白の祓魔師   作:紗代

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悪魔と神父と萼

「メフィストおおおおおおお!!」

「またですか。今度はなんです、騒々しい」

「お前のとこの秘書、どうなってんだ!!」

 

理事長室の扉を蹴破るようにして飛び込んできたのは我が雇用主フェレス卿の友人だという現・聖騎士の藤本獅郎神父であった。とりあえずそろそろお茶の時間だったので雇用主のものともう一つティーカップを用意しておこう。

 

「どうも何も、この通り私の優秀な秘書ですが?」

「ちげーよ!昨日の任務だ、任務!!」

「……あなた、また何かしたんですか?」

「いえ、特には」

 

思い当たる節は更々ないのですかさず否定した。

 

「忘れたなんて言わせねーぞ、萼!お前昨日の任務でビルの屋上に追い詰めた悪魔を「落下して逃げようとしたのを追って、そのまま空中で撃滅しました」わかってんじゃねーか!!」

 

うん、それなら覚えている。とりあえず今回の悪魔は能力がちょっと厄介そうだったので仕留めないと後々後悔することを考えたら最善策がそれだった。有馬さんが隻眼の梟と戦った時も同じ事して助かってたし、むしろこれくらいしないといけないような昔ながらの感覚があった。

 

「お前なあ、もう少し自分を大切にしろよな」

「……すみません。昔同じ事をして助かっていた人がいたので」

「たとえ助かる計算でやってたとしてもだ。雪男もお前が飛び降りた時真っ青だったんだぞ!」

「……ごめんなさい」

 

雪男……奥村雪男君かあ、実習で見学に来てたからなあ。トラウマとか変な使命感みたいなのないといいけど。

 

「前の世界で同じようなことしてようが、お前は雪男と同じ子供なんだ。俺たち大人を頼れよな」

「はい」

 

この人はこうやって私のことを子ども扱いしてくる。そんなことは今までほぼなかったので、反応に困ってしまう。

 

「藤本、一応彼女の中身は19ですよ」

「まだ十代だ!十分子どもだろうが」

「あ、ありがとうございます?」

 

ちなみに私の身体はこの世界の影響を受けているのか約15、16歳くらいになっている。おかげで事情を知るひと以外からはやっぱり子ども扱いだ。事情を知っていても子ども扱いする人がここに一人いるけど。

 

「こいつまだ下一級だろ?しかも特例でこの間祓魔師になって下一級になったのも一週間くらい前だろうが。なんでそんなやつを俺たち中級以上の悪魔の祓魔任務に入れてんだよ」

「おや?彼女の戦闘力は折り紙つきのようですし、他の祓魔師たちとの折り合いも上手いとのことですが」

「だったとしてもだ」

「藤本。貴方の言うことも分からなくはありませんが、今祓魔師は人手不足なんです。特にこの日本支部は、ね」

「……そうだな」

「まあ、ちょうどアフタヌーンティーにするところでしたし。他に話があるようなら聞いて差し上げますよ。白代さん」

「はい」

「今日の分の決裁は終わりましたので、各部署への連絡と書類の方をよろしくお願いします。それから休憩が終わったら祓魔塾の臨時講師に入ってください」

「科目の方は」

「担当の先生が先日の任務で怪我をしたので体育・実技です。今日は剣術と回避の訓練ですから教材は必要ありません☆」

「はい、了解しました。―――失礼いたします」

 

納得のいっていないような藤本さんにほんの少し笑いかけて頭を下げるとそのまま書類を持って理事長室を出た。にしても講師か。私なんてぺーぺーもいいところなんだからもっと年期の入った人にしてもらったほうが説得力あるとおもうんだけどなあ。

そんな風に思いながら、私は長い廊下を進んでいった。

 

「で?理由はそれだけではないのでしょう」

「……」

「沈黙は肯定とみなしますが、だんまりではさすがの私もお手上げです」

「あいつは―――萼は似てんだよ。ユリに」

「っブフ!ぶひゃははははははっ、イヒヒヒヒ、ひひっ!ハーハハハハ!!」

「……」

「ごほっ!まさかあなたの口からそんなことが語られるとは!まあ確かに、長い黒髪に泣きボクロ、スタイルなんかも似ているかもしれませんが、まさか『昔好きだった女に似た人物が傷つくのは見たくないから』とかそういう理由ですか?冷徹の代名詞のようだった貴方が?」

「ちげーよ!いや見た目も確かに似てるとこがあるから見るたびあいつのこと思い出すのも嘘じゃない。けどユリは確かに美人ではあったがちゃんと人間らしい美しさだった。萼みたいな人形めいた整ったものが生きてる美しさじゃねえ。俺が言ってんのは内面も含めてだ」

「―――ほう」

「あいつは確かに強い。それこそ戦う力と知識だけなら上一級並みだろうよ。けどなあ、あいつは攻撃的に見えて中身は受動的なんだよ。主体性がないわけじゃないし、自分の意見もきっちり持ってる。投げやりにするわけでもねえ。ただ……中身が純真だからこそ、その部分に響く何かに出逢ったとき。それを俺は恐れている」

 

たとえばそう、ユリがサタンを受け入れた時のように―――

 

「なるほど。ご忠告感謝します。まあそれとなく私も見ておきますよ」

「ああ、頼む」

 

そうして時は過ぎていく。残酷なまでに早く、刻刻と。運命の日まであと―――

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