Evening calm〜燃える夕焼けと静かな嘘つき〜 作:白ノ暇潰
休日、僕は最寄りのライブハウスへと足を運んでいた。
目的は次にアップする動画の撮影。いわゆる歌ってみた動画というやつである。家で撮っても良いのだが何が原因で身元がバレるか分からないので毎回ライブハウスで収録している。スタッフの方々には感謝しかない。
バックから機材などを取り出し、準備に取りかかる。
この活動を始めて約3年、手慣れたものであっという間に準備が完了する。
歌動画を作る時は基本的に1人の作業だ。集中し音源にあわせ歌う。全力をぶつける。ただそれだけ。
▽
何回歌っただろうか?やっと自分的に納得できるものが出来た。
歌い終わると僕以外誰もいないはずの部屋のなかから拍手が聞こえる。
「まりなさん...また盗み聞きですか?仕事してください」
「いやー、ゴメンね。凪君の歌が聞きたくてつい」
入り口の方に立つ黒髪の女性に溜め息をしつつ告げる。
彼女の名は月島まりな。ここ、ライブハウス「CiRCLE」のスタッフであり、盗み聞き常習犯である。
本当に懲りない。
「相変わらず凪君歌上手いよね~」
「そんなこと無いですよ。僕なんかより上手い人なんてそこら中に居ますよ」
「そうかな~?」
片付けをしつつ話相手になる。というかこの人はここに居て良いのだろうか?正直な話この人以外のスタッフをあまり見たことがない。
(まあ、気にしたら負けですね)
片付けを終えるとまりなさんが口を開く。
「ねぇ凪君!折角だから何曲か披露してよ!」
「いやです」
「即答!?」
このあと編集というめんど...ゲフンゲフン...大事な作業が残っている。さっさと帰ってやらなくては。
「そこを何とか!そうだ!お菓子好きなだけ買ってあげるから!」
「いやですよ!子供じゃないんですから!」
「えー、じゃ、じゃあ!無料で10回ここ使って良いから!」
「分かりました、やりましょう」
はっ!...思わず了承してしまった。てか、歌歌うだけでライブハウス10回無料とか大丈夫なのだろうか?まぁ、スタッフが良いと言うなら良いだろう。
しかし、もう一度歌うとなるとマイクとか出さなくちゃな。
「まりなさん、何かリクエストあります?僕が知ってれば歌いますよ?」
「本当!?じゃあね~……ONE OK ROCKの完全感覚Dreamerとかどうかな?」
「ええ、構いませんよ。ではそれを含めて3曲くらいでいいですか?」
「うん!」
本当に嬉しそうな顔するな...
さて、そしたらアブソリュート、完全感覚Dreamer、ハイスペックニートの3曲でいいか。
1曲目と3曲目はボカロ曲だがpopsはあまり詳しくないので仕方がない。
まりなさんに聞いたところ「全然いーよー」と言っていたので大丈夫だろう。
観客が1人だけとはいえ全力で歌わなければ失礼だろう。これも10回無料券の為!と気合いを入れ直す。
「それじゃ1曲目、アブソリュート」
▽
「ありがとうございました。これで満足ですか?」
「うん、ありがとー!」
きっちり3曲歌いきりまりなさんも満足した模様。これでようやく帰れる。
そう思い入り口の方を見ると
「「「「「あ...」」」」」
何だか目が合った。
そこに居たのは高校生ぐらいの女子5人。赤メッシュやん、怖っ!
ドアから顔を出し固まってる。気まずい。
「あの...もしかしてまりなさんにご用ですか?」
「え?って蘭ちゃんたち!どうしたの?」
「えっと、そのまりなさんが居ないから何処に行ったのかと...」
おーけい、理解した。要はこのスタッフは仕事をサボってここに居たという訳だな?
「まりなさん、仕事。サボってたんですね?やっぱり」
「うー、そ、その」
「いいから仕事してください。早く」
「ご、ごめんなさーーい!!!!!」
「あ、ちょっと!」
満面の笑みで告げるとまりなさんは直ぐに部屋を飛び出した。それに続き赤メッシュちゃん達が走って行く。
バタン!っと勢い良く扉が閉まり、部屋に静寂をもたらす。
(さて、僕は帰りますかね...)
荷物をまとめて部屋から出る。
これから帰って編集作業だ。急いで帰らなくては。
(あ、そだ。この事オーナーにチクっとこ)
後日、まりなさんはオーナーにこっぴどく叱られたとか。
家でダラダラしてたら一週間近く経ってた...
曲は、
アブソリュート‹YASUHIRO(康寛)›
完全感覚Dreamer‹ONE OK ROCK›
ハイスペックニート‹40mP›
です。
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