に回った。

 

後ろから見たその姿はただのうら若き少女そのもので、庇護欲を掻き立てられた。

 

まだ怯えているキリエの両耳にある物を嵌め込んだ。

 

「へ?」

 

素っ頓狂な声を上げるキリエに後ろから手を回し、抱いたままリジーナも背中を壁に預けた。

 

「耳栓だ。 アーク溶接の時のあの爆音は苦手でな、いつも常備してんだ」

 

未だに呆けた面をしているキリエだったがそれを気にとめず抱き続ける。

 

「……怖いんだろ……目ぇ閉じてろ。 そうすれば今の所は助かっていられる」

 

キリエの表情から呆けた面は無くなり、代わりに頬を赤く染めた年頃の少女らしい顔になった。

 

こんな所にいなければいい男を見つけられる位の可愛げはある。

彼女を抱くのが本当に自分でいいのかと勝手に罪悪感に浸りつつも抱くのはやめない。

 

俯いたキリエはそのまま喋る事も動くことも無く石のように固まっていた。

酷く長く感じられた沈黙だったが、キリエは漸く返事を返した。

 

「………………う、うん……」

 

俯いていて顔は見えないが了承したという事は目は閉じているのだろう。

気付いたら体の震えも大分治まっており、安堵の溜息を零しながらリジーナも目を閉じた。

 

他の整備兵達は空気を読んであまり視線を向けずに無言で地面を見ていた。

 

◇◆◇◆◇◆◇

爆撃が止んでから数分位経ち、リジーナが外の安全を確認する為に扉を開け、顔だけを出して周りを見渡した。

 

そこから見えた景色は文字通りの地獄絵図。

辺り一面が火の海と化し、爆撃による地面の窪みがあちこちに出来ていた。

施設も徹底的に攻撃され、原型を留めていなかった。

 

もうエンジンの音は聞こえないので敵機は既に去ったようだ。

しかしこうも派手にやられるとここにいる基地司令や待機していたパイロット達が心配になってきた。

 

「もう敵機はいない、外に出ても大丈夫だ」

 

扉を完全に開けて階段を登り、外に出るとそれに続いて整備兵達がぞろぞろと出てくる。

 

「これは……随分と手酷くやられたな」

 

瓦礫の山と化した施設を見ながらヤンバが言った。

他の整備兵も似たような反応を示している。

 

取り敢えず今は基地司令とパイロット達の安否を確認しなければならない。

 

彼らがいるであろう地下壕を目指しながらリジーナは呟く。

 

「よく考えなくても最前線にあるこの基地が狙われない訳が無いじゃねえか……首都はここを通らないと攻撃出来ないし……」

 

イストラル連合軍がクロイツァーク同盟を攻撃するにあたり、邪魔となる存在があった。

それは丁度境界付近に存在する巨大な山脈である。

これによって陸軍は侵攻を阻まれてしまうのだ。

 

陸軍が唯一通る事が出来たのが今リジーナ達がいるマビラのあるカイロント平野だった。

 

 

 




将来的には飛行船同士の艦隊戦とか書いてみたいゾ^〜。
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