白の祓魔師   作:紗代

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白い話/赤い嘘

候補生昇格試験を兼ねた旧男子寮での合宿。そっちは基本的に私はノータッチ。フェレス卿にも言われているため(含みがあったので何かするつもりだと思う。私は邪魔だということか)通常業務を終えて早めに切り上げ、校舎を後にする。

 

正十字学園町の大通りを抜けた所に建つこじんまりとした一軒の喫茶店。そこに入ると店内に客はほとんど居らず、店員と染み付いたコーヒーの香りと……一人の女性の姿があった。

 

「やあ、久し振り。いやここでは初めましてと言うべきかな?白代萼上一級」

「高槻泉、先生」

 

小柄で整ったその顔に胡散臭い笑顔を浮かべるその人は、髪こそ短くなっているものの。間違いなく高槻泉そのものだった。

 

「そんな怖い顔してないで、座りなよ。せっかくお人形みたいな顔してるんだからさー」

「……そうですね、一応誉め言葉として受け取っておきましょうか」

 

おそらく皮肉だろうが。

注文を取りに来た店員にコーヒーを注文して下がってもらう。足音が遠くなったのを確認して口を開いた。

 

「あの本は一体どういう意図ですか?」

「ああ、ヨハン君はちゃんと渡してくれたんだ。まあそうでなきゃ君だって私にこうして会おうともしなかっただろうが」

「喰種のいないこの世界に和修やCCGはありませんでしたから。おそらく何らかの形で作品に関わっても他人の空似で済ましていました」

「ほらやっぱりー。私はそれを見越しただけさ。ヨハン君との繋がりも取材から協力者に立候補して当選した程度だし。まあ悪魔は見えるが」

「───」

 

なるほど。やはり騎士團ではなくフェレス卿個人の協力者だったか。そして魔障を受けている、と

 

「ちなみに私はこの世界での君のことはある程度ヨハン君から聞き及んでいてね。今日私が君の誘いに乗ったのは私にも君に聞きたいことがあったからだ」

「機密でなければ」

「そう大したことじゃない。君はあっちでいつどうやってここに来た?」

「……私はちょうどクリスマスパーティーが終わって暫くしたくらいですよ。任務が入ってなくて平日の帰りに気が付いたらこの正十字学園町の大通りにいたんです。それも15歳くらいになって」

「────ふうん、そっか」

「ああそうだ、ハイセに本送るのやめてください。ハイセはカネキケンと違ってあなたの作品が苦手なので」

「!────」

 

高槻泉はそのまま考え込むような顔をした後、何事もなかったかのように頷いた。

 

「まあそんなこともある、か……」

「何がです?」

「いや、こっちの話……っと、すまん。そろそろ時間だ」

「……お忙しいところすみませんでした」

「いやいいんだよ。私もまさか君とこちら側で会えるとは思わなかったからね会えただけでも収穫というやつだ」

「最後に一つ、いいですか」

 

席を立ち、この場を去ろうとする彼女に問いかける。

 

「高槻先生、貴方は―――人間と喰種、どっちですか?」

 

それは私が一番聞きたかったことだった。

 

「―――どっちだと思う?」

「……質問に質問で返すのはどうかと思いますけど?」

「……そこにある皿とフォークが動かぬ証拠だよ。じゃあまた今度会えることを楽しみにしてるよ―――秘蔵の姫君サマ」

「……」

 

そしてそのまま、彼女は喫茶店から出て行った。

 

「―――嘘つきめ」

 

冷えたコーヒーを一口、味わうことなく飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喫茶店を出て少し歩いてから薄暗い路地に入る。そしてそこからまた歩いてちょっとひらけた場所に着いた。

 

「にしても勘の鋭さは前から変わってないねえ……こんなひやひやはこの世界ではヨハン君以来だよ」

 

着ていた上着を脱いだ。結構気に入っているので台無しにはしたくない。

 

「うふふ、ヨハン君じゃあないけど面白くなってきた……君はどう立ち回ってくれるのかなあ?」

 

右目がざわつく。

 

和修のお姫さま(白代 萼)♡―――アハハ!ケタケタケタケタケタケタ!」

「ゲタゲタゲタ!」

「キャハハハハハ」

「ゲラゲラ!」

「わーい」

 

たくさんの口と一緒に笑う。

―――その眼は赤く怪しく輝いていた。

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