「メッフィーランドのゴースト退治……ですか?」
意外な任務に間を空けてしまった。
「ええ、大したことではありませんが悪戯で観光客にちょっかいを掛けられても面倒ですし、ちょうどいいので候補生たちの任務にしましょう☆」
「了解いたしました。それでは当日のメッフィーランドは貸し切りとして手配しておきます」
「よろしくお願いします☆それから今回は貴方も同行していただきますので」
「それは構いませんが……奥村先生と山田さんがいれば過剰戦力では?」
「おや、やはり気づいていましたか☆」
気付くも何も匂いや染み付いた動作や癖はそうそうごまかせるものではない。
「霧隠シュラ……いかがいたしますか」
「彼女に至っては放っておいても問題はありません。それでは奥村先生への通達、お願いします」
「かしこまりました」
当日それぞれに無線機を持たされゴーストを追って行った。
「山田さんと宝君はいいとして……まあ、相手はゴーストだし大丈夫か?」
とりあえず匂いと足音の把握だけはしておくか。
あまり補測できる範囲は広くないけどこの遊園地全域くらいまでならいける。
「うーん、これまたいつも通りの組み合わせになったねえ」
祓魔師になったら即席チームで動かないといけないのにそんなで大丈夫なのかな……
「たかが実習、されど実習」
がんばれがんばれ。
奥村君の方は雪男君が見ててくれるから私は勝呂君たちや神木さんの方を見ようかな。
「っと、うん。順調だねえ」
「白代先生!」
「じゃあ今日の実習はここまで。集合場所に……」
言いかけたところで携帯が鳴り出す。着信は―――雪男君。
「はい、こちら白代―――奥村先生落ち着いてください!一体何が……奥村君たちの方に?――!!どういうことでっ!」
突如現れた物を咄嗟に避けた。
「先生!!」
「来るな!」
私の制止の声にみんな固まる。下手に動いてはいけない。相手は―――隻眼の梟なのだから。
「ケヒャ、ケヒャヒャ!あーそーぼー」
「な、なんやねんコイツ!!」
「恐み恐み白す。成す所の願いとして成就せずということなし!」
神木さんの召喚した白狐が襲い掛かる。しかし――
「かゆかゆー、わるいこわるいこだーれ、だ!」
『ギャン!』
「ウケ!ミケ!」
攻撃はダメージにすらならず、それどころか振り払われただけで白狐たちは消えてしまった。
「あはは、あははははははははははっはははは!次オニー!」
「ひっ」
三輪君に伸びた腕を―――切り落とした
「いぃったー!」
「いい加減にしろよ―――次生徒に攻撃したらそのもう片方も切り飛ばす」
「せ、先生」
「キャは!いうねえ―――ガキ」
「……」
「まあいいやキャハハハハハ―――
「「「「!!」」」」
こうしてメッフィーランドでのゴースト祓魔実習は様々な波乱の種を蒔いて終了した。
私の下に高槻泉が――隻眼の梟が襲撃してきていた時、ちょうど雪男君から奥村君たちのところに地の王アマイモンが来ていたらしい。
―――偶然にしてはタイミングが良すぎる。
「まるで、私と奥村君たちを分断するような―――」
この間の合宿の件といい、考えすぎで片づけられるほど私は甘いところで育っていない。
「―――誰かの変則的なゲームの駒にでもなった気分だ」
「やっぱ、お前もそう思うか」
「!いるならいるって言ってくださいよ、シュラさん」
「にゃっはっは、勘の鋭いお前なら気づくかと思って。この間の合宿でお前が外されてたり今回の件にしたって
「ですよね」
「まああれだ。本当はこんなこと言うべきじゃないんだろーけど、一応スタンスははっきりさせておいた方がいいと思ってな―――アタシはあんたの事は信用してるけど、奥村燐のことはともかくあんたの上司……メフィストの野郎については一切信用してねーから。それだけ伝えておきたかった」
「そう、ですか。それは自分が信用されていることに喜んでいいのか、恩人のような人物について一言もの申すべきか……いや、私もフェレス卿についてはさっぱりなので。うん。それでいいと思います」
「うし!じゃ、そういうことで。あ、そうそうアタシも祓魔塾の講師になったから。それからお前と同じ旧男子寮の上に住むからヨロシクー」
「うふふ、よろしくお願いします。奥村君の作る料理、絶品なんですよ」
「へえ」
「今度おつまみ作ってもらったらきっとお酒よりそっちメインになったりして」
きゃらきゃらと笑い合う。世界に馴染む。帰りたく、ない。
―――今なんて思った?
言ってはいけないことを呟いてしまった気がする。気のせいだろうか?
そのことを私は深く考えることはしなかった。