同型の姉妹艦とは、戦友であり家族でもある。どの駆逐艦姉妹にとってもその認識は変わらないが、夕雲型には大きな違いがあった。それは姉が姉であるということ、つまりは年功序列なのだ。
例えば、夕雲にとっては可愛い甘えん坊な妹で姉妹の中でも幼く見える二番艦巻雲でも、下の妹達には姉ぶるし、彼女達も巻雲を姉として慕う。
特に一番艦の夕雲は妹達にとっては絶対だ。提督の前では生意気な16番艦朝霜だって、夕雲の前でなら大人しい。
姉オブ姉な夕雲の思いつきにも姉妹達はなんだかんだで着いていく。
記憶に新しいのは、名誉夕雲型こと秋雲も誘って盛大に行った”お花見オブお花見“だ。(先日の姉妹全員で提督に襲い掛かった”夜這いオブ夜這い”は、苦い敗北の味と共に夕雲の頭から抹消されていた。)
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それは、 鎮守府の桜も満開になるころだった。
「桜が綺麗ねぇ。いいことを思いついたわ!今日、午後の演習が終わったら夕雲型みんなでお花見でもしましょう。ねえ提督!」
“お花見オブお花見よ!”なんて言いながら夕雲が上機嫌で書類をこなしている。
執務室には提督、夕雲、そして午前の演習旗艦で報告に来ていた四番艦長波。
唐突な夕雲の思いつきに慣れているのか、提督は”そういうのもありだねぇ”と動じずに仕事をしている。
長波は苦笑いしながら、
「そういうのは、計画立てて言ってくれよ夕雲姉ぇ...実際準備したりすんのはあたしとか風雲じゃんかさぁ...」
と答えるも、頭では”間宮さんと伊良湖に料理頼まないとなぁ”とノリノリで準備を始めている。
幸いにも今日は他鎮守府との演習日。長期遠征の艦娘以外は鎮守府にいるため、夕雲型もみな揃っている。
「妹達にも知らせないといけないわねえ」と夕雲がSNSで連絡した。
すると
巻雲「夕雲姉さんが言うなら」
風雲「えっ今日やるの!?」
高波「たしかに花見にはいい時期かもです」
藤波「じゃああたしと沖ちんでお酒買ってくる!」
早波「お姉ちゃん...あたしと浜ちゃんも着いてっていーい?」
秋霜「じゃああたしときよきよ、あとあさあさで場所とり行ってくるー!」
岸波「わたしはどうしようかな」
早霜「岸波姉さんは私とお料理でもどう?」
と続々と返信が来て、話が進んでいく。
今のところ、料理やつまみを作るのが岸波と早霜、お酒を買いに行くのが藤波・早波・浜波・沖波の4人、場所をとってくるのが朝霜・秋霜・清霜の3人で、巻雲・風雲・高波そして長波がフリーとなっている。
みんないるし、せっかくだからやるしかねーなぁと長波は気合を入れて、まず演習報告を終わらせようとする。
「要約すりゃ、サラトガが制空権確保。北上が先制雷撃と第二次砲撃と閉幕雷撃で3人、武蔵が一次二次砲撃で2人、あたしと陽炎と白露の雷撃で1人だ」
「被害はサラが開幕爆撃で中破、砲撃戦で北上が小破でほかは無傷だな」
「北上さんが今回の演習のMVPでいいかしら」
「あたし的には、武蔵だなー。戦艦2隻大破させるのは味方ながら恐ろしいぜ。」
「どうしましょうか提督」
夕雲が聞くと提督は
“長波の意見と同じで脅威である戦艦を2人もやっつけた武蔵だ”と答える。
夕雲はそれを聞いて演習報告書を書き込んでいく。長波も水上戦であたしら駆逐がMVPとったことあんのかなーなどと愚痴りながら、旗艦用の報告書を書いていく。
「これで午前は終わり。今日はお昼は軽めにしましょう。」
と夕雲が午後の演習要項を持って執務室のドアを開ける。いつになく上機嫌だ。
夕雲に着いて、提督と長波は食堂まで歩いて行く。道中提督が頭を撫でてきたり、首の汗の匂いを嗅いでこようとしたが、慣れた様子で長波はあしらう。提督は長波を諦めた様子で、ターゲットを夕雲に変えてセクハラしに行った。
長波は、ケッコン艦とのスキンシップを楽しむ提督を呆れた目で見ながら、風雲に連絡をとる。早霜と岸波の料理だけでは足りないだろうから、間宮に用意してもらうのだ。気がきいていることに、風雲は巻雲と高波を連れて既に間宮に行っているようだ。
