白の祓魔師   作:紗代

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白代 萼(あきしろ うてな)(享年20)
 肩書:上等捜査官→上一級祓魔師/祓魔塾講師
 取得称号:騎士、竜騎士、医工騎士、詠唱騎士
誕生日3/5
身長160cm
体重47kg→50kg(燐の料理により、より健康的になった)
足のサイズ23.0cm。
B92W57H85
血液型AB型
好きな食べ物:林檎、コーヒー、燐の料理
特技・趣味:(本人に自覚はないが)林檎を官能的に食べること、クインケ操術、読書
興味のあるもの:特になし
平均睡眠時間:3~4時間(ショートスリーパー)
平均入浴時間:1時間(任務帰りは入念に入浴する。何事もない場合は約30分)
好きな言葉:白日
好きな漫画のジャンル:話題作りに流行りの漫画は読む。
好きな音楽のジャンル:話題作りに流行りの曲はよく聞いている。
好きな異性のタイプ:物静かで淡々とした人
好きな休日の過ごし方:コーヒーの美味しい喫茶店探し
今一番欲しいもの:新しい本棚
コンビニでよく買うもの:ブラックコーヒー、林檎系のお菓子
夜眠れない時にすること:そのまま起きてる


幕間 からたち

事の始まりはそう、二学期の始まる約一週間前。旧男子寮で事件は起こった。

 

その日は塾の仕事が入っていたが、たしか午後からだったはずなので午前中はゆっくり過ごそうと決めていた。

 

「おっぎゃあああああああ!!」

 

隣の部屋からとんでもない大絶叫が響いた。

 

「燐!?」

 

勢いよく扉を開けると―――

 

「う、うてなぁ……」

「「うん?/!?」」

 

鏡でしか見たことのない小さな自分がそこにいた。

―――燐の尻尾を鷲掴みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?ご飯食べ終わって昼寝して起きたらこの子に飛び掛かられた、と」

「ハイ……」

 

出てくれるか分からなかったけど、イチかバチかで雪男君に連絡して来てもらった。とりあえず食堂に集まり話し合うことにしたのだ。

 

「♪~」

 

当の私(ミニ)はご機嫌で燐の作ったオムライスを食べている。

 

「というか兄さん宿題は終わったの?」

「ま、まだ一週間あるし!!」

「つまりやってないわけね―――それじゃあ話を戻すけど心当たりは?」

「いや特には……」

「……萼さんは?」

「私も……あ」

 

そういえば昨日フェレス卿に頼まれて蒐集鬼部屋からいくつか道具を持ち出して

 

「フェレス卿のコレクションに触ったから、とか」

「それだ!」

「とりあえずフェレス卿に事実確認するとして……」

「ごちそうさまでした!」

 

手を合わせて食べ終わった皿とスプーンを流しに持っていくと、私(ミニ)は私のところにやってきた。

 

「どうしたの?」

「お母様……」

「!!」

 

じっと見つめられて言われたその一言に内心ゾッとする。

しかし相手は私とはいえ子どもだし、自分でも見た目は実父というよりもほとんど母親寄りなため仕方がない。そう言い聞かせるように割り切る。

席を立って目線を合わせるようにしゃがみ込む。

 

「ごめんね、私は未来の貴方で、お母様じゃないの」

「!……そ、っかぁ」

 

私を見つめていた目は一瞬の()()()()()を見せて納得したようだった。

 

「とりあえず、俺らはなんて呼ぶといいんだ?」

「確かに呼び分けないといろいろ支障が出てくるね」

「……そうだねえ、好きな方選んでいいよ」

「え、でも……」

「大丈夫。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「なら―――萼がいい」

「うん。じゃあ私のことは苗字で呼んで」

「いいの?」

「いいのいいの。せっかくあの人からもらった名前なんだから」

「―――ありがとう!」

 

赦されると同時にぱっと明るくなった。我ながら現金だなー……

 

「二人も、それでいい?」

「おう、よろしくなー」

「僕も構いません」

 

 

****

「と、いうわけで皆さんに挨拶して」

「白代萼です!」

「不慮の事故により過去の私がタイムスリップしてきました。呼び方は本人の希望により萼。授業の邪魔になるようなことはさせないのでみんなも気にせず授業に集中するように。さ、貴方も席に着いて」

