私白代萼は白日庭出身の上等捜査官。元零番隊隊員。主に使うクインケは羽赫と燐赫。パートナーは特になし。不定期で佐々木琲世。和修家……CCGの使い走りのうちの一人である。
「(はず、なんだけど)」
ここはどこだ。
西洋風の美しい街並み。でも私は暫く海外出張なんて入ってない。
とりあえず散策してみるしかない。
西洋風ではあるけど見かける看板は殆ど日本語だ。よくみると駄菓子屋なんかもある。すれ違う人間も東洋人っぽいし、聞こえてくるのも日本語。
なら日本でほぼ確定でいいだろう。ならここは日本のどこなのか。
歩いているとバス停にたどり着いた。そこに書かれていた地名は―――
「正十字学園、前?」
ということはこのバス停の背にある大きくて高い塀の向こうは正十字学園とかいう学園なのか。キリスト教っぽい。というか実際ミッション系の学校なのかもしれない。教会とかも近くにあるみたいだし。
「学校ねえ」
私は零番隊に入るまで庭から出たことは一度もなかったし、白日庭そのものが表向き名門の教育機関扱いされていたこともあって学校には行ったことがない。加えて私は特殊な立ち位置でもあったから友達みたいな仲のいい存在なんてリゼとニムラとルトくらいしかいなかった。有馬さんは友達というより年の離れたお兄さんとかそういう立ち位置だと勝手に思っている。
……とりあえず思い出に浸るのはこのくらいにしておいて駅に行ってみることにしよう。駅に行けばここのこともわかるだろう。
駅で駅員を捕まえて聞いてみた。
「すみませーん、東京の1区に行きたいんですけど」
「1区……?ああ、千代田区の事ですか?でしたら三番線ホームに行けば今から約四分後に電車が来ますよ」
……ここでは1区ではなく千代田区というらしい。覚え直しが必要だろうか?とりあえず通貨は使えそうなので切符を買って言われた通りに三番線ホームに着くとそこには既に電車が着いていた。あれ、言われた時刻からあと三分あるんだけど。多少の誤差は大目にみるべきなんだろうか。表示からしてとりあえず間違いなさそうだし。
「でもなんか嫌な予感がするんだよね」
見た目が電車なのに変な匂いがするっていうか―――
「まあ、いいか」
そして私は乗り込んだ。
乗り込んでしまった。
こういう時の私の直感は当たるのに。
電車に乗り込む。それと同時に自動ドアが閉まった。
適当な席に―――は座らない。おかしい。
おかしい。
なんでボックス席で複数人座っている頭が見えるのに誰もじゃべらない?
おかしい。
アナウンスがない。
おかしい。
生き物の気配はするのに人間の死臭が充満している。
余り信じたくはないけど
「―――なるほど、理解した」
どうやら私は都市伝説の一種に巻き込まれている、という考えに行きついた。
さてどうするか。
王道で行けば先頭車両の操縦席に行って電車を止めるかラスボスに会うことになるんだけど。
「そんなめんどくさいことせずに窓をぶち破って外に出る方が早いかな?」
死ぬことはないだろう。だって
重傷を負う可能性もないわけじゃないけど、このままだと絶対にまともな死に方しないだろうし。
幸い、折り畳み式の小型クインケはそのままあるみたいだから窓を粉々にするくらいわけないだろう。
内ポケットから燐赫のナイフ型クインケを取り出して起動し、振り上げ――
「さて、とっ「おっと、そこまでですよ」!」
背後から振り上げた手首をつかまれた。気配なんて感じなかったんだけど。
「
「こんにちは、白いおじ様。申し訳ありませんが手、放していただけませんか」
「ええ、放しますよ?あなたがこの列車を傷つけないと確約してくださるのならね」
「……なぜ、と聞いても?」
「今これに消えられると困るんですよ。ただでさえ数が少ないのに。まあ、いうなれば希少価値とでも言っておきましょうか」
希少価値、という彼の言葉にそんな執着のようなものは感じられない。でも状況が状況だし仕方ないか。
「なら私が生きてここから脱出できる、という確約をもらえるのであればこちらもお約束いたしますよ」
「―――ほほう、抜け目ない方ですねえ☆……まあいいでしょう」
そう言って腕を掴んでいた力は解かれた。一応私もクインケを畳んで仕舞い込んだ。
「では約束ですし、こんなところに長居は無用です。行きましょう。―――アイン、ツヴァイ、ドライ!」
煙が晴れた次の瞬間、なぜか私は執務室のようなところにいた。
「ようこそ、我が正十字学園理事長室へ。歓迎しますよ、旅人のお嬢さん☆」
やっぱりこいつ、人間じゃない。
「ありがとうございます。おかげで帰ってくることができました」
「ええ、私も手駒を減らすことなく済みました」
「つかぬことを、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「はい?なんです?」
「白の君、貴方は―――何ですか?」
ほんの少し、相対する鮮やかな緑に喜色が入った、気がする。
「おやおや☆まああの状況ですし?ただの人間、なんて言葉で片づけるつもりもありません。でもそれはあなたにも言えることではありませんか?」
「そうですねえ、気が付いたら西洋風の街中にいて、私のところでの通称が通じなかった。そのうえあの都市伝説みたいな列車。こんなの私のところじゃありえませんし、何より―――」
「なので馬鹿馬鹿しいある一つの結論がでました」
―――ここは、私の棲んでいた世界ではない、と。
その私の言葉を聞いた目の前の男はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。