なんだかんだで面倒見の良い風雲はいつも率先してこういう雑務をやってくれる。秋雲も風雲のそういうところが好きで、よくつるんでんだろーなーと考えていて、ふと長波は思い立った。
「秋雲のやつもこの花見に、誘ってやったほうがいいよな」
口に出していたようで、提督も
秋雲がいるともっと楽しいだろうと賛同する。
長波が
「夕雲姉、秋雲も誘ってやろうぜ。あいつ意外とそういうの気にするんだよ」と言えば
「もちろんよ長波さん。秋雲さんも私の姉妹のようなものよ」と期待通りの回答が来た。
早速秋雲に
“今日の午後空いてるだろ?夕雲型でお花見するからお前も来いよ”と伝えると、いつもはあんなにあつかましい秋雲から、
“あたしが行って大丈夫なの?あたし一応陽炎型なんだけど...”と弱気な返事が。
直接誘った方がいいだろうと長波は食堂の入口で夕雲・提督と別れて、昼飯を秋雲と食べることにした。秋雲によると食堂のテラスで仲間と食べているようだ。
秋雲は陽炎・不知火・霰の第18駆逐隊の3人と一緒だった。もう1人の霞は礼号作戦のみんなと食べているらしい。チャーハンと餃子を頼んで席に座ると、珍しく秋雲は悩んでるらしかった。姉妹に同じ駆逐隊に属する艦娘がいないことが寂しいらしい。(第十駆逐隊は秋雲以外夕雲型)
「珍しいじゃねーかよ。秋雲、お前そういうの気にしてたっけ?」
「そりゃあ、いつもは気にしてないけどさぁ、秋雲さんも姉妹と仲良くしたいと思う時があるんだよ」
どうやら同じ第五航空戦隊で親友の朧が、漣達第七駆逐隊と仲良くしているのを見て少し羨ましくなったようだ。
「不知火は秋雲も大切な妹だと思っています」と不器用なフォローが来るが、そういうことではないらしい。
すると、別れたはずの夕雲が後ろからやってきて、
「分かりました!じゃあ秋雲さんは今日から夕雲型0番艦です!」と姉妹宣言をして、秋雲の手を引く。これで万事解決です!と夕雲は秋雲に抱きつく。
すると、黙々と焼肉定食を食べていた陽炎型のネームシップ陽炎は、
「はぁ?あたしの大事な妹なんですけど!あたしが秋雲のお姉ちゃんよ!」と怒り心頭で言い、彼女もまた秋雲に抱きついた。
さっきまであんなに悩んでいたと言うのに、秋雲は、
「これ私のために争わないでっていう展開じゃん!!現実でまさか起きるなんて!薄い本が厚くなっちゃうよぉ!!」
とほざいている。
ここで提督がやってきて、”秋雲は陽炎型も夕雲型も、妹属性も姉属性も持ってるから羨ましい” と自分もまた秋雲に抱きついた。
ケッコン艦の夕雲や陽炎ならともかく、秋雲には刺激が強かったらしく、あたし幸せぇと寝言のように言っている。
「結局秋雲はお花見来るんだろ?」
もう大丈夫だろうか。
「行っていいなら行きたいなー」
「もちろんよ。秋雲さんは私の姉だもの。」
「じゃあ行くよ。ありがとね。」
大丈夫みたいだ。長波は誘って良かったと思う。
「あたし達の大事な大事な妹でもあるけどね!!!」と主張している陽炎にも秋雲はお礼を言って長波の方に来た。
「さぁて、秋雲さん張り切って花見楽しんじゃうぞ!!」
「程々に頼むぜー。うちにはやんちゃなやついっぱいいるんだから。」
提督はケッコン艦ではない秋雲に抱きついたことについて、ケッコン艦である2人から説教をくらっている。いつも通りだなぁと思いつつ、長波は姉妹に秋雲の参加を伝えた。
皆嬉しいようで、風雲も「手間が増えちゃうわねー」
なんていってるが本当は一番喜んでいるだろう。
参加者は決まったので、あとは妹がお酒を買ってきて、場所を取ってくれば、楽しい楽しいお花見だ。
とりあえず提督のやつを助けてやろうか。ネクタイを2人に引っ張られて苦しそうだ。やっぱりやめよう。長波だってケッコン艦だし、さっきは嫉妬した。見境ない色男には罰が必要だろう。
伊良湖が料理を手伝ってくれるとのことなので、長波は苦しそうにしながら謝っている提督をほっといて、秋雲と、風雲と早霜達の待つ間宮へ向かった。
実家にいる間暇すぎたので小説を書いてみました。3000字書くだけで疲れました。毎日投稿できる人はすごいを通り越して、尊敬できます。