「はい!」

 

小さな私はぽてぽてとしえみちゃんの隣まで歩いていき座った。「よろしくね!」としえみちゃんが言えば「よろしくお願いします!」と返す。あそこだけ周りに花が飛んでるように見える……なんてちょっと癒されながら授業を進めていった。

 

 

今日の授業が終わって自由になると塾生は興味津々に小さな私のところに集まっていた。

 

「萼ちゃん可愛いね、今いくつなの?」

「6歳になりました」

「こーんなかわいこちゃんがあんな素敵なお姉さまになるやなんて―――将来有望やなあ!」

「あんたロリコン?」

「黙っとれ志摩!!」

「そうですよ、こんなちいさい子に手え出したらあきません!」

 

いつものノリで明るく騒がしくなる教室。一応ハメを外しすぎないように……というか小さい私の保護者のような立ち位置で私も教室に居座り続ける。

 

「6歳っていうと小学校一年生かあ」

「萼ちゃんは学校楽しい?」

「学校?」

「俺らのいるここみたいなとこの事だよ。勉強したり、友達と話したりするとこ」

 

燐に具体的に言われて小さな私は納得したようだった。

 

「学校―――ここが『学校』なんですね!うわー、初めて来た!!」

「え……」

「やっぱり百聞は一見に如かず!本の中で見たのと実際に実物の中を歩き回るのとじゃ大違い!!」

 

みんなが驚き、小さな私が興奮する中、私はとりあえずフォローを入れることにした。

 

「学校。『庭』のことよ」

「!庭」

「そう。―――庭は楽しい?」

「うん!ニムラとリゼとルトがいるから!それに―――時々有馬さんも来てくれるから、楽しいよ」

「それはよかった」

 

きゃらきゃらと笑顔で話す小さな私に、私も少しの安心と少しの罪悪感を感じる。小さな私は6歳だと言った。ならまだ白代の仕事をしていない―――純粋に世界で生きていた、まだ努力しているときの私だ。

これからあと×年後―――私はあの人(母親)を―――……

 

「おねえちゃん?」

「っ、ああごめんね、昔を思い出してた」

 

小さな私の声で我に返る。危なかった。

 

「じゃあそろそろ教室閉めるから解散ね」

「えー、そんな白代先生、俺もっと萼ちゃんとお話ししたいですわ」

「でも寮の時間に間に合わなくなるのはだめだからだめ」

「そんなー」

「あ!」

 

私たちが話していると小さな私は何かに気付いたように駆け出した。

 

「奥村先生!!」

「うわ!?」

 

びょっ!!とその小さな身体のどこにあるのかと思うほどの猫のような跳躍で雪男君に抱き着く。

 

「先生はこないちっさい子にもモテはるんですねえ」

「僕は別にそんなつもりは……」

 

はた、と私は今の跳躍を見て気づいた。ひょっとして……

 

「ねえ、萼。この中で誰が一番好き?」

「はあ?」

「あ、白代先生!?」

「んーとね、奥村先生!!」

 

みんなが混乱し、小さな私だけ元気よく答えた。

 

「ゆ、雪男、お前一体なにしたんだ?」

「別に何もしてないよ!!」

「うん、多分雪男君が何かしたわけではないと思うよ―――それで雪男君のどこが好きなの?」

「んーと、メガネかけてて背が高くて、静かに坦々と仕事してるところとか!!」

「うん分かった。―――それ全部有馬さんだよね」

 

私に言われて衝撃を受けた様に目を見開く小さな私……気づいてなかったのか。

 

「正確により細かく言うと―――メガネをかけてて背が高くて物静かで何事にも坦々と取り組んでて強くて優しくて天然で天才肌」

「す、すごい。ピッタリ……」

「うん、私は未来の萼だからね。……理想が高すぎると思ってたけどハイルとかニムラとか有馬さんとかそういう人が近くにいたせいかな……」

「あ、あの!私もクインケじゃない日用品で喰種倒せるようになるかな?」

「なるよ」

 

物干し竿とか麺棒とかで。全部本局とシャトーの備品だけど。

 

