白の祓魔師   作:紗代

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いつまでも白いままではいられない。

「メフィストー邪魔する、ぞ……」

「兄さん!……失礼します」

「お待ちしてましたよ☆二人とも」

 

昨日のあの発言の後、フェレス卿は私経由ではなく自分の携帯から直接雪男君に連絡し、今日の放課後に約束を取り付けたようだった。

とりあえず私は当事者であってもこの場では雇用主の招いた客人をもてなす秘書なのでお茶を用意する。

 

「……」

 

ただあの……兄の方に滅茶苦茶ガン見されてるんだけど。いや、わかる。わかるよ。この部屋にいる人物で君にとって初対面の人間って私だけだから気になるっていうのも。それに藤本さんと雪男君がそれぞれ親バカとブラコン全開で料理の達人だって言ってたから、お茶の淹れ方にも一家言あるのかもしれないけど。

でもさあ……さすがに初対面の人物、それも異性に対して終始ガン見はよくないと思うんだよ。うん。

ぶっちゃけ、居心地悪ー……

 

「それで、フェレス卿。話というのは?」

「先日の魔障の授業の一件は私の不手際もありきでのものだと思いまして」

「はあ」

「なので奥村先生がフォローの追い付かないところをカバーすべく、もう一人奥村君の監視役についてもらうことにします」

「ちょ、ちょっと待ってください!兄は……」

「ああ、そう慌てることではありません。助っ人は貴方が良く知る人物ですよ、奥村先生」

「僕が、よく知る……?」

「ええ―――白代先生」

「はい」

 

名前を呼ばれて一歩前に出ると雪男君が目を見開いた。

 

「!まさか彼女が……」

「そのまさかですよ。白代萼上一級祓魔師。彼女を付けます―――幸い彼女は優秀ですし、藤本と並んであなたとの共同任務回数も多い。まさにうってつけではありませんか☆」

「……なるほど」

 

雪男君は少し考えた後ではあったけど納得したようだった。知らない顔よりも付き合いの長い私の方がいくらかマシだと思ったのかもしれない。

 

「では成立ですね☆」

「奥村雪男中一級祓魔師、奥村燐祓魔塾生。これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします───ほら、兄さんも!」

「お、おう。よろしく……」

 

お互いに頭を下げて、奥村君は雪男君にせっつかれてやっと返事を返した。

 

「ほほう☆」

 

我が雇用主が面白いものを見る目で奥村君を見ていたのを見てしまい、さすがに同情してしまった。

 

「私からの話はここまでです。――質問は?」

「白代先生の住居はどうなるんですか?たしか僕たちの住む旧館からはやや遠かったはずですが」

「その辺も大丈夫です。彼女には今日から旧男子寮に移り住んでもらう手筈になっています☆」

「はあ?!こ、こいつと一緒に住むのかよ!?」

「何かご不満でも?」

「ふ、不満もなにも……」

 

奥村君がチラチラこっちを見てくる。まあ、一般的な思春期真っ盛りの男子高校生からしてみれば唯一のプライベートスペースに教師がいるというなんとも窮屈な構図だろう。

 

「奥村君、貴方が言いたいことは察しましたが、ご安心を。白代先生には貴方たちの隣の部屋に住んでいただきますので。他には?」

「あ、アリマセン……」

「僕からは何も」

「よろしい☆では時間も迫っていることですし塾の方へ行っていいですよ」

 

退室の許しを得た雪男君は奥村君を引きずるようにして出て行った。

 

「それにしても――ククッ、面白いことになりましたねえ」

 

なりましたねえ、じゃなくてそういう風にしたのは当のフェレス卿本人である。

 

「ああそういえば、話は貴方にもあるんですよ。白代さん」

「私に……ですか?」

「はい☆」

 

そう言うとフェレス卿は机の引き出しから何か―――いや、一冊の本を取り出した。

 

「!」

 

その題名を見た瞬間、凍り付く。なんで。

 

「貴方宛てです。渡せばわかる、とおっしゃっていました」

 

なんでよりによってこの本がこの世界に存在している。

 

「―――フェレス卿、失礼ですが送り主の、名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「ええ、構いませんよ。なんといっても私の協力者の一人ですし。名前は――」

 

―――『黒山羊の卵』

 

「高槻泉」

 

 

 

 

 

くすくす

 

ケタケタケタケタ

 

アハハ

 

 

あの子どものような笑い声が、私の脳内に響く。

 

どうやらあの世界を忘れることを赦すほど、この世界も甘くはないらしい。

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