「そっか!」

「じゃあそんなわけだから、みんな今度こそ解散ね」

 

私はそう言うと小さな私を連れて職員室に戻る。私が残りの仕事を片付ける中、当の小さな私は小さく丸まってクッションの上で眠っていた。……本当に猫みたいだ。

 

気付けばもう外は真っ赤な光に満たされていた。

 

「そろそろ帰らないと」

 

帰り支度をしながらクッションをのぞき込むとまだ小さな私は眠っていた。

 

「起きないと燐の料理食べ損ねちゃうよー」

「うぅ……すー」

「だめか」

 

ゆすってみても起きない。

仕方ない背負って帰るか。

 

「白代先生?」

「―――奥村先生」

 

そんなときに限って、今会うのが一番複雑な人間と鉢合わせるのはどの世界でも同じらしい。

 

 

 

「ごめんね雪男君、背負ってもらっちゃって」

「いえ、大したことじゃないので」

 

結局、小さな私は雪男君に背負われて三人で一緒に帰ることになった。

 

「軽いですね」

「そう?体型に支障がない程度に不摂生な生活してた頃でも、割と筋肉はあった気がするんだけど」

 

まだあの人(母親)に認めてもらおうと努力してた時期だから。

 

「―――そんなに似てるんですか?その……有馬さんと」

「んー、そうだねえ。見た目で言うなら服も髪も全部真っ白にして鉄仮面になればそれなりに」

「それもう別人なんじゃ……」

「子どもはものを抽象的に見るところがあるからねえ」

 

やや顔を歪める雪男君に私は薄く笑った。

そこで雪男君は思い出したように言う。

 

「そういえば、萼さ―――白代さんのお母さんってどんな人だったんですか?」

「―――どうして?」

「この子が、話し合いの時白代さんを見て『お母様』と、呼んでいたので」

「……そういえば、そうだね」

「言いたくないなら無理にとは」

「―――いや、いいよ」

 

せっかく雪男君が歩み寄ろうとしてくれているのだ。私が引いてどうする。

 

「正直に言って、小さい頃に死別したから私の中に母親との記憶はあまりない。でも私の印象からすると私の母親―――白代襲は親というよりもキャリアウーマンで、母親というより女性だった」

「!」

「私が生まれたばかりの時はよかったらしいけど、それ以降家に寄りつかなくなった私の父親に傾倒して仕事も疎かにしてそのまま。よく言えばたった一つの愛に生きた人。悪く言えば節度がなくて現実を受け入れられなかった哀れな女性」

「それ、は」

「言い過ぎだって?―――うん、でもこれ以外の言葉は選びようがないの。ごめんね」

 

背負われている小さな私。フェレス卿いわくただの悪戯アイテムなので効力は明日の朝までには切れるだろうとのこと。

ならこの子はすぐにあの籠に戻るのだ。そう思うといくら自分とはいえ罪悪感が込み上げる。

 

「―――からたちの花が咲いたよ。白い白い花が咲いたよ。

からたちのとげはいたいよ。靑い靑い針のとげだよ。

からたちは畑の垣根よ。いつもいつもとほる道だよ。

からたちも秋はみのるよ。まろいまろい金のたまだよ。

からたちのそばで泣いたよ。みんなみんなやさしかつたよ」

 

せめてもの思いを、温情を、まだ外界と現実を知らない小さな私へ。

子守歌の体で歌うそれはきっと眠る小さな私に届くことはないだろう。

けれど、この赤くて曖昧なこの時くらいの幸福は小さな私にだってあって然るべきものであることを祈って。

 

「―――からたちの花が咲いたよ。白い白い花が咲いたよ」

 

歌う私と背負う雪男君。そして背負われている小さな私は、夕暮れの中三人で燐の待つ旧男子寮へと帰るのだった。




からたちの花
作詞:北原白秋、作曲:山田耕筰
日本の動揺の一つ。

カラタチ,からたち(枸橘,枳殻)
花言葉:「思い出」「温情」「泰平」
日本ではウンシュウミカンなどの柑橘類を栽培するときに台木として使われる。病気に強いことや、早く結実期に達することなどの利点があるが、ユズやナツミカンの台木にくらべると寿命が短いという欠点もある。
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